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王都ー魔力流し
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抜け出す策も見つけられないまま、
やっと城を出るチャンスが巡って来た。
今日はアーウィンの月に一度の魔力流しの日。
僕は社会科見学を謳い、何とか皆を説き伏せて
アーウィンと共に王都へとやって来た。
本当は僕とアーウィンだけで来たかったけど、
それは無理な相談だった。
王都に行く為の僕に課された条件は、
ラルフはもちろんの事、
マギーもお付としていく事。
ここまでは良かったが、
何と、僕は王家の馬車に乗せられ、
お付きの護衛騎士3名が共にやって来た。
行く道、騎士たちは馬に乗り馬車を護衛してたが、
マギーとラルフはそれぞれ僕たちの隣に座っている。
大人たちの手前、
これではアーウィンと秘密の話も出来ない。
なんと屈辱的な事か。
でも少なくとも、城を出ることが出来た。
僕にとっては初めての経験だ。
昨夜はワクワクしすぎて余り眠れなかった。
だから少し遅くまでアーウィンと予習をし、
今日の計画を立てた。
必ず、不自然にならないように
ギルド訪問を入れる必要があったから。
今回は、ギルドの登録は横に置いといても、
どうにかして鑑定士に会いたかった。
どうしても自分に魔法の核があるのかが知りたかったから。
この前の初めての魔法の練習では
何とも言えない経験をした。
それ以来アーウィンと魔法の訓練は毎日しているけど、
残念ながら一向に魔法が使える気配は無い。
叔父が言う様に王族には魔法は使えないのかもしれない。
それを確かめるために今日は是非ギルドに行きたかった。
それともう一つ目的ができた。
ダリルに何かお礼がしたかった。
少し前に脱走しようとした時に助けて貰ったから。
ダリルの事はまだ怖いけど、
もしかしたら僕が思っているような人では
無いのかもしれない。
父の護衛騎士という事は、
僕もこれから接する機会がたくさんあるはずだ。
前任のリオとはとても良い関係があった。
これからたくさん接する機会があるんであれば、
リオの時と同じような関係を持ちたい。
ダリルに会うたびに蛇に睨まれたカエルにはなりたくない。
そう思えるようになったのも、
きっとダリルとの経験があったから。
父の護衛騎士になるには
かなりのレベルが必要なことは僕でも知っている。
僕も彼の今の地位に恥じないようになりたかった。
ほんの些細な事だったけど、
いつも仏頂面なダリルの細やかな行為が嬉しかった。
僕に色んな事を気付かせてくれたダリル。
だからお礼に何かを上げたかった。
いや、それは半分の言い訳で、
もう半分は、もっと僕の事も意識してほしかった。
誰も見ていないようなあの瞳で、
もっと僕の事を見て欲しかった。
僕は馬車に揺られながら
アーウィンの顔をのぞき込んだ。
アーウィンも今日の護衛は予想外だったようで、
僕はアーウィンと目を合わせると、
ハ~っと深いため息を吐いた。
アーウィンがチラッと窓に目をやった瞬間、
「殿下! 冒険者の方たちですよ!
