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第77話 言葉は大切だ
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しまった!
なんてヘマをしたんだ!
少しだけ矢野君と普通に話せて、
つい気が緩んでしまった。
大学の話題を出してしまうなんて!
僕は冷や汗がダラダラと流れる思いだった。
“僕、ピーンチ!
どうしよう?
これは正直に言っても良い奴?
どうしよう?
どうしよう?”
急に頭がグルグルとしだして真っ白になった。
気付けば僕は、
「城之内大学?
ハハハ~
そう言えば沖縄で同室になった時、
行きたいって話した事あったかな~?
どうだったっけ~? 忘れちゃった~
でもフラワーコーディネーターの勉強が
したくなったから進路変えちゃったんだけど~」
と白々しくそう答えていた。
矢野君は
「そうか……」
と一言ぽつりと言って、
また黙ってしまった。
“気付いた?
何か気付いた?”
僕はドキドキとしていた。
人は緊張するとおしゃべりにもなる。
その時の僕はアドレナリンが出すぎて、
きっとハイになっていたんだろう。
ペラペラ、ペラペラとしゃべりはじめた。
「まあ、ほら、大学はあれだけどさ、
そう言う訳で僕達、沖縄では凄く仲良くなってさ、
一緒にプールで遊んだり~
海で泳いだり~
一緒にご飯食べたり~
色んなこと2人で話ちゃって~
まあ、殆どが僕の事だったんだけど~
でも矢野君が僕に段々気を許してくれてさ~
ハハハ~ まぁ~ それで~ いや~ 何とういうか~
それである日~
え~っとぉ~ あの場所に連れて行ってくれたんだよ!
良い場所を知ってるから1人になりたい時に良いぞって……
僕も色々と進路や人生に悩んでたからさ~
だから僕はあの場所を知ってたって訳さ! ハハハ~」
そう言って矢野君の方をチラッと見た。
“間違ってないよね?
大事なところは省いてるけど、嘘は言って無いよね?”
僕はドキドキしながら床を見つめた。
心臓が喉から飛び出そうなくらい脈打って、
矢野君が僕をジーッと見ている視線が痛い程分かった。
“バレてる?
全部話して無い事バレてる?
ちょっと誤魔化し入ってるのバレてる?
僕がきょどってたの分かってる~?!”
脂汗が額を伝うような感覚だった。
きっとその時の僕は、
蛇に睨まれたカエルと言っても過言では無かっただろう。
矢野君の様子が気になって、彼の顔をチラッと見ると、
不運?にも僕を不審げに見る矢野君の目とあって、
また違った意味で僕はドキッとした。
矢野君は遠い目をすると、
「俺さ……」
と言い始めた。
その一言がまた怖かった。
何を言い出すのか緊張で息が止まりそうだった。
「俺さ、あの場所は誰にも教えるつもりはなかったんだ……」
そう彼が言った時、僕の心がズキっと傷んだ。
“誰にも教えるつもりはなかった……”
僕は分かっていた。
沖縄で初めて会った矢野君は、
まさしくそんな感じだった。
とがったナイフの様に、
寄ってくる皆をはねのけた。
僕の事もそうだった。
きっと仲良くなるなんて、
最初は微塵も思ってなかったはずだ。
僕が俯いて床を見つめ直すと、
「取りあえず、咲耶にいつかは見せたいって思ってたけど……」
と来た時に、分かっていたセリフに、
嫉妬で頭が沸騰しそうだった。
“泣くもんか!”
そう頑張っていると、
「何故俺は咲耶よりも先に、お前をあの場所に連れて行ったんだ?」
と矢野君が続けてボソッと言った。
僕は泣きたくなるような気持ちを抑えながら、
「そ……そんな事僕に聞いても……」
そう言った時、寝室のドアがバーンと開いて、
「よう!」
と佐々木君が入って来た。
僕は佐々木君の顔を見た途端、
訳の分からない感覚がして、ホッと安堵の息をついた。
今は彼の登場が死ぬほど嬉しかった。
矢野君は
“又かよ!”
というような顔をすると、
「お前、ノックぐらいしろって前から言ってるだろ!」
と、文句を言い始めた。
佐々木君は前からここに来る時は、
いきなりドアを開けていたようだ。
「いや、茉莉花さんに陽向はここに居るって聞いてさ。
お前、陽向を小間使いにする気か?
陽向に身の回りの世話を頼んだそうだな?
お前が問題なのは記憶であって、
体は問題なく動くだろう?!」
天の助けとは良く言ったもんだが、
佐々木君もやって来て早々容赦ない。
でも矢野君から、
沖縄の話題はすっかり消えていた事は良かった。
佐々木君はというと、矢野君が
僕をお手伝いに仕立て上げたことが気に入らないらしい。
「小間使いってお前な、
お袋に無理やり提案されたんだよ。
まあ、俺も色々と反省して、
陽向との友人関係を修復していけたらって……」
「はー! お前、殊勝な奴だな。
この間までは陽向の事、ぞんざいな扱いだったのに、
もう陽向呼ばわりですか?」
二人のヒートアップを見かねた僕が、
「佐々木君! 僕は大丈夫だから!
