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束の間の一時
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夜遅く訪れた訪問者に僕達一同は固まった。
“隠れて! 早く早く!”
マグノリアを引き摺ってアーウィンは一目散にクローゼットに隠れた。
“デューデュー早く姿を消して!”
ヒヤヒヤする中デューデューは余裕でお菓子を頬張って居た。
“デューデュー、何してるの! 早く!早く!“
急かしても彼は余裕で未だお菓子を食べている。
「そんなに慌てなくても良いと思うがな」
そう言いながらデューデューはス~っと姿を消した。
僕は呼吸を整えると、
「どちら様ですか?」
と尋ねた。
ドアの向こうでモゴモゴと何か聞こえるけど、
ただそれだけでよく聞き取れなかった。
肩を窄め恐る恐るドアを開けると、
まず最初に足が視界に入った。
”騎士のブーツ?“
訪問者が履いて居たのは聖騎士の制服であるブーツだった。
“今夜の当番の騎士がおやすみの挨拶にきた?”
そう思いながら目線を少しづづ上げて行った。
そして僕を見下ろす真っ黒な瞳を見た途端、
「ダリル!」
そう叫んで彼に飛びついた。
「ダリル、ダリル、本当にダリルなの?!」
僕は彼の頬に頬擦りしながら懐かしい匂いを嗅いだ。
“ダリルの匂いだ……”
僕はダリルに抱きついてその胸に顔を埋めた。
彼からは何時も独特の香りがする。
それが僕を安心させる。
「殿下、ただいま帰りました」
ダリルが耳元で囁いたけど、
僕は顔も上げずにずっとダリルに抱きついて居た。
「ほらな、やっぱり慌てる必要は無かっただろ」
そう言いながらデューデューがトコトコと僕の後ろにやって来た。
「え? デューデュー様?」
ダリルがキョロキョロと辺りを見回した。
「早く中へ入ってドアを閉めたらどうだ?」
デューデューのその声に僕はハッとして、
「ダリル、取り敢えず中へ入って!」
そう言うと、ダリルは僕を抱えたまま寝室へと入りドアを閉めた。
「キャハハ、ジェイド、お猿さんみたい」
そう言って笑いながらマグノリアがクローゼットから顔を出した。
「え? マグノリア殿下?
どうして此処に?」
ダリルがビックリしたようにしてマグノリアを見ると、
「ダリル様! 僕もちゃんといるから!」
そう言いながらアーウィンもマグノリアに続いてクローゼットの中から出て来た。
ダリルはますます訳が変わらないような顔をして僕達を見た。
そこにデューデューが幼体の格好で姿を現したので、
流石のダリルも少し固まったようにして居た。
「ごめん、重かったでしょ?
もう降ろして良いよ。
これから何が起こってるのか説明するから」
そう言うと、僕はダリルの胸からスルリと滑り降りた。
「取り敢えずは座ろう。
ダリルは時間は大丈夫?」
そう尋ねると、
「え? あ、はい。
明日の朝一番でまた出なくてはいけないのですが」
そう言われて、
「え? また出なくてはいけないの?
