31 / 95
第三章 深まる溝と揺らぐ絆
30 ダンスパーティー
しおりを挟む貴族学院に入学して、一月ほど経った頃、新入生を歓迎するためにダンスパーティーが開かれることになった。
ハンスは、パートナーは決めずに1人でダンスパーティーに出席するつもりだと言っていた。パーティーで誰かに踊って欲しいと頼まれれば、断ることはしないが、自分から踊ることはないと断言してくれた。
私も、ゲオルグと一曲だけ踊ったら、後は踊らないつもりだった。
皆は、各自好きなドレスだが、私とゲオルグは学校指定のドレスと服だった。私は、ハンスと一緒にダンスパーティーの会場に着くと、すぐに別れた。
私は、代表生徒として、今回のダンスパーティーを援助して下さった貴族のお客様にゲオルグと共にあいさつ回りをしなければならない。
「浮かない顔だな」
私があいさつを終えて、ゲオルグと一曲踊るために、待機していると、ゲオルグが片眉をあげて言った。
「ごめんなさい。なんだか、疲れてしまって……」
「まぁ、普段あまり社交はして来なかったんだろう?」
「ええ」
「時機に慣れる」
「そうだといいけど」
ゲオルグが私に手を差し出した。
「さぁ、行こうか」
「ええ」
私は、ゲオルグの手を取ると、パーティー会場に向かった。
ダンスパーティーの会場に行くと、私は驚いてしまった。ハンスは多くの女性に囲まれていた。
私は、Bクラスでのハンスの様子を知らないが、ハンスはいつもあのように女性に囲まれているのかと思うと、少しだけ胸が痛んだ。
私はできるだけ、ハンスを見ないようにして、ダンスを終えた。
すると、ハンスは令嬢とダンスを踊るようだった。
「ほら、学長の隣に行くぞ」
「え、ええ」
私は、学長の隣に行き、またあいさつをしたのだった。
ハンスは、キレイな女性と次々とダンスを踊っていた。ハンスは、とてもダンスが上手いし、背も高く姿勢も美しいので、会場内でも、とても目立っていた。
「そんなに、婚約者殿に夢中なのか?」
ぼんやりとハンスに見とれていると、ゲオルグがからかうような瞳で話かけてきた。私は、にっこりと笑って、答えた。
「ええ……もう、ずっと夢中よ」
「妬けるな……」
妬けるという割に、ゲオルグは普段通りだった。ゲオルグとのこんな軽いやり取りに、ほっとして、私は、またあいさつを続けたのだった。
☆==☆==
ゲオルグとシャルロッテが、そんな会話をしている頃。ハンスは……。
「ハンス様、私とも踊って下さらない?」
ハンスはすでに5人の令嬢と踊ったばかりだったので、辞退したかったが、誘われたのは、 ヘルマ・ナーゲル伯爵令嬢だった。
ナーゲル伯爵は、騎士団に所属していおり、ナーゲル伯爵家の長男は、ハンスに剣と乗馬を教えてくれている師だったので、断ることが出来なかった。
「ぜひ」
ハンスは、ヘルマの手を取ると、ダンスホールに向かった。
「ハンス様の御婚約者様は、随分と優秀なのですね」
「ええ」
ハンスは、当たり障りのない返事をした。
「いくら、代表生徒といえども、婚約者と踊る時間くらい取れませんの? あのように、ランゲ侯爵子息殿と談笑している時間はあるようですけど」
ふと、シャルロッテを見ると、丁度、ランゲ侯爵家のゲオルグ殿と笑いあっている場面だった。
(今日は、シャルは一日あいさつだと言っていた。現に、今だって、学長の近くにいて、あいさつをしている。惑わされるな)
ハンスは、にっこりと笑って、ヘルマに笑いかけた。
「ヘルマ殿。ご心配頂きありがとうございます。しかし、今は、ダンスを致しませんか?」
「ええ。いいわ」
ハンスは内心溜息をつくと、チラリとシャルロッテを見た。今は、学長と一緒に貴族を交えて話をしている。どこをどう見ても、仕事のようにしか思えない。
(新入生の代表生徒は、学院の雑用係だと誰かが言っていたな……おじい様は、『顔を繋ぐチャンスに恵まれる』と絶賛していたが……なぜシャルなのだ……)
ハンスは、溜息をつきながら、シャルロッテを眺めていたのだった。
156
あなたにおすすめの小説
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる