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マリオンとアーウィン
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「アーウィン!」
父の執務室へ向かう途中、
アーウィンの後ろ姿を見かけて僕は駆け寄った。
彼は燃える様な赤毛をしているので遠くから見ても、
後ろ姿でもアーウィンだと直ぐにわかる。
それに神殿のローブを羽織った赤毛だとすると、
アーウィンと思ってまず間違いない。
駆け寄ってアーウィンの肩を掴みもう一度、
「アーウィン!」
そう声を掛けると、
「これはこれはジェイド殿下。
ご機嫌よろしゅう御座いますか?」
そう言ってアーウィンの隣にいた人が深く頭を下げて挨拶をした。
“誰?”
振り向きざまに挨拶をされたので、
アーウィンを連れ立って来た人が誰か分からなかった。
正直に言うと、アーウィンに声をかけるまで、
彼が隣に居た事さえ気付かなかった。
彼の姿から、恐らく神殿関係の人だろうと思った。
きっとアーウィンの新しい召について父に会いに来たのだろう。
「これから父上に挨拶ですか?」
そう尋ねると、
アーウィンと一緒にいた人は
「左様でございます」
そう言って顔を上げた。
彼は神殿の関係者らしからず、割とガッチリとした体格をしていた。
普通神殿関係者はどちらかと言えば華奢な体型をしている。
そのミスマッチが神殿には場違いな様で少し違和感を感じた。
でも彼の見た目は何故か何かを思い出させた。
“あれ? この顔…何処かで見た事が……何処でだったっけ?”
そう思い少し考えたけど、結局は思い出す事ができなかった。
きっとずっと前に神殿を訪問した時に会ったのだろうと思った。
僕はアーウィンの隣に歩み寄ると、
“一緒にいる人誰?”
アーウィンの耳にそう囁いた。
恐らくその囁きがその人にも聞こえていたのだろう。
その人はすぐさまその囁きに答えた。
「これはこれはジェイド殿下、
自己紹介もせず、誠に申し訳ございません」
そう言ってその人はもう一度深くお辞儀をした。
「以前お会いした事がありますか?」
そう尋ねると彼は口の端を上げた様にして笑った様に見えた。
“え? 今の表情は……?”
そう思ったけど、彼が顔を上げた時は普通の表情に戻っていたので見間違いかと思った。
彼は腰を低くしたままニコニコと僕を見上げると、
「はい、以前神殿を訪問されていた時に一度お会い致しました。
私は神殿中央局局長のマリオンと申します」
そう言って自己紹介をした。
「神殿中央局局長?」
初めて聞く役職だった。
“本当に前に会ってる?
もし本当に会っているのだとすれば、
彼の役職を忘れるはずがない……”
マリオンにあってからは違和感ばかりだ。
彼は怪訝な顔をする僕に向かって
「はい、神殿の組織を纏める責を与えられております」
そう言ってニコリと微笑えんだ。
彼のその微笑みにゴクリと唾を飲み込むと、
「そうでしたか…それでは今日はアーウィンの新しい召について?」
そう言って一歩下がった。
彼の微笑みが少し怖かった。
何かをその笑顔の裏で考えている様で、
でもその意図が何なのかさっぱり分からなかった。
マリオンは
「左様でございます。
これから陛下へご挨拶に参る所で御座います」
そう言うと又頭を下げた。
「そうでしたか、お急ぎの所お呼び止めして申し訳ありませんでした。
あの……陛下と謁見の後、アーウィンと話す事は出来ますか?」
マリオンがどう出るか分からなかったけど、
僕がそう尋ねると、マリオンはチラッとアーウィンの方を見た。
それに釣られて僕もアーウィンを見た。
僕が話しかけて以来、アーウィンはそこに居ないかのように、
ずっとマリオンの隣に黙ったまま立っていた。
アーウィンのその態度にも少し違和感を感じた。
“こんなのは全然アーウィンじゃない!”
アーウィンはとても人懐っこくて、
僕が居るのにも関わらず、
一言も声を発する事がないなんて事は今まで一度として無い。
父王の前でだって僕とは砕けて会話をする。
マリオンはまた僕の方を見ると、
「少しのお時間でしたら…この後少々…」
そう言うと、マリオンはアーウィンに顎で合図をして、
「それでは殿下、先を急ぎますので失礼致します」
そう言うと、
「アーウィン、それでは参りましょう」
そう言ってアーウィンを連れてスタスタと急足で僕の元から離れて行った。
アーウィンは僕の方を振り返りしながらも、マリオンの後をついていった。
“一体どうなってるんだろう……”
僕はアーウィンのことがすごく気になって結局は謁見の間の前でアーウィンを待つ事にした。
アーウィンの態度が気になって気になって仕方なかった。
長く掛かるかと思った謁見は、
余り長い時間は掛からず先ずマリオンが部屋から出て来た。
マリオンは目ざとく僕を見つけると、
「おや、殿下?
