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雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』最終回。宿命!新たなる挑戦へ。
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堂島佐知子の「主人の死を無駄にしないで...」という言葉に、NOZOMIは心を揺り動かされたが、今の自分は魂の抜け殻、自信なく俯くしかない。
そんなNOZOMIを佐知子はジッと見ている。真剣な顔だ。
「山吹さん。私はアナタのジェンダー論に共感しているんです。でも、世間では “男のくせに女に負けて死んだ” なんて心ない声もあるの。私は気にしないけど、このままアナタが引退してしまったら主人は浮かばれません...」
ここで初めてNOZOMIが答えた。
「つまり、堂島源太郎さんを倒した女として、私が相応しかったことを証明する責任があるということですね?」
「その通りです。引退するしないはアナタの自由ですが、そうでないと主人は、只、女の子に負けたキックボクサーとして人々の記憶に残る存在で終わってしまいます。アナタの格闘技におけるジェンダーレス論も中途半端になるのでは? 何のために主人と命をかけて戦ったのですか? 」
「・・・・」
龍太は母とNOZOMIの話を黙って聞いていた。言いたいことは全部母が言ってくれた。でも、龍太にはどうしてもNOZOMIに言いたいことがある。
「NOZOMIさん、僕、凄く悔しいよ。今でも、女に負けた父ちゃんも、男に戦いを挑んだNOZOMIさんも許せない気持ちがでいっぱいなんだ。でも、父ちゃんはNOZOMIさんのことを尊敬してたよ。格闘家としてじゃない。一人の人間としてだよ。だから、NOZOMIさんと戦えたことは誇りに思ってると思う。引退は赦さないからな!」
NOZOMIは龍太の純粋で真っ直ぐな目を見て、リング上の源太郎のことを思い出していた。こんな目だった。
「NOZOMIさんにお願いがあるんだ。このまま父ちゃんが女に負けたままなんて、息子として僕は生きていく自信がなくなる。今はまだ10才で無理だけど、あと10年経てば20才になる。僕とNOZOMIさんは7つしか違わない。僕も強くなるよ。だから...」
「だから何? 龍太君」
すると、いきなりリビングのドアが開き、二階の部屋で閉じこもっていると思われた妹の麻美が入ってきた。
どうやら部屋の外で聞き耳を立てていたらしい。
「のぞみちゃん!あと10年したら、わたしも今ののぞみちゃんと同じ17才になるから、わたしの挑戦受けて!」
NOZOMIはこの麻美という女の子の目がゾッとするほど怖かった。
「麻美! それは今、僕が言おうとしたとこなんだぞ。NOZOMIさんと戦うのは僕だ。おまえは女の子だろ!」
「お兄ちゃんは、パパが女の子に負けたこと恥ずかしがってるでしょ? そんな気持ちじゃ絶対勝てないわ。わたしは違うもん。わたしの方がパパに対する思いが強いんだから!」
「麻美! 何、生意気なことを言ってるんだ。女の子だろ? 格闘技やったこともないくせに。バカじゃないか?」
「お兄ちゃんって、まだ、女の子だからとか言ってるのね? のぞみちゃんだって女の子だよ。わたし、これから練習してお兄ちゃんより強くなる...」
NOZOMIは兄妹ふたりの言い争いを聞いて心が決まった。そして、息子と娘の口喧嘩を黙って聞いていた佐知子に向かって襟を正し言った。
「皆さんのお気持ちよく分かりました。私は引退しません!尊敬する堂島源太郎さんの思いに恥じないように頑張っていきます」
佐知子、龍太、麻美。
安心したようにNOZOMIを見る。
NOZOMIは龍太、麻美の方に向き直り微笑みながら言葉をかける。
「私は17才。30才になったら引退するので、アナタたちの挑戦を受ける期限はあと13年ね。それまで、挑戦者に相応しいほど強くなったなら、喜んで受けるわ。これは冗談だけど、どっちの挑戦を受けるかは、兄妹で挑戦者決定戦をやれば?勝った方の挑戦を受けるわよ。それ程ふたりとも強くなれればいいわね? 期待してます」
そう言い残しNOZOMIは去った。
佐知子はホッとした。
でもその時は、 NOZOMIが冗談で言っっていた兄妹対決が現実のものになろうとは知る由もなかった。
“龍太と麻美” この宿命の兄妹は、思いもよらぬ残酷な運命を辿るのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
一応、この『雌蛇の罠』の物語は完結となります。