僕の成人の義のために戻って来たんじゃないの?」
そう詰め寄ると、
「ええ、それはそうなのですが、
殿下の儀が行われるまではまた暫くありますので、
それまでは隣の領地に行く事が決まりまして、
明日の朝早く発つことになったのです」
そう説明するダリルにガクッと頭を垂れてまた彼の胸に寄り掛かった。
「ジェイド、ほら、ガッカリしてるのは分かるけど、
取り敢えずダリル様にこれまでの事を話しておこう。
ダリル様も明日の準備があるだろうし、
ずっと引き留めて置くわけにも行かないから」
アーウィンがそう言うと、僕は顔を上げて皆にソファーへ座るよう誘った。
皆が取り敢えずソファーに座ると、
デューデューがファサーっと飛んでテーブルの上に降り立った。
ダリルはそれを信じられないと言うような目で追いかけると、
テーブルの上に降り立ったデューデューをマジマジと見つめた。
僕はダリルの膝に手を置くと、
「大丈夫だよ。 別に異常事態が起こっているわけではないから。
実を言うとね、あれからデューデュー、新しいスキルを身に付けたんだ」
「新しいスキルですか?」
ダリルの言葉に僕は頷いた。
「デューデューの新しいスキルはね、
体を自由に伸縮できて、
透明になる事ができるんだ」
そう言うと、
「透明……ってそこに居るのに見えなくなるのですよね?」
ダリルがそう言うと、
デューデューが姿を消して、
「そうだ、私は此処に居るが、お前には見えないだろう」
そう言って言葉を発しダリルの手を翼でペシペシと叩いた。
「本当に姿だけが消えてしまうのですね」
ダリルが感心したようにそう言うと、
デューデューがまた姿を現した。
「私は遠征先で姿が消せる魔物と戦った事があると言う冒険者に会ったのですが、
とても厄介な魔物だったと言って居ました。
それをデューデュー様が使えるなんて頼もしいですね。
それでいて体の大きさを変える事ができるなんて、
それで問題なく此処に来る事が出来たのですね。
デューデュー様はどんどん強くなられますね」
そう言ってダリルはデューデューの新しいスキルにとても感動して居た。
「うん、デューデューがね、
僕達に回復魔法をかけれるたびに新しい進化をもたらしてるから、
回復魔法をかける度に進化してたら
いつかは不死身になるかもねって話してたんだ!」
「それではこの新しいスキルも前の戦いの後に?」
ダリルの問いに、デューデューも頷いてみせた。
「それは確かに興味深い事柄ですね」
ダリルもそのことに興味を持ったようだ。
でも今の時点では回復との関連性は未だ分からない。
ダリルはマグノリアの方を見ると、
「それで殿下はどう言う経緯でここへ?
お国へ帰られたとばかり思っていたのですが……」
ダリルがそう言うや否や、
「私、家出して来たの!
だからこの事は内密ね!」
と、まあ、マグノリアはあっけらかんとしたもんだ。
その事にはダリルも目を白黒として居た。
「陛下でさえも沈黙して下さっているんだから、
絶対に誰にも言わないでよ?」
マグノリアが釘を刺すと、
「マグノリア殿下のご両親も此処へ来てる事は知らないのですか?」
そう尋ねるダリルに、
「や~ね~ 言ってたら、此処へ来るはずないでしょ!
今頃は隣国のジジイ国王に嫁がされてる頃だわ。
だから絶対言わないでよ!」
マグノリアの再度の推しにダリルもポカンとしながら、
「承知致しました……」
とタヌキにつままれたような顔をして承諾した。
「ほんと、アーレンハイム公も私達を引き離したつもりでしょうけど、
まさか此処で皆また集まってるなんて夢にも思って居ないでしょうね!」
そう言ってマグノリアが息んだ。
「でもさ、マグノリアがいなくなった事、
直ぐに知れ渡るんじゃないの?」
心配そうに尋ねるアーウィンに、
「国の恥になるから、
そう易々とは外部には漏らさないと思うわよ。
あれでいて家の父親、世間体を気にするからね。
まあ、小さな王国だし、姫一人いなくなったところで
誰も騒いだりしないんじゃ無いの?
もし私がいない事が明るみに出ても、
まさか此処に来てるなんて思わないでしょ?」
とマグノリアは確信がありそうだ。
「でも、用心に越した事はないから!」
やっぱりアーウィンとしては心配だろう。
「それよりも、ダリル様は時間は良いの?
明日の朝早いんでしょ?
準備が未だあるって言ってたし」
考えたく無かった事をアーウィンが口にした。
“もっと一緒に居たい……”
それが僕の正直な気持ちだ。
「ねえ、今から宿舎に行って明日の準備して、
今夜は此処に泊まる事は出来ないの?
明日が来れば、また数週間会えないんでしょ?」
「そうよ、そうよ、
折角みんなで集まったんだから、今夜は久しぶりに語り合いましょうよ!
アーウィンも泊まっていきなさいよ!