矢野君、ちゃんと謝ってくれたから!
佐々木君が言ってくれたんでしょう?
有難う……
でも、本当に僕は大丈夫だから!」
そう言って佐々木君をなだめようとすると、
佐々木君は僕をグイッと自分の方に引き寄せ、
“お前があいつをかばうところを見るのは
やっぱ面白くないな”
そう言って耳元で囁いた。
矢野君はそんな僕達を見ると、
少し怪訝な顔つきをして、
「もしかしてお前たち、
付き合ってるのか?」
と尋ねた。
佐々木君は深くため息を付くと、
僕をチラッと見て、
「前にもそう言う事聞いてきたよな。
ほんとに、何でこんな奴なんか……」
とガクッとしたようにして言った。
それを矢野君は勘違いして受け取ったようで、
「お前、そんな失礼な言い方!
陽向に悪いだろ?!」
と僕の事をこんな奴と言ったと思い、
逆に佐々木君に怒ってくれた。
きっと佐々木君は、
“なんでお前の事を気付いてくれない
光の事なんか好きになって”
って言いたかったんだと思う。
ただでさえ記憶を無くした矢野君とは意志の疎通が難しいのに、
本当のことも言えない僕は到底矢野君から思い出してもらう事は無理だ。
分からない事はちゃんと言葉で伝えないと、
思い出さないばかりか、
今の僕も理解してもらえない……
それだけは嫌だ!
矢野君に僕の事を思い出してもらうには、
もしそれがかなわなくても、
もう一度彼に好きになってもらうには、
僕は矢野君へのアプローチを変える必要があるのかもしれない。
でも、少し先に進むことが出来た!
少し沖縄でのことを話しただけで、
矢野君が失くした記憶の部分を少し知ってくれた。
もし思い出せなくても、
そうやって少しずつ、言葉で教えてあげよう……
無理をせずに、少しずつ、少しずつ……
そう思いながら2人を見つめると、
「ほら、ほら、二人とも、
全ては良い方向へ向かってるんだから!
ケンカしない、しない!」
と、明るく努めてそう言うと、
今度は二人して、
「お前って……」
と、なんとも息がぴったりだ。
「で? 何の用なんだ?」
「そうそう、陽向を飯にでも誘おうかと思って」
佐々木君がそう言うと、
「やっぱり付き合ってんじゃん」
と矢野君も誤解したままだ。
まあ、今のところは隠れ蓑にそれでもいいかもしれない。
僕は荷物を手に持つと、
「じゃあ、僕、もう行くね。
明日は7時に迎えに来るから」
そう言うと、佐々木君の腕をつかんで、
そそくさと矢野君の部屋を後にした。
“フ~ッ、ひとまずは助かった……”
一息ついていると、
「ところで、明日の7時に迎えに来るって何だ?」
部屋を出た途端、佐々木君がそう尋ねた。
「あ~、矢野君、明日から大学復帰するみたいで、
用心の為に2,3日だけ、駅まで一緒に行くんだ」
「駅まで? 駅から大学までひとりで行けるんだったら、
家から一人でもよくないか?
全く、甘えやがって」
「まあ、茉莉花さんを安心させるためにも、
駅までは一緒にってね……」
そこから咲耶さんにバトンタッチされることは
なぜか佐々木君には言えなかった。
「それにしても、光の部屋って相変わらず殺風景だよな」
「そうだね、僕もそう思ったよ。
でもあの絵は良いね。
ひいひいお祖父ちゃんが描いたんだってね。
それって佐々木君のお祖父ちゃんでもあるの?」
「いや、光の高祖母が俺の高祖父の兄だったんだ。
だから俺は矢野姓のDNAは関係ないな」
「そっか……じゃあ、矢野君のひいひいお祖母ちゃんが
佐々木家出なんだね」
「そうなるな。
知ってるか?
光の部屋に会ったあの絵……」
「あ~ 凄くいい絵だよね。
あれって矢野君のひいひいお祖父ちゃんが描いて
お祖母ちゃんにプレゼントしたんだよね?」
「そうだったな。
だがな、知ってたか?
あの絵って曰く付きなんだぞ?」
佐々木君がよほどの事のように言うので、
僕は矢野君のひいひいお祖父ちゃんの幽霊でも出るのかと思って
ビクッとなった。
そんな僕を佐々木君は笑っていたけど、
後で分かった事によると、
あの絵は曰く付きは曰く付きでも、
とてもロマンチックな曰くだった。
なんてヘマをしたんだ!
