47 / 135
第47話 過去最多の成果
しおりを挟む
ダンジョンから帰還をして妹と共に買取所に向かう。帰宅時間が決まっている平日の放課後とは違いパーティー毎に探索を終える時間がバラバラであるため、いつもより人の数は少なかったが買取までは少し待たなければいけなさそうだ。
「すごい!スライムの魔石だけでもこんなにあるよ!1日でこんなに沢山稼いだの初めてかも!」
「まぁ、未探索エリアはライバルもいなくて独占状態だったからね。下手したら狩場を独占してこもってるよりも効率が良かったまであるよ」
「う~、そう聞くと地図を公開するのがもったいない気がしてくるね」
「そこは先に美味しい思いが出来たから良しとしておこう。……それに全部の情報を出すわけでもないんだし」
「……確かにそうだね!」
今までにない稼ぎにはしゃぐ妹と買取所の待合スペースで談笑をする。周りに人影はないので話を聞かれている危険性は少ないが、気が付けば小声で言葉を交わしていた。
結局のところ僕たちは隠し部屋で見つけた階段を見なかったことにして帰還することを選んだ。見なかったことにしたのは瑠璃が階段の先から嫌な予感を感じ取ったからである。今日の妹の勘はさえわたっていたので、余計な危険に足を踏み込むことはせずにさっさと帰ることにしたのだ。
そうして作成した地図には隠し部屋のことを記載せず、いずれ実力をつけた時にあの先を探索しようと約束を交わし、それまでは隠し部屋の件はふたりの秘密ということで話がついた。ついでに妹とはこれから隠し扉を見つけたとしても安易に入らないようにすることを約束したので、僕が見つけた別の隠し部屋に入ることもないだろう。
「やあ、小鳥遊君……と初めましてのお嬢さん」
「どうも、隠岐さん。こっちは妹の瑠璃です」
順番が来たのでブースに入ると、休日にも関わらず買取所の受付には隠岐さんが座っていた。ほぼ毎日のように出会っているけどもこの人はいつ休んでいるのだろう……。ひとまず隠岐さんと瑠璃は初対面だったようなので軽く妹を紹介する。
「初めまして!……おにぃの知り合い?」
「う~ん……購買で買い物をするときにお世話になった人、かな」
「その節はどーも。僕は購買でも働いてるから妹ちゃんもよろしくね」
取引を行うことに至った悪魔モンスターのことは妹には秘密にしているため、購買で働いている一店員である隠岐さんとの関係性をうまく表す言葉が思い浮かばず少し悩む。結局のところ装備のレンタルの件でお世話になったので、購買で知り合った人という説明に落ち着く。隠岐さんも取引のことには触れずに話をあわせてくれた。
「それじゃあ早速だけど買取品を出してくれる?」
隠岐さんが言葉と共に出してきたトレーの上に、僕と妹で今日の探索で得た戦利品を載せていく。その様子を見ていた隠岐さんの表情がいつもの笑顔から段々と引きつったものに変わっていっているような気がする。
「それじゃあ、お願いします」
「……少し待っててね。あと、小鳥遊君。ちょっといいカナ?」
「はい?」
隠岐さんは本日の探索で倒したスライムの魔石を載せたトレーを機械に入れながら僕を手招きする。パーティーでの分配の件だと考えて、妹から離れ隠岐さんのいる受付に近づいていく。
「確認なんだけど、妹ちゃんに取引の件は話してないんだよね?」
「はい。危険な目に遭ったのは秘密にしておきたいです」
「……そうだよね、それじゃあ僕も気を付けておくよ。……それにしても今の1階層の状況でどうやってこんなにスライムを倒してるんだ……」
隠岐さんは今回持ち込んだ魔石の量を見て、妹が取引の件を知っているのかを確認してくる。おそらく僕が持ち込んだ魔石の量を誤魔化すことも取引の件に含めてくれていたので、妹にどこまで話をしていいのか探りに来たのだろう。確認後は機械のほうに体を向き直してしまったので、後半の言葉はひとりごとのようにつぶやいており良く聞こえなかった。
大量に持ち込む魔石の件は来週あたりに地図を公開する予定なので、秘密にする部分が地図の出処に変更となるのだが、それを隠岐さんとうまく交渉して前回の取引の延長ということで話をまとめたいと考えている。
(でも隠岐さんとの交渉材料を持ち得てないんだよな。そもそもこの人が何を欲してるかもよくわかってないし……)