此方までいらしたのですね。
この後陛下がアーウィンと個人的にお話がしたいようなので、
もう暫くは掛かるかと思われますが、
アーウィンにはお城から送迎が付くようですので私は先に神殿に帰らせていただきます」
そう言うと、ヒラリとケープを交わして颯爽と歩いて行った。
僕はマリオンが歩く後ろ姿をジッと見ていた。
マリオンは歩く姿でさえも洗練された人のようで、
どう見ても神殿関係者には見えない。
別に神殿関係者がドスドスと歩くわけでは無い。
ただマリオンの歩き方が異様に軽かったからだ。
ヘタをすると、足音さえもしないかも知れないような歩き方は、
とても神殿関係者とは思えなかった。
もしかしたら神官以外は僕が思っているような体格とは違うのかも知れない。
アーウィンを待つ間、僕は何処でマリオンにあったのかずっと考えていた。
マリオンは前に一度僕が神殿へ訪問した際に会ったと言ったけど、
絶対違う。
僕にはそう言った確信じみたものがあった。
じゃあ、何処であったのだろう?
もしかしたらマリオンの思い違いで神殿以外であったのかも知れない。
ごちゃごちゃと考えていると、謁見の間の扉が開いた。
アーウィンは僕が扉の前に立っているのに気付くと、
「ジェイド!」
そう叫んで走って来て僕に抱きついた。
「アーウィン、おめでとう!
最高大神官になるんだって?」
そう言ってアーウィンを抱きしめると、
「違うんだ!」
そう言ってアーウィンは僕の顔を見た。
「え? 違うの? 最高大神官になるんじゃないの?」
そう尋ねると、
「いや、最高大神官になるのは間違いないけど、
絶対これは間違った選択だ!
絶対裏に何か意図があるはずだ」
アーウィンは真っ青な顔をしてそう言った。
父の執務室へ向かう途中、
アーウィンの後ろ姿を見かけて僕は駆け寄った。
彼は燃える様な赤毛をしているので遠くから見ても、
後ろ姿でもアーウィンだと直ぐにわかる。
それに神殿のローブを羽織った赤毛だとすると、
アーウィンと思ってまず間違いない。
駆け寄ってアーウィンの肩を掴みもう一度、
「アーウィン!」
そう声を掛けると、
「これはこれはジェイド殿下。
ご機嫌よろしゅう御座いますか?」
そう言ってアーウィンの隣にいた人が深く頭を下げて挨拶をした。
“誰?”
振り向きざまに挨拶をされたので、
アーウィンを連れ立って来た人が誰か分からなかった。
正直に言うと、アーウィンに声をかけるまで、
彼が隣に居た事さえ気付かなかった。
彼の姿から、恐らく神殿関係の人だろうと思った。
きっとアーウィンの新しい召について父に会いに来たのだろう。
「これから父上に挨拶ですか?」
そう尋ねると、
アーウィンと一緒にいた人は
「左様でございます」
そう言って顔を上げた。
彼は神殿の関係者らしからず、割とガッチリとした体格をしていた。
普通神殿関係者はどちらかと言えば華奢な体型をしている。
そのミスマッチが神殿には場違いな様で少し違和感を感じた。
でも彼の見た目は何故か何かを思い出させた。
“あれ? この顔…何処かで見た事が……何処でだったっけ?”
そう思い少し考えたけど、結局は思い出す事ができなかった。
きっとずっと前に神殿を訪問した時に会ったのだろうと思った。
僕はアーウィンの隣に歩み寄ると、
“一緒にいる人誰?”
アーウィンの耳にそう囁いた。
恐らくその囁きがその人にも聞こえていたのだろう。
その人はすぐさまその囁きに答えた。
「これはこれはジェイド殿下、
自己紹介もせず、誠に申し訳ございません」
そう言ってその人はもう一度深くお辞儀をした。
「以前お会いした事がありますか?」
そう尋ねると彼は口の端を上げた様にして笑った様に見えた。
“え? 今の表情は……?”
