思い出して欲しい二人

春色悠

文字の大きさ
14 / 24
第一章

計画(攻め視点)

しおりを挟む
 緊張の一瞬。みどりの答えは____


 
 やっときたぜ土曜日。
 俺には今日、ある計画がある。その名も_
デデン『不器用なのを利用して~その1~』だ。
 計画名だけでは何がなんだかわからないと思うが、まあ聞いてくれ。
 この前、俺はみどりにフレンチトーストが作れなかった失敗談を話してしまった。かっこ悪い所がバレてしまったのは大分恥ずかしいが、そこで俺は考えついた。
 これを利用してみどりに料理を教えてもらえば仲良くなれるのでは?と___。
 あわよくば、連絡先を交換できるのでは?と__。
 ___いける、これは自然に仲良くなれるぞ……!
 
 具体的な計画は簡単。
 ステップ1
 この間のフレンチトーストが上手くできたことを言う。(3回ほどまた失敗したが、この計画の為に頑張って出来るようになった。)
 ステップ2
 みどりのお陰で出来るようになったので、これからも相談していいか聞く。(本当にみどりのアドバイスのお陰で形が崩れずに済んだ。さすがだみどり!)
 ステップ3
 またいつ会えるかわからないので、連絡先を交換しよう!(下心しかない。)
 以上3ステップだ。
 この時の為に、イメージトレーニングは完璧だ。みどりがかわいすぎて俺が喋れなくなる、という不測の事態があるかもしれないからな。そこも入念にイメトレした。
 計画は完璧。後は成功させるだけだ。できる、俺ならできるぞ!
 
 
 カランカラン
 少し聞き慣れてきた気のする扉のベルを鳴らしながら、みどりの店に入る。
「!いらっしゃいませ!」
 驚いた顔のみどりを視界に入れ、緩みそうな表情筋を叱咤して引き締める。引き締めておかないと、だらしない顔をみどりに晒しそうだ。
「お好きな席にどうぞ。」
 みどりの顔に、少しの喜びの感情が見えるのは俺の妄想なのだろうか。イメトレし過ぎたかな、可愛いからいいか。
「お冷お持ちしました。」
「注文いいかな?」
「!はい。お伺いします。」
 いつも通りカウンター席に座る。俺が微妙な時間帯に来るからか、いつも店は空いていて座りやすい。そして注文はもう決めている。
「オクラときのこの和風グラタン1つと、アイスコーヒー1つ、以上で。」
「オクラときのこの和風グラタンがお一つ、アイスコーヒーがお一つですね。少々お待ち下さい。」
 グラタン。そう、グラタンだ。今日は計画の為に、みどりと話す時間が必要だ。グラタンなら、焼くのに時間がかかる。この間の反省が活かせる俺、流石だぞ。
 そして、グラタンがセットできたのか、みどりがアイスコーヒーを持って帰ってきた。 
「お待たせしました。ご注文のアイスコーヒーです。今日はちゃんと店長が作ってます。」
「ありがとう。翠君のコーヒーも美味しかったから、また飲みたいな。」
「、ありがとうございます。」
 みどりの笑顔いただきましたぁ!!!
 んがっわいい゛ぃぃ!!!みどりの笑顔ってさぁ、ちょっと困り眉になってへにゃって笑うんだよ。ほっぺもほんのり染めて、瞳もうるっとさせる、凄く嬉しいときにする表情。目線がその時少し斜め下を向くのも変わってない。
 でも、大人のみどりはちょっとえっち。可愛いだけじゃない。俺の見方が変わっただけかもしれないけどな。今のちょっとえっちなみどりも、昔の天使なみどりも、大好きすぎて困る。
「あ、そういえばフレンチトーストの件なんだけど、成功したよ。翠君のアドバイスのお陰だ。ありがとう。」
 計画の事も忘れてないぞ。
「い、いえ、俺は何も……。」
 よし……よし、いうぞ…言うんだ俺……!
「…その、良ければ、なんだけれど、これからも料理について、相談してもいいかな?」
「……ヘ?」
「えと、翠君のアドバイスをこれからも、貰いたいなって、思ったんだけど……だめ、かな?」
 だめか?必死に隠しているが、今物凄く情けない顔をしている気がする。
「あ、いえ!俺で良ければ!…大したアドバイスは、できないかも、ですけど……。」
 よっしゃ第2ステップ突破ぁ!
「ありがとう!…それでなんだけど、翠君の予定とか、お仕事とかあるだろうし、直接会って話せないことも多いと思う。
 その…だからと言っては、なんなんだけど……俺と、連絡先を交換しないかい?」
 き、緊張したぁ!こ、これでできることはした!
 ……みどりが凄く視線を彷徨わせてる。
 そして、答えが決まったのか、まっすぐにこちらを見た。かわいいなみどり。
 みどりが、口を開く。俺は緊張で心臓がバクバクして、まるで耳の横に心臓があるみたいだ。
「……そ、うですね…朱鳥さんにも、ご予定とか、ありますし……」
 ドキ……ドキ……ドキ……。心臓が脈打つ。
「…こ、交換!しましょう!連絡先!」
 

 みどりと連絡先を交換した。
 グラタンも食べたし、デザートにアップルパイも食べてきた。アイスコーヒーも美味しかった。
 家に帰ってきて、ソファに腰掛ける。
 大きく息を吸って、落ち着こうとする。
 やった、やった。みどりと、みどりと連絡先、交換できた。
 スマホを開いて、みどりの連絡先を確認し、ニマニマと笑みを浮かべる。
 うれしい、うれしい、すんごくうれしい。
 暫くニマニマしてから、みどりに初めてのメールを送ろうと、文章を考える。
 どうしよう?はじめまして?いや、はじめましてじゃないし…。無難に、よろしくね、とか……。
 う~ん…う~んと、唸りながら考えた末。
『これからよろしくね。翠君。』
 短いかな?でも最初だし、長文を送っても……。
 取り敢えず送ると、ピコンと、数分後にスタンプが送られてきた。よくわからない生き物のスタンプ。ペコリと頭を下げていて、文字でよろしくお願いします、と書いてある。
 ……か、かわいいぃ~~!!!可愛いよみどり!!
 よくわからない生き物のスタンプでも、みどりが使っているのなら可愛く見えてしまう。盲目もいいところだ。
 でもそれでもいいと思えてしまうのだから、恋、いや、愛とはおそろしい。

 まあ、何はともあれ、計画大成功!だ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

先輩のことが好きなのに、

未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。 何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?   切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。 《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。 要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。 陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。 夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。 5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

オメガ判定されました日記~俺を支えてくれた大切な人~

伊織
BL
「オメガ判定、された。」 それだけで、全部が変わるなんて思ってなかった。 まだ、よくわかんない。 けど……書けば、少しは整理できるかもしれないから。 **** 文武両道でアルファの「御門 蓮」と、オメガであることに戸惑う「陽」。 2人の関係は、幼なじみから恋人へ進んでいく。それは、あたたかくて、幸せな時間だった。 けれど、少しずつ──「恋人であること」は、陽の日常を脅かしていく。 大切な人を守るために、陽が選んだ道とは。 傷つきながらも、誰かを想い続けた少年の、ひとつの記録。 **** もう1つの小説「番じゃない僕らの恋」の、陽の日記です。 「章」はそちらの小説に合わせて、設定しています。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...