Storm Breakers:第一部「Better Days」

蓮實長治

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第三章:Do the right thing

スカーレット・モンク(6)

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 あたし達は久留米に帰って来て……水天宮のすぐそばの河原で、夜の筑後川を眺めていた。
「なぁ、どうよ、女の子にモテモテになった気分は?」
「ちゃかすな。そもそも、1人にしか想いを寄せられなかったのに『モテモテ』と云うのは、日本語として変では無いのか?」
 てるは恐しく糞真面目な口調。
「……正直、戸惑っている。ずっと……1人の女性の事を思い続ける余り……自分が他の誰かに想いを寄せられる可能性など、考慮した事も無かった」
「案外、それがモテた理由だったりしてな」
「何の事だ?」
「モテたいって気持ちがダダ漏れのキモい奴を好きになる人間なんて居ると思うか?」
「非論理的だ。ちゃんと高校に通ってるのなら、数学の教科書を開いて、集合論のページを一〇〇回読み直せ」
「はあっ?」
「一般的に言って、ある命題が真か偽かと、その命題の裏命題や逆命題が真か偽かの間には、関連性など無い」
「意味判んね。二〇世紀の古臭ふるくせえSF映画に出て来る『それは非論理的ですぅ~』が口癖のアンドロイドだって、もっと、判り易い言い方をするぞ」
「『モテたい気持ちがダダ漏れの者はモテない』と云う仮説が正しいとしても、『モテたいと思っているようには見えない者がモテる』と云う仮説が正しいかは別問題だ」
「最初から、そう言えよ……」
 いつの間にか、話のネタも尽き……あたし達は、ぽけ~っと座り続けていた。
 やがて……。
「すまん、今日は、瀾師匠の家に泊まる。送ってくれ」
 てるが立ち上がって、そう言った。
「いいけど……ここからなら、お前んと瀾師匠んまで、そんなに距離違わね~ぞ」
「このコート、瀾師匠からの借り物だ。ついでに返す」
 そう言って、てるは自分が着ている上着を指差した。
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