166 / 167
気付いた思い
しおりを挟む
セシルが僕をチラッと見た時、
それにつられ何故か僕は辺りをキョロキョロと見回した。
その瞬間、皆が僕に視線を寄せている事に気付いた。
思わず僕は
”へっ?!“
としたようにして、自分を指さして眉間に皺を寄せた。
自分に指さして皆が僕に視線をよせる中、
セシルも僕に向かって指差した。
ビクッとした拍子にセシルの指先に焦点が合うと、
「えっ?! 僕?!」
と初めて声を出した。
ビックリしてそう言いながら
少し身を引くと、
セシルは僕に突き出した人差し指を
グルグルと回しながら僕の鼻に近づいて来て
ポーンと鼻をつくと、
「そうよ!
貴方は未だ前世を思い出してないけど、
思い出したら私の言ってる事がすぐに分かるわ!
いかに貴方が私達のこれからの戦いに重要な人物かって事が!
今は詳しくは言えないけど、
貴方が聖龍と繋がっている事が大きな鍵なのよ!
それとデューデューも!
他の龍に対してもそうかは分からないけど、
アイツは異常なほどにデューデューに執着していたわ!
ショウといい勝負ね!って言うのは冗談だけど、
アイツ、デューデューの事を自分の龍だって、
何処までも追いかけて来たのよ!
デューデューもきっと、
翠と同じように何か特別なものがあるのかも知れないわ。
他の龍と違って灰色だし、
話せるし、人に姿を変えられるし……」
そう言って父さんを見た後、
少し眉間に皺を寄せて、
「ねえデューデュー、
アイツは貴方が人の姿になれるって未だ知らないわよね?
前世の私たちが去った後、
アイツと接触したりしてないわよね?!」
そう言って父さんに詰め寄った。
父さんはセシルを見つめ首を振ると、
「奴とは前世のお前達が去って以来、
一度も接触した事がない。
恐らく私が生きている事も知らないだろう」
そう言って何かを考えたように黙り込んだ。
セシルはホッと胸を撫で下ろすと、
シャムアを見て、
「そう言う事だから、
デューデューがルーに仇なすことは絶対無いわ。
何と言ってもデューデューは前世も今も、
私達にとって家族みたいなものだから……
ルーも目覚めたら、
貴方にそれを証明してくれるはずよ。
で? 何か他に尋ねたい事ある?
話せる事だったらなんでも話すわよ」
そうセシルが言うと、
シャムアは少し考えて、
「確かサンクホルムは前王弟が王になっているはずだが、
彼にはその事は?
翠の……いや、亡くなったジェイド王子の叔父なんだろ?
翠はその王子の生まれ代わりなんだろ?
髪だって本当は銀色の様だし……
以前聞いた事があるが、
それってサンクホルムの王家の血筋って事だろ?
それだったら現王に助けを求めるのが1番良いのでは無いのか?」
そう尋ねた。
瞬間セシルが眉間に皺を寄せ、
顔を少し歪ませた。
何時も陽気なセシルがそんな顔をするのが不思議で
少しの間、彼女の様子を見ていたけど、
彼女は黙ったままで拳を握りしめてピクリとも動かなかった。
僕が首を傾げながら、
「セシル、大丈夫?
ちょっと様子が変だけど、
何かシャムアが変なことでも言った?」
そう尋ねて下を向く彼女の顔を覗き込んだ。
セシルは声を震わせながら、
「シャムアが言った事が出来ればどんなに良かったか……」
そうボソッと言った。
それを聞いた僕が、
「まあ、確かに僕らが彼らの生まれ変わりだって言っても、
きっと信じてもらえないだろうね~
それに一国の王様、
きっと近づく事も出来ないんだろうね?
あ、でもルーが居るね?
皇子として謁見とかは……
いや、ルーは正式な訪問じゃ無いから、
皇帝を通さないと、皇子としての面会も難しいのかな?
それにサンクホルムとは繋がりが無いって前にも言ってたよね?
