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第54話 防御の種類
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「つ、疲れたぁ~」
栗林さんが教官を担当するFクラスの訓練が終了する。訓練最後のメニューである模擬戦ではクラスメイトの攻撃をひたすら捌いていたので、さすがに疲労が隠し切れない。
(こんなことなら身体強化を使うべきだったかな……ひとまず明日の筋肉痛は確定かな)
すぐに動きたくないほどには疲れてしまった事で、訓練ついでに体を鍛えなおそうと考え魔法を使用しなかったことを少し後悔する。しかし体を鍛えるのは日々の積み重ねが大事になるので、これぐらいのことでへこたれるわけにはいかないと気持ちを改める。
訓練が終わったことで解散していくクラスメイトを座って見送っていると、亀井君がこちらに近づいてくるのが視界に入る。
「お疲れ、小鳥遊。今いいか?」
「お疲れ様。大丈夫だけどどうしたの?」
「疲れてるところ悪いんだけどさ、さっき言ってた戦い方を教えてほしくて……無理ならまた今度でもいいんだけど」
どうやら先ほど約束した戦い方を今すぐにでも教わっておきたいようで、こちらに遠慮しつつも声をかけてきたようだ。
「いいよ、今からやろっか」
「助かる!準備してくるから待っててくれ」
動きたくないほどに疲れてはいたが動けないほどではないので、やる気十分の亀井君に応えるため気合を入れなおす。亀井君はこちらにお礼を告げながら急いで準備を進めていく。……疲れているのは本当なのでそんなに急がなくていいんだよ。
装備などの準備を終えた亀井君は隣にもう一人の人物を伴ってこちらに戻ってくる。……確か同じパーティーの龍村君だったかな?
「待たせた。なあ、ついでと言っては何だけど洋平も一緒していいかな?」
「うん。別に構わないよ」
「ありがとな。俺は龍村洋平っていうんだ。慣れてるから洋平って呼んでくれ」
「そうなの?じゃあよろしくね洋平君。僕のことは苗字でも名前でも好きに読んでくれて構わないよ」
名前はうろ覚えであったが間違っていなかったようで、内心安堵をしながら洋平君と挨拶をかわす。どうやら彼も亀井君と同じで訓練の続きを行いたいようであり、僕のところに連れてきたみたいだ。
「ところでふたりとも居残りまでするなんて……疲れてないの?」
「疲れていると言っちゃ疲れてるんだが……」
「ちょっと時間がな……」
ふたりはそう言いながらもある方向に視線を向ける。僕も二人の視線を追ってみると、そこには栗林さんを中心にしてFクラスの女子達が群がっている姿が見られた。
「うわぁ……」
まるでスーパースターのように扱われている栗林さんの姿を見ると、Fクラスの女子からの人気は抜群のようだ。彼女も笑顔で対応しているように見えるので、こういうことには慣れているのだろう。女子に囲まれている栗林さんと目が合い、その目が何かを訴えているように見えたが……きっと気のせいだ。
「……ってなわけで雛子を待たなきゃいけないから、空いた時間を訓練の復習に当ててたんだよ」
そう洋平君から説明を受けて彼らの事情を理解する。確かに栗林さん大好きクラブ(実在はしていない)筆頭の雀野さんがあの場にいないわけはなく、彼女を待つ時間を訓練に当てていたようだ。わざわざ帰る時間を合わせるなんて、やはり彼らは仲良し3人組なのだろう。
その後彼らの戦闘訓練に付き合いながらも、どのようにして防御技術を教えるのかを考える。
どうやら彼らは先ほどの僕と栗林さんの模擬戦を見た際に、彼女の攻撃を捌いていた防御方法に興味を持ち、亀井君はモンスターの注意を引き防御を固めて攻撃を受けるため、洋平君は素早く動いて回避をするのが苦手なので武器での防御を学ぶために僕に声をかけたようである。
僕の防御技術の根本はアーガイト王国騎士団で学んだ内容でもあるため、僕が教わったときと同じように教えれば問題ないだろう。しかし受け流しなどの捌き方に関しては主に師匠との組手などの4年間の実戦による経験で得ることのできたものであり、口で説明したとしても実際にできるようになるまでには時間がかかるだろう。
「じゃあ今回は『受ける』の防御方法を練習しようか」
