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第6話 家族構成
しおりを挟む食事が終わると、ゲオルグが立ち上がった。
「風呂用意してくる」
そして、クルスが「うん」と言うとみんなの分のお皿を集め始めた。
(もしかして、自分で片付けするの??)
辺境伯と言えば、貴族の中でも地位の高い家だ。
それなのに、こどもたちが片付けをしていて驚いてしまった。
「ギルベルトさんはこれから砦に行くでしょう?」
「ああ。いつも悪いな」
ギルベルト様は、リーゼを「おやすみ」と言って抱きしめた後に、クルスに「おやすみ。いってきます」と言って抱きしめて私を見た。
「ライラさん。今日はゆっくり休んで下さいね」
そして、部屋を出て行った。どうやらこれから砦に向かうようだった。
「ギルベルト様は、夜は砦にお泊りになるの?」
私がクルスに尋ねると、クルスが首を振った。
「深夜に戻って来るよ、ここではいつ何があるかわからないからね。一日の警備の報告書はどんなに疲れてても、必ず確認しているんだよ」
国からの書類に、領政についても書類。
それだけではなく、辺境伯独自の大切な仕事……
――国境警備。
「ギルベルト様大変だね……」
クルスが眉を下げながら言った。
「うん……大変そうだよね……何もできないのが、悔しいけど……」
私はクルスの横顔がつらそうで、胸が痛くなった。
クルスは、リーゼを見ながら言った。
「リーゼ、そろそろお風呂の準備をしておいで」
「うん」
リーゼが食堂を出て行った。
そしてクルスが、私に向かって言った。
「ライラさん、さっき部屋を用意したから案内するよ」
私はそう言われて、急いで声を上げた。
「待って!! 食事の片付けは誰がするの?」
クルスが当たり前のように言った。
「俺がするよ」
私は一応、男爵家の出身だが、学生の頃は寮生活で自分のことは自分でしていたし、女官になってからは、城の単身者用の領で家事もしていた。
私はクルスを見ながら言った。
「私も手伝うわ。それにその方が早く終わるわ」
クルスは少し考えた後に言った。
「じゃあ、俺が洗うから、すすぎお願い」
「うん」
こうして私はクルスと一緒に食事の後片付けをしたのだった。
◇
2人で並んでお皿を洗っていると、クルスが私の顔を覗き込みながら言った。
「そう言えば……ライラさんって、俺たちがギルベルトさんの実子だと思ったんだろ!?」
私は驚きながら言った。
「え? 違うの?」
クルスは困った顔で言った。
「俺たちは養子。元々は俺たちのお父様が辺境伯としてここを守っていたんだけどさ……スタンピートで両親共に亡くなって……俺たちのお父様の弟だったギルベルトさんが辺境伯になったんだ」
辺境伯が交代したのは知っていたが、交代した理由がスタンピートで亡くなったからだったとは知らなかった。
書類上では……誰から誰に代わったのかとか事務的なことばかりで、詳しく書かれていない。
さらにクルスは切なそうに言った。
「いきなり辺境伯なんて大変な地位に着いたのに……3人の子持ちになって……本当にギルベルトさんには迷惑かけっぱなしなんだ……」
そしてクルスは私を見ながら言った。
「だから、ギルベルトさんのお仕事を手伝ってあげて」
私は「うん、それは任せて。少しでもギルベルト様を楽にできるようにするから」と答えたのだった。
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