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離れ
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「ジェイド! 昨夜襲われたって聞いたんだけど!! 」
未だ夜も開けぬうちから、
王都から帰って来たアーウィンが
血相を変えて僕の部屋に飛び込んできた。
「アーウィン? もう帰って来たの?!」
僕の反応に目を白黒させて、
「もう帰って来たの?って………
僕、ジェイドが刺客に襲われたって聞いた時は
心臓が止まるかと思ってとんで帰って来たのに
何その反応!
それにしても、随分……元気そうだね?」
そう言ってアーウィンはソファーに座り込んだ。
「元気そうだねって……
そんな元気じゃないんだけどね、
実際、本当に殺されるかと思ったし……
それにしても、随分情報早いね?
実をいうと、今しがた全ての処理が終わった所だったんだけど……
僕が襲われたって誰に聞いたの?」
そう言うと、アーウィンが欠伸をしながら、
「ジェイドが無事だって分かったら急に眠くなっちゃった…
もう神殿では大騒ぎふぁっふぁらからさ~」
と最後の方は、
あくびなのか言葉なのか分からない言葉で返した。
僕は思い出したように
「あー、そう言えば昨夜は神殿から神官達が幾人が来てたな?
じゃあ、そこから神殿に漏れたってとこだね」
アーウィンはうん、うんと頷きながら
ソファーに寝転ぶと、
「まあ、そんな所だけど、
本当ジェイド、勘弁してよって感じ……
それも僕が居ない時にさ~
まあ、ダリル様がいるから大丈夫とは思ったけど、
やっぱり実際に無事を見るまではハラハラで……
無理言って馬車を出してもらったよ。
まあ、僕がジェイドのお付き神官だから
無理が通った様なもんだけど……」
そう言いながらもアーウィンはすぐさま
スースーと寝息を立てながら眠りに落ちた。
僕はダリルを見ると、
「何しに来たんだろうね?
それにしてもソファーでなんて良く眠れるよね」
そう言いながら、ベッドからブランケットを引きずってくると、
アーウィンの背にブランケットを掛けた。
「殿下は愛されてますね。
アーウィン様は本当に殿下の事が心配だったんですよ」
そう言うダリルに、
「アーウィンの事、何だか君の方が嬉しそうだね」
そう言うと、
「そうですね。
殿下の事を信頼して任せられる人物がいると言うのは
私にとって、とても喜ばしい事です」
そう言いながらダリルがアーウィンを見つめた。
そんなダリルを見ながら、
「僕はダリルの事もすごく信頼しているよ?
今はあんな事があっていろんな人が怪しく見えるけど、
ダリルの事は1番に信頼してる」
そう言うと彼は少しほほ笑んで、
「おや? 陛下やアーウィン様を差し置いてですか?」
と確かめるように尋ねた。
「うん、父上や、アーウィンよりも!」
そう言うとダリルは、
「有難うございます。
殿下にそう言って頂けてとても恐縮です」
そう言ってはにかんだ。
普段鉄仮面のダリルの微笑みは破壊的だ。
僕はそんなダリルの色んな面を見てしまった。
弱い部分も、強い部分も、そして甘い部分も……
僕にだけ晒してくれる彼の別の顔がとても嬉しかったし、
愛おしいとも思った。
「あのさ、話は変わるんだけど…」
そう言って目に前でスースー眠りこけるアーウィンを見た。
その時マグノリアが勢いよく僕の寝室のドアを開けた。
彼女は本当にタイミング良く現れる。
「ジェイド!」
そう叫んで寝室に舞い込んできたのに続き、マグノリアの婆やも
マグノリアを追って僕の寝室へやって来た。
「姫様~
殿方の寝室に淑女が血相を変えて、
そう駆け込むものではありません~!」
本当にシギが気のどくになって来る。
そんなシギを無視してマグノリアは僕に飛びついて来た。
「ジェイド~!
無事で良かったわ~
もう、アーウィンが大袈裟に騒ぐから、
大丈夫と思って居ても私までハラハラし出したわ~
本当にコイツ~ こんな所で寝こけやがって~!!