あの方達はきっとパーティーを組んでいらっしゃる方々ですね!」
興奮したようにそう叫んだので、
僕は窓から顔を覗かして外を見ようとしたら、
マギーに背中を掴まれ引き戻された。
「殿下、決して窓から顔を乗り出したりするようなことは
ございませんように」
彼女のぴしゃりと来た一言に、
僕は又アーウィンと顔を見合わせてシュンとした。
”これだからアーウィンと二人だけで来たかったんだよ……
観光をしに来た訳ではないけど、
少なくとも、町の雰囲気は味わいたい……”
僕が深いため息を吐くと、
「殿下、マギーが言いたかったのはですね、
アクシデント言うものは何時でも起こるので、
さらなる注意をしましょうということなんですよ」
と、ラルフがすかさずフォローしてくれたけど、
当のマギーはすまし顔で変わらずに
凛とした姿勢で僕の隣に座っていた。
”なんて嫌味な~”
少しムシャクシャとした所で、
馬が嘶いて馬車が止まった。
「着いたの?」
僕がキョロキョロとしていると、
外の方でパタパタと人の動く足音がして、
カシャリという音と共にドアが開いた。
開いたドアから外をのぞき込むと、
すぐ目の前に神殿のドアがあった。
初めて見た王都の神殿に心躍った。
凄く大きくて、真っ白な壁がキラキラと輝いていた。
「ジェイド殿下、ようこそいらっしゃいました」
馬車のドアのところで深く頭を下げる人がいた。
どうやら神殿関係の人のようだ。
僕は馬車を降りると、
「ジェイド・アーレンハイムです。
お出迎えありがとうございます。
今日はよろしくお願い致します」
そう言ってお辞儀をした。
僕に続いてアーウィンたちが馬車から降りてきた。
「今日最高神官様は残念ながら留守にしておりまして、
留守を任されています私、バトンが殿下のご案内を致します。
先ずはこちらへ」
そう言って神殿のなかに案内された。
神殿の中に一歩足を踏み入れて、
僕は立ち止まって天井を見まわした。
”おぉ~”
神殿のなかは見舞うごとに美しく、
キラキラと太陽の光がプリズムのように舞い降りて、
まるで光が神殿の中で踊っているようだった。
僕はその光景に釘付けになり、
暫く何も言えず、動き出すこともできなかった。
「このような素晴らしい場所は初めてです」
僕は興奮したようにしてそう告げた。
「殿下にお褒め頂き光栄にございます。
それでは殿下はこちらに。
装飾品や、絵画なども素晴らしものですよ。
どうぞ、ごゆるりとご覧ください。
そして……アーウィンは何時ものようにあちらに」
バトンの案内の言葉に、
「私もアーウィンの魔力流しを
見学させていただいてもかまいませんか?!」
急いでそう尋ねた。
僕の問いにバトンはキョトンとしていたけど、
「もちろんかまいませんよ。
では、殿下もこちらに。
護衛の方も宜しければどうぞ」
そういわれ、僕たちはゾロゾロとバトンの後を付いて
祭壇の方へと向かっていった。
祭壇まで進むと、そのちょうど中央に
真っ白な龍の像が飾られ、
その周りを綺麗な白い造花が飾られていた。
「これは聖龍と…リリースノーですね」
僕にはその像が聖龍だと直ぐに分かった。
「さすがは殿下ですね。
こちらの聖龍様は建国王より賜った物です。
聖龍さまの息吹が繋ったものだと伝えられております」
僕はまじまじとその像に見入った。
雪よりも真っ白なその像は今にも動き出しそうなほど
美しかった。
その時、聖龍の目が動いて、僕の方を見たような気がした。
”ヒイッ”
びっくりした瞬間後ろから、
「殿下、準備が出来た様ですよ」
そう言ってラルフが僕の肩をポンと叩いた。
僕はもう一度聖龍を見たけど、
その眼は天を見つめ、もう僕の方を見ることは無かった。
気を取り直して祭壇の方を見ると、
神官がクッションに乗せた大きな透明な水晶玉のようなものを
持ってきてその祭壇に乗せた。
「一瞬で終わりますよ」
ラルフにそう言われ、
僕は魔力流しの行方を見守った。
どんなことが起こるんだろうと少しワクワクした。
アーウィンが水晶玉に手をのせると、
アーウィンの手がパーッと光って、2-3秒すると、
その光はスーッと水晶玉の中に吸い込まれてしまった。
そして水晶玉は金色に光ると、
その光を中に閉じ込めたまま、
儀式は終わった。
恐らく1分もかかっていない。
瞬きをする暇もなく終わったその業は、
少しあっけなく感じた。
僕は思わず、
「それだけ?」
と言ってしまった。
別に悪気があった訳じゃない。
神殿関係者が皆一斉にこちらを見た。
”僕何かまずいこと言っちゃった?”
「ごめんなさい」
と、少し肩をすぼめた。
「大丈夫ですよ。
初めてご覧になられた魔力流しはいかがでしたか?」
ラルフが尋ねた。
「正直言って、もっと大掛かりなものだと思ってました」
思っていたことを正直に話した。
「殿下、この水晶玉はですね、
とても優秀なんですよ。
こんな風にたくさんの魔力を短時間で
一気に吸い込むことが出来るんです。
そしてこうして集めた魔力では、
魔道具を作ることが出来るのですよ」
そう言ってラルフが教えてくれた。
「魔道具って、この水晶玉の事ですよね?」
前にアーウィンに魔道具については学んでいた。
「そうですね、この水晶玉も魔道具ですが、
今集めた魔力を、ほかの魔道具を作るのに使うことが出来るんですよ。
例えばペンダントやブレスレットなどにして、
簡単な回復の呪文を付与したりできるんです。」
それは新しい知識だった。
「凄いですね。
有り余った魔力も無駄ではないんですね」
僕は感心していた。
「あの……少しこの水晶玉に触れてもいいですか?
