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第128話 最強の一撃
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魔法と言うものはイメージが大事である。一般的な魔法が使えない自分でも知っていることであり、異世界でもこの世界においても冒険者の間では常識となっている。
自分が使っている身体強化の魔法も自分の体を強くするイメージを持って発動しているのだが、このイメージと魔力次第で素早く動きまわる脚力を得たり、重いものを持ち上げる膂力を得たり、果てには巨大な竜による強力な一撃を受け止めたりすることが出来るわけだ。
しかし、あらゆる魔法においてイメージと魔力というものにも限界というものはある。例えば決闘の際に御子柴君が放った炎魔法が霜月さんの氷魔法に阻まれてしまったのは、彼の魔力が彼女の魔力に及ばなかったからであり、同等の魔力が互いの魔法に込められていたとしたらあのような結果にはならなかっただろう。それは魔法の相性の問題であり、霜月さんがどれだけイメージを固めていたとしても結果は変わらないはずである。
これが身体強化ではどうなるかというと、強靭な体をイメージして魔力を全て注ぎ込んだとしても元々の肉体の強度に限界があるため、例えるならば竜のブレスのような体が蒸発してしまうような攻撃を耐え抜くとこは出来ないのだ。つまり目の前の黒竜から放たれようとしているブレスは身体強化以外の方法で対処をしなければならないのである。
そんな絶望的とも言える状況で、腰のポーチから黒いシンプルな作りの指輪を取り出し右手の人差し指に輪っか部分を通す。指輪はサイズが合っておらずぶかぶかであったが、指に通した途端に大きさが変わり指にピッタリのサイズに変わっていく。このような変化が出来るのは流石ダンジョン産のアイテムと言えるだろう。
この指輪は僕が1階層の宝箱から手に入れた物で隠岐さんに鑑定を頼んでいたものである。ダンジョンに突入する前に鑑定結果と共に受け取ったのだが、この指輪には少し風変わりな効果があるようであった。
……それはこの指輪に魔力を流し込むと指輪から魔力が漏れていく、つまり魔力放出のデバフ状態になるアクセサリーのようだ。
普通に考えれば魔力を無駄に消費してしまう魔力放出のデバフを受けるアクセサリーを好んで装備する者はいないだろう。しかし、この指輪は体外に魔力を出すことが出来ず魔法を放てない僕にとって、とある可能性を秘めている。
「……こんな感覚なんだな」
右手に取り付けた指輪に慎重に魔力を流していき、初めて体験したと言っても良い魔力が体外に流れていく不思議な感覚を味わっていく。この指輪を介して体外に放出した魔力を利用すれば僕にも魔法が使用できるというわけだ。
ぶっつけ本番ではあるが指輪に魔力を込めながら魔法のイメージを固めていく。今は目の前にいる黒竜のブレスに対抗できる魔法が必要とされているのだが、その条件を満たせる技に心当たりがあり頭の中では既にイメージは固まっていた。
(ニナ師匠。あなたの技、お借りします!)
竜のブレスに対抗するには竜のブレスしかない。そう考え異世界で最強の存在であった師匠が気まぐれに見せてくれたブレスを当時の記憶と共に鮮明に脳裏に思い浮かべる。
『今のがワシが得意とする技の一つ、煌竜の息吹じゃ。まぁ、大抵の相手ならこれでなんとかなるかの』
ブレスの余波で山を削りながらドヤ顔している師匠に、今後ブレスを放つ際は被害の出ない空に向けて欲しいと懇願したのは良い思い出である。
その師匠の技を自身の魔力で再現するために、指輪から溢れた魔力を魔法陣という形で空中に留め霧散してしまうのを防ぐ。これは師匠の技を再現するのに必要な魔力を指輪に一気に流し込んでしまうと、指輪が魔力に耐え切れずに壊れてしまうためである。少し時間はかかってしまうが指輪を破壊してしまっては意味がないので慎重に魔力を制御していく。
こうして自分の目の前に浮かんでいる魔法陣に段々と魔力が充填されていく。体外に放出した魔力を制御するのは初めての試みではあるが、魔法陣が崩れることはなく師匠と行った魔力制御の特訓の成果が存分に活きていると言えるだろう。
「今度こそ終わりだ!黒竜の咆哮!!」
自身の魔力が付きかけてきたと同時に黒竜がこちらに向けてブレスを放ってくる。それは先ほどのブレスよりも規模が大きく、避けることは出来ないと思わせるほどのものであった。しかし、こちらもはなから回避するつもりなどはなく、黒竜のブレスを真っ向から打ち破るために目の前に浮かぶ魔法陣に右の拳を思い切り叩きつける。
「これが最強の一撃だ!煌竜の息吹!!」
記憶の中の師匠とのやり取りの中で思い出深いフレーズを叫ぶ。拳が叩きつけられた魔法陣からは指向性を持った眩く光る光線が放たれ、黒竜の漆黒のブレスと真っ向からぶつかる。互いを消滅させる威力を秘めた両極の光線は一瞬せめぎあうが、徐々に白い光が勢いを増し闇を飲み込んでいく。
「ば、馬鹿な!?我が、たかが人に敗北するというのかぁぁぁ!!」