神殿へはダリルと一緒に出れば分からないでしょ?」
そう迫るマグノリアにアーウィンはタジタジでダリルの事をチラッと見ては
ダリルの答えを待って居た。
「でも……殿下の寝所に泊まるわけには……
それに隣には護衛騎士も控えて居ますし……」
「大丈夫だよ! 護衛騎士は僕が声をかけない限りは邪魔をして来ないし、
ダリルが此処が嫌だったら、アーウィンがいた部屋が空いてるから!」
「そうよ、そうよ、私とアーウィンが此処で寝るから、ダリルが気後れするんだったら、
アーウィンの元部屋で寝たら良いわよ!」
マグノリアのその答えにアーウィンは真っ赤になって
「マグノリア! 一緒になんて寝ないよ!
僕はソファーで寝るから!」
と、ワナワナとして返していた。
“なんだ、この二人、未だそこまではいってないんだ…。”
と僕にとっては何だかそこが意外だった。
「ほら、ダリルも男だったら、此処で一発決めなさいよ!」
と、マグノリアの方は僕達もまた同じ穴のムジナと思って居そうだ。
冷静に返答するダリルとは裏腹に、僕のほうが、
「マ、マ、マグノリア!」
と真っ赤になってワナワナとして居た。
そんな僕達を見たダリルがクスッと笑って、
「それでは殿下、お言葉に甘えて」
そう言うと、
「ほら~、ダリルもああ言ってるから、アーウィンも泊まるでしょ?!」
と強引に、アーウィンも泊まることになった。
「お前達は気楽で良いな。
私の寝所がなくなったではないか」
とそこに居た事をもう少しで忘れそうになったデューデューが言葉を発した。
「あら、デューデューは何時ものように此処で寝て良いのよ。
今夜はこれからまた離れてしまうジェイドとダリルを二人っきりにしてあげましょうね」
とマグノリアも面白がっているのか、
気を遣っているのか分からないような口調でその場を仕切って居た。
「じゃあ、ダリルは明日の準備をしに戻る?」
僕がそう尋ねると、
「いえ、準備はもうしてあって、最後の点検だけでしたので、
明日の朝一で戻ってからでも大丈夫です」
と、戻らなくても良さそうなので、
早速マグノリアが、
「夜は未だ未だこれからよ!
ジェイド、お酒!」
と何やら言い始めた。
「マグノリア、お酒って何?!
僕、未だ未成年ですけど、マグノリアはもう酔ってる?
それにアーウィンもお酒は飲まないよね~?」
そう言うと、
「いや、何だか皆んながまた一緒に揃えてうれしいじゃない!
ここはお酒でも飲んでお祝いしたい気分!」
とまあ、マグノリアの気持ちも分からないでもない。
本当にこんな日がまた来るとは夢にも思わなかった。
こんな偶然って本当にあるのだろうか。
僕達は何だか呼ばれて皆が此処に集まったような気持ちだ。
「そう言えばさ、僕、前にみんなで集まった時に
話しておこうと思った事があったんだけど、
ほら、大賢者に魔法を伝授してもらったって言ったじゃない?
アーウィンとは共鳴させて置いたんだけど、
多分あれは時戻しの魔法だと思うんだ。
もし、もしだよ、僕が叔父上にって事がある場合には
この魔法を発動させるから、何か合図になる事を決めて置いた方がいいのかなって思って」
そう言うとマグノリアが、
「思ってて、何を?」
と尋ねた。
「いや、ほらさ、もし、時が戻ったとして、
全ての事を皆が忘れて居たらダメだけど、
もし、僕達のうちの誰かが今の記憶を持ったまま時戻りをした者がいたら、
その事を伝えるために何か強烈な合言葉みたいなのを決めて置いたらって思って…」
「え? それで思い出せって?
それ、効果あるのかな?
私t、思い出せる自信ないわ~
だって現に今でだってもし、前世ってものがあるんだったら、
全然覚えて居ないんだもん。
時戻しの魔法があるって事は、
もしかしたら、今までそう言った事があった可能性や、
前世だってあった可能性があるでしょ?
でも、全然何にも思い出せないんだけど……」
確かにマグノリアの言う通りだ。
「でも、何もしないよりはした方が良くない?
