Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑

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第91話 咲耶さんの真実

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“はい? 僕、今何か聞き間違えましたか?

確か彼、矢野君の事を返してと言いませんでしたか?”

僕が

“この人何を言ってるんだろう?”

そう言った目で咲耶さんを見ると、
もう一度、

「僕の光を返してよ」

そう僕に訴えかけてきた。

「何言ってるんですか……?!」

僕の声が震え始めた。

「ねえ、君はまだ若いし、まだまだこれからがある……

でも僕には何もない。

まぁ君もいなくなった。
まあ君の父親もいなくなった。

僕にはもう光しかいないんだ。

ねえ、光を僕にかえしてよ!」

「そんな…… 返してって……

彼はものじゃ無いよ。

それに僕たちは……」

そう言いかけた時、

「本当は光は僕と番になるはずだったんだよ?」

そう咲耶さんが訴えかけてきた。

「え? でも矢野君は咲耶さんが噛ませてくれなかったって……」

「今更と思うかもしれないけどさ、君さ、常識ある大人が、
未成年の、それも高校生の子供に噛ませると思うの?!」

「は? それって単なるいいわけじゃないんですか?

そう言えるんだったら、高校生になんて手を出しませんよね?」

そう言うと、彼は僕の事を馬鹿にしたような目で見た。

「何ですか? 僕の事馬鹿にしてるんですか?!」

そう言うと、

「君ホントにバカだよね?

光に何を聞いたのか知らないけど、
僕は光と寝たことなど一度もないよ」

というセリフが帰って来た。

「えっ?」

仰天している僕の顔を見ると、

「もう一度言ってあげようか?

僕は光と寝た事なんて一度もないよ。

僕は何度も光を誘ったんだよ。

でも僕と寝ようとしなかったのは光の方なんだよ」

「どういう事……?

矢野君が僕に嘘を言ってるの?

矢野君、咲耶さんと何度もって……」

訳が分からなくなった。

「光が君に何を言ったのか知らないけど、
本当に僕たちは健全なお付き合いだったんだよ……

もし光がそう言ってるんだったら、
一体誰との事を言ってるんだろうね」

咲耶さんが念を押して僕にそう言った。

「でも……矢野君が……」

「何? 光が僕と寝たことがあるとでも言ったの?」

そう言われ、思い返せば、
矢野君からは咲耶さんとやったこと事など、
はっきりと聞いたことがなかった。

僕がずっとそう思っていただけだった。

「じゃあ……僕の勘違い……?

いや…… まさか? でも……

ハッ! もしかして……?!」

思い当たることが一つだけあった。

「フフ…… 思い当たる事がある様だね。

でもね、僕たちはその時が来たら番になろうと誓っていたんだ。

正直言うと……

君も聞いてると思うけど……

僕は光とある一人の人との間で揺れていた事があるんだ。

光は知らなかったんだけどね……」

「じゃあ、それがまぁ君のお父さん……」

そう言うと、咲耶さんは頷いた。

僕はグッと息を飲み込むと、

「その時の経験を、
咲耶さんの観点から教えていただけますか?」

そう尋ねた。

本当は聞くのが怖い……

もしかしたらこの二人にはお互いが気付かなかった
すれ違いがあるのかもしれない……

もしその事がお互い分かれば……

“僕は捨てられる?!”

息が出来なくなるくらい胸が苦しくなった。

その時僕の頭の中に過ったのは

“番解消”

でも真実を知る事は、
僕たちにとって避けては通れない道だ。

僕は咲耶さんの言葉に耳を傾けた。

まぁ君の事を話しに来たのに、
とんでもないことになってしまった。

でも矢野君と佐々木君がここに居なくて良かった。

心の中ではぼんやりとそんなことを考えていた。

もう半分僕の意識はマヒを起こしているような状態だった。

“良かった…… なんだか心が鈍いや……

これだったら何を聞いてもショックは受けないかも……”

