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幕間 ハンス SIDE
47 ハンスSIDE 3
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それからすぐに剣を習えることになった。
「はじめまして、フィルと言います。今日から、君に剣を教えます」
「お願いします」
幸運なことに、私は、当時学生の剣術大会で優勝したナーゲル伯爵家のフィル殿に剣を習えることになったのだ。フィル殿は学生の時に、すでに騎士団への入団が決まっており、フィルのお父上は、その時は、騎士団の副団長だった。
そんな彼に、教えを乞いたいという人はたくさんいたはずなのに、こんな剣も持ったこともない私の指導をして下さるのは、かなり奇跡に近いことだった。
フィル殿は、厳しいのに優しく、とても愛情深い人だった。
家族とも離れ、兄弟もいない私は、フィル殿をまるで、兄のように思っていた。
――そんなフィル殿に教えを受けて数ヶ月が経った頃。
「はぁ~~。ハンスは筋がいいな~~」
フィル殿が、剣を鞘に納めた。
「ありがとうございます!!」
私も、剣を鞘に納めて、お礼を言った。
「うん。よく頑張ったね、少し休憩にしようか」
「はい」
私は、休憩時間に、ずっと気になっていたことを、フィル殿に聞いてみることにした。
「あの、フィル殿。なぜフィル殿のような方が、私のような剣を持ったこともない子供の指導をして下さるのですか?」
すると、フィル殿は、ゴクリと持っていた飲み物で喉を潤うすと、少し考えて口を開いた。
「ああ、そうだな。口留めはされていないし……もしかしたら、ハンスにとって、モチベーションになるかもしれない。 実は、私はサフィール王子殿下の剣の師範もしているんだ」
「え? 王子殿下の?!」
サフィール王子殿下の剣の師範をしていると聞いて、さらに恐れ多くなった。
なぜ、騎士家系の繋がりもない私に、王子殿下にも教えているというフィル殿が剣を教えてくれるのかますますわからなかった。
「うん。実は『君に剣を教えてくれる人を探している』って、サフィール王子殿下からお聞きしたんだ」
「え? サフィール王子殿下から?」
私は、なぜサフィール王子殿下が自分を知っているのか、わからずに困惑していた。
「君だろ? 数年前に、サフィール王子殿下の星祭りでの腕輪を作ったのは」
「え? ええ」
フィル殿に言われて、確かに以前、王子殿下の星祭りの腕輪をデザインしたことを思い出した。
「君の作った腕輪を見た、サフィール王子殿下から『ぜひ、情に熱くて、兄貴肌なフィルに指導に行って欲しい』ってお願いされたんだ。あはは。殿下、君のこと気に入ったんじゃないかな?」
「殿下が俺の腕輪を見て、フィル殿を……」
夢じゃないかと思った。
宝石に関して、私は全くシャルの足元にも及ばないと思っていた。だが、サフィール王子殿下は、自分の腕輪を評価してくれただけではなく、自分にこんな素晴らしい、師を紹介までして下さった。
(サフィール王子殿下の好意を無下にすることなどできない!!)
