龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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父との会話

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“うっ、く…苦しい…”

寝苦しさに目を覚ますと、
デューデューが大きな頭を僕の胸に乗せ、
スースーと気持ちよさそうな寝息を立てて眠っていた。

“デューデューが此処に留まってくれたのは嬉しいけど、
流石にこれは無いな”

そう思いながらデューデューの頭を押しやると、

「もうクッキーは無いのか~」

と変な寝言をいってデューデューが首を僕の胸から移動させた。

僕は小さくプッと吹き出すと、
デューデューの温かな体温を感じて安心感を覚えた。

“良かった…無事でいてくれて本当に良かった…”

そう呟きデューデューに抱きつくと、
いろんな思いが頭を駆け巡った。

昨夜は急なデューデューの訪問に腰を抜かすような思いだったけど、
新しいスキルで城への訪問が簡単に出来るようになった為、
結局は孤立してしまった僕の側にいてくれる事になった。

だから昨夜は寝落ちするまでマリオンのことや、
これからの事などを話した。

ダリルたちが去ってからは、驚く様に事はひっそりとしている。

これが嵐の前の静けさで無ければ良いが、
叔父は一体どのような仕掛けをしてくるのか全く想像がつかない。

多分彼らの隠れ家的な場所はメルデーナの地だろうけど、
どうやってそこへ行くのかは今の僕ではどんなに逆立ちをしても
見つける術は無かった。

禁断の書を読んでも、それらしき事は何処にも書いてなかった。

でも叔父が行けたということは、僕にも行く方法がある筈だ。

メルデーナが今どうなって居るのかも気になるし、
それに後3人の守り神の事に付いても気になるが、
どれを取っても良く分からない。

彼らの事や役割、守護地等は禁断の書に書いてあるけど、
それが何処にあるのか、どうやってそこへ行くのかなどは記して無い。

あの時大賢者は僕とデューデューをあの世界から送り返してくれた。

彼はきっとどうやってそこへ行けるのかわかっている筈だ。

もしかして他の守り神の地への道も開ける事が出来るのだろうか?

もしそうであれば叔父たちは彼らにも呪いをかけてしまうのだろうか?

それに叔父が僕やデューデューを狙う理由が分からない…

いや、僕の事はきっと聖龍の加護を持っている所為だ……

僕を生かしておくと、いつか聖龍と繋がる事が出来るかもしれない。

それは彼らに取って都合が悪い。

でもデューデューの事は何故? 龍に関するなにかが必要なのか?

そこに偶然にデューデューが居たから狩ろうとしているのか?

でもそれだと、メルデーナやエレノアがデューデューをあれほど気にかけていた理由が分からない。

やはり同じ龍だから気に掛けただけなんだろうか?

それともマグノリアが揶揄って言ったようにデューデューは未来の黒龍の父親?

でもそうだとすれば何故彼らに未来がわかるのか?

考えれば考えるほど謎は深まり頭が混乱する。

でも取り敢えずは最後の砦で大賢者に教えて貰った時戻しの術がある。

いざという時は使う覚悟だ。

僕はまだその事についてみんなと話しをしていなかった。

恐らく僕の成人の儀で集まる時がチャンスだろう。

でも実際にダリルが戻って来れるのかは分からない。

マグノリアに招待状は送ってはあるけど、未だ返事は来ていない。

それにマグノリアがもし来てくれるとしても、
どれくらい此処にいられるかも分からない。

アーウィンも直ぐに王都に帰ってしまうかもしれない。

でもどうにかして少なくとも一夜は皆と共に集まりたかった。

そんな思いが堂々巡りして居るうちに、
僕は又眠りについてしまった。

そしてデューデューの呼びかけで目を覚ました。

「私はこれから森へ行ってくる。

だから窓を開けてくれ」

「あ、デューデューおはよう……

森へ行くって……何をしに?」

そう尋ねると、

「最近はずっと森を調査して居るのだ。

メルデーナの地につながる道を探して居る」

そう言われ、

「え?! 僕も一緒に行っていい?!」

そう尋ねると、

「お前は成人の儀の準備があるんじゃ無いのか?

何かわかれば直ぐに知らせる」

と来たのでガッカリとしてしまった。

「は~ 成人の儀か……

マグノリア、ちゃんと来てくれるのかな?

未だ返事が来ないんだよ。

少なくともアーウィンと会わせてあげたいんだけど……」

そう言ってため息を吐くと、

「私がひとっ飛びしてマグノリアに会ってこようか?

今だと安全に行く事が出来るぞ?」

デューデューが鼻息を荒くしながらそう言った。

「え? それってどれ位で向こうに着くの?

馬車だと一週間程は掛かるんだけど…」

「私が成体で飛ぶと半日もあれば行ける」

デューデューの答えに僕の顔がパーっと綻んだ。

「僕も行きたい!

それって、1日あれば行って帰れるって事だよね?!」

そう言うとデューデューは呆れたような顔をして

「お前は成人の儀の準備あると今言ったばかりだろう!

私と行動を共にしたかったら、ちゃんと全てを終えてから尋ねるんだな」

とお小言を言われてしまった。

「だって、デューデューが来てくれて、
何だか希望が見えたと言うか……」

本当にそんな感じだった。

思っていなかったデューデューとの再会や、
デューデューの新しいスキルによって可能になった事などを考えると、
居ても立っても居られなかった。

成人の儀どころでは無い。

デューデューはそんな僕のことを分かったのか、

「やる事をやってからだったら連れて行ってやろう。

まずは私が行って様子を見てこよう」

そう言ってくれたので、僕はデューデューに飛びついてギュッと抱きしめた。

「絶対約束だよ!」

「分かったから、早く窓を開けてくれ。

マグノリアのところへ行くのだったら、
早く出た方が良い」

「所で、デューデューってマグノリアの国って分かるの?

