セカンドライフ!

みなみ ゆうき

文字の大きさ
104 / 107
番外編

その後12.プレゼントしました!【後編】

しおりを挟む
結局予定の時間に帰って来ないどころか、連絡も来ないまま後三十分ほどで日付が変わろうとしていた。

十時を過ぎた辺りでもう今日は帰って来ないかもと思い始めた俺は、適当に夕食を済ませ、東條のために作った料理を冷蔵庫にしまった。

東條がいないんじゃここにいる意味もないし、今からでもタクシーを呼んで光里ちゃんちに行こうかな……。

そう思ってはみたものの、せっかく来たのにそれもどうかと思い直し、とりあえず今日はここに泊まることに決めた。


たとえ日付が過ぎても帰って来るんなら『おめでとう』って言えるしな。
直接言えなくてもメールで先に伝えてもいいかも。


早速メッセージを打ち込もうとスマホを手に取ったところで。

いつの間にか充電切れになっていたことに初めて気付き、愕然とした。


もしかして東條から連絡が来ないんじゃなくて、来てたけどわからなかっただけじゃ……。

充電しようにも同じ機種を使ってる東條に借りればいいやと思ったから充電器なんて持ってきていない。

コンビニに充電器って売ってたっけ?

慌てて玄関に向かったところで、カチャッという音と共に玄関のドア開き、あまりのタイミングの良さに俺はビックリし過ぎて固まった。

東條にしても、まさかドアを開けたすぐ目の前に俺がいるとは思わなかったのか、結構驚いた顔をしている。


「──おかえりなさい。誕生日おめでとう」


先に我に返った俺が平静を装って声を掛けると、東條もすぐに笑顔で俺の方へと歩み寄りそっと抱き締めてくれた。


「ただいま。色々トラブって遅くなった。一応こっちに着いてすぐに光希のとこに連絡したけど繋がらなかったぞ。充電切れてんじゃないのか? お前のことだから充電器を持ち歩くなんてしてないだろうし」


俺のほうの状況を的確に言い当てられ、俺はとりあえず返事の代わりに東條の背中に腕を回して誤魔化しておいた。

俺の行動パターンがバレバレなのが何となく癪に障るけど、実際にそういう事になってたんだから文句も言えない。


俺は色んな言葉を飲み込んでから顔をあげると、自分から東條の唇にキスをした。

珍し過ぎる俺の行動に東條が目を丸くしてるっぽいのがわかって面白い。

俺もまさか自分がこんな真似をする日がくるとは思っていなかっただけに、内心苦笑いしながらもたまにはサービスするのもいいかな、なんて悠長なことを考えていた。

ところが。

段々とキスが深くなり、主導権が東條に移ると、今度はあっという間に俺の余裕なんて無くなっていく。


「誕生日プレゼントもらってもいいか?」


そんなタイミングで視線を合わせた東條にそう囁かれ、俺は黙って頷くことしか出来なかった。


◇◆◇◆


軽くシャワーを浴びた後、俺達はすぐにお互いの感触を確かめあった。

今日こそは俺が全部するつもりだったのに、やっぱり東條に翻弄された俺は、心の中で次こそはと誓いながらも散々喘がされ、イカされる羽目になり正直ヘロヘロになっていた。

まさか『誕生日プレゼントは俺』なんていうベタな真似を自分が経験することになろうとは……。


とりあえずギリギリだったとはいえ、日付が変わる前におめでとうって言えたんだし、東條はセックスの最中ずっと滅茶苦茶嬉しそうに俺を攻め立てていたから良かったと思うことにしよう。

すっかり雰囲気に流されてしまった事に気恥ずかしさを感じつつも、忘れていた本当のプレゼントの存在を思い出した俺はのろのろと身体を起こしベッドから抜け出した。


「眠いとこ悪いけど、忘れないうちに。はい、これプレゼント。大したものじゃないけど」


リビングに置いてあったプレゼントを持って再びベッドへと戻ると、珍しく眠そうにしている東條の目の前に差し出した。

途端に東條がパッチリと目を覚ます。

俺からプレゼントがあるとは思っていなかったのか、ちょっとだけ戸惑った様子で身体を起こすと、プレゼントが入った某有名ブランドの紙袋を受け取ってくれた。


喜んでくれてはいるみたいだけど、なんか微妙な反応。

もしかして俺に無理させたとか思ってんのかな?

あの学校の関係者ってみんな金銭感覚おかしいから、正直このくらい普通っていうか大したことじゃないって思われるのかと思ってたからなんか意外。

俺の時には明らかに高校生向けとは言い難い物をくれたくせに、案外まともな感覚も持っているらしい東條のギャップがおかしくて、つい笑ってしまった。


「あのさ、もし俺がまだ高校生だっていうの気にしてるんなら、そんなのこうして付き合ってる時点で今更だから気にせず受け取ってよ。実は俺小学生の頃から投資やってて、それなりの成果出してるからさ。まあ、アンタ達からしてみれば微々たるもんだとは思うけど」


俺の説明に納得したらしく、東條の表情が和らいだことにホッとする。


「ありがとう。光希。嬉しいよ」


改めてそう言われ、俺の表情も自然と和らいだ。


結構ギリギリだったけど誕生日を一緒に過ごすことも出来たし、無事にプレゼントも渡すことも出来て、なんか普通のお付き合いってやつをしてる感じがするよな……。

なんてのんびり考えていると。


「あ……」


すっかり忘れていた事を思い出し、ちょっとだけ憂鬱な気分になった。

そう言えば、光里ちゃんから東條に挨拶させて欲しいって言われてたんだった。


「どうした?」


不自然に固まった俺に、東條が心配そうに問い掛ける。

仕方ない。正直に話しておくか。


「あー、実はさ。成り行きで姉に先生と付き合ってるってのを話したら、先生に挨拶させて欲しいって言いだしてさ。時間作ってもらえないか聞いてきてって言われたんだけど……」

「お姉さんって前に病院で会った?」

「ああ……、うん」


あの時の気まず過ぎる状況を思い出し、口ごもってしまう。
東條はそれに気付いているのかいないのか、俺に噛みつくようなキスを仕掛けてきた。


「ちょ……、なに!」


覆い被さってきた東條の身体を押し返し、空気を読まない東條を咎めるように睨み付ける。

すると。


「承知しましたって伝えてくれ。詳しいことはまた後で」


東條は少しの逡巡の後にそう答え、明らかに何か企んでるような感じで軽く口の端をあげた。


え? 何この表情。なんか怖いんだけど……。

そう言えば光里ちゃんも笑顔なのになんか怖かった……。


俺はこの二人が会う様子を想像して、何となく背筋が寒くなる。

──俺、その場にいなくていいかな?


そうは思っても言える筈などない俺は、二人に挟まれ気まずい思いをしているであろう自分が容易に想像出来てしまい、思わずため息を吐きそうになったのだった。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍
BL
ヘマをして傷つき倒れた暗殺者の青年は、王子に保護される。孤児として組織に暗殺者として育てられ、頑なだった心は、やがて王子に溺愛されて……。 本編後、番外編あります。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

処理中です...