思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

思わぬ所で(攻め視点)

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 『超絶かんたん!これであなたもお話上手!~あの人だってこれでイチコロ!~』?……もしかしてみどり、好きな人がいるのか……?俺以外に……?


 いやぁ、みどり可愛かったなぁ。次いつ行こう?あんまり頻繁に行くのはどうなんだ?店的にはいいだろうが……。 
 圧倒的に俺の恋愛偏差値が低すぎる。みどり以外と愛しあう予定はないし、する気もないが、情報が足りない。というかみどりは恋愛対象男なのか?もしや俺は、恋愛対象に入る所からなのか……?
 いや、どちらにせよ、やることは変わらないか。みどりに好かれりゃいいんだ。
 仕事中に考える事ではないが、ちゃんと仕事もしてるので許してほしい。
「白河先輩、難しい顔してますねぇ。珍しい。先に昼休憩入ったらどっすか。」
 こいつは後輩の佐々木。普段はチャラついた奴だが、仕事は出来るやつだ。後、普通に有能。
「そうだな、区切りもいいし行ってくる。電話はこないと思うが、来たら対応宜しく。」
「りょ~かいしましたぁ。」
 佐々木の気の抜けた返事を聞きながら、職場を出る。社食は、佐々木が居ないと人に絡まれるからな。外に行くか……。


 お、本屋が新しく出来てる。……恋愛指南書、探してみるか!
 ……とは思ったものの、どこから探すか。って、あのふわふわの髪は!みどりじゃないかぁ!後ろ姿もかわいい!声かけよ!
 いや、待て待て俺。顔を見てないのに急に人物を特定してやぁ!久しぶり!なんて言ったらストーカーだと思われるんじゃないか?ここは、もしかして?くらいの感じでいくぞ。
「あれ、翠君?」
 よし!いい感じじゃないか!?ちょっとびっくりしてるみどりかわいいぃぃ!!
「やっぱり、翠君だ!奇遇だね。」
 思わず笑顔は溢れるし、近くに寄っていってしまう。それはもう、磁石に引っ張られる金属の様に。
「そうですね。あす、かさんは、どうしてここに?」
 あ、え、な、なんでそんなに他人行儀な笑顔なのみどりぃ。寂しいじゃないかぁ!
 おい俺!みどりが質問してんだ!泣く前に答えろ!
「、ああ、ちょっと調べたい事があってね。本屋が目に入ったから、寄ってみたんだ。」
 かっこいい大人を演じ、かろうじてみどりの前で泣き出す、というかっこ悪い自体は回避する。頑張れ俺。
「調べたい事、ですか?」
 ヴッ、首かしげてるみどりかわいいぃ……。みどりの可愛さで生き返るぅ。
「……あー、料理のレシピ本、かな。翠君のお店で食べたフレンチトーストが美味しかったから、家でも作ってみようかなって。」
 ……言えない。口説きたい本人を前にして、恋愛指南書を探してるなんて。絶対に言えない……。
 咄嗟にレシピ本と嘘をつく。ただし、みどりの作ってくれたフレンチトーストが美味しかったのは本当だ。嘘をつくときは真実も混ぜるといいって聞いたからな!混ぜ方違う気もするけど大丈夫だろう!
「…そ、そうですか。えっと、料理本の類なら、あっちの方にありましたよ。」
「ありがとう。探してみるよ。」
 みどりが料理本の場所を教えてくれたが、半分も頭に入っていない。それは、みどりが持っている本のせいだ。取り敢えず、みどりが示してくれた方に進み、みどりと別れる。
 スゥ~…落ち着け俺。落ち着くんだ、吸って~…吐いてぇ~……。
 みどりが料理本の場所を教えてくれた時、身振り手振りも付けて教えてくれたのだが、みどりの持っていた本がその拍子にタイトルが見えてしまった。
 そのタイトルこそ、俺が物凄く、それこそみどりの話が頭に入ってこないくらい動揺している理由だ。
 そのタイトルは……『超絶かんたん!これであなたもお話上手!~あの人だってこれでイチコロ!~』……。
 なんてことだ……。みどりが誰かを落とそうとしているだと…。
 いや、一度冷静になるんだ俺。ちょっと興味を引かれて持っていただけかもしれないだろ?
 チラ、とみどりを見ると、あの本を買っていた。
 買ってるぅぅ……!誰を落とす気なんだみどりぃぃ!!俺だよな?俺だと言ってくれぇ!!
 その場で叫び散らかしたい気持ちを抑え、フレンチトーストの本を買って本屋を出る。みどりに家でフレンチトーストを作ると言った手前、本当にするしかない。
 昼食も近くの立ち食い蕎麦屋で済ませ、職場に戻る。佐々木に驚かれたので、俺は今、物凄い顔をしてるんだろう。それはどうでもいいんだ、みどりに見られてなければ。
 その日作ったフレンチトーストは、俺が不器用だったため、ぐちゃぐちゃになった。まるで今の俺の心のようだな!ハハッ。



~おまけの佐々木視点~
 俺の先輩はモテる。ただしそれを全て跳ね除ける。人付き合いはいいっすけど、自分に気が有りそうな人間はそれとなく遠ざける。
 あの人男女両方にモテるんすよねえ。まあ、俺は恋人いるんで何も思わないっすけど。俺の恋人が一番!ってね。
 ま、そのお陰で、先輩からは信用されてますケド。人よけとして使われてますよぉ。特に社食。話しかけてくる人を先輩、食事中だからって総無視するんすよね。だから、食事中は先輩に話しかけないって暗黙の了解があるんすよね。
 ただ、新人さんは知らないんで、俺が相手することになるっすけど。あと、しつこい人とかね。後者の相手は俺もできればしたくないっす。やばい人多いんで。
 そんなろくにマトモな恋愛してなさそうな先輩に!春が!来たみたいっすねぇ!
 先輩はデスクで仕事してるっすけど、あの顔、めっちゃ考え事してる感じっすね。
 え?それは考え事してるだけだろうって?ばっか、何言ってんすか?あの先輩っすよ?殆どの物事は3秒で考え終わる(殆ど3秒で考え終わるけど偶に本能に走って3秒で終わらす)先輩が、あれだけ悩んでるんす。かんっぜんに恋でしょ!ね!
 ま、取り敢えず…
「白河先輩、難しい顔してますねぇ。珍しい。先に昼休憩入ったらどっすか。」
 昼ご飯を俺とじゃなくて、そのお相手と食べるとこからっすね!
 それでまさか、善意で送り出した先輩が人一人殺せそうな顔で戻って来るとは思わないっすよね。何があったんすか、マジで。
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