やっぱ王に会うのは僕達だけでは無理かー
あー!!! 僕が前世を思い出したら
もっと簡単に会えた可能性はあるけど……
この髪を見せてもダメかな?!
サンクホルムの後継の証にはならないかな?!
それだったら王様も信じてくれるかな?!」
何気なしにそう言うと、
セシルが怒ったような顔をして僕を見た。
「え? あ? ぼ……僕、何か変なこと言った?」
オロオロしたようにそう尋ねると、
彼女は泣くのを堪えたようにして、
「そうね、貴方の記憶が戻ればね!」
そう捨て台詞の様に言って父さんに抱きついて泣き出した。
僕は訳が分からず父さんに目配せで助けを求めると、
父さんはちょっと困った様な顔をして、
「今はお前達が転生者だと言う事は此処だけに留めた方が賢明だ」
そう言ったので、
僕も何気なく深刻さを悟った。
”僕の髪の色は
僕が思うより明確に何かを証明するものなんだ。
それも悪い方へ……“
僕は父さんの胸で泣くセシルの肩に手を置き、
「セシル、ごめん。
ずっと僕のこの髪のことは隠しておく様に言われてたのに、
僕が考えなしだった……
僕には何故かよく分からないけど、
前世のことはもっと真剣に受け止めるよ……」
そう言って謝ると、
セシルは僕にしがみ付いて、
「翠、貴方が大切なの。
アーウィンも、ダリルも、デューデューも、
みんな私の宝物なの!
もうあんな経験は、
あんな思いは2度としたく無いの!
お願いだから、
貴方を守らせて!
前世では出来なかったことを、
今度はちゃんとさせて!
これでも私は貴方の母親だったのよ!」
そう言うと、
僕をギュッと抱きしめた。
「ごめん、本当にごめん。
君を見てたら凄く考えさせられたよ。
僕の考えが凄く浅はかだった!
今までは漠然としか前世の事については考えてなかったけど、
僕も前世を思い出せる様に努力する。
どうすれば良いか分からないけど、
もっと前世のことを真剣に考える!」
そう言ってセシルを抱きしめ返すと、
セシルは首を振りながら、
「ううん、翠、貴方はちっとも悪く無いのよ。
私が焦りすぎて貴方に必要以上を求めすぎたの。
私の方こそ嫌な態度をとって御免なさい……」
そう言った後僕をもう一度ギュッと抱きしめて、
「ダリル……貴方、何処に居るのよ!
どうして翠の前に現れないのよ!
翠が大切では無いの?!
早く来なさいよ!
貴方さえいれば……貴方さえ翠のそばにいれば……翠は……」
そう言って静かになった。
僕はセシルの腕を掴んで僕から引き離すと、
「ねえ、どう言う意味?
今、ダリルがいれば僕がどうとかって言ったよね?
ねえ、ダリルが居れば僕が何なの?!」
そう言ってセシルの肩を揺らした。
セシルはそっぽを向きながら、
「ダリルは貴方の護衛騎士だったから……
彼がいれば、貴方をもっと守れる様になるから……」
そう繕った様に言うセシルに、
「今のセシルの言い方はそれだけじゃ無かったよね?!
何かもっと他に!」
そう言って迫ったけどセシルは横を向いて俯くだけで
それ以上は何も言わなかった。
”そうだよ!
ダリルだよ!
何故彼は現れないんだ?!
僕の記憶は無いにしろ、
僕達3人はもう既にこうして出会っている。
何故ダリルだけがここに居ないんだ?!
何かがおかしい……“
そう思うと、急に不安が体の奥底から込み上げて来た。
”それにセシルの態度は何処か不自然だ。
何故あの場面でダリルが出てくるんだ?!
