Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑

文字の大きさ
14 / 102

第14話 台風の中の僕達

しおりを挟む
「は~ あったかい~
いくら真夏の沖縄とはいえ、
雨に濡れると肌寒いし、気持ち悪いよね」

背中にシャワーのお湯を受けながら、
ホ~ッとなごんでいた。

矢野君はシャワーのお湯が当たらないところに立って体を洗っていた。

「ねえ、ねえ、矢野君のそれってさ……」

「は? それって?」

「ちょっと~ それ分かって言ってるの?
矢野君のそれだよ~」

そう言って僕は矢野君の股間に指をさした。

「お前、見るなよ!」

「だってさ~ 僕、αのそれ見たの初めてでさ~
不可抗力だよ~

ねえ、それってさ、普通に勃起は出来るんだよね?
フルにして見せてよ~

一体、どれくらい大きくなるの?」

とあられもない質問を投げかけた。

「お前、アホか!どっかの痴女か!
無邪気にも程があるだろ!
さっさとシャワー開けろよ!」

そう言われて、

“チェッ、別に減るもんでも無いし!”

と舌打ちをしてシャワーを開けた。

「矢野君って恥ずかしがり屋なんだね。
そんなだったら、修学旅行どうしたの~?」

「バ~カ。俺は普通だよ。

そう言うお前は修学旅行でもそうやって
友達の股間に釘付けだったのか?」

「ハ~ 修学旅行だよね~

良いよね~」

そこまで言った時、

「もしかして、行ってないのか?」

と矢野君も今回はピンと来たようだ。

「そうなんだよね~

まあ、僕がお金にこだわるのも、
自分の子供には何不自由無く
育ってほしいって言うのもあるからなんだよね~」

そう言うと矢野君は僕に尊敬の念とでも言うような目を向けて、

「お前、人生悟ってるな」

と感心していた。

「いろいろ経験してるんでね~

じゃあ、僕はもう上がるから、
矢野君はごゆっくり~」

そう言うと、矢野君も、

「俺ももう出るから」

そう言ってシャワーの蛇口を閉めると、
僕に続いて矢野君もシャワーから出てきた。

体を拭いて部屋へ行くと、
洗濯ものが溜まっていたことに気付いた。

「あ~ 着るものが一つもないや!」

そう言うと、続けて出てきた矢野君が、

「お前だったら裸でもいいんじゃないか?」

と言ったので、

「それもそうだね! 矢野君、あったま良い~」

と返答すると、

「やっぱりお前は馬鹿だな」

と言って彼のパジャマを貸してくれた。

「ほら、予備のパジャマがあるから着とけよ。
夜はエアコンで冷えるからお腹壊すぞ。

まあ、停電になればそれどころじゃないんだけどな」

渡されたパジャマを着ると、さすが背の高い矢野君。
シャツが僕のお尻の下まで来てしまった。

そしてもちろん、ズボンは大きすぎて、
ずり落ちてきてしまい履けない。

否応なく、シャツのみとなってしまった

“これって彼シャツ? 彼シャツみたい~”

