思い出して欲しい二人

春色悠

文字の大きさ
20 / 24
第一章

ちょっとそっけない?(受け視点)

しおりを挟む
 ……俺、なにかしちゃったのかな……?
 
 
 朱鳥さんのストーカーの事があってから数ヶ月。
 今日は朱鳥さんがお店に来ているが、なんだか様子がおかしい。
 いつも座るカウンター席ではなく、窓際の席に座っているし、全然話しかけてくれない。
 ストーカーの事があってからも、週に一回くらいのペースで来てくれている朱鳥さん。先週も変わらずに来てくれていたが、何かあったのかな。
 それとも…俺が何かしちゃったとか……?
 う~ん………。先週来てくれた時も別に変わった事は無かったし、それから今日まで会ってないしなぁ。
 …………あ、…おれに、興味がなくなったのかも…………。
 ネガティブな思考を遮る様に、携帯のタイマーが鳴り、ホットケーキをひっくり返す。
 いけない、いけない。料理を作ってる時にぼんやりしちゃった。
 ホットケーキを焼き終わって、トッピングにバニラアイスとチョコソース、それに旬のいちじくを乗せたら出来上がりだ。
 店長からコーヒーも貰って朱鳥さんに持っていく。
「お待たせしました。ご注文の季節のホットケーキとコーヒーです。」
「、あ、ありがとう。」
 お礼は言ってくれるけど、すぐに目線を逸らされてしまった。たったそれだけで、俺は涙が込み上げてきそうだ。
 話す事もなくて、さっと厨房に戻った。
 扉に凭れて、ズルズルと座り込む。
「…………ハァ___。」
 細いため息が溢れた。……避けられてるなぁ。
 でも、ずっとそうしている訳にはいかない。店番が居ないとだめだから、一人は表に居ないと。
 拒絶されるのが怖くて動かない足を動かして表に向う。
 戻った瞬間、朱鳥さんと目が合うがすぐにまた逸らされてしまう。……さみしいなぁ……。
 そんな事を何度も繰り返す。目があってはさっとそらされる。俺嫌われてる?
「……お会計お願いします。」
 お会計の時も、眼をずっとそらされたままだ。
 …………あぁ、いやだ。おれのこときらわないでよ、俺なんかしちゃった……?
「……今日も、美味しかったよ。」
 そう言って帰ろうと俺に背を向ける朱鳥さん。
 俺は無意識に朱鳥さんの服を掴んで引き留めてしまっていた。
「、!?ど、どうしたの?」
「ぁ……ぃえ、その、……。」
 どうしようどうしよう………。つい服を掴んでしまった。これじゃあ、ますます嫌われちゃうよ。
「……ゆっくりでいいよ。」
 朱鳥さんは優しくゆっくりでいいと言ってくれる。
「……おれ、あすかさんになにかしちゃいましたか……?」
「…ヘ?…えと…なんでそう思ったの?」
 そんなの…
「……あすかさんが、ぜんぜんお話してくれなくて、目もあわせてくれなかったから……。」
「…なにかしちゃったかも、って思ったの?」
 朱鳥さんの問いに、コクンと頷いて返す。朱鳥さんは俺の行動に合点がいったのか、額に手を当てて上を見上げながら、スゥーーーと息を吸った。
「勘違いさせちゃってごめんね。翠君は何も悪くないよ。俺の問題だ。ちょっと色々あってさ、翠君と話しづらかったんだ。でも吹っ切れたよ。ありがとう翠君。」
 ?どういうことだろう??でも、解決したならいい、のかな?
 朱鳥さんがニコニコと笑っているので、まあいっか、と思った。
「ということで翠君。どこか空いてる日ない?」
「…?お店は祝日と火曜日以外空いてますけど。」
「そうじゃなくて、翠君の空いてる日だよ。」
 へっ?俺の空いてる日?
「今日のお詫びに何処かで奢らせてよ。」
「えっ、悪いですよ。お詫びされることでもないですし!」
「じゃあ、いつも料理教えてもらってるお礼として。」
 う゛……お礼だと断りづらい……。朱鳥さんとお出かけは大歓迎だけど、奢ってもらうのは……。
「ね、だめかな?」
「……………来週の日曜だったら空いてます……。」
 朱鳥さんの期待の目に俺は負けて、空いてる日を言ってしまった。
「やった!集合時間とかはメールで相談するね!ごちそうさまでした。」
「はい。ご利用ありがとうございました。」



 その後、集合は10時にあの本屋になった。そう約束したメール画面を開いてニマニマする。
 …………たのしみだなぁ…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

先輩のことが好きなのに、

未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。 何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?   切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。 《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。 要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。 陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。 夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。 5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

オメガ判定されました日記~俺を支えてくれた大切な人~

伊織
BL
「オメガ判定、された。」 それだけで、全部が変わるなんて思ってなかった。 まだ、よくわかんない。 けど……書けば、少しは整理できるかもしれないから。 **** 文武両道でアルファの「御門 蓮」と、オメガであることに戸惑う「陽」。 2人の関係は、幼なじみから恋人へ進んでいく。それは、あたたかくて、幸せな時間だった。 けれど、少しずつ──「恋人であること」は、陽の日常を脅かしていく。 大切な人を守るために、陽が選んだ道とは。 傷つきながらも、誰かを想い続けた少年の、ひとつの記録。 **** もう1つの小説「番じゃない僕らの恋」の、陽の日記です。 「章」はそちらの小説に合わせて、設定しています。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...