「さっきの教官の突きを防いでいたやつか?」
「あれとはまた違うかな。まずは受けることが出来ないと反らすことは難しいから、基礎からやっていこう」
「「わかった」」
亀井君の質問に答えつつもひとまずは防御方法の基本ともなる『受ける』から教えることにする。これは文字通り相手の攻撃を装備で受けることであり難易度は高くないだろう。僕の説明を聞いてふたりも基礎から学ぶことを納得してくれたようだ。……といってもやっていることを簡潔に言ってしまえば、相手の攻撃の線に対して自分の装備の面を当てるだけであり、そこまでの技術が必要になる段階ではないのでふたりとも簡単にこなしていく。
「受ける瞬間に体全体をクッションのようにして衝撃を防ぐといいよ」
「なるほど。確かに腕が大分楽になるな」
アドバイスをしながら僕が繰り出す攻撃を何度も受けることでコツをつかんできたのか、徐々にふたりの防御姿勢が安定してくる。ここまで出来れば基礎は良いだろうと判断したところで亀井君から質問が飛んでくる。
「『受ける』が基礎と言っていたけど、防御の方法は他にも何かあるのか?」
「これはある人の受け売りだけど、防御というのは究極的に『避ける』・『受ける』・『反らす』・『弾く』の4パターンに分けられるんだって」
これはアーガイト王国の騎士団長から教わったことであり、『避ける』は攻撃を回避すること。『受ける』は攻撃を受け止めること。『反らす』は攻撃の勢いを受け流すこと。『弾く』は攻撃の軌道を力ずくで弾くこと。という様に教えてもらった。そして後者2つは相手の攻撃をうまく見切り、タイミングを見極めなければ成功させることが難しいが、成功すれば相手の隙を作り攻撃に転ずることのできる防御となっている。
……ちなみに師匠からはこれらに加えて『潰す』という、相手の攻撃力以上の威力を持つ攻撃で真っ向から叩き潰す、といった脳筋の防御?方法を教えてもらったことがあるが、これを伝授する必要はないだろう。
「こんな感じかな。他の防御についてはまた今度にしよう」
幻の5つ目を除く4つの防御をふたりに口頭で説明をしていく。僕にもできるのだから彼らもこれから経験を積むことで上手く4つの防御を使い分けられるようになるだろう。そう思いながら目の前のふたりを見ていると急に彼らの表情が凍り付く。自分も背後から冷たい空気を感じてゆっくりと振り返ると、そこには笑顔で仁王立ちをしている栗林さんの姿があった。
「兄君?目が合ったのになぜ助けてくれなかったんだい?」
「す、すいませんでした……」
彼女の笑顔から放たれる圧に対して先の5つの防御は全く機能することはなく、霜月さんの訓練が終わり妹のお迎えが来るまで栗林さんから小言を言われ続けるのであった。
栗林さんが教官を担当するFクラスの訓練が終了する。訓練最後のメニューである模擬戦ではクラスメイトの攻撃をひたすら捌いていたので、さすがに疲労が隠し切れない。
(こんなことなら身体強化を使うべきだったかな……ひとまず明日の筋肉痛は確定かな)
すぐに動きたくないほどには疲れてしまった事で、訓練ついでに体を鍛えなおそうと考え魔法を使用しなかったことを少し後悔する。しかし体を鍛えるのは日々の積み重ねが大事になるので、これぐらいのことでへこたれるわけにはいかないと気持ちを改める。
訓練が終わったことで解散していくクラスメイトを座って見送っていると、亀井君がこちらに近づいてくるのが視界に入る。
「お疲れ、小鳥遊。今いいか?」
「お疲れ様。大丈夫だけどどうしたの?」
「疲れてるところ悪いんだけどさ、さっき言ってた戦い方を教えてほしくて……無理ならまた今度でもいいんだけど」
どうやら先ほど約束した戦い方を今すぐにでも教わっておきたいようで、こちらに遠慮しつつも声をかけてきたようだ。
「いいよ、今からやろっか」
「助かる!準備してくるから待っててくれ」
動きたくないほどに疲れてはいたが動けないほどではないので、やる気十分の亀井君に応えるため気合を入れなおす。亀井君はこちらにお礼を告げながら急いで準備を進めていく。……疲れているのは本当なのでそんなに急がなくていいんだよ。
装備などの準備を終えた亀井君は隣にもう一人の人物を伴ってこちらに戻ってくる。……確か同じパーティーの龍村君だったかな?
