龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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恋をしましょう!

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マグノリアとアーウィンは暫く泣いたら気が済んだのか、
二人してボールルームへは行かず、
外にあったガゼボへと向かっていった。

「ちょっと君達、
ボールルームはそっちじゃないよ!

アーウィン! マグノリア!

ねえってば!」

僕が大声で叫んでも、
二人共僕に向かって手を振るだけで、
結局二人はガゼボに入って
そこにあったベンチに腰かけた。

”カーッ! 何なの二人共!

さっきから訳分かんないんだけど!”

二人の消え去ったガゼボを目の前に
ハ~ッとため息を吐くと、
下を向いて目を閉じた。

”なんだか今日は疲れた……”

急に疲れがどっと来てしまった。

一月ほど、

”婚約者、基、婚約”

の事が気になってあまり眠れなかったからだ。

僕はヨロヨロとボールルームに向けて一人で歩いて行くと、
テラスに続く階段の一番下の所に座って青く輝く月をボーッと眺めた。

会場の方からは人々の賑やかな声が音楽に乗って聞こえてくる。

会場の中は僕達がいなくても誰も気にしていなさそうだ。

煌びやかなそのライトの反射が
僕の座っている所にまで反映している。

光のユラユラとした揺らめきが、
更に僕の眠気を誘った。

”あ、ダメだ、落ちちゃう……”

そう思った瞬間には僕は隣にある塀にもたれ掛かり、
ドンドンと意識が遠のいていった。

それからどれくらい眠っていたのか分からない。

「ハ~ックション!」

僕は寒気と自分のくしゃみの音で目を覚ました。

鼻をすすって寝ぼけ眼で
目の前にボーッと移る人物を認識しようとした。

”あれ? 今夜はダリルの部屋に来てたっけ?”

寝ぼけて今日という日が混乱している。

また目を閉じて再び眠りに落ちようとした時に、
自分がダリルの膝で寝ている事に気付いた。

”ゲッ”

思わず出た言葉に口を塞ぎ、
起き上がると、

「殿下、寒くはないですか?

起こしても良かったのですが、
余りにも気持ちよく寝ておられましたので、
私の判断でそのまま此処に居たのですが……」

気付くと僕はダリルのケープを羽織っていた。

「ごめんなさい!

僕、寝ぼけてて……

ダリルは寒くない?!」

急いで起き上がりダリルにケープを返すと、

「無理もありません、
殿下にとって今日という日は特別な日でしたので……」

そう言うとダリルはキョロキョロとして、

「そう言えば、マグノリア殿下もアーウィン様も
姿が見えないのですが、
どちらに行かれたのかご存じでしょうか?」

ダリルの問いに僕は遠くに見えるカゼボを見ると、
そこを指さして、

「あそこにいると思う」

そう言って立ち上がった。

”寝落ちした僕も僕だけど、
ほんと、あの二人一体何してるんだろ!”

そう思い、

「僕ちょっと見てくる。

もし移動してたらどこにいるか分かんないけど、
居たら連れてくる!」

そう言ったらダリルも

「私も一緒に行きます」

そう言って立ち上がった。

「それにしても殿下達はホールにも顔を見せず、
一体何をしておられたのですか?

幾ら城の中は安全だと言っても
デューデュー様の件がありましたのでくれぐれも、
先ほどのように外で寝落ちするなどなさりませんように」

ダリルがそう言うと、
僕はダリルの袖をつかんで一度立ちどまった。

「如何なさいましたか?」

ダリルが不思議そうな顔をして僕を見た。

「あのさ、アーウィンとマグノリアが言ってたんだけど、
恋がしたいって……どういう意味?」

僕がそう尋ねると、

「お二方がそう仰っておられたのですか?」

ダリルがびっくりしたようにして
目を見開いた。

また歩き始めながら、

「うん、間違いないよ。

二人して恋がしたい~!って泣いてたもん」

そう言うと、ダリルがガゼボの方を見た。

「どうしたの?」

ダリルの様子がおかしかったので、
何気なく尋ねた。

「殿下、暫くここでお待ちください」

ダリルはそう言うと、
速足になりガゼボに向かって歩き始めた。

「え? ちょっと待ってよ!

どうしてここで待たなきゃいけないの?!」

ダリルには待つように言われたけど、
僕もダリルの後を追って速足で付いていった。

「ねえ、どうかしたの?!

二人に何かあったの?!」

僕は質問し続けた。

ダリルは僕の質問に無視したままズンズン歩き続けたけど、
ついにガゼボの前に来た時に、
急に立ち止まった。

「何々?

アーウィン達いるの?!」

フウ~ッとため息を吐いたダリルの後ろから
ヒョイッと顔を出すと、
ガゼボの中に居た二人に目が行った。

何と、二人共ガゼボの中で寝落ちしていたのだ。

それも仲良くマグノリアが
アーウィンの肩にもたれ掛かって……

”これ、どうするの?”

僕が尋ねるとダリルは肩をすぼめて、

”えっと……

お二方共疲れていらっしゃるようなので、
起こしてしまうには忍びないし、
殿下さえ良ければここに座って少しお話しませんか?”

