Neo Tokyo Site 01:第一部「Road to Perdition/非法正義」

蓮實長治

文字の大きさ
36 / 59
第三章:絶地7騎士 ― The Magnificent Seven ―

(3)

しおりを挟む
 猿が筆ペンで呪符みたいなモノを書いている。冗談みたいな光景だ。
 お猿さんは呪文みたいなものの唱えてるようだけど、当然ながら猿と人間の発声器官は作りが違うので、仮に「呪文」だとしても人間であるあたしの耳には「呪文」ではなく「鳴き声」にしか聞こえない。
「効力は一二時間±プラマイ一時間って所かな。これで『九段』の『結界』を胡麻化せる……。成功率は九〇%台前半ってとこだけど」
 「猿丸」さんの人間の方はそう言った。
「胡麻化すって?」
「『九段』のあっちこっちには、あたしの相棒が、あんたんの周囲に張ったのに似た『強い魔法使いや呪術師や、強力な呪物を検知する』結界が有る。でも、これを持ってれば、あたしの相棒や『小坊主』さんを『ちょっと魔法や呪術を噛っただけの素人に近いヤツ』に、おっちゃんや『ハヌマン』や、その新顔が持ってる『護符』を『一般人でも入手可能なレベルのお守り』に見せ掛ける事が出来る」
「九〇%台前半って、どう云う意味?」
 そう聞いたのは「ハヌマン」。
「えっ?」
「5つ全部が巧く動作する確率が九〇%台前半って事? それとも1枚につき一〇%弱の失敗率が有るって事?」
「ええっと……後者かな?」
「ちょっと待って下さい、だとしたら、ざっとした計算だと……どれか1つでも巧く動作しない確率は二〇%ちょいから……四〇%台ぐらいに……」
 続いて今村君。
「とは言っても、基本的に5つの呪符は同じモノなんで、どれか1つが巧くいけば、他のも巧くいく確率が高い。どれか1つでも失敗したら、他のもマズい事になる確率が高くなる」
「なるほど……全部OKか全部NGの確率が極端に高くて、1つか2つだけがNGなんて事になる確率は、逆に低い、と」
「まぁ、そんな感じかな? まぁ、あくまでも経験則だけどね」
「あと、そんな事が可能なら、他の『魔法使い』なんかが同じ手を使ったり……」
 続いて、あたしが、ふと生じた疑問を口にする。
「ところが、その手の結界には、それぞれ『癖』や『流儀』が有る。その『癖』や『流儀』が判んないと、この手の偽装は成功率が下るんだけど……、普通の『魔法使い』『呪術師』が、結界の『癖』や『流儀』を知る為には『結界』内に入るか、その『結界』に何かの干渉をしないといけない。だから、あたし達みたいな『魔力・呪力・気は感知出来るけど、自分は大した力を持ってない』のと『そこそこ以上の魔法を使える』のが感覚を共有してる場合じゃないと、この手をやるのは困難だ」
「つまり、普通は、どう偽装すればいいかを知らべようとした時点で、そこそこの『魔法使い』が何かやろうとしてる、ってバレちゃう訳ね」
「そう云う事。『魔法使い』を策略で出し抜くのには『魔力や呪力や気を検知出来るけど、魔力や呪力や気の量そのものは少ない』奴が、『魔法使い』と正面からぶつかるには『そこそこ以上の力の魔法使い』の方が向いてる。あたしと相棒の2人1組は、その2通りのやり方のどっちも出来るって訳」
「で、あたし達に、その偽装の護符は要らないの?」
「私や君の力は魔法や呪術に似て非なるモノだ。魔法的な手段では一般人……少なくとも『魔法使いじゃない何者か』と識別される筈だ」
 今度は荒木田さん。
「でも、『靖国神社』の呪術師達が『式神』『使役霊使い魔』で、貴方達を攻撃すると、そいつらからすると『理由が判んないのに、自分の使ってる使役霊使い魔が突然消滅した』って現象が起きたように見えます。多分、その場合『呪詛返し』の原理で、使役霊使い魔を使ってた呪術師も只じゃ済まないでしょうが……『靖国神社』の呪術師は数だけは多いので……」
 続いて「小坊主」さんが説明する。
「つまり、『靖国神社』の呪い師が、あたしや荒木田さんを攻撃したら……いきなり倒れたりするけど、同僚だか何だかの呪い師が『何か変な事が起きた』『何か訳の判んないヤツが居るらしい』って事に気付く訳ね」
「そして……私が前回、派手な事をしたせいで……多分、気付かれてる。奴らにとっては、奴らが使ってる『死霊』が多数消滅した挙句、その理由や原因が良く判んない、って状態だろうな……」
「それで、『靖国神社』が、どう出るか……。呪術より物理力重視で来るかも知れんな」
「マズそうだったら、戦わずに尻尾巻いて撤退も有り得ます?」
 そう聞いたのは「早太郎」こと今村君。
「お前の『能力』の事は聞いてる。でも、軍用の自動小銃とかで撃たれたら……」
「試した事は無いですけど……普通に死ぬ可能性は無視出来ない程度には……」
「お前は、たまたま手伝いに来た部外者だ。俺が指示するか、お前がマズと思ったら……俺達を見捨ててでも逃げろ。まずは自分の命を最優先にしろ。……それは……そこの2人も同じだ」
 そう言って「おっちゃん」は、片方の人差し指で荒木田さんを、もう片方の手の人差し指であたしを指差した。
 頼りになりそうな人達は来てくれたけど、状況は悪そうだ……。つまり、時間は無いのに、情報は少ない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...