そっと触れるだけです。
もちろん、動かしたりなど致しません」
無理を承知に聞いてみた。
なんだか水晶玉が磁石のように
僕を呼び寄せているように感じた。
「大丈夫ですよ。
他の人が触っても、何の害もございません。
一度取り込まれた魔力が
逆流することなどもございません。
ゆっくりとご覧ください」
神官にそう言われ、
僕はそっとその水晶玉に触れてみた。
すごく不思議な感覚だった。
僕の指先がザワザワとした。
”あ、これは……”
そう思った瞬間、
水晶玉がピシッと言う音を放ち、
僕が触れたところにヒビが入った。
”え?”
びっくりして手を離すと、
水晶玉はガラガラガラと音を立てて
粉々に砕けてしまった。
「え? 私、何か間違えましたか?
指で触れただけなのですが急にひびが入ってしまって……
びっくりして触れるのをやめたのですが、
粉々に砕けてしまって……
指で触れていたのは本の数秒だったのですが、
私が何かしたのでしょうか?!」
神殿の関係者たちはびっくりしたようにして
互いを見あっていた。
僕はオロオロとしてアーウィンを見た。
アーウィンも何が起きたのか分からないようだった。
もちろん、マギーに分かるわけがない。
ラルフを見ると、ラルフも不思議そうに
バラバラに砕け散った水晶玉を見つめていた。
「大丈夫ですよ殿下。
水晶玉はある程度使いこなすと、
壊れるようになっているのです。
おそらく先ほどが最後の魔力流しだったのでしょう。
きっと寿命が絶えれるほど以上の魔力を吸い取ったのでしょう。
何も心配することはございません」
そうバトンが説明してくれた。
「それじゃ、水晶玉が古くなっていたということですか?」
「左様でございます。
こういうことは良くありますので、
殿下はご心配なく」
そういわれ、ホーッと肩をなでおろした。
でも神殿関係者たちがヒソヒソと
”あれは真新しい水晶玉だった”
と言っているのを聞いたような気がした。
やっと城を出るチャンスが巡って来た。
今日はアーウィンの月に一度の魔力流しの日。
僕は社会科見学を謳い、何とか皆を説き伏せて
アーウィンと共に王都へとやって来た。
本当は僕とアーウィンだけで来たかったけど、
それは無理な相談だった。
王都に行く為の僕に課された条件は、
ラルフはもちろんの事、
マギーもお付としていく事。
ここまでは良かったが、
何と、僕は王家の馬車に乗せられ、
お付きの護衛騎士3名が共にやって来た。
行く道、騎士たちは馬に乗り馬車を護衛してたが、
マギーとラルフはそれぞれ僕たちの隣に座っている。
大人たちの手前、
これではアーウィンと秘密の話も出来ない。
なんと屈辱的な事か。
でも少なくとも、城を出ることが出来た。
僕にとっては初めての経験だ。
昨夜はワクワクしすぎて余り眠れなかった。
だから少し遅くまでアーウィンと予習をし、
今日の計画を立てた。
必ず、不自然にならないように
ギルド訪問を入れる必要があったから。
今回は、ギルドの登録は横に置いといても、
どうにかして鑑定士に会いたかった。
どうしても自分に魔法の核があるのかが知りたかったから。
この前の初めての魔法の練習では
何とも言えない経験をした。
それ以来アーウィンと魔法の訓練は毎日しているけど、
残念ながら一向に魔法が使える気配は無い。
叔父が言う様に王族には魔法は使えないのかもしれない。
それを確かめるために今日は是非ギルドに行きたかった。
それともう一つ目的ができた。
ダリルに何かお礼がしたかった。
少し前に脱走しようとした時に助けて貰ったから。
ダリルの事はまだ怖いけど、
もしかしたら僕が思っているような人では
無いのかもしれない。
父の護衛騎士という事は、
僕もこれから接する機会がたくさんあるはずだ。
前任のリオとはとても良い関係があった。
これからたくさん接する機会があるんであれば、
リオの時と同じような関係を持ちたい。
ダリルに会うたびに蛇に睨まれたカエルにはなりたくない。
そう思えるようになったのも、
きっとダリルとの経験があったから。
父の護衛騎士になるには
かなりのレベルが必要なことは僕でも知っている。
僕も彼の今の地位に恥じないようになりたかった。
ほんの些細な事だったけど、
いつも仏頂面なダリルの細やかな行為が嬉しかった。
僕に色んな事を気付かせてくれたダリル。
だからお礼に何かを上げたかった。
いや、それは半分の言い訳で、
もう半分は、もっと僕の事も意識してほしかった。
誰も見ていないようなあの瞳で、
もっと僕の事を見て欲しかった。
僕は馬車に揺られながら
アーウィンの顔をのぞき込んだ。
アーウィンも今日の護衛は予想外だったようで、
僕はアーウィンと目を合わせると、
ハ~っと深いため息を吐いた。
アーウィンがチラッと窓に目をやった瞬間、
「殿下! 冒険者の方たちですよ!