確かにダリルはここには未だ居ない。
ジェイドの護衛騎士だったことも十分分かっている。
でも彼女の態度はそれだけじゃ無い……
僕はダリルに対して何か見落としている事があるのか?“
一人でブツブツとそう言う事を反芻していると、
僕の鼓動が段々と早くなって、
何か大切な事を忘れている様な感覚に陥った。
“ちょっと待てよ……まさか……まさか……”
ずっと考えない様にして来た想いがフッと胸の奥をよぎって
僕は頭をブンブンと振った。
”……………“
僕はバッとセシルの方を見た。
彼女は僕と目をあわせない様としているみたいに
横を向き続けた。
”彼女は何か気づいている……
僕が今予想している事が何なのか気付いている!
嘘だろ?!
僕の予想は当たっていたのか?!
きっとそうだ……
セシルに尋ねたら正直に話してくれるだろうか?
いや……セシルは僕が思い出さない限りは絶対に言わないだろう。
でも間違いない!
ダリルとジェイドは……恋人同士だったんだ!“
そう思った瞬間何かがストーンと腑に落ちた。
途端、僕の全身に鳥肌がたった。
“そうだ! 間違いない!
ダリルとジェイドは愛し合っていたんだ!
今ならわかる!
僕はジェイドだったんだ!”
心の奥から否定できない様な感覚が襲って来た。
未だ思い出してはいないが、
翠の心が、ジェイドの魂が全霊を掛けて叫んでいる。
“ジェイドはダリルを愛していたんだ!
そして彼の魂を探している!
何故今まで分からなかったんだ!
何故ジェイドの心を認めてあげれなかったんだ!“
途端、未だ思い出してもいないダリルが凄く愛しくて胸が苦しくなって来た。
僕はそっぽを向き続けるセシルを見つめた。
”ダリルの事を思い出したい……
彼に会いたい!“
予想が確信に変わった時、
僕の中にあったタカが外れた様に
何故かダリルに対する想いが溢れ出し始めた。
脈拍が乱れ、
急に僕の呼吸が苦しくなった。
”な……何だこれは……
い……息が出来ない”
胸を抑え、
ヒューヒューと息をする僕の異変に直ぐに龍輝が気づいた。
「翠! ゆっくりと息をして!」
直ぐに龍輝が僕の肩を抱いて
背を摩り始めた。
「翠、ゆっくり!
ゆっくり!
吸って、吐いて」
そう言いながらリズムをとり始めた。
コクコクと頭を下げて龍輝に合わせて呼吸をすると、
段々と呼吸が楽になって来た。
「一体何があったんですか?
急に過呼吸になるなんて」
龍輝は心配そうに尋ねて来た。
さっきまでそっぽを向いていたセシルも
心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。
「過呼吸……って……?」
聞きなれない言葉に龍輝の顔を見上げると、
「翠は急激に呼吸が速くなったのです。
そのために体内の酸素が増えすぎて息が苦しくなったんです。
騎士達も訓練中によく掛かるんです」
そう説明する龍輝に
「そうなんだ。
助けてくれてありがとう……」
そう礼を言うと、
「いえ、翠を助けられて私は嬉しいですが……
一体何を考えていたのですか?
過呼吸になるなんて、
何か嫌なことでも思い出したのですか?」
そう龍輝が尋ねて来た。
僕は咄嗟にダリルの事をまた思い出した。
僕は眉間に皺を寄せ心配そうに僕を覗き込む龍輝の視線を超えて
セシルを呼んだ。
「セシル!
セシル!」
そう呼ぶとセシルは横から僕の手を握って来た。
「翠、私はここよ!
大丈夫?