私は、とても休んで居られなくて、立ち上がった。
「ハンス? どうした? まだ休憩していいぞ?」
「いえ!! 今は休憩などできません。王子殿下の期待に答えるためにも、私は、精進致します」
私が、素振りをしようとすると、フィル殿が優しい顔で微笑んだ。
「休憩中は、休まないとダメだぞ~~って、王子殿下に頼まれたと言われれば、仕方ないか。
よし!! ハンス!! 始めるか!!」
「はい!!」
私は、宝石の勉強もだが、剣や乗馬も頑張ることを誓ったのだった。
☆==☆==
そんなある日、9歳が終わろうという時。
――それは起こった。
その日のことは……今でも、忘れられない。
いや、もしかしたら、生涯忘れることはないかもしれない。
――大好きな人が、憎らしいと、一緒に居ることが難しいと――思った日。
「ふむ~~。このまま行けば、シャルロッテ嬢は貴族学院でも上を目指せますな」
「ありがとうございます」
その日は、朝から、少し心が弱くなっていた。家庭教師の先生は、難しい問題が解けたシャルを手放しで褒め、シャルもとても嬉しそうだった。
「はぁ~~ハンス様。これは、この前の復習ですぞ。数日後にもう一度問題を出します。乗馬や剣だけではなく、もう少しお勉強にも力を入れて下さい」
家庭教師の先生がこんな風にいうのは、よくあることが、その日はシャルが手放しで褒められた後だったので、少し心が荒んでしまった。
「はい」
私は項垂れて、自分の解答した間違いばかりの答案を握りしめた。
「ハンス。元気出して、さぁ、食事をして、今度は宝石の勉強を頑張りましょう」
「うん」
先生に褒められたシャルになぐさめられて、胸に何かが刺さったような感覚があった。
だが、そんなことはいつものことだと、笑顔を作って、食事に向かうと、執事が手紙を差し出した。
「ハンス様、ホフマン伯爵領のご両親からのお手紙です」
「え? シャル!! ごめんね。先に食事に行って!! 後で行くから」
「ええ」
シャルも、手紙を持つ私を見て、優しく微笑んでくれた。私は、急いで手紙を開いた。
手紙はお母様からだった。私は急いで、手紙を読んだ。
「え?」
そして、手紙を持った立ち尽くしてしまった。
『ハンス、本当ごめんなさい。今度の乗馬大会は、マッローネダイアの鑑定士の方がいらっしゃって、我が領の鑑定士の試験があるの。お父様は、その試験に立ち会う必要があるし、私は、鑑定士の方と一緒にいらっしゃるリゲル国の外交官の方をもてなしをする必要があります。ハンス、大会に行けなくてごめんなさい、ホフマン伯爵領からあなたを応援しています』
「また……マッローネダイア……」
私は思わず唇を噛んだ。
元々、家族がバラバラに住むことになったのは、マッローネダイアの発見のせいだ。
それだけじゃなく、マッローネダイアは、多くのことで、私たち家族を縛り付けていた。
「くっ!!」
思わず、手紙を破り捨てたくなったが、ずっと会えていない、お母様からの手紙を破くことなど出来なくて、ポケットに突っ込んだ。
そして、大きく深呼吸をして、食事に向かった。
シャルは、食事を始めずに、私を待っていてくれたようだった。こんな時、シャルは絶対に『何が書いてあったの?』など、内容を聞くことはしない。8歳の時に、私が両親が来れなくなったと泣いてしまったことがあった。それからだ。シャルは絶対に私に手紙の内容を聞かなくなった。
だが、シャルの視線は素直だ。
私の顔を見た途端、目を伏せた。きっと私の顔を見て、彼女は内容を悟ってしまったのだろう。
こういう所は、有難いと思う半面、泣き言も言えない状況になるので、平穏を保つ必要があるのは苦しかった。
だからといって、自分から、泣き言をいって、シャルに幻滅されたくはなかった。
私は席に座って、近くにいた侍女に、食事を始めるように伝えた。
「ハンス、今日の昼食も美味しいわね」
「うん、美味しい……」
正直に言うと、食事の味などしなかった。でも、気を使って明るく振舞ってくれる、シャルに合わせて、私も必死で、笑顔を張り付けたのだった。
☆==☆==
食事が終わり、宝石の勉強の時間になった。
家庭教師の先生にも叱られ、楽しみにしていたお母様たちの訪問もなくなり、私はもうすでに、限界だった。
そんな私の心情を知るはずもないおじい様が、声を上げた。
「今日は、いよいよ、マッローネダイアについてだ」
――マッローネダイア?! あの、家族をバラバラにした悪魔の宝石……。
私は、心に影が落ちて行くの感じた。
私にとって、マッローネダイアは憎むべき宝石。
決して相容れることのない存在だった。
おじい様が、テーブルにマッローネダイアを置いた。
憎い。
憎い。
見たくもない。
消えろ!!
こんな宝石、この世から消えてくれ!!