前回の取引も恩を売っておきたいという理由で始まったので、正直に言って隠岐さんが何を求めているのかはよくわかっていない。となると今回の地図の件も恩にツケてもらうこともできるだろうが、いずれ返す日のことを考えると恐ろしく思ってしまう。
「隠岐さん。相談したいことがあるんですけど、来週の頭に少し時間取れませんか?」
「ん~。それじゃあ月曜日の放課後あたりでいいかな?」
「はい。それでお願いします」
ひとまず隠岐さんと地図の件に関して相談する時間を取ることに成功する。先ほどまで悩んでいた交渉材料やらなんやらは、今考えずとも当日までに考えておけば良いだろう。……なぜならばきっと何も思いつかないだろうと変な確信があるからだ。
こうして隠岐さんとの密談は終わり査定が終了するまで妹と雑談をして待つ。妹は特に隠岐さんと僕が交わした秘密の会話に興味を示す素振りはなかった。
「はい、これが査定額だよ。分配はどうする?」
「半分ずつにしてもらって、端数は瑠璃に付けてください」
「わぁ!こんなに稼いだの初めて!」
渡された端末に記載されている金額を確認して妹は喜びの声を上げる。どうやら今日集めたスライムの魔石は63個もあったようで、ふたりで分けたとしても過去最多となるのもうなずける話であった。
探索の成果を妹とふたりで分け合い、隠岐さんにお礼を告げブースから出ていく。僕たちと入れ替わるように背中を丸めてそそくさとブースに入っていく人影があったが、僕たちは特にそれを気に留めることはなかった。
「すごい!スライムの魔石だけでもこんなにあるよ!1日でこんなに沢山稼いだの初めてかも!」
「まぁ、未探索エリアはライバルもいなくて独占状態だったからね。下手したら狩場を独占してこもってるよりも効率が良かったまであるよ」
「う~、そう聞くと地図を公開するのがもったいない気がしてくるね」
「そこは先に美味しい思いが出来たから良しとしておこう。……それに全部の情報を出すわけでもないんだし」
「……確かにそうだね!」
今までにない稼ぎにはしゃぐ妹と買取所の待合スペースで談笑をする。周りに人影はないので話を聞かれている危険性は少ないが、気が付けば小声で言葉を交わしていた。
結局のところ僕たちは隠し部屋で見つけた階段を見なかったことにして帰還することを選んだ。見なかったことにしたのは瑠璃が階段の先から嫌な予感を感じ取ったからである。今日の妹の勘はさえわたっていたので、余計な危険に足を踏み込むことはせずにさっさと帰ることにしたのだ。
そうして作成した地図には隠し部屋のことを記載せず、いずれ実力をつけた時にあの先を探索しようと約束を交わし、それまでは隠し部屋の件はふたりの秘密ということで話がついた。ついでに妹とはこれから隠し扉を見つけたとしても安易に入らないようにすることを約束したので、僕が見つけた別の隠し部屋に入ることもないだろう。
「やあ、小鳥遊君……と初めましてのお嬢さん」
「どうも、隠岐さん。こっちは妹の瑠璃です」
順番が来たのでブースに入ると、休日にも関わらず買取所の受付には隠岐さんが座っていた。ほぼ毎日のように出会っているけどもこの人はいつ休んでいるのだろう……。ひとまず隠岐さんと瑠璃は初対面だったようなので軽く妹を紹介する。
「初めまして!……おにぃの知り合い?」
「う~ん……購買で買い物をするときにお世話になった人、かな」
「その節はどーも。僕は購買でも働いてるから妹ちゃんもよろしくね」
取引を行うことに至った悪魔モンスターのことは妹には秘密にしているため、購買で働いている一店員である隠岐さんとの関係性をうまく表す言葉が思い浮かばず少し悩む。結局のところ装備のレンタルの件でお世話になったので、購買で知り合った人という説明に落ち着く。隠岐さんも取引のことには触れずに話をあわせてくれた。
「それじゃあ早速だけど買取品を出してくれる?」
隠岐さんが言葉と共に出してきたトレーの上に、僕と妹で今日の探索で得た戦利品を載せていく。その様子を見ていた隠岐さんの表情がいつもの笑顔から段々と引きつったものに変わっていっているような気がする。
「それじゃあ、お願いします」
「……少し待っててね。あと、小鳥遊君。ちょっといいカナ?」
「はい?」
隠岐さんは本日の探索で倒したスライムの魔石を載せたトレーを機械に入れながら僕を手招きする。パーティーでの分配の件だと考えて、妹から離れ隠岐さんのいる受付に近づいていく。
「確認なんだけど、妹ちゃんに取引の件は話してないんだよね?」
