雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ

文字の大きさ
20 / 20

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』最終回。宿命!新たなる挑戦へ。

しおりを挟む
堂島佐知子の「主人の死を無駄にしないで...」という言葉に、NOZOMIは心を揺り動かされたが、今の自分は魂の抜け殻、自信なく俯くしかない。
そんなNOZOMIを佐知子はジッと見ている。真剣な顔だ。

「山吹さん。私はアナタのジェンダー論に共感しているんです。でも、世間では “男のくせに女に負けて死んだ” なんて心ない声もあるの。私は気にしないけど、このままアナタが引退してしまったら主人は浮かばれません...」

ここで初めてNOZOMIが答えた。

「つまり、堂島源太郎さんを倒した女として、私が相応しかったことを証明する責任があるということですね?」

「その通りです。引退するしないはアナタの自由ですが、そうでないと主人は、只、女の子に負けたキックボクサーとして人々の記憶に残る存在で終わってしまいます。アナタの格闘技におけるジェンダーレス論も中途半端になるのでは? 何のために主人と命をかけて戦ったのですか? 」

「・・・・」

龍太は母とNOZOMIの話を黙って聞いていた。言いたいことは全部母が言ってくれた。でも、龍太にはどうしてもNOZOMIに言いたいことがある。

「NOZOMIさん、僕、凄く悔しいよ。今でも、女に負けた父ちゃんも、男に戦いを挑んだNOZOMIさんも許せない気持ちがでいっぱいなんだ。でも、父ちゃんはNOZOMIさんのことを尊敬してたよ。格闘家としてじゃない。一人の人間としてだよ。だから、NOZOMIさんと戦えたことは誇りに思ってると思う。引退は赦さないからな!」

NOZOMIは龍太の純粋で真っ直ぐな目を見て、リング上の源太郎のことを思い出していた。こんな目だった。

「NOZOMIさんにお願いがあるんだ。このまま父ちゃんが女に負けたままなんて、息子として僕は生きていく自信がなくなる。今はまだ10才で無理だけど、あと10年経てば20才になる。僕とNOZOMIさんは7つしか違わない。僕も強くなるよ。だから...」

「だから何? 龍太君」

すると、いきなりリビングのドアが開き、二階の部屋で閉じこもっていると思われた妹の麻美が入ってきた。
どうやら部屋の外で聞き耳を立てていたらしい。

「のぞみちゃん!あと10年したら、わたしも今ののぞみちゃんと同じ17才になるから、わたしの挑戦受けて!」

NOZOMIはこの麻美という女の子の目がゾッとするほど怖かった。

「麻美! それは今、僕が言おうとしたとこなんだぞ。NOZOMIさんと戦うのは僕だ。おまえは女の子だろ!」

「お兄ちゃんは、パパが女の子に負けたこと恥ずかしがってるでしょ? そんな気持ちじゃ絶対勝てないわ。わたしは違うもん。わたしの方がパパに対する思いが強いんだから!」

「麻美! 何、生意気なことを言ってるんだ。女の子だろ? 格闘技やったこともないくせに。バカじゃないか?」

「お兄ちゃんって、まだ、女の子だからとか言ってるのね? のぞみちゃんだって女の子だよ。わたし、これから練習してお兄ちゃんより強くなる...」

NOZOMIは兄妹ふたりの言い争いを聞いて心が決まった。そして、息子と娘の口喧嘩を黙って聞いていた佐知子に向かって襟を正し言った。

「皆さんのお気持ちよく分かりました。私は引退しません!尊敬する堂島源太郎さんの思いに恥じないように頑張っていきます」

佐知子、龍太、麻美。
安心したようにNOZOMIを見る。

NOZOMIは龍太、麻美の方に向き直り微笑みながら言葉をかける。

「私は17才。30才になったら引退するので、アナタたちの挑戦を受ける期限はあと13年ね。それまで、挑戦者に相応しいほど強くなったなら、喜んで受けるわ。これは冗談だけど、どっちの挑戦を受けるかは、兄妹で挑戦者決定戦をやれば?勝った方の挑戦を受けるわよ。それ程ふたりとも強くなれればいいわね? 期待してます」

そう言い残しNOZOMIは去った。

佐知子はホッとした。

でもその時は、 NOZOMIが冗談で言っっていた兄妹対決が現実のものになろうとは知る由もなかった。

“龍太と麻美” この宿命の兄妹は、思いもよらぬ残酷な運命を辿るのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


一応、この『雌蛇の罠』の物語は完結となります。

しばらく時期を置いて、その後の物語を新作として書きたく思います。

女豹の恩讐『兄と妹、禁断のシュートマッチ(死闘)!』仮題ですが、そんなタイトルになる予定です。

今まで読んで下さった方々、ありがとうございました。


しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

元ネトウヨ
2024.07.31 元ネトウヨ

本当に最高の小説でした!
男女が対決する際の男側の葛藤や焦燥が凄いリアルに伝わってきました!

解除
2022.10.31 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除

あなたにおすすめの小説

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。