龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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夜の森

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「え? ダリル?」

僕は

”ダリル”

という名前に反応し、
一時も待たずに飛び起きた。

”え? あれ? え? 夢?

僕寝ぼけてた?”

岩ばかりの洞窟をキョロキョロと見回して、
やっと自分がデューデューの所へ来ていたことを思い出した。

「そうだ! ダリル! デューデュー、今、ダリルって言ったよね?」

慌てて聞き返した。

デューデューは首を掲げて宙を仰ぐようにすると、

「ダリルがお前を呼んでいる」

そうはっきりと言った。

デューデューにはダリルの声が聞こえるようだ。

「デューデューにはダリルの声が聞こえるの?!」

「ああ、まだまだ遠いがダリルがお前を呼んでいる」

「呼んでいる?

呼んでいるって僕を探してるの?

デューデューにダリルの声が聞こえるってことは…
お城にいるんじゃ無いよね?」

そう尋ねると、
デューデューの耳がピクピクと動いた。

「城にいるわけではない。

どちらかと言うと、こちら側に近い」

「え? ちょっと待って。

こちら側に近いって…
まさか暗い森の中に居るの?!

一人で?!」

夜の森は明かりが無く、
もし明かりを持っていたとしても、
そこまで遠くを照らし出してくれるわけではない。

良くて自分の鼻先が見える程度だ。

勝手に城を抜け出したのは自分なのに
急にダリルの事が心配になって来た。

デューデューは少し感覚を研ぎ澄ましたようにすると、

「そうだな。

この距離だと……森の奥の方だな」

と、僕の予感が的中した。

「森の奥ってどうして……どうしてそんな無茶を……」

僕も先ほど森の中腹でオオカミの軍団に襲われそうになったばかりだ。

さらに奥には何がいるのか見当もつかない。

「いくらダリルが強いからって言っても、
夜の森は危ないぞ。

夜行性の魔獣は気が荒い上に、
夜の森にはアンデッド系が彷徨っているからな。

アイツらは斬っても、斬っても立ち上がる」

「アンデッド?」

アンデッドという言葉は以前聞いた事がある。

「もしかして死んだ者をよみがえらせて
従わせるっていう……」

「そうだ、ほとんどが死霊使いによるものだがな」

「死霊使い?」

「そうだ、死霊使いはいわば、アンデッド系の召喚士だ。

お前の聖の力とは反対の黒の魔術だな」

「黒の魔術?」

「そうだ。お前たち聖の魔術は
自然界の力を借りて行われる光の力だ。

だが黒の魔術はこの世の負の力を通して行われる言わば、
光魔法とは対局の魔法だ」

これまでは負の魔法どころか
光の魔法でさえも殆ど見たことが無かった。

そんなところに光の対局と言われても、
つい最近魔法に目覚めた僕としてはピンとこない。

「デューデュー、さっき、
アンデッドって強いって言ったよね?

それってダリルよりも強いの?」

僕はまだ魔物や魔獣の強さがよくわかっていない。

それにダリルの真の強さも良くわかっていない。

「ダリルは黒龍の聖剣を使うようになっただろう?」

デューデューはすぐに切り返してきた。

まだデューデューには話してなかったのに、
その事を知っていることにはびっくりした。

それどころか、そのことを知っているのは、
父とダリル本人を除けば、
あの場に居た僕とアーウィンだけだ。

「何故それを知ってるの?」

そう尋ねると、

「あの剣が私に語りかけてきた」

と、又聞いた用もないような返答をしたので、
更にびっくりした。

「は? 剣が話す? デューデューに?!

剣を見たこともないんだよね?!」

「知らないのか? 聖剣のように力を持った武器には魂が宿る。

私達龍は龍の加護を持った武器には敏感だ。

離れていても剣の感情が分かる」

「剣が語ったって、僕には感覚的に分からないんだけど、
一体聖剣はデューデューに何を言ったの?!」

デューデューはちょっと考えたようにして、

「あの時聖剣が言ったのは、

黒龍の加護を授けるべき者を見つけたと」

まったく信じられない事ばかりだ。

「聖剣が言ったの?

黒龍の加護を与える人を見つけたって?」

僕はデューデューの答えを繰り返して尋ねた。

僕の理解が正しいのか疑わしかったからだ。

ここまでくると、
もうダリルがあの剣の持ち主であるべきことは間違いない。

「じゃあ、アーウィンが言った事は本当だったんだ。

アーウィンは言ったんだ。 

もしかしたらダリルの剣は
黒龍の加護を受けているかもしれないって……」

そう言うとデューデューは、

「それは半分は事実だ」

そう言った。

「え? どういう事? 半分は事実って?」

「黒龍の加護を受けているのは聖剣ではない。

聖剣は黒龍の加護を媒体としてダリルに力を貸している……

だから完全じゃないんだ」

「え?ちょっと待って!

ちょっと頭がこんがらがって来た。

聖剣が媒体ってそれはどういう意味?」

だんだん話がややこしくなってきた。

「実際は加護というものは
黒龍が実際に受け取るべき者に与えるものだ。

だが黒龍は今ここに居ない。

だから何か加護を秘めておく媒体があったはずだ。

ダリルはそれを手にしたはずだ」

僕は少し考えてみた。

”加護を秘めておく媒体……?”

「ちょっと待って……

もしかして……あの石?」

僕は心辺りがあった。

デューデュは顔を顰めたようにして、

「石?」

と尋ねた。

「うん、僕が王都のマーケットで見つけてダリルにあげたんだ。

真っ黒な石なんだけど、透き通っていて……

それで真ん中に黒い龍が浮かび上がるんだ。

あの時はその石が光ったから僕は導かれるようにして
その石を手に取ったんだ」

僕がそう言うと、デューデューも考えたようにして、

「なるほど…… 恐らくそれが媒体だったんだな。

だが黒龍なしでは完全じゃない。

黒龍さえ現れてくれれば……」

そう言うと、黙り込んだ。

「あのさ、デューデューの言うことが本当であれば、
僕はどうして聖龍の加護を受け取れたの?

僕もまだ聖龍に会ったことがないんだよ?」

デューデューの話から、
自然と疑問が浮かびあがった。

「聖龍の力は自然界から来る。

聖龍が地中深くで眠っていれば、
地脈を通して自然界にその力は放出される。

お前が聖龍の加護を受けれたのはその為だ」

そう言うと、デューデューは大きくフ~っと息を吐いた。

ここまで来てダリルの事が気になり始めた。

いくら彼が強いと言っても、
彼は生身の人間だ。

幾ら黒龍の加護があるからと言っても限りがある。

「ねえねえダリルが大変な時に話し込んじゃったけど、
ダリルは大丈夫なの?

幾らダリルが強いって言っても
夜の森は強い魔物がいっぱいなんでしょう?

デューデューは何か感じ取れる?

そのアンデッド?に襲われたりしてないかな?」

デューデューは一言

「ウーン」

と唸ると、

「あの聖剣の使い手だ。

アンデッドなんか相手にならん。

それよりも心配なのは……」

デューデューが勿体ぶった様にして言った。

「心配なのは? 何? 何なの?

何か問題があるの?! ダリルは大丈夫なの?!

勿体ぶってないで、早く言ってよ!」

デューデューを揺さぶって慌ててそう聞くと、

「落ち着け、ダリルは大丈夫と言っただろ。

それよりも私が気になるのは死霊使いの方だ」

と、またもや僕の考えていなかった方向へと話が進んだ。

「え? 死霊使いって強いの?」

「違う。そう言うんじゃない」

「じゃあなに?!」

「死霊使いは普通表舞台に出てこない。

でも……ダリルが死霊使いと戦っている……」

「え? そんなことまで分かるの?!」

「私には森の空気の流れが手に取るようにわかる……

先に少し魔力の流れが変わった。

これは召喚の魔力だ」

「召喚の魔力って……死霊使いの?!

でも、彼らはめったに
表舞台に出てこないってさっき言って……

え? それって一体どういう意味?」

僕は又少しこんがらがって来た。

「ねえ、死霊使いって強いの?」

どんどん疑問がわいてくる。

僕は何も知らなさすぎだ。

「いや、あいつらは死霊を召喚して
自分の代わりに戦わせる程だ。

奴ら自身はそんなに強くはない。

だが……

あいつらが表舞台に出てきたという事は……」

「ちょっと、ちょっと待って……

それって魔神の召喚と関係してないよね?!」

僕がそう言うと、

「なぜお前が魔神について知っている?」

デューデューに逆に聞き返された。

「え? だって……僕の父上が……」

「まあ、今の所その話は良い、

だが今時点ではまだ魔神と関係しているかは分からない。

実際にあいつらが魔神を召喚できるとは思わないし……」

僕はすごく焦った。

「ねえ、ダリルの所に運んで! 

今すぐに、ダリルの所に運んで!」

「お前、ここに残りたいんじゃなかったのか?」

「ごめん、もうわがまま言わない。

ちゃんと言いつけも守って、良い子にするから!

お願い、ダリルの所に運んで!」

もう支離滅裂で、ダリルの事が心配で
自分でも何を言ってるのか分からなくなってきた。

僕の心境を察したデューデューが、

「私の背に乗れ」

と言うと、
僕はデューデューの背に飛び乗った。

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