雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ

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雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』その(14)雌蛇の跳躍力

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NOZOMIは堂島のローキックが意外に的確で重く厄介と思うものの、それを試す意味もあり敢えて受けてもいた。もう、彼の戦法もある程度は読めた。

さあ! これからショーが始まる。
4Rは堂島さんの心を揺さぶり、最終ラウンドは全国のファンに衝撃的な残酷ショーをお見せするわ。私は獰猛で残忍な雌蛇なのだから...。

(実況)

「さあ、残すところあと2ラウンドです。今のところ組み合う場面はありません。ムエタイでも実績があるとはいえ、柔術をベースにしているNOZOMI選手には苦しい展開です」

両者とも奇襲戦法はない?
堂島はじっくり構えNOZOMIを睨む。
NOZOMIも拳を構えたが、、その腕をいきなりだらーんと下げた。
そして、身体を左右にクネクネとくねらせた。その動きが蛇を思わせ堂島はどう出ていいか分からない。
不気味だ!彼女は何を考えているのだろうか? 慎重にゆっくりゆっくり堂島はNOZOMIの周囲をまわる。
背後にまわっても背を向けたまま。試しにローキックを打とうとした時だった。いきなりNOZOMIの身体が一回転すると、その長い腕でのバックハンドブローが飛んできた。
それは堂島の顔前を掠めた。もう一歩中に入っていたならまともに喰らっただろう。NOZOMIはニヤッと笑った。

堂島はNOZOMIの正面に立ち一歩中に入ろうとする。相手が出てきたら引くのが格闘技の基本なのに逆にNOZOMIは出てきた。
危険を感じた堂島は、NOZOMIとの接触から逃げるように避けた。
NOZOMIが長い腕を伸ばしたまま迫ってくる。彼女は何をしてくるか分からない。堂島は軽快なフットワークで避けるというより逃げる。
警戒して攻めてこない堂島をNOZOMIが追い詰める。どう戦っていいか分からない堂島は逃げまわるしかない。

「堂島ぁ~! なんで女の子から逃げてまわってんだよ。お前男だろう? キ○タ○付いてんだろ!」

場内から野次が飛んだ。

逃げまわってばかりの堂島に業を煮やしたのか、それとも開き直ったのか?
NOZOMIはリング中央で妙な動きを見せた。ダンスをするように腰を前後左右にグラインドし、堂島に向かってウィンクすると投げキッスまでした。

「堂島ぁ~ うらやましいぞ!」

堂島は頭が真っ白になりそうだ。3Rまでは相手が女子であることを意識しないよう戦ってきた。
しかし、今、目の前の相手は一格闘家から女性そのものの動きになってきたのだ。なんで自分は女と戦うのだ?
NOZOMIはヘビ革挑発的ビキニで俺を挑発しようというのか?

NOZOMIの腰が揺れている。
その長い手足が4匹のヘビのように襲って来そうだ。鍛えられた腹が波打つのも不気味だ。雌蛇に喰らわれその腹の中に収まった自分を想像した。

ゾゾゾッと、、全身に恐怖が走った。

何を思ったのか?
リング中央でNOZOMIはいきなり仰向けに寝っ転がった。
そして、どうしていいか分からず、その周囲をまわっているだけの堂島に向かって “おいでおいで” の挑発ポーズをしたのだ。バカにされているのか?

「こらぁ~! 堂島。こんな美少女に誘われて行かないなんて、お前それでも男か? ワハハハ!」

そんな野次に、堂島は(これは蛇の罠なのだ。自ら罠に飛び込むバカがどこにいる...)と思った。
そういえば、柔術家の山岡謙信さんはNOZOMIの印象を、男子選手とは全然違う距離感、リズム感を持っている。
感性が全然違うし、女であることを逆に武器にしている。と、言った。
実際に対峙してみると、そんなものではない。こいつは誰なんだ?自分は何と戦っている? こいつは美少女の仮面を被った異性物。ヘビなのだ。

仰向けのNOZOMIの周囲をまわっている時だった。いきなり足下にNOZOMIの長い脚が伸びてきた。
それは足に引っ掛かり堂島は尻餅をついた。(しまった!)と思った。
慌てて立ち上がろうとすると、それより先に何かが飛び上がるのが見えた。

それは猛禽類が獲物に飛び掛かるような速さで堂島を襲ってきた。
気が付くとNOZOMIが堂島に馬乗りになっている。これが蛇の跳躍なのか?恐るべき身体能力だ。
マウントになった彼女は、拳を堂島の顔面に狙い定めている。堂島は両腕で顔をガードする。

そこで第4R終了のゴングが鳴った。

(実況)

「うわー! これは堂島選手ゴングに救われました。それにしてもNOZOMI選手の運動神経はすごい。あの寝ている体勢からチャンスと見るや、一瞬で飛び上がり襲いかかりました。こんなのは見たことありません。われわれファンは、NOZOMI選手が17才の少女だと侮っていたのかもしれません」

観客はセクシーな水着に身を包んだ少女が、リング上で腰をくねらせ、仰向けになると “ おいでポーズ” するのを観て怪しいセクシーショーでも観ている気分になったかもしれない。
それが一転して男に襲いかかると馬乗りになった。少女が男にマウントになって拳を振り降ろそうとするシーンは衝撃的というより異様だった。

龍太もそんな一人だった。
あの強い父が、女の人に、それも女子高生に馬乗りになられ殴られそうになった。絶対見たくないシーン。
NOZOMIの運動神経を目の前で見て、龍太は少し心配になった。
(父ちゃんは女なんかに負けない...)

堂島のセコンド。
「堂島さん、ゴングに救われましたが
グラウンドになったら何も出来ない。気を付けて下さい。あと1Rです。挑発に乗らず逃げ切りましょう。判定になれば2度ダウンを奪っている堂島さんの勝利は間違いありません」

「次は自分にとって格闘技人生最後の3分間になります。力の限りを尽くしたい。何があっても、絶対にタオルだけは投げないで下さい。それだけはお願いします...」

このまま逃げて判定勝ちを狙うのは自分らしくない。それにNOZOMIはそんなに甘くないだろう。
もう、女子選手に負けたら恥だ!切腹する覚悟で戦う...とか、心のどこかにあったネガティブさは完全に捨てる。
泣いても笑っても、格闘技人生最後の三分間なのだ。今更オタオタしてもなるようにしかならないのだ。

4ラウンド12分間戦ってきて、堂島はNOZOMIに対して、尊敬の念のようなものも感じてきている。
女のくせに男に戦いを挑むなんて生意気だ! なんて気持ちは、今では微塵もない。彼女も人生を掛けている。

このまま判定勝ちを狙って最後まで逃げるなんて彼女に失礼だし、そんな気持ちでいったら逆に仕留められる。
それに、自分だって格闘技人生最後の三分間を逃げまわって終わってしまったら後悔するに決まっている。

勝っても負けても堂島は、NOZOMIと健闘を称え合いたいと心から思った。

これから、自分は偉大なる女子格闘家NOZOMIをぶっ倒しに行くのだ。
どんな結果になろうと逃げない。

最終ラウンドのゴングは鳴った
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