そう思ったけど、彼が顔を上げた時は普通の表情に戻っていたので見間違いかと思った。
彼は腰を低くしたままニコニコと僕を見上げると、
「はい、以前神殿を訪問されていた時に一度お会い致しました。
私は神殿中央局局長のマリオンと申します」
そう言って自己紹介をした。
「神殿中央局局長?」
初めて聞く役職だった。
“本当に前に会ってる?
もし本当に会っているのだとすれば、
彼の役職を忘れるはずがない……”
マリオンにあってからは違和感ばかりだ。
彼は怪訝な顔をする僕に向かって
「はい、神殿の組織を纏める責を与えられております」
そう言ってニコリと微笑えんだ。
彼のその微笑みにゴクリと唾を飲み込むと、
「そうでしたか…それでは今日はアーウィンの新しい召について?」
そう言って一歩下がった。
彼の微笑みが少し怖かった。
何かをその笑顔の裏で考えている様で、
でもその意図が何なのかさっぱり分からなかった。
マリオンは
「左様でございます。
これから陛下へご挨拶に参る所で御座います」
そう言うと又頭を下げた。
「そうでしたか、お急ぎの所お呼び止めして申し訳ありませんでした。
あの……陛下と謁見の後、アーウィンと話す事は出来ますか?」
マリオンがどう出るか分からなかったけど、
僕がそう尋ねると、マリオンはチラッとアーウィンの方を見た。
それに釣られて僕もアーウィンを見た。
僕が話しかけて以来、アーウィンはそこに居ないかのように、
ずっとマリオンの隣に黙ったまま立っていた。
アーウィンのその態度にも少し違和感を感じた。
“こんなのは全然アーウィンじゃない!”
アーウィンはとても人懐っこくて、
僕が居るのにも関わらず、
一言も声を発する事がないなんて事は今まで一度として無い。
父王の前でだって僕とは砕けて会話をする。
マリオンはまた僕の方を見ると、
「少しのお時間でしたら…この後少々…」
そう言うと、マリオンはアーウィンに顎で合図をして、
「それでは殿下、先を急ぎますので失礼致します」
そう言うと、
「アーウィン、それでは参りましょう」
そう言ってアーウィンを連れてスタスタと急足で僕の元から離れて行った。
アーウィンは僕の方を振り返りしながらも、マリオンの後をついていった。
“一体どうなってるんだろう……”
僕はアーウィンのことがすごく気になって結局は謁見の間の前でアーウィンを待つ事にした。
アーウィンの態度が気になって気になって仕方なかった。
長く掛かるかと思った謁見は、
余り長い時間は掛からず先ずマリオンが部屋から出て来た。
マリオンは目ざとく僕を見つけると、
「おや、殿下?
此方までいらしたのですね。
この後陛下がアーウィンと個人的にお話がしたいようなので、
もう暫くは掛かるかと思われますが、
アーウィンにはお城から送迎が付くようですので私は先に神殿に帰らせていただきます」
そう言うと、ヒラリとケープを交わして颯爽と歩いて行った。
僕はマリオンが歩く後ろ姿をジッと見ていた。
マリオンは歩く姿でさえも洗練された人のようで、
どう見ても神殿関係者には見えない。
別に神殿関係者がドスドスと歩くわけでは無い。
ただマリオンの歩き方が異様に軽かったからだ。
ヘタをすると、足音さえもしないかも知れないような歩き方は、
とても神殿関係者とは思えなかった。
もしかしたら神官以外は僕が思っているような体格とは違うのかも知れない。
アーウィンを待つ間、僕は何処でマリオンにあったのかずっと考えていた。
マリオンは前に一度僕が神殿へ訪問した際に会ったと言ったけど、
絶対違う。
僕にはそう言った確信じみたものがあった。
じゃあ、何処であったのだろう?
もしかしたらマリオンの思い違いで神殿以外であったのかも知れない。
ごちゃごちゃと考えていると、謁見の間の扉が開いた。
アーウィンは僕が扉の前に立っているのに気付くと、
「ジェイド!」
そう叫んで走って来て僕に抱きついた。
「アーウィン、おめでとう!
最高大神官になるんだって?」
そう言ってアーウィンを抱きしめると、
「違うんだ!」
そう言ってアーウィンは僕の顔を見た。
「え? 違うの? 最高大神官になるんじゃないの?」
そう尋ねると、
「いや、最高大神官になるのは間違いないけど、
絶対これは間違った選択だ!
絶対裏に何か意図があるはずだ」
アーウィンは真っ青な顔をしてそう言った。
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