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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』(55) 宿命の対決実現。
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夏も終わりになる頃。
麻美がNLFSの寮を出てから初めて母と兄、そして今井に顔を見せに来た。
「麻美、、家から通えばいいのに。なぜ、わざわざ女子校の寮に移ったの?ほんと、しょうがないんだから...」
母の小言に麻美は苦笑いを浮かべる。
麻美だって、心の底では家に帰りたいと思っている。でも頑固で意地っ張りな彼女は素直になれない。
継父、今井宗平は誠実でやさしく頼りがいのある男性であることは麻美にも分かっている。そんな今井と再婚した母も幸せそうだ。
麻美だって、心からふたりの結婚を祝福したい。母思いの兄はすっかり今井とも良好な関係を築いていた。
(私までお母さんお兄ちゃん、そして今井さんと楽しく暮らしてしまったら?
天国の源太郎お父さんがどんどん記憶の彼方に遠くなってしまう...)
実父源太郎はそんな嫉妬を焼くような男ではなく、天国から母と今井の再婚を祝福しているに違いない。
堂島源太郎とはそういう人だった。
でも、今のところは一線を引いていようと麻美は考えている。それでも、麻美は以前のように露骨に嫌な顔をすることもなく、距離を置きながらも今井と笑顔で話せるようになった。
「お兄ちゃん、シルヴィア滝田さんと年末の格闘技戦で戦うことになりそうね? あとは細かいルールとか交渉中みたいだけどスムーズにいきそうね」
「総合ルールだし、俺もシルヴィアさんも177cmで、70kg前後なので何の問題もなさそうだ。それより麻美、お前もビッグネーム相手に交渉中だと聞いてるけど誰なんだ?」
麻美はニヤッと笑うと口を開いた。
「もう、NOZOMIさんに了解を得ているから言っちゃうけど、ビッグネームもビッグネーム。だって交渉中の相手はダン嶋原さんだもの。相手が私だと知って渋ってるようだけど...」
佐知子、龍太、そして今井までもが驚きの表情で麻美に視線を送る
「な、何だって! 麻美、お前嶋原さんと戦いたいのか? 嶋原さんは源太郎父さんの弟分で、家にも何度か遊びに来て幼かったお前を可愛がってくれたじゃないか。胸を借りるお前はともかく嶋原さんはお前を殴れない!」
「私は大好きで憧れている嶋原さんだからこそ戦いたい。今は色々葛藤があって悩んでると思うけど、嶋原さんは必ずオファーを受ける。そして、覚悟が決まったら全力で私を倒しに来る。嶋原さんってそういう人だもの」
一同は麻美に目を向け絶句した。
それから程なく『G』社から年末格闘技戦のカードが発表された。
メインは日本MMA全階級を通じてパウンドフォーパウンド(PFP)と言われる絶妙王者植松拓哉の8度目の防衛戦。
相手は同級(70kg以下級)1位の南郷晃。この勝者と、シルヴィア vs 堂島龍太の勝者が次の格闘技戦で戦うことになりそうだが、植松は女子との試合には抵抗がありそうでシルヴィア滝田が挑戦権を得たらどうなるか分からない。
NLFS勢の参戦は4人。
まず、柳紅華が元十両力士 阿修羅海と総合ルールで対戦。
異性格闘技戦とはいえ、日本の元十両力士と韓国の元女子最強力士(シルム)の異質対決は話題になりそうだ。
それから、MMA最軽量級絶対王者、スモールモンスター 王島守に挑むのは桜木明日香。この両者は空位になった最軽量級王座を決めるトーナメント決勝で戦ったことがあり王島がKO勝利。明日香にとってはその雪辱戦である。
男子の階級で、女子がチャンピオンベルトを巻くという前例のない偉業を果たせるのだろうか? それは、NLFSにとっての悲願でもある。
そして、NLFS NO.2であるシルヴィア滝田と堂島龍太の一戦。
このふたりは同じKG会空手の出身であり10年以上前からお互いを知る仲。
謂わば戦うことが宿命づけされていたのが遂に実現するのだ。
勝った方が強豪揃いの70kg以下級王者への挑戦権を得る。
発表されたカードで会場を一番驚かせたのは、キック界のスーパースター、
あのダン嶋原が、奥村美沙子戦以来の総合ルールで戦う。相手はASAMIこと堂島麻美。ダン嶋原はASAMIとの対戦オファーを受けたことになる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
NOZOMIは思い出していた。
初めてプロの格闘技戦で男子を相手にリングに上がった日のことを。
ど根性源太郎との異名があった堂島源太郎さんが自分の腕の中で失神した時の感触は今でも生々しく思い出す。
そして、彼は帰らぬ人となった。
あれから今年の年末格闘技戦でちょうど10年になる。当時10才だった源太郎の息子龍太は20才、7才だった麻美はあの時のNOZOMIと同じ17才になる。
まだ幼かった兄妹は、揃ってNOZOMIにいつか挑戦して父の仇を討ちたいと言った。NOZOMIは幼い一時の熱情だと思っていたが本当にここまで来てしまった。(どれだけ頑張ってきたの?)
そう思うと感慨深いものがあった。
龍太にシルヴィアを、麻美にダン嶋原を対戦させようと画策した。
ここで勝てばNOZOMIも無視は出来ない。でも、相手は嶋原にシルヴィア。
そう簡単な相手ではない。
現在の力では、龍太はシルヴィアに勝つことは難しい。シルヴィアは強い!
麻美が嶋原に勝つ可能性はもっと難しい。嶋原は天才で今は円熟期にある。
それでもあの兄妹は想像を超える何かがあるような気がするのだ。
10年前。
堂島源太郎は35才だった。
17才だったNOZOMIは27になる。
20才だったダン嶋原は30になり17才になった堂島麻美と拳を交える。
15才だったシルヴィアは25才になり、20才になった堂島龍太と戦う
(時の流れは早いものね...)
NOZOMIはこの4者の人生をかけた死闘をじっくり見ようと思った。
そして、それぞれの思いを乗せ年末はあっという間にやってくるのだった。
つづく
麻美がNLFSの寮を出てから初めて母と兄、そして今井に顔を見せに来た。
「麻美、、家から通えばいいのに。なぜ、わざわざ女子校の寮に移ったの?ほんと、しょうがないんだから...」
母の小言に麻美は苦笑いを浮かべる。
麻美だって、心の底では家に帰りたいと思っている。でも頑固で意地っ張りな彼女は素直になれない。
継父、今井宗平は誠実でやさしく頼りがいのある男性であることは麻美にも分かっている。そんな今井と再婚した母も幸せそうだ。
麻美だって、心からふたりの結婚を祝福したい。母思いの兄はすっかり今井とも良好な関係を築いていた。
(私までお母さんお兄ちゃん、そして今井さんと楽しく暮らしてしまったら?
天国の源太郎お父さんがどんどん記憶の彼方に遠くなってしまう...)
実父源太郎はそんな嫉妬を焼くような男ではなく、天国から母と今井の再婚を祝福しているに違いない。
堂島源太郎とはそういう人だった。
でも、今のところは一線を引いていようと麻美は考えている。それでも、麻美は以前のように露骨に嫌な顔をすることもなく、距離を置きながらも今井と笑顔で話せるようになった。
「お兄ちゃん、シルヴィア滝田さんと年末の格闘技戦で戦うことになりそうね? あとは細かいルールとか交渉中みたいだけどスムーズにいきそうね」
「総合ルールだし、俺もシルヴィアさんも177cmで、70kg前後なので何の問題もなさそうだ。それより麻美、お前もビッグネーム相手に交渉中だと聞いてるけど誰なんだ?」
麻美はニヤッと笑うと口を開いた。
「もう、NOZOMIさんに了解を得ているから言っちゃうけど、ビッグネームもビッグネーム。だって交渉中の相手はダン嶋原さんだもの。相手が私だと知って渋ってるようだけど...」
佐知子、龍太、そして今井までもが驚きの表情で麻美に視線を送る
「な、何だって! 麻美、お前嶋原さんと戦いたいのか? 嶋原さんは源太郎父さんの弟分で、家にも何度か遊びに来て幼かったお前を可愛がってくれたじゃないか。胸を借りるお前はともかく嶋原さんはお前を殴れない!」
「私は大好きで憧れている嶋原さんだからこそ戦いたい。今は色々葛藤があって悩んでると思うけど、嶋原さんは必ずオファーを受ける。そして、覚悟が決まったら全力で私を倒しに来る。嶋原さんってそういう人だもの」
一同は麻美に目を向け絶句した。
それから程なく『G』社から年末格闘技戦のカードが発表された。
メインは日本MMA全階級を通じてパウンドフォーパウンド(PFP)と言われる絶妙王者植松拓哉の8度目の防衛戦。
相手は同級(70kg以下級)1位の南郷晃。この勝者と、シルヴィア vs 堂島龍太の勝者が次の格闘技戦で戦うことになりそうだが、植松は女子との試合には抵抗がありそうでシルヴィア滝田が挑戦権を得たらどうなるか分からない。
NLFS勢の参戦は4人。
まず、柳紅華が元十両力士 阿修羅海と総合ルールで対戦。
異性格闘技戦とはいえ、日本の元十両力士と韓国の元女子最強力士(シルム)の異質対決は話題になりそうだ。
それから、MMA最軽量級絶対王者、スモールモンスター 王島守に挑むのは桜木明日香。この両者は空位になった最軽量級王座を決めるトーナメント決勝で戦ったことがあり王島がKO勝利。明日香にとってはその雪辱戦である。
男子の階級で、女子がチャンピオンベルトを巻くという前例のない偉業を果たせるのだろうか? それは、NLFSにとっての悲願でもある。
そして、NLFS NO.2であるシルヴィア滝田と堂島龍太の一戦。
このふたりは同じKG会空手の出身であり10年以上前からお互いを知る仲。
謂わば戦うことが宿命づけされていたのが遂に実現するのだ。
勝った方が強豪揃いの70kg以下級王者への挑戦権を得る。
発表されたカードで会場を一番驚かせたのは、キック界のスーパースター、
あのダン嶋原が、奥村美沙子戦以来の総合ルールで戦う。相手はASAMIこと堂島麻美。ダン嶋原はASAMIとの対戦オファーを受けたことになる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
NOZOMIは思い出していた。
初めてプロの格闘技戦で男子を相手にリングに上がった日のことを。
ど根性源太郎との異名があった堂島源太郎さんが自分の腕の中で失神した時の感触は今でも生々しく思い出す。
そして、彼は帰らぬ人となった。
あれから今年の年末格闘技戦でちょうど10年になる。当時10才だった源太郎の息子龍太は20才、7才だった麻美はあの時のNOZOMIと同じ17才になる。
まだ幼かった兄妹は、揃ってNOZOMIにいつか挑戦して父の仇を討ちたいと言った。NOZOMIは幼い一時の熱情だと思っていたが本当にここまで来てしまった。(どれだけ頑張ってきたの?)
そう思うと感慨深いものがあった。
龍太にシルヴィアを、麻美にダン嶋原を対戦させようと画策した。
ここで勝てばNOZOMIも無視は出来ない。でも、相手は嶋原にシルヴィア。
そう簡単な相手ではない。
現在の力では、龍太はシルヴィアに勝つことは難しい。シルヴィアは強い!
麻美が嶋原に勝つ可能性はもっと難しい。嶋原は天才で今は円熟期にある。
それでもあの兄妹は想像を超える何かがあるような気がするのだ。
10年前。
堂島源太郎は35才だった。
17才だったNOZOMIは27になる。
20才だったダン嶋原は30になり17才になった堂島麻美と拳を交える。
15才だったシルヴィアは25才になり、20才になった堂島龍太と戦う
(時の流れは早いものね...)
NOZOMIはこの4者の人生をかけた死闘をじっくり見ようと思った。
そして、それぞれの思いを乗せ年末はあっという間にやってくるのだった。
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