我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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【エリック】(真相ルート)

15  いよいよ!!

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 室内が甘い香油の香りで満たされてた。




「あっ……そこ……気持ち……いい……あ……ん」



 声を我慢することが出来ずに口から零れ落ちた。



「んっ……あっ……あ」



 兄の手はとても温かくて私はつい声を上げていた。


「ベル……ここだろ? もっとしてやるから……」

「んんっ……あ、痛っ……でも……あ……気持ちいい……あっ、あっ、あっ」

「ここもいいんだろ?」

 兄に少し力を入れられると声を我慢することなど出来なかった。

「ああ! いい、気持ちい~~もっと! あっ……あ……ん!!」

「無茶を言わないでくれ……ベル……あまりやりすぎるのもよくないのにっ!! やめられなくなりそうだ」

 兄の額には汗が光っていたが、私は気持ちがよくて貪欲に兄を求めていた。

「やめないで!! お兄様、もっとして……ああ……ん~やめないで……気持ちい~~あ~~~~~~!!」





 私が声を出すと、兄がマッサージのために使ったオイルを布で拭きとりながら言った。

「よし。だいぶむくみは取れたな」

「はぁ~~~気持ちよかったぁ~~ありがとうございました。お兄様に足を揉ませてしまってすみません」

 私は兄に頭を下げた。

 馬車に長時間乗っていたり、いつもより高い靴で歩いていたので、私は足がむくんでしまったのだった。
『足が怠くてつらい』と言ったら、兄が『マッサージをしてやろう』と言い出したのだ!!

 最初は「そんなことさせられません!!」と断ったのだが、「いいのか? 私のマッサージの腕は騎士団長の折り紙つきだぞ?」という兄の誘惑に勝てなかったのだ。


「気にするな。私は騎士団でマッサージの指導は受けている。
 それにベルの反応を見るのは楽しくてハマりそうだ。
 またマッサージをしてやろう!!」

「え♪ はい!! お願いします!!」

 私は長旅でむくんでしまった足を兄に揉んでもらってしまった。
 いつもは侍女がしてくれるのだが、今回は2人で行くことになったのでお兄様がマッサージをしてくれたのだ。

 私は疑問に思っていることを兄に聞いてみた。

「お兄様。どうして今回は私たち2人だけで来たのですか?」

「ああ、私たちのようなレアリテ国の関係者以外の人間は、レアリテ国の入国審査に時間がかかるのだ。
 だから今回は私たちだけで入国することにしたのだ。
 船の中にはレアリテ国の護衛がいるらしいから問題ないということでな」

「そうなのですね」

 どうやら入国審査があるらしい。
 私はその事実を知らなかったので驚いてしまった。
 すると兄がコキコキと肩を鳴らした。

「お兄様……肩が凝っているのですか?」

「ん~~~」

 兄は曖昧な返事をした。
 きっと、どう答えるのがいいのか考えているのだろう。

(本当に、お兄様は私の気持ちばっかり優先するんだから……)

 私はお兄様にピッタリとくっついて上目遣いで見上げた。

「今度は私が揉みましょうか?」


・・・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・・・・。



 
 すると兄は何かを考えた後、真っ赤な顔で視線を彷徨わせて呟いた。




「いい。(ベルの声を聞いて我慢の限界なのにベルに触られたら……)」




 私は聞き取れなくて兄の顔を覗き込んだ。


「すみません。聞こえませんでした。マッサージしましょうか?」

「いい!! 私はベルと違って鍛えている!! マッサージは必要ない!!」

 今度は大きな声を上げた。
 なぜか兄の耳は真っ赤になっていたが……。




ブォ~~~~~~。





 兄と話をしていたら汽笛が聞こえた。

「ああ、そろそろ接岸するのか」

 兄が窓の外に目を向けながら言った。

「ああ、そうなのですね。いよいよレアリテ国に着いたのですね」

 窓の外を見ると見たこともない街並みが見えた。
 
(ああ……もう、あの先は私の母が女王として治める国レアリテ国なのね………)


 私は緊張して、自分の手を握り締めた。


「不安か?」

 兄が私の髪を優しく撫でてくれた。

「……不安です」

 私は素直に答えた。
 すると兄は私を抱きしめてくれた。

「そうか……」

 兄はそう呟くときつく私を抱きしめてくれた。
 船の振動と兄の心臓の音を感じて不思議と心が落ち着てきた。
 私は兄を見上げた。

「そばにいてくださいね」

 すると兄がふんわりと笑った。

「言われるまでもないな」

 兄が自分の鼻で私の頬を撫でるような仕草をした。
 この仕草は最近の兄のお気に入りだ。

 初めは兄の顔が近くて恥ずかしかったが、兄が好んでするので今ではすっかり慣れてしまった。
 これは慣らされてしまったという方がいいのだろうか?

「ふふふ。大丈夫ですよ。今更逃げません」

 すると兄が私の唇に触れるだけのキスをして微笑んだ。

「例え逃げるとしてもベルと共にいくさ」

 今度は私が兄の唇に触れるだけのキスをした。
 すると驚いた顔で私を見ていた。

「じゃあ、なおさら逃げられませんね。
 お兄様、逃げるの好きじゃないでしょ?
 そんな好きじゃないことさせたら、お兄様を幸せになんて、できませんもの」

 私の言葉に驚いた後、兄はもう一度私に口付けをした。

「ふっ。そうか……」

 そして嬉しそうに呟いて私の髪を撫でた。

 

 船はそろそろレアリテ国に接岸しようとしていた。

 いよいよレアリテ国へ入国だ。


 私は兄と固く手をつないで、船室を後にしたのだった。

 後に残ったのは香油の香りだけだった。







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