私は一睡もしてないのに~~」
アーウィンの方を恨めしそうに眺めながら僕の頭を撫でた。
「や、マグノリア、別に頭撫でなくても良いから……
僕、もうそんな子供じゃないし……」
「何言ってるのよ!
12歳って言ったら未だ子供よ!
成人するまでは親の庇護のもとに居るんだから!」
そう言ってアーウィンの寝てる隣に
ドカッと腰を下ろした。
アーウィンは
“ムニャムニャ…
う~ん、マグノリア…”
と、何やらマグノリアの夢を見ているらしい。
「姫様、殿下の無事が分かりましたので、
お部屋へ戻りましょう。
婚姻前に未来の旦那様のお部屋へ
無闇に入るものでは有りません!」
隣で呆然と立っていたジギが、
マグノリアの腕を掴んで引っ張った。
「もう! 婆やはほんと古いんだから!」
「姫様が大人しく私の言葉に
耳を傾けて下さったら私も言いません!」
そう言うと、ソファーから立ち上がった
マグノリアの背を押した。
「殿下、本当にお騒がせ致しました」
そう言って深々とお辞儀をすると、
「ほら、姫様、参りますよ」
そう言ってグイグイとマグノリアを引いて行った。
マグノリアは振り返って僕達を見て、
「じゃあ、私、また後で来るから!」
そう言い残すと、
シギとイソイソと自分達の部屋へと戻って行った。
その姿を唖然として見ていた僕は
ダリルの方を振り向くと、
「本当に王女なんだよね?」
そう言って肩を竦めた。
僕は事あるごとに同じ事を、
繰り返し、繰り返しダリルに確認している。
その度にダリルは真剣な顔をして、
「はい、間違いございません」
と、返す。
ダリルは少し僕を見て何か言いたそうにすると、
その口を開いた。
「でも…
殿下は本当に宜しいのですか?」
突然の問いに何のことを聞いているのか最初は分からなかった。
「ん? 何の事?」
「その……マグノリア殿下とアーウィン様の事」
珍しくダリルが突っ込んできた。
僕は小さく微笑むと、
「もう何度も言ってるでしょう?
僕には女性は愛せないって!
そんなことはダリルが一番よく知ってるでしょ!」
そう言ってダリルを指さした。
ダリルは一歩引いた様にして
「それは一時の気の迷いとかでは無く…?」
そう尋ねるや否や、
「いえ、失礼致しました」
そう言って口を継ぐんだ。
暫く沈黙が続いたけど、
僕がずっと気になっていたことをダリルに尋ねた。
「ダリルってさ、
大人になってからは好きな人とか居なかったの?」
彼は少しびっくりしたようにしていたけど、
直ぐに彼の答えをくれた。
「いえ、私は陛下にこの命を捧げると決めていましたので…」
その答えを聞くと、僕はすぐさま
「でも今は僕にその命は預けてるよね?」
そう尋ねた。
今でも父を信仰しているなんて言われたら少し妬ける。
でも彼は秒もおかず、
「はい! それは間違い有りません!」
そう言い切ったので、
それを聞いて僕は自然と顔がほころびた。
「あの…お話の途中で申し訳ないのですが、
殿下はマグノリア殿下が来られる前に
何か言い掛けてらっしゃいましたよね?」
ダリルのその言葉で思い出した。
「そうだよ、僕、昨夜変な夢を見たんだ」
「夢でございますか?」
「うん、2人の女性がいたんだけど、
そのうちの1人がメルデーナって呼ばれてて……」
メルデーナという名前を出した途端ダリルの顔色が変わった。
「メルデーナってデューデュー様が言われていた
森での……」
「きっとそうなんだろうと思う…
彼女の姿が……騎士が言っていた
妖精みたいなって言うにに当てはまるから…」
「どの様な夢だったのですか?」
「良くは分からないんだけど、
誰かのことを話してて……
多分、魔神に関しての重要な人達なんだと思うけど、
確定は出来なくて……
多分1人は僕じゃないかな?って思ったのはあったんだけど、
