龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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森へ行く

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今朝方起きた現象は、
陽が昇る頃には既に城の騎士団から捜査隊が編成され、
一足早く森の奥に先行された。

町の様子は町の警備隊が
城の騎士達と連携を取って被害の様子を連絡し合った。

お城も壁が崩れたり、
ヒビが入ったりして建築家達は
早速の修理に勤しんでいた。

マグノリアも僕達の無事を確かめるべく、
ガウンのまま部屋を飛び出して僕の部屋へやって来た。

「何、何、何、今の揺れは何?

この国ではこんなことがあるの?!」

初めて地の揺れを経験したマグノリアは
一人騒ぎまくっていた。

勿論こんな事僕も初めてだ。

初めてどころか、地が揺れるなんて
今まで聞いた事もない。

直後で僕の部屋に飛び込んできた父でさえ
初めての経験だと言っていた。

でもアーウィンとマグノリアはお互いの無事を確かめ合い
ホッとした様な顔をしていた。

取り敢えず城の中はザワザワとはして居たけど、
人に対しての大きな被害は無かった。

皆の無事を確認した後の
僕の気がかりはデューデューだった。

”デューデューは経験したことあるんだろうか?”

彼は森の奥深く誰も知らない
誰も来られない様なところに住んでるから、
大丈夫だとは思ったけど、
もし、あの洞窟が崩れいたらと思うと、
無事を確認するまでは気が気ではなかった。