「はい。危険な目に遭ったのは秘密にしておきたいです」
「……そうだよね、それじゃあ僕も気を付けておくよ。……それにしても今の1階層の状況でどうやってこんなにスライムを倒してるんだ……」
隠岐さんは今回持ち込んだ魔石の量を見て、妹が取引の件を知っているのかを確認してくる。おそらく僕が持ち込んだ魔石の量を誤魔化すことも取引の件に含めてくれていたので、妹にどこまで話をしていいのか探りに来たのだろう。確認後は機械のほうに体を向き直してしまったので、後半の言葉はひとりごとのようにつぶやいており良く聞こえなかった。
大量に持ち込む魔石の件は来週あたりに地図を公開する予定なので、秘密にする部分が地図の出処に変更となるのだが、それを隠岐さんとうまく交渉して前回の取引の延長ということで話をまとめたいと考えている。
(でも隠岐さんとの交渉材料を持ち得てないんだよな。そもそもこの人が何を欲してるかもよくわかってないし……)
前回の取引も恩を売っておきたいという理由で始まったので、正直に言って隠岐さんが何を求めているのかはよくわかっていない。となると今回の地図の件も恩にツケてもらうこともできるだろうが、いずれ返す日のことを考えると恐ろしく思ってしまう。
「隠岐さん。相談したいことがあるんですけど、来週の頭に少し時間取れませんか?」
「ん~。それじゃあ月曜日の放課後あたりでいいかな?」
「はい。それでお願いします」
ひとまず隠岐さんと地図の件に関して相談する時間を取ることに成功する。先ほどまで悩んでいた交渉材料やらなんやらは、今考えずとも当日までに考えておけば良いだろう。……なぜならばきっと何も思いつかないだろうと変な確信があるからだ。
こうして隠岐さんとの密談は終わり査定が終了するまで妹と雑談をして待つ。妹は特に隠岐さんと僕が交わした秘密の会話に興味を示す素振りはなかった。
「はい、これが査定額だよ。分配はどうする?」
「半分ずつにしてもらって、端数は瑠璃に付けてください」
「わぁ!こんなに稼いだの初めて!」
渡された端末に記載されている金額を確認して妹は喜びの声を上げる。どうやら今日集めたスライムの魔石は63個もあったようで、ふたりで分けたとしても過去最多となるのもうなずける話であった。
探索の成果を妹とふたりで分け合い、隠岐さんにお礼を告げブースから出ていく。僕たちと入れ替わるように背中を丸めてそそくさとブースに入っていく人影があったが、僕たちは特にそれを気に留めることはなかった。
84
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。
クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス
優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました
お父さんは村の村長みたいな立場みたい
お母さんは病弱で家から出れないほど
二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます
ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
平凡志望なのにスキル【一日一回ガチャ】がSSS級アイテムばかり排出するせいで、学園最強のクール美少女に勘違いされて溺愛される日々が始まった
久遠翠
ファンタジー
平凡こそが至高。そう信じて生きる高校生・神谷湊に発現したスキルは【1日1回ガチャ】。出てくるのは地味なアイテムばかり…と思いきや、時々混じるSSS級の神アイテムが、彼の平凡な日常を木っ端微塵に破壊していく!
ひょんなことから、クラス一の美少女で高嶺の花・月島凛の窮地を救ってしまった湊。正体を隠したはずが、ガチャで手に入れたトンデモアイテムのせいで、次々とボロが出てしまう。
「あなた、一体何者なの…?」
クールな彼女からの疑いと興味は、やがて熱烈なアプローチへと変わり…!?
平凡を愛する男と、彼を最強だと勘違いしたクール美少女、そして秘密を抱えた世話焼き幼馴染が織りなす、勘違い満載の学園ダンジョン・ラブコメ、ここに開幕!
どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる