10 / 54
第10話「境界線」
しおりを挟む
第10話「境界線」
土曜日の夜、俺は会社の同僚と飲みに行った。
佐藤と、他の同期数人。
「田中、最近元気ないな」
佐藤が訊いてくる。
「そんなことないよ」
「嘘つけ。顔に出てるぞ」
俺はビールを一口飲む。
「まあ、いろいろあってさ」
「奥さんと喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩はしてない。ただ…」
俺は言葉に詰まる。
「ただ、何?」
「最近、距離を感じるんだよな」
その言葉を口にして、俺は少し楽になる。
「あー、分かる。俺も前の彼女とそんな感じだった」
「どうしたの?」
「別れた」
佐藤は笑う。
「でも、お前は結婚してるから、簡単に別れられないよな」
「そうだな」
二次会で、カラオケに行った。
みんな騒いでいる。
俺も歌う。でも、心は晴れない。
携帯を見ると、美咲からLINEが入っていた。
『何時に帰る?』
『たぶん、十一時くらい』
『分かった』
それだけ。
十一時過ぎ、帰宅する。
美咲はソファでテレビを見ていた。
「おかえり」
「ただいま」
俺は酔っていて、少しふらつく。
「大丈夫?」
「大丈夫」
美咲が立ち上がって、俺を支える。
「水、飲む?」
「うん」
美咲は水を持ってきてくれる。
久しぶりに、彼女の優しさに触れた気がする。
寝室に入り、ベッドに倒れ込む。
美咲も隣に入ってくる。
「今日、楽しかった?」
「まあまあ」
「そっか」
暗闇の中で、美咲の気配を感じる。
俺は彼女の手を握る。
美咲は驚いたように、俺を見る。
「どうしたの?」
「別に」
ただ、触れたかった。
美咲の温度を感じたかった。
美咲も俺の手を握り返す。
そして、少しだけ、距離が縮まった気がした。
土曜日の夜、俺は会社の同僚と飲みに行った。
佐藤と、他の同期数人。
「田中、最近元気ないな」
佐藤が訊いてくる。
「そんなことないよ」
「嘘つけ。顔に出てるぞ」
俺はビールを一口飲む。
「まあ、いろいろあってさ」
「奥さんと喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩はしてない。ただ…」
俺は言葉に詰まる。
「ただ、何?」
「最近、距離を感じるんだよな」
その言葉を口にして、俺は少し楽になる。
「あー、分かる。俺も前の彼女とそんな感じだった」
「どうしたの?」
「別れた」
佐藤は笑う。
「でも、お前は結婚してるから、簡単に別れられないよな」
「そうだな」
二次会で、カラオケに行った。
みんな騒いでいる。
俺も歌う。でも、心は晴れない。
携帯を見ると、美咲からLINEが入っていた。
『何時に帰る?』
『たぶん、十一時くらい』
『分かった』
それだけ。
十一時過ぎ、帰宅する。
美咲はソファでテレビを見ていた。
「おかえり」
「ただいま」
俺は酔っていて、少しふらつく。
「大丈夫?」
「大丈夫」
美咲が立ち上がって、俺を支える。
「水、飲む?」
「うん」
美咲は水を持ってきてくれる。
久しぶりに、彼女の優しさに触れた気がする。
寝室に入り、ベッドに倒れ込む。
美咲も隣に入ってくる。
「今日、楽しかった?」
「まあまあ」
「そっか」
暗闇の中で、美咲の気配を感じる。
俺は彼女の手を握る。
美咲は驚いたように、俺を見る。
「どうしたの?」
「別に」
ただ、触れたかった。
美咲の温度を感じたかった。
美咲も俺の手を握り返す。
そして、少しだけ、距離が縮まった気がした。
0
あなたにおすすめの小説
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる