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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』(69) 一生面倒を見ます。
しおりを挟む佐知子は足が震え心臓が高鳴り生きた心地がしない。
“実はね、、龍太なんだけど...”
あの後、宗平は何を告げようとしたのだろうか? 考えてもいけない最悪の事態なら佐知子は気が狂ってしまうと思った。だからスマホ電話を切った。
(そんなバカなこと考えてはいけない。だって試合が終わったら真っすぐ帰って来るって約束したんだもの。私はあの子達を信じる。でも、、ああ神様!天国の源太郎さん、お願いだから龍太を助けてあげて。まだ、アナタの所に行くの早いでしょ? 万一、行くようなことがあったら追い返してよ...)
それから15分後だった。
今度は今井宗平からメールが届いた。
佐知子はドキドキしながら開く。
『佐知子、まずは落ち着いてほしい。
龍太は麻美との試合で首を強打して暫く意識がなかったけど今朝方取り戻した。安心してしてくれ、先生が言うには命に別状はないとのこと。しかし、打ち所が悪く重症だそうだ。詳しくは病院で話す。今、○○の○○病院にいる。すぐ来てくれ』(宗平)
佐知子は着の身着のまま家を飛び出すとそのままタクシーを拾った。
“ 命に別状はない”
最悪のことも考えていた佐知子は、その安心感から泣いていた。
でも、重症って...。
病院に着くと受け付けで病室を尋ね小走りに向かった。廊下の椅子に麻美がぽつねんと座っている。
前夜の龍太との試合で痣になっている顔が痛々しい。佐知子と目が合うと悲しそうな表情が気になった。佐知子は麻美に声もかけず病室に飛び込んだ。
ベッドに横たわっている龍太。
近くに今井宗平が付き添っている。
「龍太! 大丈夫なの?龍太...」
龍太は目を開け幾分笑みを浮かべながらも悲しそうな表情で母を見た。
「佐知子、、龍太はまだ話すことが出来ないんだよ...」
「宗平さん、重症ってメールに書かれてあったけどどの位で完治するの?」
「う、うん。手術が終わってみないと何とも言えないそうだ。命に別状はないけど、龍太はもう格闘技は出来ないどころか、車椅子生活は避けられないだろうと...」
「く、車椅子?...」
そこへ麻美が入ってきた。
「お母さん、こんなことになっちゃって、、ごめんなさい」
うなだれる麻美に佐知子は強い目を向けた。感情が昂ぶっている。
「こんなことにって、、麻美! アンタ実のお兄ちゃんになんて酷いことしたの! アンタの夢って、大切な家族の命を奪ってでも成し遂げたい夢なの?」
「さ、佐知子、、そんなこと麻美に言っても、これは不慮の事故なんだ」
今井に宥められても佐知子は自分の感情を抑えることが出来ない。
佐知子は自分でも道理に合わないことを言っているのは分かっていた。
こんなに麻美を責め立ててもどうにもならない。それでも止まらない。
麻美は俯き、涙を流しながら母に言われるまま黙っている。
龍太がガサゴソ音を立てた。
悲しそうな目を責めている佐知子と泣いている麻美に向けた。
佐知子はハッとした。
「麻美、、お母さん感情的になってごめんなさい。アンタにこんなこと言っても...。アンタも昨日の試合で身体がボロボロでしょ? それに、アンタと一緒にいるとお母さん何を言うか分からないから一旦寮に帰って。落ち着いたら連絡するから、ね?お願い」
「分かりました...。私、お兄ちゃんが本当に車椅子になったら、一生、お兄ちゃんの面倒を見ます」
「一生お兄ちゃんの面倒を見る?アンタ、まだ高校三年の18才でしょ!」
佐知子は麻美の言葉にまた感情が昂ぶりそうになった。
すると、病室のドアが開いた。
「あ、、天海さん...」
天海瞳であった。
瞳は険しい顔で龍太に近寄るとその手をそっと握った。
龍太の顔が輝いたように見えた。
話を聞いた天海瞳は、龍太が車椅子生活になるかもしれないと知り驚いたようだ。そして悲しい表情になった。
佐知子も麻美も今井も、龍太とこの天海瞳の交際は知っている。
「車椅子になっても、私は龍太さんと結婚したい。私のお腹の中には龍太さんの子どもがいるんです。お母さん、
麻美、今井さん。龍太さんは私が一生面倒を見ます。好きなんです....」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
一旦女子校の寮に戻ると、麻美はNLFSの事務所に兄のこと報告に出向いた。
「麻美、お兄さんとの試合大変だったね? 身体は大丈夫?」
榊枝美樹が最初に声をかけてきた。
彼女は既に格闘技は諦めNLFSの実務の方でやっていくそうだ。
高校を卒業したらビジネススクールに進み将来はNLFSの経営に携わる。
麻美の報告に流石のNOZOMIもショックを受けたようだ。
(もし、私が堂島源太郎さんに挑戦しなければあの家族は幸せだったはず。責任を感じる。一度堂島佐知子さんに会って色々話をした方がいいようね...)
NOZOMIは麻美の顔をジッと見ると違和感があった。
女豹の眼ではない。
まるで憑き物が落ちたような表情になっている。幼い麻美に初めて会った時からずっと感じていたゾッとするような眼差し。それがない。
NOZOMIも植松拓哉との試合で自分が燃え尽きたのを感じたが、堂島麻美も
兄との試合で燃え尽きたのか?
NOZOMIは麻美との引退試合のことを考えた。このままでは普通の女子同士の試合になってしまう。
つづく。
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