ダメだったらだめでさ、もしかしたら10年後くらい、
また皆で此処で集まって同じことしてるかもだけど……」
僕がそう言うと、マグノリアが笑い出した。
「そう考えたら面白いね。
そうだね、まあ、何も無いよりはあった方がいいよね。
もしかしたら本当に助けになるかもだし。
しなかったらそれも無くなっちゃうからね。
で? 何を合図にするの?」
そこで僕達はあーだこーだと色々と意見を出し合ったけど、
中々いい案が出てこなかった。
「お前達、そこはこうしたらどうだ?」
横からデューデューが助言して来た。
僕達は一斉に顔を見合わせて、全員一致でそれに決まった。
「いや~、楽しみって言ったら不謹慎だけど、
本当に思い出せるのか、何だか試してみたいっても思うわよね!」
マグノリアがそう言うと、
皆、うん、うん、と頷いた。
「やっぱり私たちは5人皆一緒にいるべきよね!
これが私たち!って感じ。 もし前世があるんだったら、きっと私たちは一緒に居たはずよ!
それくらいみんなといる事がしっくりと来てる!
すごく楽しいわよね!」
マグノリアに言われ、僕も本当にそうだと思った。
デューデューを入れて皆んなで5人。
もう皆んな家族のようで、
皆んなでいる時間は本当に楽しくて時間が過ぎていくのも本当に早かった。
「時間は惜しいけど、
明日も早いから今日はもう此処で解散かな?」
マグノリアの一言で、僕たちがかなり遅くまでギャーギャーと騒いでいた事に気付いた。
「名残惜しいけど、今度皆んなでまた会えるのはジェイドの成人の儀の時だね」
「うん、でもそれも後少しだよ。
それが終わるとまた離れ離れになっちゃうけど、
離れてても、僕たちの心は何時も一緒だよ!
じゃあ、マグノリアもアーウィンもお休み。
デューデューもね。
寝ぼけて二人を蹴飛ばしちゃダメだよ」
そう言うと、
「ぼ、僕はソファーで寝るんだ!」
アーウィンは未だそんな事を言っていた。
マグノリアはデューデューを抱き上げると、
「じゃあ、今夜は私とデューデューだけでベッドで寝ましょうね。
ジェイドもダリルもお休み」
そう言って僕達はそれぞれに分かれた。
その時はまた皆で集まってワイワイやれると思って居た。
でもそんな日はもう二度と戻っては来なかった。
“隠れて! 早く早く!”
マグノリアを引き摺ってアーウィンは一目散にクローゼットに隠れた。
“デューデュー早く姿を消して!”
ヒヤヒヤする中デューデューは余裕でお菓子を頬張って居た。
“デューデュー、何してるの! 早く!早く!“
急かしても彼は余裕で未だお菓子を食べている。
「そんなに慌てなくても良いと思うがな」
そう言いながらデューデューはス~っと姿を消した。
僕は呼吸を整えると、
「どちら様ですか?」
と尋ねた。
ドアの向こうでモゴモゴと何か聞こえるけど、
ただそれだけでよく聞き取れなかった。
肩を窄め恐る恐るドアを開けると、
まず最初に足が視界に入った。
”騎士のブーツ?“
訪問者が履いて居たのは聖騎士の制服であるブーツだった。
“今夜の当番の騎士がおやすみの挨拶にきた?”
そう思いながら目線を少しづづ上げて行った。
そして僕を見下ろす真っ黒な瞳を見た途端、
「ダリル!」
そう叫んで彼に飛びついた。
「ダリル、ダリル、本当にダリルなの?!」
僕は彼の頬に頬擦りしながら懐かしい匂いを嗅いだ。
“ダリルの匂いだ……”
僕はダリルに抱きついてその胸に顔を埋めた。
彼からは何時も独特の香りがする。
それが僕を安心させる。
「殿下、ただいま帰りました」
ダリルが耳元で囁いたけど、
僕は顔も上げずにずっとダリルに抱きついて居た。
「ほらな、やっぱり慌てる必要は無かっただろ」
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「え? デューデュー様?」
ダリルがキョロキョロと辺りを見回した。
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デューデューのその声に僕はハッとして、
「ダリル、取り敢えず中へ入って!」
そう言うと、ダリルは僕を抱えたまま寝室へと入りドアを閉めた。
「キャハハ、ジェイド、お猿さんみたい」
そう言って笑いながらマグノリアがクローゼットから顔を出した。
「え? マグノリア殿下?