18年間恋人無しの僕はこういった恋人らしい状況に弱い。

なんだか矢野君のパジャマを着て
パンツが見えるか隠れるかギリギリの所で動き回るのは
少し恥ずかしいものがあった。

僕のモジモジする姿に、

「何で服を着てる方が恥ずかしいんだよ!」

と矢野君が突っ込んだ。

「だって~」

とちょっと可愛く言ってみると、
矢野君は聞いていたのか、いなかったのか、
窓の所までスタスタと歩いて行くと、
外を見ながら

「雨風が強くなってきたな」

そう言って携帯を取り出して台風の位置を確認し始めた。

僕も矢野君の肩越しに外を見ると、

「うわ~ 海が荒れ始めてるね。
でもちょっとワクワクだね」

そう言って矢野君の顔を見た。
彼はじっと携帯を見つめて、

「勢力が強まっているみたいだな……
でもそこまで大きな台風ではなさそうだな……」

そうぽつりと言った。
そして、

「おそらく停電するだろうから、
今のうちに予備の充電器用意しておいた方が良いな」

そう言って、小さなポケット充電器を充電し始めた。

そして夜半も過ぎると、雨風が更にひどくなり始めた。
外では海の唸る音や、風の吹きぬく音も強くなり始め、
バラバラと窓に打ち付ける強い雨の音がし始めた。

「矢野君、そっち行っても良いかな?」

それぞれ自分のベッドに座ってやりたいことをやっていたけど、
急にちょっと人恋しくなってきた。

これまでの台風は施設でみんなとワイワイやっていたので、
楽しかった思い出ばかりだけど、
今は矢野君と二人きりで真っ暗な唸る海の目の前。

少しソワソワとし始めた。

「何だお前、さっきまでワクワクとしていたのに、
怖いのか?」

ちょっと冗談交じりに矢野君が言った。

「へへへ」

と言って恥ずかし紛れに頭を掻くと、

「来いよ」

と矢野君はベッドのスペースを少し開けてくれた。

「ありがとう!」

そう言って彼のベッドに滑り込んだ瞬間、
バチッと感電したような音がして電気が消えた。

矢野君の持っていた携帯の周りだけがボーっと照らし出され、
矢野君の顔がお化けのように映った。

それが可笑しくて、ケラケラと笑っていると、

「ベッドの下にある懐中電灯取ってくれるか?」

そう矢野君が訪ねたので、
ベッドの下を探ると、
手の届く直ぐの所に懐中電灯が置いてあった。

「これ、ここのテーブルの上に置いとくな。
トイレに付いてきてほしい時はいつでも言えよ~」

と矢野君がからかったようにして言ったので、

「こうしとけば大丈夫!」

と、冗談返しのように僕は彼の背中の上に子亀のように乗っかった。
さすがは体の大きい矢野君。

僕が背中に乗っても、ぐうの音も出なかった。

「ねえ、今台風はどこら辺にいるの?」

肩越しにそう尋ねると、携帯に映し出されていた台風情報を

「ほら今ここ……」

と言って僕に携帯を向けた瞬間彼と目が合った。

たった数センチしかない距離の彼の瞳に僕は釘付けになった。
携帯の僅かな明かりに照らし出された彼の顔は、
もう幽霊という冗談どころではなかった。

その影に映し出されたまつ毛は長く、
愁いのこもった瞳はまだ何の経験もなかった僕に欲情さえ感じさせた。

彼の唇はほんのりと赤く潤い、
少し笑みを含んだ半開きになった唇に触れたいと思った瞬間、
僕の中にある何か音を立てて崩れたような気がした。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

綴った言葉の先で、キミとのこれからを。

小湊ゆうも
BL
進路選択を前にして、離れることになる前に自分の気持ちをこっそり伝えようと、大真(はるま)は幼馴染の慧司(けいし)の靴箱に匿名で手紙を入れた。自分からだと知られなくて良い、この気持ちにひとつ区切りを付けられればと思っていたのに、慧司は大真と離れる気はなさそうで思わぬ提案をしてくる。その一方で、手紙の贈り主を探し始め、慧司の言動に大真は振り回されてーー……。 手紙をテーマにしたお話です。3組のお話を全6話で書きました! 表紙絵:小湊ゆうも

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる

虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。 滅びかけた未来。 最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。 「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。 けれど。 血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。 冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。 それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。 終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。 命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

森で助けた記憶喪失の青年は、実は敵国の王子様だった!? 身分に引き裂かれた運命の番が、王宮の陰謀を乗り越え再会するまで

水凪しおん
BL
記憶を失った王子×森の奥で暮らす薬師。 身分違いの二人が織りなす、切なくも温かい再会と愛の物語。 人里離れた深い森の奥、ひっそりと暮らす薬師のフィンは、ある嵐の夜、傷つき倒れていた赤髪の青年を助ける。 記憶を失っていた彼に「アッシュ」と名付け、共に暮らすうちに、二人は互いになくてはならない存在となり、心を通わせていく。 しかし、幸せな日々は突如として終わりを告げた。 彼は隣国ヴァレンティスの第一王子、アシュレイだったのだ。 記憶を取り戻し、王宮へと連れ戻されるアッシュ。残されたフィン。 身分という巨大な壁と、王宮に渦巻く陰謀が二人を引き裂く。 それでも、運命の番(つがい)の魂は、呼び合うことをやめなかった――。

処理中です...