凄く抽象的でよく意味がわからないんだ。
何だか種がどうのこうのって……
それに、もう1人の人が……
凄く真っ白な人でエレノアって呼ばれてて、
そこに居た時は人の姿をしてたんだけど、
そこを去る時に真っ白な龍に変わったんだ……」
そう言って首を傾げると、
「それは気になる夢ですね」
そう言ってダリルも不思議そうな顔をしていた。
僕はうん、うんと頷くと、
「そうなんだよね、
だから僕、暫く王都から離れようと思うんだ。
だからアーウィンは王都に戻して……」
そう言うと、
「どちらへ行かれるのですか?」
ダリルが険しい顔をして尋ねた。
「僕さ、ここ最近の出来事で思ったんだけど、
僕っていざという時は全然役に立たないって言う事がわかったんだ。
昨夜の事だって満足に魔法も使えなかったし、
ダリルが居なければ確実に死んでいた。
僕はこのままでは嫌なんだ。
誰かを守る事はできなくても、
まずは自分の身は守れる様にしなくてはって……
だからね、デューデューの所でサバイバルしながら
戦い方の鍛錬をしようと思っている。
あそこだと刺客に狙われる心配もないし、
それにデューデューにも夢の事も少し相談したいし……
だから、活躍の場はないけど
ダリルには僕と一緒に来てほしい」
そう言うと、
「僕も行く!」
と、ダリルが答えるよりも先に、
眠っていたアーウィンが飛び起きて答えた。
「は? は? は~?
一体何言ってるの?!
急に起きたかと思えばアーウィンも一緒に行くって。
一体どこから僕の話聞いて他の?!
大体、僕はダリルに聞いたんだけど!」
そう言うと、アーウィン怒ったようにして、
「僕を王都に返すって、何いってるんだよ!
ジェイドが行くところには僕もついて行く!」
そう言って捲し立てた。
「そんな事神殿が許すはずないでしょ!
回復が使える神官って凄く貴重なんだよ?!
デューデューのとこ行ったら、
いつ戻って来れるかも分かんないし!」
アーウィンは数年前に神官に位が上がった。
そしてその回復の魔力の高さから、
大神官の位を飛んで、
次期最高神官候補だとも言われている。
「じゃあ、一年!
ジェイドが13歳になるまで戻れなかったら
大人しく王都に戻る!
だから一緒に訓練して一緒に強くなって早く戻ってこようよ!」
そこまで言われると僕は何も言えない。
「ダリルは? そんなでも、
ダリルは僕と一緒に来てくれる覚悟はある?」
ダリルがどうっ答えるのか怖かったけど、
「私は殿下が行かれるところには
何処へなりと付いて行きます。
ただ、陛下がどう言われるか……」
そこはやはりお城務め。
勝手に
”はい分かりました、では参りましょう”
とはいかない。
でも、先に先手は打ってあった。
「父上だったら大丈夫。
刺客に襲われた後に既に話は付けてあるから。
それにデューデューのとこに籠るって言っても、
必要な時はお城に顔を出せるから…
別に海を渡って大陸の外に出るって訳じゃないし」
そう言うと、何故かアーウィンの方が大手で同意している。
「そうだよね、別に大陸を出る訳じゃないし、
帰ってこようと思えば、
デューデューの翼で物の数分で帰って来れるし、
うん、絶対神殿を説き伏せて僕もついて行くから!」
そう言い終わった時に、また勢いよくドアがバーンと開いて、
「何男たちだけで美味しそうな話してるの?!
そんなことになってるなんて、
勿論私もついて行くわよ!」
そう言ってマグノリアがまた僕の部屋へ乱入して来た。
「君! 僕達の話をドアの所で聞き耳立てて聞いてたね!
全く、アーウィンが大声で騒ぐから!
マグノリアは婆やの事は良いの?!
また部屋を抜け出してって怒られるよ?」
そう言うと、
「あなた、今何時だと思ってるの?!
もう陽も登って朝食の時間過ぎてるわよ!