「待たせた。なあ、ついでと言っては何だけど洋平も一緒していいかな?」
「うん。別に構わないよ」
「ありがとな。俺は龍村洋平っていうんだ。慣れてるから洋平って呼んでくれ」
「そうなの?じゃあよろしくね洋平君。僕のことは苗字でも名前でも好きに読んでくれて構わないよ」
名前はうろ覚えであったが間違っていなかったようで、内心安堵をしながら洋平君と挨拶をかわす。どうやら彼も亀井君と同じで訓練の続きを行いたいようであり、僕のところに連れてきたみたいだ。
「ところでふたりとも居残りまでするなんて……疲れてないの?」
「疲れていると言っちゃ疲れてるんだが……」
「ちょっと時間がな……」
ふたりはそう言いながらもある方向に視線を向ける。僕も二人の視線を追ってみると、そこには栗林さんを中心にしてFクラスの女子達が群がっている姿が見られた。
「うわぁ……」
まるでスーパースターのように扱われている栗林さんの姿を見ると、Fクラスの女子からの人気は抜群のようだ。彼女も笑顔で対応しているように見えるので、こういうことには慣れているのだろう。女子に囲まれている栗林さんと目が合い、その目が何かを訴えているように見えたが……きっと気のせいだ。
「……ってなわけで雛子を待たなきゃいけないから、空いた時間を訓練の復習に当ててたんだよ」
そう洋平君から説明を受けて彼らの事情を理解する。確かに栗林さん大好きクラブ(実在はしていない)筆頭の雀野さんがあの場にいないわけはなく、彼女を待つ時間を訓練に当てていたようだ。わざわざ帰る時間を合わせるなんて、やはり彼らは仲良し3人組なのだろう。
その後彼らの戦闘訓練に付き合いながらも、どのようにして防御技術を教えるのかを考える。
どうやら彼らは先ほどの僕と栗林さんの模擬戦を見た際に、彼女の攻撃を捌いていた防御方法に興味を持ち、亀井君はモンスターの注意を引き防御を固めて攻撃を受けるため、洋平君は素早く動いて回避をするのが苦手なので武器での防御を学ぶために僕に声をかけたようである。
僕の防御技術の根本はアーガイト王国騎士団で学んだ内容でもあるため、僕が教わったときと同じように教えれば問題ないだろう。しかし受け流しなどの捌き方に関しては主に師匠との組手などの4年間の実戦による経験で得ることのできたものであり、口で説明したとしても実際にできるようになるまでには時間がかかるだろう。
「じゃあ今回は『受ける』の防御方法を練習しようか」
「さっきの教官の突きを防いでいたやつか?」
「あれとはまた違うかな。まずは受けることが出来ないと反らすことは難しいから、基礎からやっていこう」
「「わかった」」
亀井君の質問に答えつつもひとまずは防御方法の基本ともなる『受ける』から教えることにする。これは文字通り相手の攻撃を装備で受けることであり難易度は高くないだろう。僕の説明を聞いてふたりも基礎から学ぶことを納得してくれたようだ。……といってもやっていることを簡潔に言ってしまえば、相手の攻撃の線に対して自分の装備の面を当てるだけであり、そこまでの技術が必要になる段階ではないのでふたりとも簡単にこなしていく。
「受ける瞬間に体全体をクッションのようにして衝撃を防ぐといいよ」
「なるほど。確かに腕が大分楽になるな」
アドバイスをしながら僕が繰り出す攻撃を何度も受けることでコツをつかんできたのか、徐々にふたりの防御姿勢が安定してくる。ここまで出来れば基礎は良いだろうと判断したところで亀井君から質問が飛んでくる。
「『受ける』が基礎と言っていたけど、防御の方法は他にも何かあるのか?」
「これはある人の受け売りだけど、防御というのは究極的に『避ける』・『受ける』・『反らす』・『弾く』の4パターンに分けられるんだって」
これはアーガイト王国の騎士団長から教わったことであり、『避ける』は攻撃を回避すること。『受ける』は攻撃を受け止めること。『反らす』は攻撃の勢いを受け流すこと。『弾く』は攻撃の軌道を力ずくで弾くこと。という様に教えてもらった。そして後者2つは相手の攻撃をうまく見切り、タイミングを見極めなければ成功させることが難しいが、成功すれば相手の隙を作り攻撃に転ずることのできる防御となっている。
……ちなみに師匠からはこれらに加えて『潰す』という、相手の攻撃力以上の威力を持つ攻撃で真っ向から叩き潰す、といった脳筋の防御?方法を教えてもらったことがあるが、これを伝授する必要はないだろう。
「こんな感じかな。他の防御についてはまた今度にしよう」
幻の5つ目を除く4つの防御をふたりに口頭で説明をしていく。僕にもできるのだから彼らもこれから経験を積むことで上手く4つの防御を使い分けられるようになるだろう。そう思いながら目の前のふたりを見ていると急に彼らの表情が凍り付く。自分も背後から冷たい空気を感じてゆっくりと振り返ると、そこには笑顔で仁王立ちをしている栗林さんの姿があった。
「兄君?目が合ったのになぜ助けてくれなかったんだい?」
「す、すいませんでした……」
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