思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

昔の記憶(攻め視点)

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 あの頃俺は背が小さかった。小学生だった俺は、ひとつ下の学年でも、俺より身長が低い奴が二人位しかいない位のちびで、いつもからかわれていた。
 女子も、俺の話をするときは、可愛いだの、小さいだの、恋愛対象にはならないだの言っていた。小学三年生にもなればそんなもんだ。
 男子も口を開けばバカみたいな話しか、俺をからかうかしか、しない。俺の方が賢いから羨ましいんだ。最近は、俺の名前が女みたいだって言ってくるし。………俺だって、もっとかっこいい名前がよかった。
 休み時間はそんな奴らと喋る気にならなくて、いつも校舎裏の花壇で居た。
 その日も、からかってくる奴らが面倒くさくなって、花壇に行った。そしたら、何処かから泣き声が聞こえてきて、気になった俺は泣き声がする方に行ってみた。
 ついた所は、隣の幼稚園との境目にある柵だった。
 __そこで俺は、天使とあったんだ。
 天使_幼稚園児の男の子は、その時泣いていて、俺は物凄く胸が締め付けられた。他の、それこそ同級生達が泣いたって、何も思わないのに。
 そして俺は、柵の低い所をよじ登って乗り越え、天使の所に行った。
 天使は、まだ俺に気づいていなくて、ぐすんぐすんと、地面に座り込んで泣いていた。
「なあ、なんで泣いてるんだ?」
 怖がらせないように、しゃがみこんで俺は、天使に話しかけた。
 案の定天使はびっくりして、元々大きい目を見開きながらこちらを見た。俺は、かわいいな、と思いながらじっと天使を見た。
「………だれ?」
「えっと、隣の小学校の三年生だ!」
 俺は、とっさに名前を答えられなかった。このかわいい天使の前ではかっこいい奴で居たかった。俺の名前は女みたいだから、天使にかわいい名前だね何て言われたらショックだ。それが侮蔑を含んでいなかったとしてもカッコつけたい年頃なんだ。
「………しらないひとと、しゃべっちゃだめって、ママがいってた。」
「ヴッ、あすかだ。しらかわあすか。名前を言ったからもう知らない奴じゃない。」
 かわいい名前だねって言われるより、知らない人って呼ばれる方が多分ショックだと思ったから、すぐに名前を教えた。
「…しらかわくん。」
「あすかでいい。」
 白河って聞くと、親父を呼んでるみたいだからやめてほしい。俺の名前で、俺を呼んでくれ。
「…あしゅかくん。?あす、あしゅか、あしゅ、ぅ、」
 ヴッ、かわいいなぁ。天使は幼稚園児だから、まだ舌っ足らずで、俺の名前が呼びにくいようだ。舌っ足らずで、俺の名前を呼ぶのに苦労するかわいい天使が見れたからこの名前でよかった。ありがとう母さん。ついでに親父。
「……よべないから、あすくんって、よんでもいい?」
「いいぞ!」
 いいに決まってるだろう!天使の俺だけのあだ名だぞ。他の奴には、絶対に呼ばせないからな。
「………おれ、たかぎみどりです。ごさいです。」
「みどりって言うのか!いい名前だな!みどりって読んでいいか?」
 上手に名前が言えたな!名前もかわいい!思わずかわいいと言いかけたが、もしかしたら天使も、かわいいと言われるのが嫌かもしれないと思い、押しとどまった。
「………ぃいよ。」
 っっっしゃ!!天使に名前呼びを許可されたぞ!
「よろしくな!みどり!」
 今の俺は、過去最高レベルの笑顔だと思う。天使はほんのり頬を染めてコクリと頷いてくれた。
 そんなかわいいみどりに、結婚を申し込もうとおもったのは、3ヶ月ほど経ったときだ。
 その頃には、ずっとみどりと一緒に居るためには、どうしたらいいかを考えていた。
 手っ取り早いのが結婚だ。日本では同性婚は認められていないが、数年後は変わっているかも知れないし、変わっていなければ、どこかの同性婚の認められている国で結婚すればいい。肝心なのは、みどりの合意だ。
 因みにはっきりさせておくが、俺のみどりに対する感情は、LikeじゃなくてLoveだ。愛してるぞみどり。
 そして緊張の本番。不自然じゃ無い程度におしゃれをして、母さんと練習した言葉を言う。容易したシロツメクサの花束も差し出す。
「みどり!俺と結婚してください!」
 か、噛まずに言えたぞ母さん!俺はやりきった!対するみどりは、きょとんとしていて、かわいいなと思った。
「……あすくん。けっこんって、なぁに?」
 こてん、と首をかしげて言うみどりは可愛かった。そうか、けっこんの意味がわからなかったか。
「結婚というのはな、一生一緒に居ることだ。」
「いっしょう?」
「ず~っとって意味だ。」
「ず~っと、あすくんといっしょ?」
「そうだぞ。………嫌か?」
 どうする、物凄く確認されて不安になってきたぞ。思わず嫌かと聞いてしまった。
「ううん。うれしー。おれ、あすくんと、けっこんする。けっこんしたい。」
 幸せ過ぎて意識が飛ぶかと思った。みどりに抱き着かれてこんな事言われて、意識を保っている俺、偉いぞ。みどりの前ではかっこいい俺で居たいからな。
「そうか!本当なら、結婚したらお揃いの指輪をつけるんだが………」
 ちゃんと俺が稼いだお金で贈りたいから、待っててくれるか、と言おうとしたのは、みどりが喋ったので中断された。
「ゆびわ!おれ、シロツメクサのゆびわなら、つくれる!」
 優秀だな俺のみどりは!かわいい!みどりの提案で作ることになったシロツメクサの指輪。不器用な俺は、凄くヨレヨレの指輪になってしまい、反対に器用なみどりは完璧な指輪が完成していた。みどりったら優秀!さすが俺の天使!
 ヨレヨレの指輪をみどりに渡すのは憚られたが、「あすくんのつくってくれたゆびわ、おれほしい。」と言われてしまえば、渡すしかない。稼げる様になったらちゃんとした物を渡すから、しっかり指を空けておいてくれよみどりぃ!
「俺とみどりは、ず~っと一緒だからな!」
 そう言ってみどりと小指を絡める。みどりは嬉しそうに指を絡めてくれた。
 

 ___それから数週間後、みどりは消えた。突然だった。なぜ、どうして、そんな事は考えてもわからなかった。
 俺が嫌いになった?いや、毎日好きだと言ってくれた。
 急に引っ越してしまった?それはあり得る。俺に伝える前に、引っ越さなければならなかったのかもしれない。
 誰かに誘拐された?にしては幼稚園や学校が騒がしくない。噂やニュースも聞かない。

 急に現れ、急に消えてしまった俺の天使。
 そんな俺の初恋。今も継続中だ。ずっと探してはいるが、まだ見つからない。


 そんな相手が、ストーカーと食事しに行った先の店で、店員をしているとは思わないだろ?
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