優しいこの私がわざわざ呼びに来てあげたんですからね!」
そうマグノリアに言われ、
窓の外を見ると外はすっかりと夜が明け、
太陽の光が燦々と窓から入って来てるのにも気付かずに
僕達は溶々と話し込んでいた。
未だ夜も開けぬうちから、
王都から帰って来たアーウィンが
血相を変えて僕の部屋に飛び込んできた。
「アーウィン? もう帰って来たの?!」
僕の反応に目を白黒させて、
「もう帰って来たの?って………
僕、ジェイドが刺客に襲われたって聞いた時は
心臓が止まるかと思ってとんで帰って来たのに
何その反応!
それにしても、随分……元気そうだね?」
そう言ってアーウィンはソファーに座り込んだ。
「元気そうだねって……
そんな元気じゃないんだけどね、
実際、本当に殺されるかと思ったし……
それにしても、随分情報早いね?
実をいうと、今しがた全ての処理が終わった所だったんだけど……
僕が襲われたって誰に聞いたの?」
そう言うと、アーウィンが欠伸をしながら、
「ジェイドが無事だって分かったら急に眠くなっちゃった…
もう神殿では大騒ぎふぁっふぁらからさ~」
と最後の方は、
あくびなのか言葉なのか分からない言葉で返した。
僕は思い出したように
「あー、そう言えば昨夜は神殿から神官達が幾人が来てたな?
じゃあ、そこから神殿に漏れたってとこだね」
アーウィンはうん、うんと頷きながら
ソファーに寝転ぶと、
「まあ、そんな所だけど、
本当ジェイド、勘弁してよって感じ……
それも僕が居ない時にさ~
まあ、ダリル様がいるから大丈夫とは思ったけど、
やっぱり実際に無事を見るまではハラハラで……
無理言って馬車を出してもらったよ。
まあ、僕がジェイドのお付き神官だから
無理が通った様なもんだけど……」
そう言いながらもアーウィンはすぐさま
スースーと寝息を立てながら眠りに落ちた。
僕はダリルを見ると、
「何しに来たんだろうね?
それにしてもソファーでなんて良く眠れるよね」
そう言いながら、ベッドからブランケットを引きずってくると、
アーウィンの背にブランケットを掛けた。
「殿下は愛されてますね。
アーウィン様は本当に殿下の事が心配だったんですよ」
そう言うダリルに、
「アーウィンの事、何だか君の方が嬉しそうだね」
そう言うと、
「そうですね。
殿下の事を信頼して任せられる人物がいると言うのは
私にとって、とても喜ばしい事です」
そう言いながらダリルがアーウィンを見つめた。
そんなダリルを見ながら、
「僕はダリルの事もすごく信頼しているよ?
今はあんな事があっていろんな人が怪しく見えるけど、
ダリルの事は1番に信頼してる」
そう言うと彼は少しほほ笑んで、
「おや? 陛下やアーウィン様を差し置いてですか?」
と確かめるように尋ねた。
「うん、父上や、アーウィンよりも!」
そう言うとダリルは、
「有難うございます。
殿下にそう言って頂けてとても恐縮です」
そう言ってはにかんだ。
普段鉄仮面のダリルの微笑みは破壊的だ。
僕はそんなダリルの色んな面を見てしまった。
弱い部分も、強い部分も、そして甘い部分も……
僕にだけ晒してくれる彼の別の顔がとても嬉しかったし、
愛おしいとも思った。
「あのさ、話は変わるんだけど…」
そう言って目に前でスースー眠りこけるアーウィンを見た。
その時マグノリアが勢いよく僕の寝室のドアを開けた。
彼女は本当にタイミング良く現れる。
「ジェイド!」
そう叫んで寝室に舞い込んできたのに続き、マグノリアの婆やも
マグノリアを追って僕の寝室へやって来た。
「姫様~
殿方の寝室に淑女が血相を変えて、
そう駆け込むものではありません~!」
本当にシギが気のどくになって来る。
そんなシギを無視してマグノリアは僕に飛びついて来た。
「ジェイド~!
無事で良かったわ~
もう、アーウィンが大袈裟に騒ぐから、
大丈夫と思って居ても私までハラハラし出したわ~
本当にコイツ~ こんな所で寝こけやがって~!!
