セカンドライフ!

みなみ ゆうき

文字の大きさ
48 / 107
本編

48.暴かれました!(※強引な表現あり)

しおりを挟む
俺を襲った突然の眠気が佐伯によって意図的に引き起こされたものだと気付いた俺は、一瞬でも佐伯を信用したことを激しく後悔していた。


おそらく食後に佐伯が入れてくれたコーヒーに睡眠薬が入っていたに違いない。

弁当作りのためにいつもより早起きした俺の身体には、その効果は覿面てきめんだったらしく、誰から見ても言い逃れできないレベルで剥かれるまで、全く気付くことなく寝こけてしまっていた。


睡眠薬の効果スゲェ。
手首縛られてもわかんないって、相当じゃね?
……まあ、寝てる間に身体を好き放題されなかっただけマシだったかな。


最悪な事態にまで到っていないことに安堵しながらも、俺はこの状況をどうやって切り抜けようか、必死に頭を働かせていた。


そんな俺を佐伯が愉しそうに上から眺めている。


手が使えたら、絶対一発で床に沈めてやるのに!

俺は縛られている手を何度か動かして、結び目が緩んだり、切れたりしないか試してみたのだが、ソファーのアームレストにしっかり括りつけられている状態じゃ、ビクともしなかった。


だったら蹴るか──。

と考えてみたものの、足の間に佐伯の身体が入り込んで上から体重をかけられている状態じゃ、蹴ったところでたいした威力もないだろう。

少しだけどうするか考えた結果、とりあえず今行動することは諦めて、必ずどこかで訪れるであろう佐伯の隙が出来るタイミングまで、じっと待つことに決めた。

腹が決まったことで冷静になれた俺は、まずは佐伯がどういうつもりでこんなフザケた真似をしたのか聞いてみることにした。


「一体どういうつもりなんですかね?佐伯サマ」


俺の問いかけに佐伯がクスリと笑う。


「光希ちゃんと一緒に楽しいことしたいな、って思ってさ。でもお願いしたところで素直に抱かせてくれないでしょ?だったらこういうのもアリだと思ったんだけど」


……いや、絶対ナシだろ。

心の中で軽くツッコミを入れながらも、こんな時ばかり何時もの間延びしたような勘に障る喋り方じゃなくなったことに、俺は益々警戒心を強めていく。


「俺、こういうプレイ好みじゃないんですけど……」


あまり刺激しないようやんわり抗議してみた俺の気遣いも虚しく、佐伯は全くお構い無しに、はだけたシャツから露になった俺の胸に手を這わせてきた。

その手の感触が酷く不快で、思わず身を捩ってしまう。


「あれ?ここあんまり好きじゃない?」


ここが俺の性感帯かどうかが問題なんじゃなく、行為の相手が問題なんだって気付いて欲しい。


「好きじゃないのでやめてください」


ハッキリ断ってみたのだが、佐伯は余計面白がって、俺の乳首を捉えては、捏ねたり摘まんだりしてくる。

あまりにしつこい佐伯に対し、俺は思い切り睨み付けてやった。


「いいねぇ。その顔スッゴくそそるよ。正直最初は光希ちゃんのこと、ターゲットじゃなかったら抱く気も起きないくらい好みじゃなかったけど、今はこっちからお願いしたいくらいだな」


全く言葉の通じない佐伯に対し苛立ちを募らせた結果、俺は早々に冷静さとさっきまで使っていた敬語を放棄して、はっきりと拒絶の言葉を口にしていた。


「勝手なこと言ってんじゃねぇよ。誰も抱いてくれって頼んでねぇし。むしろこっちから願い下げだ」


ところが、佐伯は俺の言葉を意に介す様子はなく、一層身体を密着させてきた。


ヤバい。コイツ本気だ……。


唇が触れそうな距離まで顔を近付けられた俺は、佐伯とのキスを回避するため、思い切り顔を背けるしかなかった。

そんな俺の態度に佐伯は余裕の笑顔を見せると、そのまま唇を俺の耳に軽く押し当て、わざとらしいにも程がある猫撫で声で囁いた。


「──ねぇ、抱かせてよ」


そう言った後、すかさず耳に舌を這わせてくる。

そんな佐伯に、俺はある意味感心していた。

嫌がられてんのに構わず続けようとするなんて、よっぽど自分に自信があるのか、厚顔無恥というやつなのか……。

かつての調子に乗って自信満々だった時の俺でさえ、ここまで厚かましくはなかったはずだ。


俺が余所事に気を取られている間にも、佐伯の唇は徐々に移動し、首筋へと下りていく。

そこはさすがに結構敏感なとこだけに、快感に繋がる感覚かどうかは別として、息がかかる感触だけでも肌が勝手に粟立ち始める。


──ハッキリ言って気持ち悪い。

もうトラウマ過ぎて、勃たないどころか誰ともセックスできなくなりそうなくらい不快な感覚だ。

すると俺の反応が芳しくないことに気付いたのか、佐伯は一旦唇を離すと、横を向いたままだった俺の顔をやや強引に仰向かせ、前髪を大きく掻き上げてきた。

紛い物の青い瞳が真っ直ぐ俺の目を覗き込む。


「やっぱり光希ちゃんは素顔のほうが断然いいね……」


その一言で、ようやく俺はやけにクリアになっている視界がどういう状況で出来上がったものなのかということに思い至った。

寝こけてた間に、手首を縛られて服を脱がされかけただけじゃなく、ウィッグと眼鏡もあっさり外されていた結果らしい。


「光希ちゃんって綺麗だね……。ホントの瞳の色が見れないのがスッゴく残念」


ぎょっとする俺に、佐伯はいつもの口調に戻って言葉を続けた。


「だってそれカラコンでしょ?元々のカラーは俺とお揃いなんだよね~」


すっかりバレてることがわかったが、俺はどうしても我慢ならない一言をキッチリ訂正しておきたくて、佐伯をじっと見据えた。


「お前と一緒にすんな」

「ゴメンゴメン。光希ちゃんのは天然だもんね~」


全く悪いと思ってないのがよく伝わってくる一言に、俺は相手をするのもバカらしくなっていく。


「……お前に関係ない」

「つれないな~。ま、これだけ目立つ容姿なら、隠しておきたい気持ちもわかるけどね~。俺も教えてくれる人がいなかったら知らないままだったかも知れないし~」


どうやら俺の変装に気付いた挙げ句、佐伯に教えたお節介な人間がいるらしい。


まあ、風紀の副委員長には一発で見抜かれたし、誰かが気付いても不思議じゃねぇよな……。

そう思っていた俺だったが、佐伯の口から語られたのは、想像の範疇になかったことだった。


「便利な世の中だよね~。ちょっとSNSで呼び掛けたら、あっという間に情報が集まるんだからさ。光希ちゃんって随分有名人だったから、すぐに色んな情報が集まってきて正直ビックリしたよ~」


眉を顰めた俺を見て、佐伯がニヤリと笑う。


……嫌な予感しかしない。


「ねぇ。王子様って呼ばれてた、藤沢光希クン」


俺は愉しそうな佐伯の顔をガン見しながら、言葉を失った。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍
BL
ヘマをして傷つき倒れた暗殺者の青年は、王子に保護される。孤児として組織に暗殺者として育てられ、頑なだった心は、やがて王子に溺愛されて……。 本編後、番外編あります。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

処理中です...