少しだけ矢野君と普通に話せて、
つい気が緩んでしまった。
大学の話題を出してしまうなんて!
僕は冷や汗がダラダラと流れる思いだった。
“僕、ピーンチ!
どうしよう?
これは正直に言っても良い奴?
どうしよう?
どうしよう?”
急に頭がグルグルとしだして真っ白になった。
気付けば僕は、
「城之内大学?
ハハハ~
そう言えば沖縄で同室になった時、
行きたいって話した事あったかな~?
どうだったっけ~? 忘れちゃった~
でもフラワーコーディネーターの勉強が
したくなったから進路変えちゃったんだけど~」
と白々しくそう答えていた。
矢野君は
「そうか……」
と一言ぽつりと言って、
また黙ってしまった。
“気付いた?
何か気付いた?”
僕はドキドキとしていた。
人は緊張するとおしゃべりにもなる。
その時の僕はアドレナリンが出すぎて、
きっとハイになっていたんだろう。
ペラペラ、ペラペラとしゃべりはじめた。
「まあ、ほら、大学はあれだけどさ、
そう言う訳で僕達、沖縄では凄く仲良くなってさ、
一緒にプールで遊んだり~
海で泳いだり~
一緒にご飯食べたり~
色んなこと2人で話ちゃって~
まあ、殆どが僕の事だったんだけど~
でも矢野君が僕に段々気を許してくれてさ~
ハハハ~ まぁ~ それで~ いや~ 何とういうか~
それである日~
え~っとぉ~ あの場所に連れて行ってくれたんだよ!
良い場所を知ってるから1人になりたい時に良いぞって……
僕も色々と進路や人生に悩んでたからさ~
だから僕はあの場所を知ってたって訳さ! ハハハ~」
そう言って矢野君の方をチラッと見た。
“間違ってないよね?
大事なところは省いてるけど、嘘は言って無いよね?”
僕はドキドキしながら床を見つめた。
心臓が喉から飛び出そうなくらい脈打って、
矢野君が僕をジーッと見ている視線が痛い程分かった。
“バレてる?
全部話して無い事バレてる?
ちょっと誤魔化し入ってるのバレてる?
僕がきょどってたの分かってる~?!”
脂汗が額を伝うような感覚だった。
きっとその時の僕は、
蛇に睨まれたカエルと言っても過言では無かっただろう。
矢野君の様子が気になって、彼の顔をチラッと見ると、
不運?にも僕を不審げに見る矢野君の目とあって、
また違った意味で僕はドキッとした。
矢野君は遠い目をすると、
「俺さ……」
と言い始めた。
その一言がまた怖かった。
何を言い出すのか緊張で息が止まりそうだった。
「俺さ、あの場所は誰にも教えるつもりはなかったんだ……」
そう彼が言った時、僕の心がズキっと傷んだ。
“誰にも教えるつもりはなかった……”
僕は分かっていた。
沖縄で初めて会った矢野君は、
まさしくそんな感じだった。
とがったナイフの様に、
寄ってくる皆をはねのけた。
僕の事もそうだった。
きっと仲良くなるなんて、
最初は微塵も思ってなかったはずだ。
僕が俯いて床を見つめ直すと、
「取りあえず、咲耶にいつかは見せたいって思ってたけど……」
と来た時に、分かっていたセリフに、
嫉妬で頭が沸騰しそうだった。
“泣くもんか!”
そう頑張っていると、
「何故俺は咲耶よりも先に、お前をあの場所に連れて行ったんだ?」
と矢野君が続けてボソッと言った。
僕は泣きたくなるような気持ちを抑えながら、
「そ……そんな事僕に聞いても……」
そう言った時、寝室のドアがバーンと開いて、
「よう!」
と佐々木君が入って来た。
僕は佐々木君の顔を見た途端、
訳の分からない感覚がして、ホッと安堵の息をついた。
今は彼の登場が死ぬほど嬉しかった。
矢野君は
“又かよ!”
というような顔をすると、
「お前、ノックぐらいしろって前から言ってるだろ!」
と、文句を言い始めた。
佐々木君は前からここに来る時は、
いきなりドアを開けていたようだ。
「いや、茉莉花さんに陽向はここに居るって聞いてさ。
お前、陽向を小間使いにする気か?
陽向に身の回りの世話を頼んだそうだな?
お前が問題なのは記憶であって、
体は問題なく動くだろう?!」
天の助けとは良く言ったもんだが、
佐々木君もやって来て早々容赦ない。
でも矢野君から、
沖縄の話題はすっかり消えていた事は良かった。
佐々木君はというと、矢野君が
僕をお手伝いに仕立て上げたことが気に入らないらしい。
「小間使いってお前な、
お袋に無理やり提案されたんだよ。
まあ、俺も色々と反省して、
陽向との友人関係を修復していけたらって……」
「はー! お前、殊勝な奴だな。
この間までは陽向の事、ぞんざいな扱いだったのに、
もう陽向呼ばわりですか?」
二人のヒートアップを見かねた僕が、
「佐々木君! 僕は大丈夫だから!