夜が明け日が昇り始めたころ、

「僕、ちょっとデューデューの様子を見て来る。

ダリル、一緒にお願い」

僕がそう言うと、
アーウィンも一緒に来ると言い出した。

「ダメだよ、アーウィンはラルフ様に従い
怪我をした人達を回って。

怪我人はホールに集められてると思うから。

それに王都もけが人が出てるらしいから、
そちらにも回されるかもしれないから」

僕がそう言うと、
マグノリアも回復師達の補助に回ると言って
アーウィンについて行った。

僕は動きやすい服に着替えると、
寝室の窓から飛び降りた。

今のお城は混乱しすぎて、
僕達が何をして居ようが誰も気に留めない。

僕が窓から飛び降りたって、
その事に気付く人さえ居ないだろう。

ダリルも僕に続いて窓から飛び降りると、
その足で僕達は裏門へと駆け抜けた。

今日城の門は正面以外は閉じてある。

僕はそれを軽々と超えると、
ダリルの方を見た。

すると彼はスッと鍵を出し、
ちゃんと開門して出て来た。

「え? 鍵? 何故?」

ダリルが鍵を持っていた事に驚いた。

「これはマスターキーです……

お忘れですか? 私は殿下の護衛です。

殿下の危機には、
瞬時にお城内の隅々にまで駆けつける必要があります。

私はお城の全ての場所に通じる事ができるのです」

そう言って鍵を仕舞うと、

「さあ、行きましょう。

今日の森の様子は
どの様な事になっているのか分かりませんが、
気を引き締めて参りましょう。

何時もより危険が潜んでいる可能性があります」

そう言って先に森に向けて走り出した。

僕もダリルの後を追って森の入り口まで走り抜けると、
目の前に立ち憚った木の枝に飛び乗った。

ダリルの方を見下ろすと、
僕はジェスチャーで合図した。

僕が腕を振り下ろすと、
ダリルが走り出した。

僕はダリルの後を追うように枝から枝を伝って
木から木へ飛び移り移動した。

森の中腹まで来た時に、
何か異様な雰囲気を感じ取った。

「ダリル止まって!」

僕は急に鼻にまとわり付いて来た
血の匂いでその場に止まった。

ダリルも僕の声を聞きその場に止まった。

「殿下、何か見えるのですか?!」

僕は耳を澄ますと、

「動かないでそままそこでちょっと待って」

そう言うと、僕は高いところへと飛び移り
辺りを見回し更に耳を澄ませた。

姿はまだ見えないけど、
先の方向から僅かに幾人かの呻き声が聞こえる。

僕は下に降りると、

「怪我をしている人たちがいる!」

そうダリルに言って先を急いだ。

「ダリル、遅れない様に僕について来て!」

そう言うと、僕は呻き声のする方へ向けて走り出した。

耳を澄ますとダリルが僕を追って走る足音が聞こえる。

僕は安心して背中をダリルに任せた。

数分走った所で僕の足が止まった。

数秒遅れてダリルもその光景に立ち止まった。

僕達の行き先の木々がまるで大きな人間が歩いて通ったように
なぎ倒され道筋が出来ている。

”一体何があったの?!”

僕は後ろを振り向くと、

「先を急ごう!」

そう言ってまた走り出した。

なぎ倒された木々を追っていくと、
完全に破壊された地域に出くわし、
僕達はそこで信じられないような光景に出くわした。

僕達の目の前には今朝送り出されたばかりの騎士達が
連なって血を流して地面に倒れていた。

僕はその光景に目を疑った。

初めて見るようなそのすさまじい光景に
言葉も発することが出来なかった。

「殿下…これは…」

ダリルでさえもその光景に驚いている。

僕は驚きのあまりそこでフリーズしてしまったけど、
ダリルがいち早く話のできそうな騎士を見つけ駆け寄った。

「リオン! 一体何があったんだ?!」

どうやらその騎士はダリルの知り合いの様だ。

「ダリル…様?」

ダリルは彼を抱え上げると、
僕に向かって頷いた。

僕は彼のところに行くと手をかざして彼に回復魔法をかけた。

とたんケガが治った彼が、

「こ……これは一体……

私の怪我が治っている。

あなたは回復師様なのですか?」

城の騎士が僕の顔を知らないはずはないのに、
頭が混乱しているのか僕の事を回復師だと勘違いしたようだ。

僕は彼の胸にそっと手を置き微笑むと、
周りを見回した。

かなりの広範囲に渡って騎士達が倒れている。

膝をついているものもいれば、
座り込んでいる者もいる。

かと言えば、倒れ込んで唸っている者もいれば、
ピクリとも動かない者もいる。

“この状況はヤバイ……”

「殿下、広範囲にわたる回復魔法が使えますか?」

ダリルがすかさずそう尋ねた。

ダリルがリオンと呼んだ騎士は

「エッ?! 殿下?! 

そう言えば、ダリル様は殿下の騎士になられたと…

そう言えばそのお顔は拝見したことが……

それにその見事な銀の髪は……

おー まさか…… 回復魔法……? 殿下が?」

そう言って彼は目を白黒させていた。

「殿下、私からもお願い致します。

もし彼らを助ける事ができるのなら!」

リオンにも頼まれ、僕はまた辺りを見回した。

広範囲にわたる回復魔法なんて使ったことが無い。

それにこんなすさまじい有様は……

“本当にできるのだろうか……

でもやらなきゃ皆んなは……”

そう思うと、僕は無意識のうちに両手を天にかざしていた。

目を閉じて伸ばした手の先に魔力が集まる様、集中した。

手の先に回復の魔法が集まると、
そこが金色に光る。

それを確認すると、その光がこの辺り一体を包む様に想像し振りかざすと、
僕の両手から眩しい光が四方に向けて広がった。

そして騎士たちの倒れている地面を包んだかと思うと、
その光が筒のように伸びて天に向けて放出された。

瞬間、倒れてた人や、
地にひさをつけていた人たちが
ヨロヨロと立ち上がった。

中には起き上がらなかった人たちもいる。

その人達はもうきっと……

僕は目を閉じて頭を垂れた。

”もっと早く来ていたら!”