行ったことある?

地図なんて持ってないよね?!」

そう尋ねると、

「大体国の方角はわかる。

そこまで行けばマグノリアの気を拾う事が出来る」

「流石デューデュー様!」

そう言ってデューデューの首にスリスリすると、

「お前はこう言う時は調子がいいな」

と嫌味なのか揶揄って居るのか分からないような口調で言われたけど、
僕の心は喜びで一杯だった。

デューデューが居てくれたら不可能なことは無いような気がして来た。

「くれぐれも気をつけてね」

そう言うと、デューデューは透明に変わり僕の部屋の窓から勢いよく飛び去って行った。

それと同時にマギーが入れ違いで寝室のドアをノックした。

「殿下、今朝はお早いですね。

もう窓まで開けて換気ですか?」

嫌味のようにそう言うと、今日のスケジュールの確認を始めた。

それが終わると、

「朝食は如何なさいますか?

お部屋へ運びますか? それともダイニングへいらっしゃいますか?」

と尋ねた。

「今日は父上と朝食を取りたいので、
父のテラスの方へ運んでいただけますか?」

そう言うと、マギーは

「かしこまりました」

そう言って出て行った。

僕は急いで着替えると、寝室を飛び出し父の寝室伝いに在るテラスへと向けて走り出した。

「父上! おはよう御座います!」

そう言ってテラスへと入って行くと、父は僕が来ると言う連絡を受け、
すでに届いていた朝食に手を付けず待って居る所だった。

「ジェイド、おはよう。

どうだ? 昨夜はゆっくりと眠れたか?」

「父上、実はですね」

そう言うと、父の護衛騎士をチラリと見た。

父は直ぐに僕が言わんとする事を悟ると、
護衛騎士に下がるように手を振って護衛騎士がいなくなるのを確認すると、

「それで? 何があったのだ?」

と直ぐに本題に入った。

僕は朝食を取り始めると、最初のパンにかぶりつき、

「実は……」

と昨夜あった事を話し始めた。

それに城に帰って来て以来父会うのは初めてだったので、
マリオンの事や、最近の考え事などを話して聞かせた。

父は僕の話を聞き終えると、

「私もメルデーナのことは気になっていた」

そう言うと、腕を上げた。

すると、何処からともなく、シュッと黒ずくめの人が現れ父の前に跪いた。

僕が驚いて居ると、

「ジェイド、紹介しよう。

隠密活動を行っているタキだ」

父がそう言うと、彼は立ち上がり僕の方を向いた。

その人を見て僕の心臓が止まるかと思う程脈打った。

彼のフードから覗く髪は真っ黒で、僕をまっすぐと見つめる瞳も真っ黒だった。

僕は思わず

「ダリル」

と呼んでしまった。

いや、ダリルにそっくりだと言うわけでは無い。

その黒髪と黒い瞳がダリルのようで僕は思わずタキに見入ってしまった。

「彼は東の大陸から渡って来た民族の子孫にあたる。

恐らくダリルも同じ系統だろう」

父にそう言われ、僕は益々彼に見入った。

「そんなに見つめると、タキに穴が空いてしまうぞ?」

父にそう言われ、真っ赤になりながら、

「すみません! 余りにも知っている人と同じ髪と目の色だったから…

綺麗な色だなって…」

そう言うと、タキは少し頬を赤らめて僕に跪いた。

「それで、何か分かったのか?」

父がタキにそう尋ねると、タキは立ち上がりまた父の方を向いて跪づくと、

「はっ、今の所、未だアーレンハイム公におかしな動きは有りません」

そう言うと、

「分かった、引き続き監視をせよ」

父がそう言うと、タキは

「御意」

そう一言言って、僕の前からデューデューが透明になって消えたように、
消えて居なくなった。

僕は唖然としてその光景を身終えると、

「タキも透明になるスキルが使えるのですか?!」

と父に尋ねた。

「いや、奴らはデューデューのような透明になどはなれない。

だが奴らは忍術と言うものが使えあれは奴らの身体能力によるものだ。

東の大陸では忍者と呼ばれて居たらしい」

「どうやって彼を見つけたのですか?」

「どうやら東の大陸が海に沈んだ時に
こちらに渡って来たらしいが、
彼らの話によると、聖龍を崇めるこの国の王に仕え、
黒龍の目覚めに備えよと言うことだったらしい」

「それでは彼らは……」

「恐らく黒龍を崇めた人々の末裔だろう」

「叔父上は彼らの事はご存知なのですか?」

僕がそう尋ねると、父はフ~っと息を吐き、

「恐らく知ってはいるだろう。

だが、きっと姿を見た事はない筈だ。

だから実在していると言う事を知っているかは分からない」

そう言うと、難しそうな顔をした。

「そうですか。

分かりました。

ご紹介くださりありがとう御座いました。

いつか機会があれば、彼らの話を聞いても宜しいでしょうか?」

「ああ、構わないさ。

今度その場を作ろう」

「お願い致します。

今朝は一緒に朝食を取って頂きありがとう御座いました!」

そう言って深くお辞儀をすると、

「もう行くのか?」

と父は残念そうな顔をした。

「はい。 成人の儀までやる事が沢山有りますので」

「そうか、楽しみだな」

「では失礼致します」

そう挨拶すると、僕は今日の日課をこなす為、大広間へと向かって歩き出した。








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