私が思わず顔を背けると、隣に座っていたシャルの嬉しそうな声が聞こえた。
「綺麗……美しいわ」
シャルがマッローネダイアに魅入ったように呟いた。宝石に対して、いつも冷静なシャルが、まるで恋をしているようにうっとりと、マッローネダイアを見つめていた。
――こんな悪魔の宝石が綺麗?! 美しい?!
心にまるで黒いインクをこぼしたように、黒い感情広がっていく。
信じられない。
理解できない。
こんな物と関わりたくもない。
――だが……。
私は今後、関わらないわけにはいかない。
仕方ない。
これは、私の使命だ。
そう、これは……私に与えられた残酷な使命……。
私が、感情を必死で押さえながら、耐えているとおじい様が、楽しそうに言った。
「ほう、シャルロッテ嬢は、マッローネダイアが好きなのかな?」
おじい様の言葉に、シャルは嬉しそうに微笑みながら答えた。
「はい、好きです」
――好き? この忌々しい、マッローネダイアが好き?!
もう、限界だった。
吐き気がするし、耳鳴りがする。
そして……。
――息が……出来ない……。
私は、走って、部屋を抜け出した。
走って、走って、ようやく自分の部屋の前に着くと、私を追いかけてきた執事が私の腕を取った。
「ハンス様、どうされました?」
そして、私の顔を見た途端、慌てた声を出した。
「ハンス様、お顔が真っ青です!! 旦那様にご報告を!!」
今度は、私が執事の腕を掴んだ。
「いい!! 言わないで!! ……お医者様を呼んで……そして、おじい様にはシャルが帰るまで言わないで。シャルにも言わない……で……」
「ハンス様?! とりあえず、お部屋に!!」
苦しい、苦しい。
シャルの笑顔は好きだ。
大好きなんだ。
でも、マッローネダイアを好きだというシャルを、私は好きで居続けることが出来るだろうか?
――私から、大切な物を全て奪った憎いあの石を好きだという人と……。
私は、共に歩まなければならないのか?
「うっ……」
私は、苦しくて胸を押さえながら、意識を失った。
「はじめまして、フィルと言います。今日から、君に剣を教えます」
「お願いします」
幸運なことに、私は、当時学生の剣術大会で優勝したナーゲル伯爵家のフィル殿に剣を習えることになったのだ。フィル殿は学生の時に、すでに騎士団への入団が決まっており、フィルのお父上は、その時は、騎士団の副団長だった。
そんな彼に、教えを乞いたいという人はたくさんいたはずなのに、こんな剣も持ったこともない私の指導をして下さるのは、かなり奇跡に近いことだった。
フィル殿は、厳しいのに優しく、とても愛情深い人だった。
家族とも離れ、兄弟もいない私は、フィル殿をまるで、兄のように思っていた。
――そんなフィル殿に教えを受けて数ヶ月が経った頃。
「はぁ~~。ハンスは筋がいいな~~」
フィル殿が、剣を鞘に納めた。
「ありがとうございます!!」
私も、剣を鞘に納めて、お礼を言った。
「うん。よく頑張ったね、少し休憩にしようか」
「はい」
私は、休憩時間に、ずっと気になっていたことを、フィル殿に聞いてみることにした。
「あの、フィル殿。なぜフィル殿のような方が、私のような剣を持ったこともない子供の指導をして下さるのですか?」
すると、フィル殿は、ゴクリと持っていた飲み物で喉を潤うすと、少し考えて口を開いた。
「ああ、そうだな。口留めはされていないし……もしかしたら、ハンスにとって、モチベーションになるかもしれない。 実は、私はサフィール王子殿下の剣の師範もしているんだ」
「え? 王子殿下の?!」
サフィール王子殿下の剣の師範をしていると聞いて、さらに恐れ多くなった。
なぜ、騎士家系の繋がりもない私に、王子殿下にも教えているというフィル殿が剣を教えてくれるのかますますわからなかった。
「うん。実は『君に剣を教えてくれる人を探している』って、サフィール王子殿下からお聞きしたんだ」
「え? サフィール王子殿下から?」
私は、なぜサフィール王子殿下が自分を知っているのか、わからずに困惑していた。
「君だろ? 数年前に、サフィール王子殿下の星祭りでの腕輪を作ったのは」
「え? ええ」
フィル殿に言われて、確かに以前、王子殿下の星祭りの腕輪をデザインしたことを思い出した。
「君の作った腕輪を見た、サフィール王子殿下から『ぜひ、情に熱くて、兄貴肌なフィルに指導に行って欲しい』ってお願いされたんだ。あはは。殿下、君のこと気に入ったんじゃないかな?」
「殿下が俺の腕輪を見て、フィル殿を……」
夢じゃないかと思った。
宝石に関して、私は全くシャルの足元にも及ばないと思っていた。だが、サフィール王子殿下は、自分の腕輪を評価してくれただけではなく、自分にこんな素晴らしい、師を紹介までして下さった。
(サフィール王子殿下の好意を無下にすることなどできない!!)
私は、とても休んで居られなくて、立ち上がった。
「ハンス? どうした? まだ休憩していいぞ?」
「いえ!! 今は休憩などできません。王子殿下の期待に答えるためにも、私は、精進致します」
私が、素振りをしようとすると、フィル殿が優しい顔で微笑んだ。
「休憩中は、休まないとダメだぞ~~って、王子殿下に頼まれたと言われれば、仕方ないか。
よし!! ハンス!! 始めるか!!」
「はい!!」
私は、宝石の勉強もだが、剣や乗馬も頑張ることを誓ったのだった。
☆==☆==
そんなある日、9歳が終わろうという時。
――それは起こった。
その日のことは……今でも、忘れられない。
いや、もしかしたら、生涯忘れることはないかもしれない。
――大好きな人が、憎らしいと、一緒に居ることが難しいと――思った日。
「ふむ~~。このまま行けば、シャルロッテ嬢は貴族学院でも上を目指せますな」
「ありがとうございます」
その日は、朝から、少し心が弱くなっていた。家庭教師の先生は、難しい問題が解けたシャルを手放しで褒め、シャルもとても嬉しそうだった。
「はぁ~~ハンス様。これは、この前の復習ですぞ。数日後にもう一度問題を出します。乗馬や剣だけではなく、もう少しお勉強にも力を入れて下さい」
家庭教師の先生がこんな風にいうのは、よくあることが、その日はシャルが手放しで褒められた後だったので、少し心が荒んでしまった。
「はい」
私は項垂れて、自分の解答した間違いばかりの答案を握りしめた。
「ハンス。元気出して、さぁ、食事をして、今度は宝石の勉強を頑張りましょう」
「うん」
先生に褒められたシャルになぐさめられて、胸に何かが刺さったような感覚があった。
だが、そんなことはいつものことだと、笑顔を作って、食事に向かうと、執事が手紙を差し出した。
「ハンス様、ホフマン伯爵領のご両親からのお手紙です」
「え? シャル!! ごめんね。先に食事に行って!! 後で行くから」
「ええ」
シャルも、手紙を持つ私を見て、優しく微笑んでくれた。私は、急いで手紙を開いた。
手紙はお母様からだった。私は急いで、手紙を読んだ。
「え?」
そして、手紙を持った立ち尽くしてしまった。
『ハンス、本当ごめんなさい。今度の乗馬大会は、マッローネダイアの鑑定士の方がいらっしゃって、我が領の鑑定士の試験があるの。お父様は、その試験に立ち会う必要があるし、私は、鑑定士の方と一緒にいらっしゃるリゲル国の外交官の方をもてなしをする必要があります。ハンス、大会に行けなくてごめんなさい、ホフマン伯爵領からあなたを応援しています』
「また……マッローネダイア……」
私は思わず唇を噛んだ。
元々、家族がバラバラに住むことになったのは、マッローネダイアの発見のせいだ。
それだけじゃなく、マッローネダイアは、多くのことで、私たち家族を縛り付けていた。
「くっ!!」
思わず、手紙を破り捨てたくなったが、ずっと会えていない、お母様からの手紙を破くことなど出来なくて、ポケットに突っ込んだ。
そして、大きく深呼吸をして、食事に向かった。
シャルは、食事を始めずに、私を待っていてくれたようだった。こんな時、シャルは絶対に『何が書いてあったの?』など、内容を聞くことはしない。8歳の時に、私が両親が来れなくなったと泣いてしまったことがあった。それからだ。シャルは絶対に私に手紙の内容を聞かなくなった。
だが、シャルの視線は素直だ。
