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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(6)高速タックル。。
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大晦日に行われる『ジェンダー・バトル! 男女対抗シュート・マッチ三番勝負』は大変な話題になった。
これを企画したのはNOZOMIであり、彼女は2年前の格闘技戦で男子選手と死闘の末、勝利した。
対戦相手の堂島源太郎が彼女の腕の中で失神していくシーンはあまりにショッキングであった。
屈強な男子キックボクサーを、当時まだ高校2年生の女子高生がKOしたのだから衝撃的であった。その結果、ド根性男と云われた堂島源太郎は二度と帰らぬ人となったのだ。
不吉な男女シュートマッチ!
あの堂島源太郎vsNOZOMI以来、リング上での事故(リング禍)が起こらないようルールはかなり改善された。
これは総合格闘技、特に男女間での試合では厳密になってくる。
堂島源太郎のように「何があっても絶対タオルは投げないで...」という根性論は通用しない時代なのだ。
危険だと思われれば即試合を止められるので当然戦い方も変わってくる。
ダン嶋原は、ライバルでありお互いの団体の威信をかけて戦った村椿和樹がNOZOMIとの試合を受けたのが意外であった。勝っても何の得にもならい女子との試合。なぜ受けたのだろう?
村椿の性格からギャラに目が眩んでということもなさそうだ。
それにNOZOMIサイドはどうやって村椿和樹を口説いたのだろうか?
「NOZOMIって娘はな、リング上だけでなくビジネス面でも有能だぞ。体育脳のお前とはえらい違いだ!」
マネージャーの伊吹さんがそう言っていた。その通りだと思う。
世間ではこのダン嶋原が、NOZOMIを恐れ逃げ回っていると思われているだろう。それが悔しい。
それに較べ村椿和樹は、嶋原が隠れている間にNOZOMIの挑戦から逃げずに受けた。株が上がって当然だ。
ルールはスタンディングだけ?
関節技や絞め技ありでも、スタンディングのみなら村椿が負けることは考えられない。嶋原は戦ってみて分っている。村椿のパワーは凄い。圧力も凄まじいものでパンチ、キックともかなり威力がありフィジカルが強い。
先の試合ではスピードで圧倒出来たけど危ない場面もあったのだ。
天才といえども所詮NOZOMIは女子なのだ。村椿程のパワーがあれば、一撃で倒してしまうだろう。ガチの村椿の打撃は女子には危険すぎる。
“ダン嶋原が逃げ回っていたNOZOMIを俺が代わりに倒した”
それを土産に村椿は自分に再戦を要求してくるつもりなのかもしれない。
そうあってくれ!と願う。
スタンディングルールでそんなことは間違ってもないと思うが、万が一村椿がNOZOMIに敗れるようなことがあれば彼女は再びこのダン嶋原に対戦要求をしてくるだろう。
そうなったら今度こそ逃げられない。
(村椿さん、絶対に勝ってくれ...)
堂島龍太は母と共に妹麻美のレスリング道場に迎えに来ると少しばかり見学した。あの甘ったれであった麻美がどんどんレスリングの実力を上げ区の大会では女子ながら男子のトーナメントに出場して優勝してしまった。
そして、先日の都の大会でも男子の部に出場して全国大会を目指していたのだが、結果は男子の壁は厚く準決勝まで勝ち進むも3位に終わった。悔しがって泣き崩れる妹に向かって龍太は声をかけてあげた。
「麻美、お前は女の子なんだぞ。男の子に混じって3位なんてすごいことなんだぞ。泣くな!喜べばいいんだ...」
「でも、大晦日に男子ボクサーと戦う桜木明日香さんは、小学校4年から男子の部に出場して全国大会3連覇したんだよ。全国大会だよ!」
小学生の大会では女の子が男の子を破って優勝することは稀にある。まだ男女差がない年頃なので珍しいことでもない。そうであっても、堂島麻美はまだレスリングを始めて一年半なのだ。
龍太は妹の練習を見学するのは初めてであったが、自分より上級生の男の子を圧倒している。麻美の高速タックルに男の子は全く対応出来ない。
とにかく麻美のスピードはタックル以外でも凄まじくスタミナも無尽蔵にあるようだ。正直龍太は驚いていた。
(麻美の力はどれ程のものだろう?)
