龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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剣の誓い

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ダリルの後を付いて行きながら、
僕はやらかした感が拭えなかった。

”一体ダリルは父上にどう
報告するのだろうか?

デューデューの事を言うのだろうか?

でもデューデューをお城で監禁していたのは
一体誰だったのだろう?“

僕はそんな事がグルグルと頭の中を回っていた。

そんな僕とは裏腹に
アーウィンの方は未だギクシャクとして居る。

何だかアーウィンを巻き込んでしまった事が
今となっては申し訳ない。

グダグダと考えて居るうちに
父の執務室の前まで来てしまった。

「陛下、私です」

ジェイドがそう言ってノックをすると、
宰相のランカスがドアを開けた。

部屋の中に通されると、
ダリルとアーウィンが跪いた。

父は書類の山から目を離すと、

「それで? 騒ぎの原因は分かったのか?」

とダリルに向かって尋ね始めた。

僕はドキリとした。

此処には今は宰相のランカスも居る。

ダリルは跪いたまま、

「その事におきましては只今捜査中です。

ですが少し陛下のみの、お耳に入れておきたい事が……」

そう言ったので、宰相が少し咳払いをして、

「私に聞かれては、いけないと言う事ですな」

と嫌味っぽくダリルに言った。

父は目で合図しランカスに出ていく様に言うと、
彼は深く一礼して執務室から出ていった。

父は職務机から立ち上がると、
ソファーのところまでやってきて、

「楽にしなさい」

と二人向かって手を翳した。

ダリルとアーウィンが立ち上がり一礼すると、
父は深くソファーに腰掛け、

「君たちも座りなさい」

そう言ったので
僕とアーウィンは父の前に腰掛けた。

でもダリルは

「私はこのままで」

と父の右斜め前に僕達と
父を割る様にしてスッと立った。

「それで? 本当は何があったのかな?」

そう尋ねる父にダリルは一礼すると、

「実は…各々、直々で…」

とデューデューが言った事を
僕達とデューデューの出会いから、
デューデューが城に監禁されていた事、
それから攻撃魔法で起きた事まで
一言も違えず父に話して聞かせた。

僕はその話が終わると直ぐに、

「デューデューを監禁していたのは
父上ではありませんよね!」

ドキドキして心で祈りながらそう尋ねると、

「馬鹿を言いなさい、
私が聖龍様の仲間である龍を狩るなど以ての外だ」

父のそのセリフに僕は安どのため息を吐いた。

「では一体誰が……?

城には龍を監禁しておくようなところがあるのですか?!

デューデューは城の中に監禁されていたと言いました!」

父は顎を撫でて考えたようにすると、

「城には多くの抜け穴や、
隠し扉がある。

私が把握してない箇所があるのも頷ける」

と、王である父でさえも、
完全に城の構造は把握していないようだ。

父は瞳を閉じて腕組みをし
何かを考えたようにして深呼吸すると、

「やはり……あの見聞は事実であったか」

そうぼんやりと言った。

「見聞?」

僕がその言葉を繰り返すと、

「城には禁断の書というものがある。

この国の建国王が抱えていた
賢者の予言と失われた古代の魔法の知識が
書かれたものだと伝わって居たのだが……」

「だが…?」

そこまで言って父は黙り込んだ。

「だが何なのですか?! 父上!」

言葉を濁そうとする父に僕は詰め寄った。

父はダリルをチラッと見ると、

「実は……肝心な所が抜き取られて居るのだ」

とそう言って顔を手で覆った。

「私が子供の頃、父に見せられた時は
完全な形であったのだ。

私達王族は8歳を迎えると
その禁断の書が保管してある
禁断の間に入る事が出来るんだが……

私の知らない間に
国の魔導士が掛けた守りの術が破られていた」

「それはいつの事なのですか?!」

「気付いたのはひと月ほど前だ。

もしかしたら最も前かもしれない。

ジェイドの8歳の生誕の祝いに向けて
禁断の間に入った時に気付いた。

もしかしたら、それよりも前だった可能性がある」

「禁断の間を知って居るのは?!」

「私だけだ。

これは王位を継ぐ者だけに受け継がれられる。

ジュークでも知らないことだ。

だが今ではダリルと……」

そう言って父がアーウィンの方を見ると、
アーウィンはこれまでに無い程真っ青な顔をして
冷や汗がダラダラと流れていた。

そりゃそうだろう。

たった今、
王のみが知る国家機密を知ったのだ。

ダリルと言えば、やはり至って冷静だ。

彼の心臓は鉄で出来てるのかもしれない。

「すまないアーウィン。

跳んだ王家の厄介ごとに巻き込んでしまったな。

だがアーウィンは唯一ジェイドの秘密を知る人間だ。

きっとこの情報は共有していたほうがいいだろう。

危険ごとに巻き込んでしまうが、
私達が身を挺してお前達の事は守る」

そう言った後父はダリルを見上げて、

「ダリル、お前も覚悟を決めてくれ」

そういうと、ダリルは父の元に跪き、

「仰せの通りに」

そう言って父の手の甲にキスをした。

僕はそのやり取りを唖然として見ていた。

そんな呆けていた僕に、

「ジェイド、これからはダリルがお前の専属騎士だ。

ダリルは信頼における騎士だ。

決してお前を裏切らず、
命の限りお前を守る事が約束できる男だ」

僕はそのセリフに

”少し大げさでは?”

