思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

ちょっとそっけない?(攻め視点)

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「え~!あんた大学生の子に手ぇだしたの!?」
「ちょ、手ぇだしたって失礼ね!両想いだし向こうから告白されたわよ!どちらかと言えば私が手を出されたほうよ!」
「ま、高校生じゃないし大丈夫か!ただ負担にならないようにしなさいよ!興奮して迫ったりしないようにね?」
「人を変態みたいに言わないでよ。」
 笑い声が遠ざかっていく。偶然聞いてしまった会話。 
 大学生に手を出したら変態になるのか……?




 本日土曜日。只今絶賛、みどりの店の中。
 今日はなんとなく顔を合わせられなくて窓際の席に俺は座っている。
 顔を合わせられない、というのも、昨日偶然聞いてしまった女性社員二人の会話が原因である。
 ようするに、大学生の恋人ができたらしい女性と、その友人の女性の会話だったのだが……。
 "大学生に手を出した"
 "興奮して迫らないように"
 "変態"
 冗談のつもりだったのだろうが、少し心に刺さった。
 俺がみどりに合意なしで手を出すことはないが、合意が貰えれば絶対に出す自信がある。(勿論出してくれても構わないぞみどり!)
 まあそこは別にいいんだ。問題は次の言葉達。
『興奮して迫らないように』と『変態』である。
 へんたい、そう、俺は変態なのである。みどり限定の変態なのは認めよう。散々佐々木に変態だと言われたんだ。
 だが、ここで問題だ。
"大学生に手を出した"
 今は出してないが、出した瞬間否定できなくなる。
"興奮して迫らないように"
 口説こうとしてる時点でちょっと怪しい。
"変態"
 否定できる要素がない。
 
 ちょっとみどりと距離をおいた方がいいかもしれない。
 今みどりは、結構俺に好感を持ってくれていると思う。だから、もしかしたら大学を卒業する前に付き合えるという幸運があるかもしれないんだ。そうなった時、その後卒業するまで俺は耐えられるのか、という問題だ。
 ………くっ……。何度シュミュレーションしてもすぐに手を出してしまいそうなんだが!?
 佐々木が散々俺を変態と言った意味がやっと理解できた気がする。………にしても俺、そんな事しか考えてないのは自分のことながら引くぞ。
 
 そんな事情があり、少しやましい気持ちのある俺は今、みどりの顔がまっすぐに見れずにいる。
 くそっ……!せっかくみどりに会えているのに……!
 そんな後悔を募らせている俺の元に、みどりが注文の品を届けにやって来てくれた。
「お待たせしました。ご注文の季節のホットケーキとコーヒーです。」 
「、あ、ありがとう。」
 くっ…かわいいなみどり!!今日も素敵な声だぞ!
 注文したホットケーキはとても美味しそうだし、実際に美味しかった。
 ただみどりの叔父さんが淹れてくれたというコーヒーは少し罪悪感を刺激された。……変態ですがみどりを泣かせる様な事はしないので許してください……。
 ホットケーキとコーヒーを食しながら、みどりを見る。目があってはやましい気持ちを隠すように目を逸らしてしまった。
 こう、なんだか申し訳ない気持ちになってきた俺は、いつもより早めに帰る事にした。
「……お会計お願いします。」
 帰りたくねぇぇ~~!!という気持ちは物凄くあるが、ちょっといつものようにみどりを見続けるのは変態が過ぎると気づいた今、長居しづらい……。
 会計中も、近くなった距離にやましい気持ちになりせめてもと目線を逸らす。どれだけ変態なんだ俺は……。
「……今日も、美味しかったよ。」
 それでも、美味しかった事は伝えたくて一言喋って帰ろうとしたその時……!
 少しだけど確かに服を引っ張られた感覚。今それができるのはみどりしか居ない…。
「、!?ど、どうしたの?」
 みどりに引き留められた!!動揺の余り少しどもるが、なんとか口調はそのまま。
 対するみどりは、何か言おうとしているようだ。
「ぁ……ぃえ、その、……。」
「……ゆっくりでいいよ。」
 本当にゆっくりでいいぞみどり!みどりの事ならいつまでも待てるからな!ちょっとどもってるのかわいいな…!!またやましい気持ちになりかけてる俺はやっぱり変態のようだ。
「……おれ、あすかさんに何かしちゃいましたか……?」
「…ヘ?…えと…なんでそう思ったの?」
 ほんとに。みどりなら何されたってウェルカムだぞ?
「……あすかさんが、ぜんぜんお話してくれなくて、目もあわせてくれなかったから……。」
「…何かしちゃったかも、って思ったの?」
 コクンと頷くみどり。
 スゥーーーと息を吸いながら天を仰ぐ。
 ッッかわいいぃぃ゛!!!シュン、ってなってるのがかわい゛い!!でも勘違いさせてごめんな゛!!
「勘違いさせちゃってごめんね。翠君は何も悪くないよ。俺の問題だ。ちょっと色々あってさ、翠君と話しづらかったんだ。でも吹っ切れたよ。ありがとう翠君。」
 うん。みどりは何も悪くない。俺が勝手に罪悪感を感じてただけだ。
 でも俺がそっけない()とみどりは寂しいらしい。
 ということで、だ。うん!罪悪感感じるのを俺はやめる!!
 両想いになればいいんだ!!
「ということで翠君。どこか空いてる日ない?」
「…?お店は祝日と火曜以外空いてますけど。」
 んん゛ッ俺の下手なナンパみたいなセリフに天然で返してくるみどりかわい゛い!!
「そうじゃなくて、翠君の空いてる日だよ。」
 ちょっとびっくりしてるみどりがかわいい。
「今日のお詫びに何処かで奢らせてよ。」
 それは建前でみどりとご飯に行きたいだけだけどな!
「えっ、悪いですよ。お詫びされることでもないですし!」
「じゃあ、いつも料理教えてもらってるお礼として。」
 もう吹っ切れたからな!押して押していくぞ!
「……………来週の日曜だったら空いてます……。」
「やった!集合時間とかはメールで相談するね!ごちそうさまでした。」
「はい。ご利用ありがとうございました。」
 心なしか嬉しそうな顔のみどりは俺の妄想じゃないと信じたい。
 どこに食べに行こうかなぁ~~。
 ………デートだな!
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