龍太は立ち上がると練習中の妹に向かって大きな声で叫んだ。
「麻美!お兄ちゃんにタックルしてみろ。どんなに強いか見てやる」
そんな龍太に母の佐知子が恥ずかしそうに「よしなさい、龍太...」と小さな声で叱る。すると、道場の指導者が「面白そうじゃないか! 麻美ちゃん、お兄さんにタックル見せてあげよう」
と、興味深そうに言った。
麻美は目の前で仁王立ちになった兄を睨みつけながら構えた。
兄の姿が一瞬パパ(父)に見えた。
次の瞬間凄まじい速さで兄の足を取った。兄はその高速タックルに全く対応出来ない。兄の片足を取った麻美はそのまま倒してフォールを奪おうとするのだが、2、3歩後退させただけで後は全く動かない。岩のようだ。
龍太は妹の胴に上から腕を回すとその身体を持ち上げた。
ここで勝負があった。
龍太はビックリしている。
高速タックルが速すぎて、瞬時に片足を取られ危うくテイクダウンを奪われそうになったからだ。
龍太は小学6年の12才、妹は小学3年の9才なのだ。どんなタックルが来ようがビクともしないと思っていた。
(麻美はこんなに強くなったのか?)
麻美は兄の岩のような肉体に驚いていた。でも、自分に胸を貸してくれた兄に、パパ(父)を思い出し嬉しくもあった。兄は空手を小学1年の時からやっていて、その実力は小学生では全国クラスなのだ。体幹が強いのは当たり前だけど実の兄ながらモンスターではないか?と思ったほどだ。
年も押し迫り、人々は師走の忙しさと新年に備え慌ただしい。そんな中でも、大晦日の格闘技戦に出場する各選手はその仕上げに余念がない。
特に『ジェンダー・バトル! 男女対抗シュート・マッチ三番勝負』で女子選手と戦う男子選手のプレッシャーは相当なものだろう。
あの堂島源太郎も “ 女子と戦わなければならないプレッシャー ” に苦悩した一人だった。いくら男女平等の世の中になったとはいえ、男がリング上で女に倒されることはきっと死ぬほど恥ずかしいことなのだろう。
日本フライ級1位、狂犬の異名を持つプロボクサー、真鍋俊之は桜木明日香との試合に絶対の自信を持っていた。
否、彼にはプレッシャーという言葉は無縁。相手が男であろうが女であろうが目の前の敵をぶん殴るだけ。
彼は身体が小さいばかりに小中学生時代はいじめられっ子だった。
ところがそのすぐキレると何をするか分からない性格は、ある時を境にケンカに明け暮れるようになった。
自分をバカにする奴は絶対許さない。
気が付くと狂犬のニックネームで恐れられる存在になった。
そんなキレると自分が分からなくなる真鍋は、ボクシングというスポーツで才能を発揮した。
しかし、彼は狂犬でありそのラフなファイトスタイルは減点も多く、失格負けも数度あった程だ。
狂犬、真鍋俊之と戦う桜木明日香は、まだ現役の高校生にして○年後の五輪女子レスリング強化選手である。
そんな彼女が年末格闘技戦に出るのはメンタルに問題があるので度胸をつけるため。それにNOZOMIの生き方に共感するところがあったからだ。
世間では真鍋俊之vs桜木明日香の試合はタックルからの固め技か投げ技でマットに沈め桜木明日香が真鍋俊之に勝利するだろうと予想されていた。
そんな声にNOZOMIは言った。
「普通に戦えば明日香の方が強いと思う。彼女は天才でしょ? でも勝負となれば別。明日香は勝てない。マッドドッグ(狂犬)を舐めてはダメ!」
そして、いよいよ大晦日を迎えた。
○○スーパーアリーナには35000人以上の観客が詰めかけた。
これを企画したのはNOZOMIであり、彼女は2年前の格闘技戦で男子選手と死闘の末、勝利した。
対戦相手の堂島源太郎が彼女の腕の中で失神していくシーンはあまりにショッキングであった。
屈強な男子キックボクサーを、当時まだ高校2年生の女子高生がKOしたのだから衝撃的であった。その結果、ド根性男と云われた堂島源太郎は二度と帰らぬ人となったのだ。
不吉な男女シュートマッチ!