しばらく時期を置いて、その後の物語を新作として書きたく思います。
女豹の恩讐『兄と妹、禁断のシュートマッチ(死闘)!』仮題ですが、そんなタイトルになる予定です。
今まで読んで下さった方々、ありがとうございました。
そんなNOZOMIを佐知子はジッと見ている。真剣な顔だ。
「山吹さん。私はアナタのジェンダー論に共感しているんです。でも、世間では “男のくせに女に負けて死んだ” なんて心ない声もあるの。私は気にしないけど、このままアナタが引退してしまったら主人は浮かばれません...」
ここで初めてNOZOMIが答えた。
「つまり、堂島源太郎さんを倒した女として、私が相応しかったことを証明する責任があるということですね?」
「その通りです。引退するしないはアナタの自由ですが、そうでないと主人は、只、女の子に負けたキックボクサーとして人々の記憶に残る存在で終わってしまいます。アナタの格闘技におけるジェンダーレス論も中途半端になるのでは? 何のために主人と命をかけて戦ったのですか? 」
「・・・・」
龍太は母とNOZOMIの話を黙って聞いていた。言いたいことは全部母が言ってくれた。でも、龍太にはどうしてもNOZOMIに言いたいことがある。
「NOZOMIさん、僕、凄く悔しいよ。今でも、女に負けた父ちゃんも、男に戦いを挑んだNOZOMIさんも許せない気持ちがでいっぱいなんだ。でも、父ちゃんはNOZOMIさんのことを尊敬してたよ。格闘家としてじゃない。一人の人間としてだよ。だから、NOZOMIさんと戦えたことは誇りに思ってると思う。引退は赦さないからな!」
NOZOMIは龍太の純粋で真っ直ぐな目を見て、リング上の源太郎のことを思い出していた。こんな目だった。
「NOZOMIさんにお願いがあるんだ。このまま父ちゃんが女に負けたままなんて、息子として僕は生きていく自信がなくなる。今はまだ10才で無理だけど、あと10年経てば20才になる。僕とNOZOMIさんは7つしか違わない。僕も強くなるよ。だから...」
「だから何? 龍太君」
すると、いきなりリビングのドアが開き、二階の部屋で閉じこもっていると思われた妹の麻美が入ってきた。
どうやら部屋の外で聞き耳を立てていたらしい。
「のぞみちゃん!あと10年したら、わたしも今ののぞみちゃんと同じ17才になるから、わたしの挑戦受けて!」
NOZOMIはこの麻美という女の子の目がゾッとするほど怖かった。
「麻美! それは今、僕が言おうとしたとこなんだぞ。NOZOMIさんと戦うのは僕だ。おまえは女の子だろ!」
「お兄ちゃんは、パパが女の子に負けたこと恥ずかしがってるでしょ? そんな気持ちじゃ絶対勝てないわ。わたしは違うもん。わたしの方がパパに対する思いが強いんだから!」
「麻美! 何、生意気なことを言ってるんだ。女の子だろ? 格闘技やったこともないくせに。バカじゃないか?」
「お兄ちゃんって、まだ、女の子だからとか言ってるのね? のぞみちゃんだって女の子だよ。わたし、これから練習してお兄ちゃんより強くなる...」
NOZOMIは兄妹ふたりの言い争いを聞いて心が決まった。そして、息子と娘の口喧嘩を黙って聞いていた佐知子に向かって襟を正し言った。
「皆さんのお気持ちよく分かりました。私は引退しません!尊敬する堂島源太郎さんの思いに恥じないように頑張っていきます」
佐知子、龍太、麻美。
安心したようにNOZOMIを見る。
NOZOMIは龍太、麻美の方に向き直り微笑みながら言葉をかける。
「私は17才。30才になったら引退するので、アナタたちの挑戦を受ける期限はあと13年ね。それまで、挑戦者に相応しいほど強くなったなら、喜んで受けるわ。これは冗談だけど、どっちの挑戦を受けるかは、兄妹で挑戦者決定戦をやれば?勝った方の挑戦を受けるわよ。それ程ふたりとも強くなれればいいわね? 期待してます」
そう言い残しNOZOMIは去った。
佐知子はホッとした。
でもその時は、 NOZOMIが冗談で言っっていた兄妹対決が現実のものになろうとは知る由もなかった。
“龍太と麻美” この宿命の兄妹は、思いもよらぬ残酷な運命を辿るのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
一応、この『雌蛇の罠』の物語は完結となります。
しばらく時期を置いて、その後の物語を新作として書きたく思います。
女豹の恩讐『兄と妹、禁断のシュートマッチ(死闘)!』仮題ですが、そんなタイトルになる予定です。
今まで読んで下さった方々、ありがとうございました。
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