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第三章 深まる溝と揺らぐ絆
30 ダンスパーティー
しおりを挟む貴族学院に入学して、一月ほど経った頃、新入生を歓迎するためにダンスパーティーが開かれることになった。
ハンスは、パートナーは決めずに1人でダンスパーティーに出席するつもりだと言っていた。パーティーで誰かに踊って欲しいと頼まれれば、断ることはしないが、自分から踊ることはないと断言してくれた。
私も、ゲオルグと一曲だけ踊ったら、後は踊らないつもりだった。
皆は、各自好きなドレスだが、私とゲオルグは学校指定のドレスと服だった。私は、ハンスと一緒にダンスパーティーの会場に着くと、すぐに別れた。
私は、代表生徒として、今回のダンスパーティーを援助して下さった貴族のお客様にゲオルグと共にあいさつ回りをしなければならない。
「浮かない顔だな」
私があいさつを終えて、ゲオルグと一曲踊るために、待機していると、ゲオルグが片眉をあげて言った。
「ごめんなさい。なんだか、疲れてしまって……」
「まぁ、普段あまり社交はして来なかったんだろう?」
「ええ」
「時機に慣れる」
「そうだといいけど」
ゲオルグが私に手を差し出した。
「さぁ、行こうか」
「ええ」
私は、ゲオルグの手を取ると、パーティー会場に向かった。
ダンスパーティーの会場に行くと、私は驚いてしまった。ハンスは多くの女性に囲まれていた。
私は、Bクラスでのハンスの様子を知らないが、ハンスはいつもあのように女性に囲まれているのかと思うと、少しだけ胸が痛んだ。
私はできるだけ、ハンスを見ないようにして、ダンスを終えた。
すると、ハンスは令嬢とダンスを踊るようだった。
「ほら、学長の隣に行くぞ」
「え、ええ」
私は、学長の隣に行き、またあいさつをしたのだった。
ハンスは、キレイな女性と次々とダンスを踊っていた。ハンスは、とてもダンスが上手いし、背も高く姿勢も美しいので、会場内でも、とても目立っていた。
「そんなに、婚約者殿に夢中なのか?」
ぼんやりとハンスに見とれていると、ゲオルグがからかうような瞳で話かけてきた。私は、にっこりと笑って、答えた。
「ええ……もう、ずっと夢中よ」
「妬けるな……」
妬けるという割に、ゲオルグは普段通りだった。ゲオルグとのこんな軽いやり取りに、ほっとして、私は、またあいさつを続けたのだった。
☆==☆==
ゲオルグとシャルロッテが、そんな会話をしている頃。ハンスは……。
「ハンス様、私とも踊って下さらない?」
ハンスはすでに5人の令嬢と踊ったばかりだったので、辞退したかったが、誘われたのは、 ヘルマ・ナーゲル伯爵令嬢だった。
ナーゲル伯爵は、騎士団に所属していおり、ナーゲル伯爵家の長男は、ハンスに剣と乗馬を教えてくれている師だったので、断ることが出来なかった。
「ぜひ」
ハンスは、ヘルマの手を取ると、ダンスホールに向かった。
「ハンス様の御婚約者様は、随分と優秀なのですね」
「ええ」
ハンスは、当たり障りのない返事をした。
「いくら、代表生徒といえども、婚約者と踊る時間くらい取れませんの? あのように、ランゲ侯爵子息殿と談笑している時間はあるようですけど」
ふと、シャルロッテを見ると、丁度、ランゲ侯爵家のゲオルグ殿と笑いあっている場面だった。
(今日は、シャルは一日あいさつだと言っていた。現に、今だって、学長の近くにいて、あいさつをしている。惑わされるな)
ハンスは、にっこりと笑って、ヘルマに笑いかけた。
「ヘルマ殿。ご心配頂きありがとうございます。しかし、今は、ダンスを致しませんか?」
「ええ。いいわ」
ハンスは内心溜息をつくと、チラリとシャルロッテを見た。今は、学長と一緒に貴族を交えて話をしている。どこをどう見ても、仕事のようにしか思えない。
(新入生の代表生徒は、学院の雑用係だと誰かが言っていたな……おじい様は、『顔を繋ぐチャンスに恵まれる』と絶賛していたが……なぜシャルなのだ……)
ハンスは、溜息をつきながら、シャルロッテを眺めていたのだった。
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