あの堂島源太郎vsNOZOMI以来、リング上での事故(リング禍)が起こらないようルールはかなり改善された。
これは総合格闘技、特に男女間での試合では厳密になってくる。
堂島源太郎のように「何があっても絶対タオルは投げないで...」という根性論は通用しない時代なのだ。
危険だと思われれば即試合を止められるので当然戦い方も変わってくる。
ダン嶋原は、ライバルでありお互いの団体の威信をかけて戦った村椿和樹がNOZOMIとの試合を受けたのが意外であった。勝っても何の得にもならい女子との試合。なぜ受けたのだろう?
村椿の性格からギャラに目が眩んでということもなさそうだ。
それにNOZOMIサイドはどうやって村椿和樹を口説いたのだろうか?
「NOZOMIって娘はな、リング上だけでなくビジネス面でも有能だぞ。体育脳のお前とはえらい違いだ!」
マネージャーの伊吹さんがそう言っていた。その通りだと思う。
世間ではこのダン嶋原が、NOZOMIを恐れ逃げ回っていると思われているだろう。それが悔しい。
それに較べ村椿和樹は、嶋原が隠れている間にNOZOMIの挑戦から逃げずに受けた。株が上がって当然だ。
ルールはスタンディングだけ?
関節技や絞め技ありでも、スタンディングのみなら村椿が負けることは考えられない。嶋原は戦ってみて分っている。村椿のパワーは凄い。圧力も凄まじいものでパンチ、キックともかなり威力がありフィジカルが強い。
先の試合ではスピードで圧倒出来たけど危ない場面もあったのだ。
天才といえども所詮NOZOMIは女子なのだ。村椿程のパワーがあれば、一撃で倒してしまうだろう。ガチの村椿の打撃は女子には危険すぎる。
“ダン嶋原が逃げ回っていたNOZOMIを俺が代わりに倒した”
それを土産に村椿は自分に再戦を要求してくるつもりなのかもしれない。
そうあってくれ!と願う。
スタンディングルールでそんなことは間違ってもないと思うが、万が一村椿がNOZOMIに敗れるようなことがあれば彼女は再びこのダン嶋原に対戦要求をしてくるだろう。
そうなったら今度こそ逃げられない。
(村椿さん、絶対に勝ってくれ...)
堂島龍太は母と共に妹麻美のレスリング道場に迎えに来ると少しばかり見学した。あの甘ったれであった麻美がどんどんレスリングの実力を上げ区の大会では女子ながら男子のトーナメントに出場して優勝してしまった。
そして、先日の都の大会でも男子の部に出場して全国大会を目指していたのだが、結果は男子の壁は厚く準決勝まで勝ち進むも3位に終わった。悔しがって泣き崩れる妹に向かって龍太は声をかけてあげた。
「麻美、お前は女の子なんだぞ。男の子に混じって3位なんてすごいことなんだぞ。泣くな!喜べばいいんだ...」
「でも、大晦日に男子ボクサーと戦う桜木明日香さんは、小学校4年から男子の部に出場して全国大会3連覇したんだよ。全国大会だよ!」
小学生の大会では女の子が男の子を破って優勝することは稀にある。まだ男女差がない年頃なので珍しいことでもない。そうであっても、堂島麻美はまだレスリングを始めて一年半なのだ。
龍太は妹の練習を見学するのは初めてであったが、自分より上級生の男の子を圧倒している。麻美の高速タックルに男の子は全く対応出来ない。
とにかく麻美のスピードはタックル以外でも凄まじくスタミナも無尽蔵にあるようだ。正直龍太は驚いていた。
(麻美の力はどれ程のものだろう?)
龍太は立ち上がると練習中の妹に向かって大きな声で叫んだ。
「麻美!お兄ちゃんにタックルしてみろ。どんなに強いか見てやる」
そんな龍太に母の佐知子が恥ずかしそうに「よしなさい、龍太...」と小さな声で叱る。すると、道場の指導者が「面白そうじゃないか! 麻美ちゃん、お兄さんにタックル見せてあげよう」
と、興味深そうに言った。
麻美は目の前で仁王立ちになった兄を睨みつけながら構えた。
兄の姿が一瞬パパ(父)に見えた。
次の瞬間凄まじい速さで兄の足を取った。兄はその高速タックルに全く対応出来ない。兄の片足を取った麻美はそのまま倒してフォールを奪おうとするのだが、2、3歩後退させただけで後は全く動かない。岩のようだ。
龍太は妹の胴に上から腕を回すとその身体を持ち上げた。
ここで勝負があった。
龍太はビックリしている。
高速タックルが速すぎて、瞬時に片足を取られ危うくテイクダウンを奪われそうになったからだ。
龍太は小学6年の12才、妹は小学3年の9才なのだ。どんなタックルが来ようがビクともしないと思っていた。
(麻美はこんなに強くなったのか?)
麻美は兄の岩のような肉体に驚いていた。でも、自分に胸を貸してくれた兄に、パパ(父)を思い出し嬉しくもあった。兄は空手を小学1年の時からやっていて、その実力は小学生では全国クラスなのだ。体幹が強いのは当たり前だけど実の兄ながらモンスターではないか?と思ったほどだ。
年も押し迫り、人々は師走の忙しさと新年に備え慌ただしい。そんな中でも、大晦日の格闘技戦に出場する各選手はその仕上げに余念がない。
特に『ジェンダー・バトル! 男女対抗シュート・マッチ三番勝負』で女子選手と戦う男子選手のプレッシャーは相当なものだろう。
あの堂島源太郎も “ 女子と戦わなければならないプレッシャー ” に苦悩した一人だった。いくら男女平等の世の中になったとはいえ、男がリング上で女に倒されることはきっと死ぬほど恥ずかしいことなのだろう。
日本フライ級1位、狂犬の異名を持つプロボクサー、真鍋俊之は桜木明日香との試合に絶対の自信を持っていた。
否、彼にはプレッシャーという言葉は無縁。相手が男であろうが女であろうが目の前の敵をぶん殴るだけ。
彼は身体が小さいばかりに小中学生時代はいじめられっ子だった。
ところがそのすぐキレると何をするか分からない性格は、ある時を境にケンカに明け暮れるようになった。
自分をバカにする奴は絶対許さない。
気が付くと狂犬のニックネームで恐れられる存在になった。
そんなキレると自分が分からなくなる真鍋は、ボクシングというスポーツで才能を発揮した。
しかし、彼は狂犬でありそのラフなファイトスタイルは減点も多く、失格負けも数度あった程だ。
狂犬、真鍋俊之と戦う桜木明日香は、まだ現役の高校生にして○年後の五輪女子レスリング強化選手である。
そんな彼女が年末格闘技戦に出るのはメンタルに問題があるので度胸をつけるため。それにNOZOMIの生き方に共感するところがあったからだ。
世間では真鍋俊之vs桜木明日香の試合はタックルからの固め技か投げ技でマットに沈め桜木明日香が真鍋俊之に勝利するだろうと予想されていた。
そんな声にNOZOMIは言った。
「普通に戦えば明日香の方が強いと思う。彼女は天才でしょ? でも勝負となれば別。明日香は勝てない。マッドドッグ(狂犬)を舐めてはダメ!」
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