と思った。

でも父は更にダリルに新しい剣を与えた。

「この剣は……」

僕は知っていた。

城の宝物庫の中央に凛として飾られていた真っ黒な剣。

建国王が聖龍に賜ったという、
この国を勝利に導いた時に建国王が身につけていた剣だ。

この何百年もの間、
決して錆びつく事なく、
その輝きを一筋も失わなかった剣だ。

「如何してこの剣を今?」

何百年もその宝物庫から出たことのない剣を見た時は
僕は少し事の状況が怖くなった。

”何か僕の考えつかない様な事が起こっている?!”

「ジェイド、この剣でダリルと騎士の契約を交わすんだ。

お前がダリルに祝福を与えるんだ」

父がそう言い終えると、
ダリルは跪き僕に剣とあの日町で買った
龍が浮かぶ黒い石を僕に差し出した。

「この石は…」

「お礼を言うのが遅くなりましたが、
ありがとうございました。
是非殿下の手でこの剣をお飾りください」

僕は差し出された剣と石を受け取った。

よく見ると、剣の一部分の装飾が欠けている。

それにこの石がぴったりと嵌りそうな形と大きさだ。

僕が石を剣の装飾の穴に合わせてかざすと、
その石はまるでその箇所に吸い込まれる様に嵌め込まれた。

その石はまるで失っていた場所を見つけたかの様に
その場にピッタリと収まると、
眩しい光を放ってその剣を包んだ。

その剣は炎に包まれた様な剣になった。

その光景にそこに居た僕達は息もつけない程に見入った。

そういうなかでも、やはりダリルは冷静だったけど、
父もダリルに負けず劣らず冷静だった。

「もしかしたらこの剣は
黒龍の加護を受けて居るのかもしれません」

急にアーウィンが話し始めた。

「私には見えませんでしたが、
ジェイドは確か、その石の中に
黒龍が浮かび上がっていると言いましたよね?

それにジェイドはデューデューが言った事を覚えていますか?!」

僕はハッとしてアーウィンの目を見た。

「デューデューは黒龍は聖龍の番だと言っていました。

もしかしたら、聖龍の化身であるジェイドを守るために
失われていたこの石は、この時を待って現れたのかも…」

アーウィンがそう言うと、

「でも……なぜ今?

何故ダリルが私の専属騎士になる必要が?!

それにダリルが覚悟を決める理由って?!」

そう言ってみんなを見回した。

「ジェイド、そして皆も心して聞いてくれ。

今、どうのこうのと言うことでは無いが、
失われた禁断書の箇所を話すと…

うろ覚えなのだが、確かこう言う事が書いてあった。

『いつかこの世に魔神という存在が現れるという事……

そして魔神は人によって召喚される事……

その召喚に龍の心臓が必要だという事……

そして建国王の血を引く者の血が必要だという事……

それも聖龍の力を宿した者の……』」

父のその言葉を聞いてその場が一瞬凍りついた。

あの、いつでも冷静なダリルでさえも動揺が隠せない。

「あの…魔神とは?」

きっと僕だけがその存在を知らない。

「魔神とは黒龍や聖龍と同じ様に伝世上の者とされて来たが、
デューデュー?の話や、ジェイドに聖龍の力が現れた今、
恐らく魔神も実際にいる者なのだろうという事は簡単にわかる。

魔神は黒龍の如く全てを破壊する破壊神だと言われて居る。

黒龍もそういふうに語り継がれていたんだが、
聖龍の番と言う事はきっと破壊の者では無いのだろう。

伝説はそう言う風に曲げられて伝えられて居る節があるから
魔神もどの程度本当なのか分からない。
でも存在自体は確かなのだろう……」

僕は身震いがした。

「もしかして魔神が召喚されたら
対抗できるのって黒龍と聖龍だけ?

デューデューはいつか現れる黒龍って言ってたから、
黒龍が何処にいるかも分からないんだよ?

それに聖龍も地中深くで眠って居るって。

もし魔神が現れたらってそに前に、
僕死んじゃうの?!

誰かが僕の力を狙ってるって事だよね?!

だから僕の力は秘密なの?!」

「ジェイド、今言ったが、
もしかしたら禁断の書に書いてあった事は
全てがその通りでは無いかもしれない。

でも細心の注意は必要だ。

だからダリルをお前に付ける。

ダリルはきっとこの国で一番強い。

いや、世界で一番強い。

黒龍の剣がダリルを認めた。

それがダリルの強さを証明している。

なにかあれば、この剣とダリルがお前を守る」

父がそう言うとダリルが跪いて、

「殿下、殿下は私が命を賭けてお守り致します。

私に騎士の誓いをお授け下さい」

そう言うと、彼は剣を僕に差し出した。

僕が剣を受け取ると、
僕の中から剣に魔力が流れ出すのを感じた。

そして剣は更にその炎を増した。

僕は立ち上がり剣をダリルの肩に翳すと、
騎士の誓いと剣の祝福を与えた。

そしてダリルは僕の手を取ると、
誓いの言葉を述べ僕の手の甲に静かにキスをした。

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