もう気分は悪く無い?!」
心配そうに僕の手を握りしめるセシルに、
「セシル、
僕、ダリルに会いたい……
今、凄くダリルに会いたいんだ。
ダリルに会いたい!」
そう言うと、
「翠……
貴方、ダリルの事、何か思い出したの?」
そう尋ねるセシルに、
「ううん、未だ何も……でも……」
首を振りながらそう言うと、
セシルが首を傾げた。
「じゃあ、何故ダリルにって……?」
不思議そうに尋ねるセシルの耳に口元を近付けると、
誰にも聞こえないように、
“僕はダリルが好きだ”
そう言ってセシルの耳元で囁いた。
それにつられ何故か僕は辺りをキョロキョロと見回した。
その瞬間、皆が僕に視線を寄せている事に気付いた。
思わず僕は
”へっ?!“
としたようにして、自分を指さして眉間に皺を寄せた。
自分に指さして皆が僕に視線をよせる中、
セシルも僕に向かって指差した。
ビクッとした拍子にセシルの指先に焦点が合うと、
「えっ?! 僕?!」
と初めて声を出した。
ビックリしてそう言いながら
少し身を引くと、
セシルは僕に突き出した人差し指を
グルグルと回しながら僕の鼻に近づいて来て
ポーンと鼻をつくと、
「そうよ!
貴方は未だ前世を思い出してないけど、
思い出したら私の言ってる事がすぐに分かるわ!
いかに貴方が私達のこれからの戦いに重要な人物かって事が!
今は詳しくは言えないけど、
貴方が聖龍と繋がっている事が大きな鍵なのよ!
それとデューデューも!
他の龍に対してもそうかは分からないけど、
アイツは異常なほどにデューデューに執着していたわ!
ショウといい勝負ね!って言うのは冗談だけど、
アイツ、デューデューの事を自分の龍だって、
何処までも追いかけて来たのよ!
デューデューもきっと、
翠と同じように何か特別なものがあるのかも知れないわ。
他の龍と違って灰色だし、
話せるし、人に姿を変えられるし……」
そう言って父さんを見た後、
少し眉間に皺を寄せて、
「ねえデューデュー、
アイツは貴方が人の姿になれるって未だ知らないわよね?
前世の私たちが去った後、
アイツと接触したりしてないわよね?!」
そう言って父さんに詰め寄った。
父さんはセシルを見つめ首を振ると、
「奴とは前世のお前達が去って以来、
一度も接触した事がない。
恐らく私が生きている事も知らないだろう」
そう言って何かを考えたように黙り込んだ。
セシルはホッと胸を撫で下ろすと、
シャムアを見て、
「そう言う事だから、
デューデューがルーに仇なすことは絶対無いわ。
何と言ってもデューデューは前世も今も、
私達にとって家族みたいなものだから……
ルーも目覚めたら、
貴方にそれを証明してくれるはずよ。
で? 何か他に尋ねたい事ある?
話せる事だったらなんでも話すわよ」
そうセシルが言うと、
シャムアは少し考えて、
「確かサンクホルムは前王弟が王になっているはずだが、
彼にはその事は?
翠の……いや、亡くなったジェイド王子の叔父なんだろ?
翠はその王子の生まれ代わりなんだろ?
髪だって本当は銀色の様だし……
以前聞いた事があるが、
それってサンクホルムの王家の血筋って事だろ?
それだったら現王に助けを求めるのが1番良いのでは無いのか?」
そう尋ねた。
瞬間セシルが眉間に皺を寄せ、
顔を少し歪ませた。
何時も陽気なセシルがそんな顔をするのが不思議で
少しの間、彼女の様子を見ていたけど、
彼女は黙ったままで拳を握りしめてピクリとも動かなかった。
僕が首を傾げながら、
「セシル、大丈夫?
ちょっと様子が変だけど、
何かシャムアが変なことでも言った?」
そう尋ねて下を向く彼女の顔を覗き込んだ。
セシルは声を震わせながら、
「シャムアが言った事が出来ればどんなに良かったか……」
そうボソッと言った。
それを聞いた僕が、
「まあ、確かに僕らが彼らの生まれ変わりだって言っても、
きっと信じてもらえないだろうね~
それに一国の王様、
きっと近づく事も出来ないんだろうね?
あ、でもルーが居るね?
皇子として謁見とかは……
いや、ルーは正式な訪問じゃ無いから、
皇帝を通さないと、皇子としての面会も難しいのかな?
それにサンクホルムとは繋がりが無いって前にも言ってたよね?