矢野君、ちゃんと謝ってくれたから!
佐々木君が言ってくれたんでしょう?
有難う……
でも、本当に僕は大丈夫だから!」
そう言って佐々木君をなだめようとすると、
佐々木君は僕をグイッと自分の方に引き寄せ、
“お前があいつをかばうところを見るのは
やっぱ面白くないな”
そう言って耳元で囁いた。
矢野君はそんな僕達を見ると、
少し怪訝な顔つきをして、
「もしかしてお前たち、
付き合ってるのか?」
と尋ねた。
佐々木君は深くため息を付くと、
僕をチラッと見て、
「前にもそう言う事聞いてきたよな。
ほんとに、何でこんな奴なんか……」
とガクッとしたようにして言った。
それを矢野君は勘違いして受け取ったようで、
「お前、そんな失礼な言い方!
陽向に悪いだろ?!」
と僕の事をこんな奴と言ったと思い、
逆に佐々木君に怒ってくれた。
きっと佐々木君は、
“なんでお前の事を気付いてくれない
光の事なんか好きになって”
って言いたかったんだと思う。
ただでさえ記憶を無くした矢野君とは意志の疎通が難しいのに、
本当のことも言えない僕は到底矢野君から思い出してもらう事は無理だ。
分からない事はちゃんと言葉で伝えないと、
思い出さないばかりか、
今の僕も理解してもらえない……
それだけは嫌だ!
矢野君に僕の事を思い出してもらうには、
もしそれがかなわなくても、
もう一度彼に好きになってもらうには、
僕は矢野君へのアプローチを変える必要があるのかもしれない。
でも、少し先に進むことが出来た!
少し沖縄でのことを話しただけで、
矢野君が失くした記憶の部分を少し知ってくれた。
もし思い出せなくても、
そうやって少しずつ、言葉で教えてあげよう……
無理をせずに、少しずつ、少しずつ……
そう思いながら2人を見つめると、
「ほら、ほら、二人とも、
全ては良い方向へ向かってるんだから!
ケンカしない、しない!」
と、明るく努めてそう言うと、
今度は二人して、
「お前って……」
と、なんとも息がぴったりだ。
「で? 何の用なんだ?」
「そうそう、陽向を飯にでも誘おうかと思って」
佐々木君がそう言うと、
「やっぱり付き合ってんじゃん」
と矢野君も誤解したままだ。
まあ、今のところは隠れ蓑にそれでもいいかもしれない。
僕は荷物を手に持つと、
「じゃあ、僕、もう行くね。
明日は7時に迎えに来るから」
そう言うと、佐々木君の腕をつかんで、
そそくさと矢野君の部屋を後にした。
“フ~ッ、ひとまずは助かった……”
一息ついていると、
「ところで、明日の7時に迎えに来るって何だ?」
部屋を出た途端、佐々木君がそう尋ねた。
「あ~、矢野君、明日から大学復帰するみたいで、
用心の為に2,3日だけ、駅まで一緒に行くんだ」
「駅まで? 駅から大学までひとりで行けるんだったら、
家から一人でもよくないか?
全く、甘えやがって」
「まあ、茉莉花さんを安心させるためにも、
駅までは一緒にってね……」
そこから咲耶さんにバトンタッチされることは
なぜか佐々木君には言えなかった。
「それにしても、光の部屋って相変わらず殺風景だよな」
「そうだね、僕もそう思ったよ。
でもあの絵は良いね。
ひいひいお祖父ちゃんが描いたんだってね。
それって佐々木君のお祖父ちゃんでもあるの?」
「いや、光の高祖母が俺の高祖父の兄だったんだ。
だから俺は矢野姓のDNAは関係ないな」
「そっか……じゃあ、矢野君のひいひいお祖母ちゃんが
佐々木家出なんだね」
「そうなるな。
知ってるか?
光の部屋に会ったあの絵……」
「あ~ 凄くいい絵だよね。
あれって矢野君のひいひいお祖父ちゃんが描いて
お祖母ちゃんにプレゼントしたんだよね?」
「そうだったな。
だがな、知ってたか?
あの絵って曰く付きなんだぞ?」
佐々木君がよほどの事のように言うので、
僕は矢野君のひいひいお祖父ちゃんの幽霊でも出るのかと思って
ビクッとなった。
そんな僕を佐々木君は笑っていたけど、
後で分かった事によると、
あの絵は曰く付きは曰く付きでも、
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