私は一睡もしてないのに~~」
アーウィンの方を恨めしそうに眺めながら僕の頭を撫でた。
「や、マグノリア、別に頭撫でなくても良いから……
僕、もうそんな子供じゃないし……」
「何言ってるのよ!
12歳って言ったら未だ子供よ!
成人するまでは親の庇護のもとに居るんだから!」
そう言ってアーウィンの寝てる隣に
ドカッと腰を下ろした。
アーウィンは
“ムニャムニャ…
う~ん、マグノリア…”
と、何やらマグノリアの夢を見ているらしい。
「姫様、殿下の無事が分かりましたので、
お部屋へ戻りましょう。
婚姻前に未来の旦那様のお部屋へ
無闇に入るものでは有りません!」
隣で呆然と立っていたジギが、
マグノリアの腕を掴んで引っ張った。
「もう! 婆やはほんと古いんだから!」
「姫様が大人しく私の言葉に
耳を傾けて下さったら私も言いません!」
そう言うと、ソファーから立ち上がった
マグノリアの背を押した。
「殿下、本当にお騒がせ致しました」
そう言って深々とお辞儀をすると、
「ほら、姫様、参りますよ」
そう言ってグイグイとマグノリアを引いて行った。
マグノリアは振り返って僕達を見て、
「じゃあ、私、また後で来るから!」
そう言い残すと、
シギとイソイソと自分達の部屋へと戻って行った。
その姿を唖然として見ていた僕は
ダリルの方を振り向くと、
「本当に王女なんだよね?」
そう言って肩を竦めた。
僕は事あるごとに同じ事を、
繰り返し、繰り返しダリルに確認している。
その度にダリルは真剣な顔をして、
「はい、間違いございません」
と、返す。
ダリルは少し僕を見て何か言いたそうにすると、
その口を開いた。
「でも…
殿下は本当に宜しいのですか?」
突然の問いに何のことを聞いているのか最初は分からなかった。
「ん? 何の事?」
「その……マグノリア殿下とアーウィン様の事」
珍しくダリルが突っ込んできた。
僕は小さく微笑むと、
「もう何度も言ってるでしょう?
僕には女性は愛せないって!
そんなことはダリルが一番よく知ってるでしょ!」
そう言ってダリルを指さした。
ダリルは一歩引いた様にして
「それは一時の気の迷いとかでは無く…?」
そう尋ねるや否や、
「いえ、失礼致しました」
そう言って口を継ぐんだ。
暫く沈黙が続いたけど、
僕がずっと気になっていたことをダリルに尋ねた。
「ダリルってさ、
大人になってからは好きな人とか居なかったの?」
彼は少しびっくりしたようにしていたけど、
直ぐに彼の答えをくれた。
「いえ、私は陛下にこの命を捧げると決めていましたので…」
その答えを聞くと、僕はすぐさま
「でも今は僕にその命は預けてるよね?」
そう尋ねた。
今でも父を信仰しているなんて言われたら少し妬ける。
でも彼は秒もおかず、
「はい! それは間違い有りません!」
そう言い切ったので、
それを聞いて僕は自然と顔がほころびた。
「あの…お話の途中で申し訳ないのですが、
殿下はマグノリア殿下が来られる前に
何か言い掛けてらっしゃいましたよね?」
ダリルのその言葉で思い出した。
「そうだよ、僕、昨夜変な夢を見たんだ」
「夢でございますか?」
「うん、2人の女性がいたんだけど、
そのうちの1人がメルデーナって呼ばれてて……」
メルデーナという名前を出した途端ダリルの顔色が変わった。
「メルデーナってデューデュー様が言われていた
森での……」
「きっとそうなんだろうと思う…
彼女の姿が……騎士が言っていた
妖精みたいなって言うにに当てはまるから…」
「どの様な夢だったのですか?」
「良くは分からないんだけど、
誰かのことを話してて……
多分、魔神に関しての重要な人達なんだと思うけど、
確定は出来なくて……
多分1人は僕じゃないかな?って思ったのはあったんだけど、
凄く抽象的でよく意味がわからないんだ。
何だか種がどうのこうのって……
それに、もう1人の人が……
凄く真っ白な人でエレノアって呼ばれてて、
そこに居た時は人の姿をしてたんだけど、
そこを去る時に真っ白な龍に変わったんだ……」