やっぱ王に会うのは僕達だけでは無理かー
あー!!! 僕が前世を思い出したら
もっと簡単に会えた可能性はあるけど……
この髪を見せてもダメかな?!
サンクホルムの後継の証にはならないかな?!
それだったら王様も信じてくれるかな?!」
何気なしにそう言うと、
セシルが怒ったような顔をして僕を見た。
「え? あ? ぼ……僕、何か変なこと言った?」
オロオロしたようにそう尋ねると、
彼女は泣くのを堪えたようにして、
「そうね、貴方の記憶が戻ればね!」
そう捨て台詞の様に言って父さんに抱きついて泣き出した。
僕は訳が分からず父さんに目配せで助けを求めると、
父さんはちょっと困った様な顔をして、
「今はお前達が転生者だと言う事は此処だけに留めた方が賢明だ」
そう言ったので、
僕も何気なく深刻さを悟った。
”僕の髪の色は
僕が思うより明確に何かを証明するものなんだ。
それも悪い方へ……“
僕は父さんの胸で泣くセシルの肩に手を置き、
「セシル、ごめん。
ずっと僕のこの髪のことは隠しておく様に言われてたのに、
僕が考えなしだった……
僕には何故かよく分からないけど、
前世のことはもっと真剣に受け止めるよ……」
そう言って謝ると、
セシルは僕にしがみ付いて、
「翠、貴方が大切なの。
アーウィンも、ダリルも、デューデューも、
みんな私の宝物なの!
もうあんな経験は、
あんな思いは2度としたく無いの!
お願いだから、
貴方を守らせて!
前世では出来なかったことを、
今度はちゃんとさせて!
これでも私は貴方の母親だったのよ!」
そう言うと、
僕をギュッと抱きしめた。
「ごめん、本当にごめん。
君を見てたら凄く考えさせられたよ。
僕の考えが凄く浅はかだった!
今までは漠然としか前世の事については考えてなかったけど、
僕も前世を思い出せる様に努力する。
どうすれば良いか分からないけど、
もっと前世のことを真剣に考える!」
そう言ってセシルを抱きしめ返すと、
セシルは首を振りながら、
「ううん、翠、貴方はちっとも悪く無いのよ。
私が焦りすぎて貴方に必要以上を求めすぎたの。
私の方こそ嫌な態度をとって御免なさい……」
そう言った後僕をもう一度ギュッと抱きしめて、
「ダリル……貴方、何処に居るのよ!
どうして翠の前に現れないのよ!
翠が大切では無いの?!
早く来なさいよ!
貴方さえいれば……貴方さえ翠のそばにいれば……翠は……」
そう言って静かになった。
僕はセシルの腕を掴んで僕から引き離すと、
「ねえ、どう言う意味?
今、ダリルがいれば僕がどうとかって言ったよね?
ねえ、ダリルが居れば僕が何なの?!」
そう言ってセシルの肩を揺らした。
セシルはそっぽを向きながら、
「ダリルは貴方の護衛騎士だったから……
彼がいれば、貴方をもっと守れる様になるから……」
そう繕った様に言うセシルに、
「今のセシルの言い方はそれだけじゃ無かったよね?!
何かもっと他に!」
そう言って迫ったけどセシルは横を向いて俯くだけで
それ以上は何も言わなかった。
”そうだよ!
ダリルだよ!
何故彼は現れないんだ?!
僕の記憶は無いにしろ、
僕達3人はもう既にこうして出会っている。
何故ダリルだけがここに居ないんだ?!
何かがおかしい……“
そう思うと、急に不安が体の奥底から込み上げて来た。
”それにセシルの態度は何処か不自然だ。
何故あの場面でダリルが出てくるんだ?!