そう思うと、悔やまれてならなかった。

でも僕は初めての死と向かい合わせ、
終わった後で足が震えて来た。

その場にペタンと座り込むと、
ダリルがすぐに僕を支えてくれた。

一足早く回復したリオンは、
隊の再結成をし、指示を与え終わると、
僕達のところへ戻って来た。

彼はダリルがまだ城の騎士団に居た頃、
彼の支配下に居た人で、
今は森の巡回をする騎士団の団長をしているらしい。

「殿下、この度は私の隊を救って頂き
本当に有難うございました」

彼は涙ながらに土下座をして僕に頭を下げた。

「やめて下さい!

僕は何もしていません!

今ではもっと早くこれなかった事が悔やまれます。

亡くなられた方々はとても残念です。

でも、まさかこんな事が起こるなんて、
一体何があったのですか?!」

僕が尋ねると、

「私にも何が起きたのか良く分かりません。

あんな魔物は見た事がないし、聞いたこともない」

青い顔をしてそう答えた。

「魔物? 魔物の仕業なのですか?!

どの様な魔物だったのですか?」

僕が尋ねると、

「見た感じは妖精の様な綺麗な人でした。

でも、とてつも無く大きいんです!」

そう言って彼は震え出した。

「大きい?」

僕はダリルの方を見た。

此処へ来る途中で見た

”足跡”

はきっとその魔物の物だ。

ダリルもそう感じていた。

「大きいって、背が異常に高いってことですよね?」

「はい、私たちの頭が彼女の
足首の少し上までしかいかない様な大きさなのです」

そう言って彼は辺りを見回した。

「すみません、まだ周りを飛んでいそうで……」

「飛んでいる?」

その言葉は何のことを言っているのか分からなかった。

「はい、彼女の周りには
私達人間の子供くらいの大きさの妖精?が飛び回っていて……」

「妖精? 妖精って目には見えない
伝説上の生き物って言われている羽の生えた小さな?」

僕がそう尋ねるとリオンはコクコクと頷いて、

「はい、彼女のサイズから言うと、
恐らく人の子供の大きさが彼女の大きさで言うところの妖精というような感じで……

その子たちは妖精のような羽が生えて彼女の周りを
彼女を守るように飛び回っていたのです。


でもとても獰猛で私たちは彼女自身ではなく、
彼女の周りに居た妖精たちにやられたんです」

そう言って身震いをした。

「え? じゃあ、私達の所でいう
子供たちの大きさの魔物に全滅させられたんですか?」

僕がそう尋ねると、彼は、

「すみませんでした」

そう言って頭を下げた。

「いえ、リオン様のせいではありません。

このような事態は誰も想像していませんでした。

あの、その妖精?達はどのようにして攻撃してきたのですか?」

そう尋ねると、彼は、

「魔法です!

彼らは強力な魔法を使うのです!

私たちの鎧や盾などは全然役に立ちませんでした。

それにすばしっこくて剣でも斬れないのです!」

そう言って口を噤んだ。

僕もリオンの話を聞いて恐ろしくなった。

今までそんな強力な魔物とは戦ったことが無い。

魔法を使われると、
僕の身体強化もどれほど役に立つのか分からない。

僕は不安になってダリルを見上げた。

彼も戸惑ったような顔をしている。

でも彼らは一体どこから来たのだろう?

この森では一度も見かけたことが無い。

それどころか、そう言う魔物がいる事も聞いたことが無い。

「ねえ、彼らはどこから現れたの?

そしてどこへ行ったの?」

そう尋ねると、リオンは首をひねって、

「どこから現れたのかはさっぱり分からないのです。

気付いたらいたという感じで……

ええ、彼らは何処からともなく現れて
そしてあっちの方へと消えて行きました」

そう言ってリオンが東の方を指差した。

僕はハッとして、

「ダリル、向こうは……」

直ぐにダリルの方を見た。

僕はリオンの指さす方を見て嫌な予感がした。

なぜなら、彼が指をさした方向は
今日僕達が行く予定だったデューデューと会う時に
いつも行っていた湖の方角だったからだ。







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