我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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【クリストフ】(王妃ルート)

10 穏やかな時間

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「ベルナデット様。お疲れ様でした。本日はこれで終わりですよ。」

私の補佐をしてくれているエミリが嬉しそうに言った。

「ふふふ。ありがとう。
あ~よかった~!!これなら騎士団の演習が終わるのに間に合うでしょ?」

私はエミリを見て笑った。
するとエミリが真っ赤な顔をした。

「はい。今日は絶対に彼に昇進したお祝いを渡したくて!!
ベルナデット様、ご尽力ありがとうございました。」
「ほら、もういいわよ。早く行かなきゃ!!」
「でも・・。」
「いいから。あとはクリスの部屋に行くだけだから大丈夫よ。」
「いえ!!ベルナデット様になにかあっては・・。」

エミリと言い合っていると、聞き覚えのある声が聞こえた。

「ベルのことは私に任せてもらってかまわないよ?」

振り向くと、クリスとローベルが立っていた。
エミリは困った顔をした。

「ほら。クリスとローベルも一緒だから大丈夫よ。
また、明日お願いね。」

私はもう一度エミリを見た。

「はい!!それでは、ベルナデット様、殿下、ローベル様、失礼致します。」

エミリが頭を下げると足早に去っていった。

「ふふふ。」
「嬉しそうな顔。」

私が笑っていると、クリスがいたずらっ子のような笑顔を向けてきた。

「はい。嬉しいですから。」
「そっか。」
「妬きます?」
「妬かないよ!!・・・そのくらいじゃね。」

そして、私たちはクリスの部屋に向かった。
最近ではクリスの部屋で話をしてから、自室に戻っていた。

ローベルが去って2人になると、クリスに後ろから抱きしめられた。

「あ~今日も長かった。」
「お疲れ様でした。」
「ありがとう。ベルもお疲れ様。」
「ありがとうございます。」

クリスが満足するまで抱きしめられていると、クリスが身体を離して、手を引いてきた。

「疲れてるのにごめん。座ろう。」
「はい。」

ソファーに座った途端にクリスが嬉しそうに笑った。

「休みが取れそうなんだ!しかも丸1日!!」
「え?」

私は比較的休みをもらっていたのだが、クリスはかなり忙しそうで、午前だけや、午後だけの休みは取れていたが、1日も休みもらえることは滅多になかった。

「よかったですね!クリス様!!」
「ああ!!ねぇ、ベル。どこ行きたい?」

私は少し戸惑ってしまった。

「あの・・折角のお休みなのに・・お出かけしてもいいのですか?
お部屋でゆっくりと過ごされたらどうですか?」

私は休みのないクリスを連れまわすのは申し訳なかった。
すると、クリスがニヤリと笑った。

「ベルと結婚して、部屋でないと出来ないことができたらそうする。
でも、今は君とどこかへ出かけたい。どこ行く?」



私の頭の中に選択肢が浮かんだ。




▶城下


▶湖




城下・・。まだ小さい頃、私は兄と一緒に城下に行ってしまった。
だから、今度はクリスと一緒に行ってもいいかもしれない。

湖・・。私たちが王立音楽芸術学院に入学する前、2人で湖で子供用のボートに乗った。
そこで大人になったら大人用のボートに乗ろうと約束した。


「そうですね・・。城下か、湖でしょうか?」

そういうと、クリスが懐かしそうに目を細めた。

「湖か・・。そういえば、大人用のボートにベルと一緒に乗る約束だったね。」
「はい!!」

そして、今度は少し不機嫌になった。

「城下も、本当は私と行くはずだったのに・・エリックと行ったんだよね。」
「・・はい。そうですね。」
「そういえば、欲しい本があるんじゃなかった?」
「すみません。それはすでに買いました。」
「あはは。そうか・・あれから随分と時間が経っちゃったしな~~。」

私はクリスを見つめた。

「どうされます?」

クリスが目をつぶって考えた。

「う~~~~ん!!」






しばらくしてクリスが目を開いた。

「よし!!両方行こう!!」
「え?両方ですか?」

クリスが楽しそうに笑った。

「そう!!午前中は湖でボートに乗ろう!
そのままそこで昼食をとる。」
「はい。」

私は頷いた。

「そして、午後から戻ってきて城下を見て回った後に、城下で夕食にしよう。
どうかな?」
「私は嬉しいですが、クリス様はそれでいいのですか?
疲れませんか?」

するとクリスが溜息をついた。

「あのね、ベル。
私は騎士団の演習に参加した後、深夜まで貴族会議に出席したりしてるんだよ?
私の心配なんて必要ないよ。」
「クリス様・・大変ですね・・。」
「まぁ。・・で?どう?」

クリスが顔を覗き込んできた。

「嬉しいです。すごく楽しみです!!」

クリスが私の耳元に唇を寄せた。

「ベル・・。お願い。」

私は体温が上がるを感じながら、クリスを見つめた。

「クリス様好きです。」

クリスが無邪気な笑顔を見せた。

「私も、ベルが好きだよ。大好きだ・・。」

そう言って唇を寄せた。

まだ少しぎこちないキスはくすぐったくて、でもとても甘くて不思議な気分だった。






※【エリック】(真相ルート)  ROUTE OPEN ♪

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