確かにダリルはここには未だ居ない。
ジェイドの護衛騎士だったことも十分分かっている。
でも彼女の態度はそれだけじゃ無い……
僕はダリルに対して何か見落としている事があるのか?“
一人でブツブツとそう言う事を反芻していると、
僕の鼓動が段々と早くなって、
何か大切な事を忘れている様な感覚に陥った。
“ちょっと待てよ……まさか……まさか……”
ずっと考えない様にして来た想いがフッと胸の奥をよぎって
僕は頭をブンブンと振った。
”……………“
僕はバッとセシルの方を見た。
彼女は僕と目をあわせない様としているみたいに
横を向き続けた。
”彼女は何か気づいている……
僕が今予想している事が何なのか気付いている!
嘘だろ?!
僕の予想は当たっていたのか?!
きっとそうだ……
セシルに尋ねたら正直に話してくれるだろうか?
いや……セシルは僕が思い出さない限りは絶対に言わないだろう。
でも間違いない!
ダリルとジェイドは……恋人同士だったんだ!“
そう思った瞬間何かがストーンと腑に落ちた。
途端、僕の全身に鳥肌がたった。
“そうだ! 間違いない!
ダリルとジェイドは愛し合っていたんだ!
今ならわかる!
僕はジェイドだったんだ!”
心の奥から否定できない様な感覚が襲って来た。
未だ思い出してはいないが、
翠の心が、ジェイドの魂が全霊を掛けて叫んでいる。
“ジェイドはダリルを愛していたんだ!
そして彼の魂を探している!
何故今まで分からなかったんだ!
何故ジェイドの心を認めてあげれなかったんだ!“
途端、未だ思い出してもいないダリルが凄く愛しくて胸が苦しくなって来た。
僕はそっぽを向き続けるセシルを見つめた。
”ダリルの事を思い出したい……
彼に会いたい!“
予想が確信に変わった時、
僕の中にあったタカが外れた様に
何故かダリルに対する想いが溢れ出し始めた。
脈拍が乱れ、
急に僕の呼吸が苦しくなった。
”な……何だこれは……
い……息が出来ない”
胸を抑え、
ヒューヒューと息をする僕の異変に直ぐに龍輝が気づいた。
「翠! ゆっくりと息をして!」
直ぐに龍輝が僕の肩を抱いて
背を摩り始めた。
「翠、ゆっくり!
ゆっくり!
吸って、吐いて」
そう言いながらリズムをとり始めた。
コクコクと頭を下げて龍輝に合わせて呼吸をすると、
段々と呼吸が楽になって来た。
「一体何があったんですか?
急に過呼吸になるなんて」
龍輝は心配そうに尋ねて来た。
さっきまでそっぽを向いていたセシルも
心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。
「過呼吸……って……?」
聞きなれない言葉に龍輝の顔を見上げると、
「翠は急激に呼吸が速くなったのです。
そのために体内の酸素が増えすぎて息が苦しくなったんです。
騎士達も訓練中によく掛かるんです」
そう説明する龍輝に
「そうなんだ。
助けてくれてありがとう……」
そう礼を言うと、
「いえ、翠を助けられて私は嬉しいですが……
一体何を考えていたのですか?
過呼吸になるなんて、
何か嫌なことでも思い出したのですか?」
そう龍輝が尋ねて来た。
僕は咄嗟にダリルの事をまた思い出した。
僕は眉間に皺を寄せ心配そうに僕を覗き込む龍輝の視線を超えて
セシルを呼んだ。
「セシル!
セシル!」
そう呼ぶとセシルは横から僕の手を握って来た。
「翠、私はここよ!
大丈夫?
もう気分は悪く無い?!」
心配そうに僕の手を握りしめるセシルに、
「セシル、
僕、ダリルに会いたい……
今、凄くダリルに会いたいんだ。
ダリルに会いたい!」
そう言うと、
「翠……
貴方、ダリルの事、何か思い出したの?」
そう尋ねるセシルに、
「ううん、未だ何も……でも……」
首を振りながらそう言うと、
セシルが首を傾げた。
「じゃあ、何故ダリルにって……?」
不思議そうに尋ねるセシルの耳に口元を近付けると、
誰にも聞こえないように、
“僕はダリルが好きだ”
そう言ってセシルの耳元で囁いた。
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる