残酷喜劇 短編集

ドルドレオン

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鬼の夕暮れ

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「鬼の夕暮れ」
 鬼はある日、恋をしました。人間の女性にです。鬼は言いました。「殺してやる」
 女性は逃げました。ただ、鬼は恋をしていました。鬼はある神に喧嘩を売りました。「どうしてその子が犠牲にならないといけない。俺は神が憎い」鬼は神に睥睨しました。
 神様はゆっくりと話しました。「その子が犠牲にならないと、村が救われないんだ」
「じゃあ、俺はどうしたらいい? その女性のためなら、何でもする」「お前は鬼に過ぎない。人間と恋をするな」「だから何だってんだ」「分かるだろ、そういうことだ」

 女性は生贄に呼ばれました。祭壇の上で殺されるのを待っています。
「ああ、神様はいるんだわ、わたしが犠牲になるもの」
 その時、ぬっと黒い手が伸びました。鬼が「捕まえた」と言って、鬼隠しをしたのです。
 確かにその時村人は女性を殺したと思いました。ただ、鬼はすり替えたのです。
 鬼は怖い古風な顔立ちをしながらも、女性を守りました。
「ここはどこですか?」女性が尋ねました。
「俺をなめるな、鬼だ鬼」
 女性は怖がりました。「どうして、わたしが選ばれたのですか? どうして村の人たちは、わたしを殺そうとしたの」
「だから俺は人間というものの、儀式なんだか、占いとかが嫌いなんだ」
「わたしは婚約もしていたのですよ。それなのに、引き裂かれたのです」「宿命というのは、時折苦悩をともなうものだ」
 鬼は、その後、人間によって討伐されました。桃太郎です。
 桃太郎こそは、その女性のフィアンセでした。
 女性は、心こそ隠せど、気づいたのが、愛情というものがどんなにいびつな形であっても、それは誰にも宿っている、ということです。鬼は死骸になりながら、静かに死を受け入れました。

END
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