そう考えてるうちに咲耶さんは話し始めた。

「僕にはずっと好きな人が居た……」

“うん、うん、それは聞いてる”

「彼は自由奔放な人で、
彼に惹かれる人は多かった……

僕は彼がよく現れるというバーに行っては彼の事を待っていた……

そしてある日そこに光が来たんだ……」

“うん、それも矢野君の話と一致している”

「なんてカッコいい子だろうと思った。

ちょっときょどっていたから、バーは初めてなのかな?と思って……

待ち人も来なかったし、
光も僕の顔理想ではど真ん中いってたから声かけたんだ……

まさか高校生だったなんてね……」

僕はうん、うんと頷きながら聞いていた。

「大学生だって言ったからそれを信じて一緒にお酒飲んで……」

“うん、うん、年齢を偽ってバーに言ったとも言ってたな”

「凄く気が合って……

本命に相手にされない僕の心を癒してくれたんだ……

実際に光といるのは凄く楽しかった。

そして僕もだんだんと光とばかり会うようになって……

凄く、凄く、凄く好きだと思った時もあった。

でもやっぱり本命も忘れられなくて……」

そこは初耳だった。

咲耶さんが矢野君に惹かれている部分があるとは思いもしなかった。

そこは少なからずショックだった。

「君は…… 愛する人が二人いる人ってどう思う?」

そう尋ねられ戸惑った。

「二人…… ですか?」

そう尋ね返すと、

「僕ね、本命も凄く好きだったけど、
光の事も凄く好きだったんだよ」

そう言う咲耶さんに面食らった。

“好きな人が二人……
そんな事って可能?”

「本命には相手にされないし、
光と会う回数が上がるたびに……

本命への気持ちが薄れだしたことに気付いたんだ……

その頃は光も僕を求めてくれてね。

いつもの様に番になりたいって……」

そこまで咲耶さんが言った時に心臓を握りつぶされたような気がした。

「でもね、僕も純情っていうわけでは無いけど、
そこの頃は本命を追っていて光に抱かれるわけにもいかなかったし……

やっぱりチャンスが巡って来た時は本命には嫌われたくなかったしね。

αってそう言うの分かるらしいし……

だからずっと拒んでいたんだけど、
いつの間にか光が誤解しちゃってね、
僕の事を求めなくなったんだ……」

「え? それって矢野君が咲耶さんに本命がいるって気付かれたって言う事ですか?」

「違うと思う……

きっと僕が純潔を守っていると思ったんじゃ無いかな?

光が好きだと分かった時に何度も抱いてくれと頼んだけど、
結婚するまで待とうって……

参っちゃったよね。

どんなに願っても、僕の事抱いてくれなかった。

凄く僕の事を大事にしてくれてるのは分かった。

項もね、噛ませなかったんじゃなくて、
そう言う訳で噛む噛まない以前の問題だったんだよ……

まあ、最初に拒んだのは僕だったんだけどね……」

「じゃ完全なるすれ違い?」」

僕は少し矢野君の記憶に疑問を持ち始めた。

「僕ね、光の前で何度かヒートを起こしたことがあるんだよ」

そう言われ、ビクッとした。

「でもあれ、どんな精神力なんだろうね。

光、僕のヒートに当てられてるの分かるのに、
絶対僕を襲わないんだよ。

時にはわざと光の前でヒートを起こしたことあるんだよね。

発情促進剤を使ってね」

「そんな……」

「でね、凄い精神力で自分の事抑えてるんだけど、
それも危なくなる時ってあるじゃ無い?

だからそんな時でも僕の事を抱いてくれない意地悪で
僕も絶対触れさせようとしなかった……

いわば駆け引きだよね。

それが裏目に出ちゃったんだよね。

あの時抱かせておけば良かった……

噛ませておけばよかった……

まさかあんなことになるんてね……」

そう言って咲耶さんが遠くを見た。
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