どうして此処に?」
ダリルがビックリしたようにしてマグノリアを見ると、
「ダリル様! 僕もちゃんといるから!」
そう言いながらアーウィンもマグノリアに続いてクローゼットの中から出て来た。
ダリルはますます訳が変わらないような顔をして僕達を見た。
そこにデューデューが幼体の格好で姿を現したので、
流石のダリルも少し固まったようにして居た。
「ごめん、重かったでしょ?
もう降ろして良いよ。
これから何が起こってるのか説明するから」
そう言うと、僕はダリルの胸からスルリと滑り降りた。
「取り敢えずは座ろう。
ダリルは時間は大丈夫?」
そう尋ねると、
「え? あ、はい。
明日の朝一番でまた出なくてはいけないのですが」
そう言われて、
「え? また出なくてはいけないの?
僕の成人の義のために戻って来たんじゃないの?」
そう詰め寄ると、
「ええ、それはそうなのですが、
殿下の儀が行われるまではまた暫くありますので、
それまでは隣の領地に行く事が決まりまして、
明日の朝早く発つことになったのです」
そう説明するダリルにガクッと頭を垂れてまた彼の胸に寄り掛かった。
「ジェイド、ほら、ガッカリしてるのは分かるけど、
取り敢えずダリル様にこれまでの事を話しておこう。
ダリル様も明日の準備があるだろうし、
ずっと引き留めて置くわけにも行かないから」
アーウィンがそう言うと、僕は顔を上げて皆にソファーへ座るよう誘った。
皆が取り敢えずソファーに座ると、
デューデューがファサーっと飛んでテーブルの上に降り立った。
ダリルはそれを信じられないと言うような目で追いかけると、
テーブルの上に降り立ったデューデューをマジマジと見つめた。
僕はダリルの膝に手を置くと、
「大丈夫だよ。 別に異常事態が起こっているわけではないから。
実を言うとね、あれからデューデュー、新しいスキルを身に付けたんだ」
「新しいスキルですか?」
ダリルの言葉に僕は頷いた。
「デューデューの新しいスキルはね、
体を自由に伸縮できて、
透明になる事ができるんだ」
そう言うと、
「透明……ってそこに居るのに見えなくなるのですよね?」
ダリルがそう言うと、
デューデューが姿を消して、
「そうだ、私は此処に居るが、お前には見えないだろう」
そう言って言葉を発しダリルの手を翼でペシペシと叩いた。
「本当に姿だけが消えてしまうのですね」
ダリルが感心したようにそう言うと、
デューデューがまた姿を現した。
「私は遠征先で姿が消せる魔物と戦った事があると言う冒険者に会ったのですが、
とても厄介な魔物だったと言って居ました。
それをデューデュー様が使えるなんて頼もしいですね。
それでいて体の大きさを変える事ができるなんて、
それで問題なく此処に来る事が出来たのですね。
デューデュー様はどんどん強くなられますね」
そう言ってダリルはデューデューの新しいスキルにとても感動して居た。
「うん、デューデューがね、
僕達に回復魔法をかけれるたびに新しい進化をもたらしてるから、
回復魔法をかける度に進化してたら
いつかは不死身になるかもねって話してたんだ!」
「それではこの新しいスキルも前の戦いの後に?」
ダリルの問いに、デューデューも頷いてみせた。
「それは確かに興味深い事柄ですね」
ダリルもそのことに興味を持ったようだ。
でも今の時点では回復との関連性は未だ分からない。
ダリルはマグノリアの方を見ると、
「それで殿下はどう言う経緯でここへ?
お国へ帰られたとばかり思っていたのですが……」
ダリルがそう言うや否や、
「私、家出して来たの!
だからこの事は内密ね!」
と、まあ、マグノリアはあっけらかんとしたもんだ。
その事にはダリルも目を白黒として居た。
「陛下でさえも沈黙して下さっているんだから、
絶対に誰にも言わないでよ?」
マグノリアが釘を刺すと、
「マグノリア殿下のご両親も此処へ来てる事は知らないのですか?」
そう尋ねるダリルに、
「や~ね~ 言ってたら、此処へ来るはずないでしょ!
今頃は隣国のジジイ国王に嫁がされてる頃だわ。
だから絶対言わないでよ!」
マグノリアの再度の推しにダリルもポカンとしながら、
「承知致しました……」
とタヌキにつままれたような顔をして承諾した。
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「そうよ、そうよ、
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と、ワナワナとして返していた。
“なんだ、この二人、未だそこまではいってないんだ…。”
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「いえ、準備はもうしてあって、最後の点検だけでしたので、
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「夜は未だ未だこれからよ!
ジェイド、お酒!」
と何やら言い始めた。
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僕、未だ未成年ですけど、マグノリアはもう酔ってる?
それにアーウィンもお酒は飲まないよね~?」
そう言うと、
「いや、何だか皆んながまた一緒に揃えてうれしいじゃない!
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この魔法を発動させるから、何か合図になる事を決めて置いた方がいいのかなって思って」
そう言うとマグノリアが、
「思ってて、何を?」
と尋ねた。
「いや、ほらさ、もし、時が戻ったとして、
全ての事を皆が忘れて居たらダメだけど、
もし、僕達のうちの誰かが今の記憶を持ったまま時戻りをした者がいたら、
その事を伝えるために何か強烈な合言葉みたいなのを決めて置いたらって思って…」
「え? それで思い出せって?
それ、効果あるのかな?
私t、思い出せる自信ないわ~
だって現に今でだってもし、前世ってものがあるんだったら、
全然覚えて居ないんだもん。
時戻しの魔法があるって事は、
もしかしたら、今までそう言った事があった可能性や、
前世だってあった可能性があるでしょ?
でも、全然何にも思い出せないんだけど……」
確かにマグノリアの言う通りだ。
「でも、何もしないよりはした方が良くない?
ダメだったらだめでさ、もしかしたら10年後くらい、
また皆で此処で集まって同じことしてるかもだけど……」
僕がそう言うと、マグノリアが笑い出した。
「そう考えたら面白いね。
そうだね、まあ、何も無いよりはあった方がいいよね。
もしかしたら本当に助けになるかもだし。
しなかったらそれも無くなっちゃうからね。
で? 何を合図にするの?」
そこで僕達はあーだこーだと色々と意見を出し合ったけど、
中々いい案が出てこなかった。
「お前達、そこはこうしたらどうだ?」
横からデューデューが助言して来た。
僕達は一斉に顔を見合わせて、全員一致でそれに決まった。
「いや~、楽しみって言ったら不謹慎だけど、
本当に思い出せるのか、何だか試してみたいっても思うわよね!」
マグノリアがそう言うと、
皆、うん、うん、と頷いた。
「やっぱり私たちは5人皆一緒にいるべきよね!
これが私たち!って感じ。 もし前世があるんだったら、きっと私たちは一緒に居たはずよ!
それくらいみんなといる事がしっくりと来てる!
すごく楽しいわよね!」
マグノリアに言われ、僕も本当にそうだと思った。
デューデューを入れて皆んなで5人。
もう皆んな家族のようで、
皆んなでいる時間は本当に楽しくて時間が過ぎていくのも本当に早かった。
「時間は惜しいけど、
明日も早いから今日はもう此処で解散かな?」
マグノリアの一言で、僕たちがかなり遅くまでギャーギャーと騒いでいた事に気付いた。
「名残惜しいけど、今度皆んなでまた会えるのはジェイドの成人の儀の時だね」
「うん、でもそれも後少しだよ。
それが終わるとまた離れ離れになっちゃうけど、
離れてても、僕たちの心は何時も一緒だよ!
じゃあ、マグノリアもアーウィンもお休み。
デューデューもね。
寝ぼけて二人を蹴飛ばしちゃダメだよ」
そう言うと、
「ぼ、僕はソファーで寝るんだ!」
アーウィンは未だそんな事を言っていた。
マグノリアはデューデューを抱き上げると、
「じゃあ、今夜は私とデューデューだけでベッドで寝ましょうね。
ジェイドもダリルもお休み」
そう言って僕達はそれぞれに分かれた。
その時はまた皆で集まってワイワイやれると思って居た。
でもそんな日はもう二度と戻っては来なかった。
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待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
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