あの方達はきっとパーティーを組んでいらっしゃる方々ですね!」
興奮したようにそう叫んだので、
僕は窓から顔を覗かして外を見ようとしたら、
マギーに背中を掴まれ引き戻された。
「殿下、決して窓から顔を乗り出したりするようなことは
ございませんように」
彼女のぴしゃりと来た一言に、
僕は又アーウィンと顔を見合わせてシュンとした。
”これだからアーウィンと二人だけで来たかったんだよ……
観光をしに来た訳ではないけど、
少なくとも、町の雰囲気は味わいたい……”
僕が深いため息を吐くと、
「殿下、マギーが言いたかったのはですね、
アクシデント言うものは何時でも起こるので、
さらなる注意をしましょうということなんですよ」
と、ラルフがすかさずフォローしてくれたけど、
当のマギーはすまし顔で変わらずに
凛とした姿勢で僕の隣に座っていた。
”なんて嫌味な~”
少しムシャクシャとした所で、
馬が嘶いて馬車が止まった。
「着いたの?」
僕がキョロキョロとしていると、
外の方でパタパタと人の動く足音がして、
カシャリという音と共にドアが開いた。
開いたドアから外をのぞき込むと、
すぐ目の前に神殿のドアがあった。
初めて見た王都の神殿に心躍った。
凄く大きくて、真っ白な壁がキラキラと輝いていた。
「ジェイド殿下、ようこそいらっしゃいました」
馬車のドアのところで深く頭を下げる人がいた。
どうやら神殿関係の人のようだ。
僕は馬車を降りると、
「ジェイド・アーレンハイムです。
お出迎えありがとうございます。
今日はよろしくお願い致します」
そう言ってお辞儀をした。
僕に続いてアーウィンたちが馬車から降りてきた。
「今日最高神官様は残念ながら留守にしておりまして、
留守を任されています私、バトンが殿下のご案内を致します。
先ずはこちらへ」
そう言って神殿のなかに案内された。
神殿の中に一歩足を踏み入れて、
僕は立ち止まって天井を見まわした。
”おぉ~”
神殿のなかは見舞うごとに美しく、
キラキラと太陽の光がプリズムのように舞い降りて、
まるで光が神殿の中で踊っているようだった。
僕はその光景に釘付けになり、
暫く何も言えず、動き出すこともできなかった。
「このような素晴らしい場所は初めてです」
僕は興奮したようにしてそう告げた。
「殿下にお褒め頂き光栄にございます。
それでは殿下はこちらに。
装飾品や、絵画なども素晴らしものですよ。
どうぞ、ごゆるりとご覧ください。
そして……アーウィンは何時ものようにあちらに」
バトンの案内の言葉に、
「私もアーウィンの魔力流しを
見学させていただいてもかまいませんか?!」
急いでそう尋ねた。
僕の問いにバトンはキョトンとしていたけど、
「もちろんかまいませんよ。
では、殿下もこちらに。
護衛の方も宜しければどうぞ」
そういわれ、僕たちはゾロゾロとバトンの後を付いて
祭壇の方へと向かっていった。
祭壇まで進むと、そのちょうど中央に
真っ白な龍の像が飾られ、
その周りを綺麗な白い造花が飾られていた。
「これは聖龍と…リリースノーですね」
僕にはその像が聖龍だと直ぐに分かった。
「さすがは殿下ですね。
こちらの聖龍様は建国王より賜った物です。
聖龍さまの息吹が繋ったものだと伝えられております」
僕はまじまじとその像に見入った。
雪よりも真っ白なその像は今にも動き出しそうなほど
美しかった。
その時、聖龍の目が動いて、僕の方を見たような気がした。
”ヒイッ”
びっくりした瞬間後ろから、
「殿下、準備が出来た様ですよ」
そう言ってラルフが僕の肩をポンと叩いた。
僕はもう一度聖龍を見たけど、
その眼は天を見つめ、もう僕の方を見ることは無かった。
気を取り直して祭壇の方を見ると、
神官がクッションに乗せた大きな透明な水晶玉のようなものを
持ってきてその祭壇に乗せた。
「一瞬で終わりますよ」
ラルフにそう言われ、
僕は魔力流しの行方を見守った。
どんなことが起こるんだろうと少しワクワクした。
アーウィンが水晶玉に手をのせると、
アーウィンの手がパーッと光って、2-3秒すると、
その光はスーッと水晶玉の中に吸い込まれてしまった。
そして水晶玉は金色に光ると、
その光を中に閉じ込めたまま、
儀式は終わった。
恐らく1分もかかっていない。
瞬きをする暇もなく終わったその業は、
少しあっけなく感じた。
僕は思わず、
「それだけ?」
と言ってしまった。
別に悪気があった訳じゃない。
神殿関係者が皆一斉にこちらを見た。
”僕何かまずいこと言っちゃった?”
「ごめんなさい」
と、少し肩をすぼめた。
「大丈夫ですよ。
初めてご覧になられた魔力流しはいかがでしたか?」
ラルフが尋ねた。
「正直言って、もっと大掛かりなものだと思ってました」
思っていたことを正直に話した。
「殿下、この水晶玉はですね、
とても優秀なんですよ。
こんな風にたくさんの魔力を短時間で
一気に吸い込むことが出来るんです。
そしてこうして集めた魔力では、
魔道具を作ることが出来るのですよ」
そう言ってラルフが教えてくれた。
「魔道具って、この水晶玉の事ですよね?」
前にアーウィンに魔道具については学んでいた。
「そうですね、この水晶玉も魔道具ですが、
今集めた魔力を、ほかの魔道具を作るのに使うことが出来るんですよ。
例えばペンダントやブレスレットなどにして、
簡単な回復の呪文を付与したりできるんです。」
それは新しい知識だった。
「凄いですね。
有り余った魔力も無駄ではないんですね」
僕は感心していた。
「あの……少しこの水晶玉に触れてもいいですか?
そっと触れるだけです。
もちろん、動かしたりなど致しません」
無理を承知に聞いてみた。
なんだか水晶玉が磁石のように
僕を呼び寄せているように感じた。
「大丈夫ですよ。
他の人が触っても、何の害もございません。
一度取り込まれた魔力が
逆流することなどもございません。
ゆっくりとご覧ください」
神官にそう言われ、
僕はそっとその水晶玉に触れてみた。
すごく不思議な感覚だった。
僕の指先がザワザワとした。
”あ、これは……”
そう思った瞬間、
水晶玉がピシッと言う音を放ち、
僕が触れたところにヒビが入った。
”え?”
びっくりして手を離すと、
水晶玉はガラガラガラと音を立てて
粉々に砕けてしまった。
「え? 私、何か間違えましたか?
指で触れただけなのですが急にひびが入ってしまって……
びっくりして触れるのをやめたのですが、
粉々に砕けてしまって……
指で触れていたのは本の数秒だったのですが、
私が何かしたのでしょうか?!」
神殿の関係者たちはびっくりしたようにして
互いを見あっていた。
僕はオロオロとしてアーウィンを見た。
アーウィンも何が起きたのか分からないようだった。
もちろん、マギーに分かるわけがない。
ラルフを見ると、ラルフも不思議そうに
バラバラに砕け散った水晶玉を見つめていた。
「大丈夫ですよ殿下。
水晶玉はある程度使いこなすと、
壊れるようになっているのです。
おそらく先ほどが最後の魔力流しだったのでしょう。
きっと寿命が絶えれるほど以上の魔力を吸い取ったのでしょう。
何も心配することはございません」
そうバトンが説明してくれた。
「それじゃ、水晶玉が古くなっていたということですか?」
「左様でございます。
こういうことは良くありますので、
殿下はご心配なく」
そういわれ、ホーッと肩をなでおろした。
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