私の顔を見た途端、目を伏せた。きっと私の顔を見て、彼女は内容を悟ってしまったのだろう。
こういう所は、有難いと思う半面、泣き言も言えない状況になるので、平穏を保つ必要があるのは苦しかった。
だからといって、自分から、泣き言をいって、シャルに幻滅されたくはなかった。
私は席に座って、近くにいた侍女に、食事を始めるように伝えた。
「ハンス、今日の昼食も美味しいわね」
「うん、美味しい……」
正直に言うと、食事の味などしなかった。でも、気を使って明るく振舞ってくれる、シャルに合わせて、私も必死で、笑顔を張り付けたのだった。
☆==☆==
食事が終わり、宝石の勉強の時間になった。
家庭教師の先生にも叱られ、楽しみにしていたお母様たちの訪問もなくなり、私はもうすでに、限界だった。
そんな私の心情を知るはずもないおじい様が、声を上げた。
「今日は、いよいよ、マッローネダイアについてだ」
――マッローネダイア?! あの、家族をバラバラにした悪魔の宝石……。
私は、心に影が落ちて行くの感じた。
私にとって、マッローネダイアは憎むべき宝石。
決して相容れることのない存在だった。
おじい様が、テーブルにマッローネダイアを置いた。
憎い。
憎い。
見たくもない。
消えろ!!
こんな宝石、この世から消えてくれ!!
私が思わず顔を背けると、隣に座っていたシャルの嬉しそうな声が聞こえた。
「綺麗……美しいわ」
シャルがマッローネダイアに魅入ったように呟いた。宝石に対して、いつも冷静なシャルが、まるで恋をしているようにうっとりと、マッローネダイアを見つめていた。
――こんな悪魔の宝石が綺麗?! 美しい?!
心にまるで黒いインクをこぼしたように、黒い感情広がっていく。
信じられない。
理解できない。
こんな物と関わりたくもない。
――だが……。
私は今後、関わらないわけにはいかない。
仕方ない。
これは、私の使命だ。
そう、これは……私に与えられた残酷な使命……。
私が、感情を必死で押さえながら、耐えているとおじい様が、楽しそうに言った。
「ほう、シャルロッテ嬢は、マッローネダイアが好きなのかな?」
おじい様の言葉に、シャルは嬉しそうに微笑みながら答えた。
「はい、好きです」
――好き? この忌々しい、マッローネダイアが好き?!
もう、限界だった。
吐き気がするし、耳鳴りがする。
そして……。
――息が……出来ない……。
私は、走って、部屋を抜け出した。
走って、走って、ようやく自分の部屋の前に着くと、私を追いかけてきた執事が私の腕を取った。
「ハンス様、どうされました?」
そして、私の顔を見た途端、慌てた声を出した。
「ハンス様、お顔が真っ青です!! 旦那様にご報告を!!」
今度は、私が執事の腕を掴んだ。
「いい!! 言わないで!! ……お医者様を呼んで……そして、おじい様にはシャルが帰るまで言わないで。シャルにも言わない……で……」
「ハンス様?! とりあえず、お部屋に!!」
苦しい、苦しい。
シャルの笑顔は好きだ。
大好きなんだ。
でも、マッローネダイアを好きだというシャルを、私は好きで居続けることが出来るだろうか?
――私から、大切な物を全て奪った憎いあの石を好きだという人と……。
私は、共に歩まなければならないのか?
「うっ……」
私は、苦しくて胸を押さえながら、意識を失った。
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