そう言われ、僕達はアーウィン達とは対角になる
反対側のベンチに座った。

”大きな声でお話は出来ないのですが、
殿下、少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?”

ダリルがヒソヒソと急にそう言い始めた。

”うん、何?”

そう返すと、

”マグノリア殿下とアーウィン様は
どの様な経緯でここに来られたのでしょうか?”

と尋ねてきた。

僕はウ~ンと一唸りして、

”それがね、僕にも良く分からないんだよ!

この二人変なんだよ。

さっきも言ったけど、
二人して恋がしたい~!って……

訳分かんないよね?!

マグノリアなんて、
結婚する前に本当の恋を経験したいって……

それで、アーウィンも神殿はダメって言うけど、
恋がしたいーって……

なんかね、二人意気投合しちゃって
気付いたら、スタスタと僕を置いてここまで来てたってわけ!”

そう言うと、ダリルはフ~ッと深く息をして、

”殿下、これは非常に危険な状況なのです”

そうダリルが言ったので、僕は

”ヘッ?!”

という事しかできなかった。

”殿下、殿下に覚えて於いて貰わなくてはいけないのが、
マグノリア殿下は既に殿下の婚約者様であられると言う事です”

ダリルが分かり切ったことを言ったので、

”そんなこと、忘れたくても忘れられないよ!”

そう言うと、ダリルは僕の手を取って、

”殿下にとってアーウィン様はかけがえのない、
替えの利かない大切な友達なのですよね?”

と続けた。

ダリルは何時になく真剣な顔をしていた。

”殿下、この国の第一王位継承者の
婚約者になられると言う事は……”

そう言って間を置いた後、

”決してほかの男性と
間違いを犯してはいけないという事です。

もちろん何もなくても、
このように二人きりになるという事は、
お二方にとってとても危険な事なのです”

僕にはダリルの言っている意味が分からなかった。

”どうして二人きりになるとダメなの?

それに間違いを犯すって何?

二人きりだと二人が悪い事をするの?

そうして、それがアーウィン達の危険になるの?!

アーウィン達は一体何をしようとしてるの?

恋って悪いことなの?!”

ダリルは静かに首を振ると、

”殿下に今説明しても、
恐らく難しいと思われます。

ただ、私が今言ったことは忘れずに守って下さい。

決して、マグノリア殿下と
アーウィン様を二人きりにしないと。

殿下にはアーウィン様が大切なんですですよね?

だったら約束できますね?”

”アーウィン達を二人きりにしてはいけないんだね?”

僕にはやっぱりわからなかったけど、
二人にしてはダメっていうのは理解できたから、
僕はそれに頷いた。

ダリルは僕が頷くのを確認すると、
ふーっと深呼吸をした。

次は僕がダリルに質問する番だった。

”ねえ、やっぱり僕には恋って分からない。

ダリルは危ない、悪いって言うけど、

アーウィンやマグノリアは恋がしたいって……

どうして悪い事をアーウィン達はしたいって思うの?

アーウィン達が言う恋って……

ダリルはした事あるの?”

”殿下、一言言っておきますが、
恋自体は悪いものではありません。

むしろそれは素晴らしいものです。

でも扱いを間違えると、
とても大変なことが起きてしまうのです”

ダリルは何かを一生懸命伝えようとしているのに、
やっぱり僕には難しかった。

”もう! ダリルの話は難しい!

ほんとは恋って良いの?! 悪いの?!”

そう言うとダリルは少し困ったような顔をした。

”もう良いよ! で? 
ダリルは恋ってしたことあるの?!”

そう尋ねると、ダリルは

”どうでしょう?”

とごまかしたようにして言った。

僕は首を傾げながら、

”もしかしてダリルって今まで恋をしたことが無いの?

ダリルも恋がしたいの?!”

そう尋ねると、ダリルは話をそらすように、

”恐らく今、殿下に話しても理解出来ないと思います。

もうこの話は止めましょう”

そう言って会話を変えようとした。

皆があまり僕をのけ者にするので、
僕も食い下がってしまった。

”どうして僕だと分からないの?

僕が子供だから?

僕が大人になったら分かるの?

どうして子供だと分からないの?!”

ダリルは困ったような顔をして

”それもありますが、
それは人それぞれでもあって……

もういいではありませんか”

と言葉が濁りだした。

”ねえ、それってアーウィンが言ってた
可愛いとか、天使とか、お花って言うのに関係ある?”

アーウィンがマグノリアに言っていた事を思い出してそう尋ねた。

”そう言う表現をすることもあるにはあるのですが……”

そう言ってダリルは向かいでスースー眠るアーウィンを見た。

そこで僕は

”ピーン”

と来た。

”じゃあ、アーウィンは恋してるんだよね?

もしかしてマグノリアになの?!

恋って人にするものなの?”

興奮してそう言うと、
ダリルは少しタジタジになった。

僕はその時何を錯覚したのか、

『ダリルも恋について良くは知らないんだ』

勝手にそう思い込み、こう尋ねた。

”だったら、僕とダリルで恋をしようよ!

僕達、きっと恋について理解出来るようになるよ!”

僕がそう言った瞬間、
ダリルは余りにもびっくりして
ベンチから滑り落ちそうになった。
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