魔法陣から放たれた師匠の技を模造した一撃がブレスごと黒竜を飲み込んでいく。白い光の奔流が収まった時には先ほどまでいた黒竜は文字通り影も形も無くなっていたのであった。
自分が使っている身体強化の魔法も自分の体を強くするイメージを持って発動しているのだが、このイメージと魔力次第で素早く動きまわる脚力を得たり、重いものを持ち上げる膂力を得たり、果てには巨大な竜による強力な一撃を受け止めたりすることが出来るわけだ。
しかし、あらゆる魔法においてイメージと魔力というものにも限界というものはある。例えば決闘の際に御子柴君が放った炎魔法が霜月さんの氷魔法に阻まれてしまったのは、彼の魔力が彼女の魔力に及ばなかったからであり、同等の魔力が互いの魔法に込められていたとしたらあのような結果にはならなかっただろう。それは魔法の相性の問題であり、霜月さんがどれだけイメージを固めていたとしても結果は変わらないはずである。
これが身体強化ではどうなるかというと、強靭な体をイメージして魔力を全て注ぎ込んだとしても元々の肉体の強度に限界があるため、例えるならば竜のブレスのような体が蒸発してしまうような攻撃を耐え抜くとこは出来ないのだ。つまり目の前の黒竜から放たれようとしているブレスは身体強化以外の方法で対処をしなければならないのである。
そんな絶望的とも言える状況で、腰のポーチから黒いシンプルな作りの指輪を取り出し右手の人差し指に輪っか部分を通す。指輪はサイズが合っておらずぶかぶかであったが、指に通した途端に大きさが変わり指にピッタリのサイズに変わっていく。このような変化が出来るのは流石ダンジョン産のアイテムと言えるだろう。
この指輪は僕が1階層の宝箱から手に入れた物で隠岐さんに鑑定を頼んでいたものである。ダンジョンに突入する前に鑑定結果と共に受け取ったのだが、この指輪には少し風変わりな効果があるようであった。
……それはこの指輪に魔力を流し込むと指輪から魔力が漏れていく、つまり魔力放出のデバフ状態になるアクセサリーのようだ。
普通に考えれば魔力を無駄に消費してしまう魔力放出のデバフを受けるアクセサリーを好んで装備する者はいないだろう。しかし、この指輪は体外に魔力を出すことが出来ず魔法を放てない僕にとって、とある可能性を秘めている。
「……こんな感覚なんだな」
右手に取り付けた指輪に慎重に魔力を流していき、初めて体験したと言っても良い魔力が体外に流れていく不思議な感覚を味わっていく。この指輪を介して体外に放出した魔力を利用すれば僕にも魔法が使用できるというわけだ。
ぶっつけ本番ではあるが指輪に魔力を込めながら魔法のイメージを固めていく。今は目の前にいる黒竜のブレスに対抗できる魔法が必要とされているのだが、その条件を満たせる技に心当たりがあり頭の中では既にイメージは固まっていた。
(ニナ師匠。あなたの技、お借りします!)
竜のブレスに対抗するには竜のブレスしかない。そう考え異世界で最強の存在であった師匠が気まぐれに見せてくれたブレスを当時の記憶と共に鮮明に脳裏に思い浮かべる。
『今のがワシが得意とする技の一つ、煌竜の息吹じゃ。まぁ、大抵の相手ならこれでなんとかなるかの』
ブレスの余波で山を削りながらドヤ顔している師匠に、今後ブレスを放つ際は被害の出ない空に向けて欲しいと懇願したのは良い思い出である。
その師匠の技を自身の魔力で再現するために、指輪から溢れた魔力を魔法陣という形で空中に留め霧散してしまうのを防ぐ。これは師匠の技を再現するのに必要な魔力を指輪に一気に流し込んでしまうと、指輪が魔力に耐え切れずに壊れてしまうためである。少し時間はかかってしまうが指輪を破壊してしまっては意味がないので慎重に魔力を制御していく。
こうして自分の目の前に浮かんでいる魔法陣に段々と魔力が充填されていく。体外に放出した魔力を制御するのは初めての試みではあるが、魔法陣が崩れることはなく師匠と行った魔力制御の特訓の成果が存分に活きていると言えるだろう。
「今度こそ終わりだ!黒竜の咆哮!!」
自身の魔力が付きかけてきたと同時に黒竜がこちらに向けてブレスを放ってくる。それは先ほどのブレスよりも規模が大きく、避けることは出来ないと思わせるほどのものであった。しかし、こちらもはなから回避するつもりなどはなく、黒竜のブレスを真っ向から打ち破るために目の前に浮かぶ魔法陣に右の拳を思い切り叩きつける。
「これが最強の一撃だ!煌竜の息吹!!」
記憶の中の師匠とのやり取りの中で思い出深いフレーズを叫ぶ。拳が叩きつけられた魔法陣からは指向性を持った眩く光る光線が放たれ、黒竜の漆黒のブレスと真っ向からぶつかる。互いを消滅させる威力を秘めた両極の光線は一瞬せめぎあうが、徐々に白い光が勢いを増し闇を飲み込んでいく。
「ば、馬鹿な!?我が、たかが人に敗北するというのかぁぁぁ!!」
魔法陣から放たれた師匠の技を模造した一撃がブレスごと黒竜を飲み込んでいく。白い光の奔流が収まった時には先ほどまでいた黒竜は文字通り影も形も無くなっていたのであった。
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