そう言って首を傾げると、
「それは気になる夢ですね」
そう言ってダリルも不思議そうな顔をしていた。
僕はうん、うんと頷くと、
「そうなんだよね、
だから僕、暫く王都から離れようと思うんだ。
だからアーウィンは王都に戻して……」
そう言うと、
「どちらへ行かれるのですか?」
ダリルが険しい顔をして尋ねた。
「僕さ、ここ最近の出来事で思ったんだけど、
僕っていざという時は全然役に立たないって言う事がわかったんだ。
昨夜の事だって満足に魔法も使えなかったし、
ダリルが居なければ確実に死んでいた。
僕はこのままでは嫌なんだ。
誰かを守る事はできなくても、
まずは自分の身は守れる様にしなくてはって……
だからね、デューデューの所でサバイバルしながら
戦い方の鍛錬をしようと思っている。
あそこだと刺客に狙われる心配もないし、
それにデューデューにも夢の事も少し相談したいし……
だから、活躍の場はないけど
ダリルには僕と一緒に来てほしい」
そう言うと、
「僕も行く!」
と、ダリルが答えるよりも先に、
眠っていたアーウィンが飛び起きて答えた。
「は? は? は~?
一体何言ってるの?!
急に起きたかと思えばアーウィンも一緒に行くって。
一体どこから僕の話聞いて他の?!
大体、僕はダリルに聞いたんだけど!」
そう言うと、アーウィン怒ったようにして、
「僕を王都に返すって、何いってるんだよ!
ジェイドが行くところには僕もついて行く!」
そう言って捲し立てた。
「そんな事神殿が許すはずないでしょ!
回復が使える神官って凄く貴重なんだよ?!
デューデューのとこ行ったら、
いつ戻って来れるかも分かんないし!」
アーウィンは数年前に神官に位が上がった。
そしてその回復の魔力の高さから、
大神官の位を飛んで、
次期最高神官候補だとも言われている。
「じゃあ、一年!
ジェイドが13歳になるまで戻れなかったら
大人しく王都に戻る!
だから一緒に訓練して一緒に強くなって早く戻ってこようよ!」
そこまで言われると僕は何も言えない。
「ダリルは? そんなでも、
ダリルは僕と一緒に来てくれる覚悟はある?」
ダリルがどうっ答えるのか怖かったけど、
「私は殿下が行かれるところには
何処へなりと付いて行きます。
ただ、陛下がどう言われるか……」
そこはやはりお城務め。
勝手に
”はい分かりました、では参りましょう”
とはいかない。
でも、先に先手は打ってあった。
「父上だったら大丈夫。
刺客に襲われた後に既に話は付けてあるから。
それにデューデューのとこに籠るって言っても、
必要な時はお城に顔を出せるから…
別に海を渡って大陸の外に出るって訳じゃないし」
そう言うと、何故かアーウィンの方が大手で同意している。
「そうだよね、別に大陸を出る訳じゃないし、
帰ってこようと思えば、
デューデューの翼で物の数分で帰って来れるし、
うん、絶対神殿を説き伏せて僕もついて行くから!」
そう言い終わった時に、また勢いよくドアがバーンと開いて、
「何男たちだけで美味しそうな話してるの?!
そんなことになってるなんて、
勿論私もついて行くわよ!」
そう言ってマグノリアがまた僕の部屋へ乱入して来た。
「君! 僕達の話をドアの所で聞き耳立てて聞いてたね!
全く、アーウィンが大声で騒ぐから!
マグノリアは婆やの事は良いの?!
また部屋を抜け出してって怒られるよ?」
そう言うと、
「あなた、今何時だと思ってるの?!
もう陽も登って朝食の時間過ぎてるわよ!
優しいこの私がわざわざ呼びに来てあげたんですからね!」
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窓の外を見ると外はすっかりと夜が明け、
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僕達は溶々と話し込んでいた。
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