龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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ショウ

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「ヒ~ ちょっとあの人、弓持ってない?

私達に向けてるの? 

何何、追っ手? 追っ手なの?」

マグノリアが騒ぎ出すと、デューデューが、

「いや違う、アイツは……」

そう言って姿を現した。

「デューデュー?! ちょ…… 何してるの?!」

マグノリアの驚きの声にもそっちのけで、
デューデューは姿を現したかと思うと普通の姿になりショウの前に立ち憚った。

マグノリアとアーウィンも小走りでデューデューの側に駆け寄ると、

「ちょっと、一体如何したの?! 何故姿を現したの?!」

そう言ってデューデューを守る様にデューデューの前に立ち憚った。

「一体これは如何言う事ですか?!

何故私達に弓を向けるのですか?!」

アーウィンがショウに抗議をするとデューデューが、

「いや、コイツには敵意がない。

むしろ……」

そう言った所でショウが跪き、

「何て美しい龍なんだ!

その威厳のある立ち姿にキリッとした御尊顔……

虹色に輝く光沢のある鱗と鋭く研ぎ澄まされた爪と角……

美しすぎる! 

どうですか? 私の龍になりませんか?!」

と手を差し出し丁寧にデューデューに尋ねた。

困惑顔でそれを見ていたアーウィンとマグノリアは開いた口が塞がらなかった。

でもそんなショウのアプローチをデューデューは一言

「断る!」

そう言って跳ね除けた。

ショウは驚いて

「おおおおおお、貴方様は御言葉を発せられるのですか?!

素晴らしい! 是非、是非私の持つメス龍の番に!」

そう言ってグイグイ迫るショウに、

「貴方は一体何なんですか?!

突然失礼ではありませんか?!」

そう言ってマグノリアがムキになり始めた。

ショウはスクっと立ち上がると、

「このお方は貴方の龍ですか?!

是非私に譲って頂きたい!

どんな値でもお支払い致します!」

そう言って今度はアーウィンとマグノリアに標的を定めた。

「ちょっと待って下さい!

デューデューは商品ではありません!

それに私達の飼い龍でもありません!

私達は今朝お売りした鱗の残額を頂きに来たのです!

それさえ頂ければ直ぐにでもお暇致します!」

アーウィンがそう言うと、

「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!

責めてお茶だけでも!」

とショウもしつこい。

「お茶だけでも飲んで行ったら如何だ?」

デューデューのその言葉に、

「は? デューデュー、何言ってるの?!

こんな訳の分ら無い変態みたいな人!」

とアーウィンもどんどんショウにつられて失礼な事を言い始めた。

「コイツは変態かもしれ無いが、腕は立つ」

そうデューデューに言われ、アーウィンは

「へ?」

とアホみたいな顔をした。

ショウはドヤ顔で

「流石はデューデュー様!

私の事をもうお分かりで!」

そう言うと、お辞儀をした。

「ちょっと! 何気安くデューデューの名前を呼んでるのよ!

デューデュー、貴方も説明しなさい!

一体どうなってるの?!」

マグノリアが怒り出すと、
デューデューはス~っと体を幼体に変えると、

「茶を飲んで行けと言ってるんだ。

さあ、中へ入ろう。

話はそれからだ」

そう言ってパタパタと翼を羽ばたかせてドアへ向けて飛んで行った。

「おおおお~ 御姿まで自由自在に伸縮出来るとは流石デューデュー様!」

そう言ってショウはデューデューの後を付いて行った。

デューデューはショウの家の戸の前に立つと、

「早く開けろ」

と命令口調で言うと、マグノリアとアーウィンに早く来るよう催促した。

二人は何が起きてるのか全く分からず、
取り敢えずはデューデューがショウに敵意を持っていないので、
招かれるままショウの家に入って行った。

ショウの家の中を見回すと、
あちこちに龍に関する物が掲げてあった。

今朝ショウに渡したデューデューの鱗は、
勝利品でも飾るかのように既に一番高い壁に家宝のように飾られていた。

「さ、さ、私はすぐにお茶を入れてまいりますので
皆さんは此処にお座りください」

と、テーブルの上に書き殴った色んな龍の絵を腕で払いながら端へ寄せると、

「さ、さ、デューデュー様はこちらへ」

そう言ってテーブルに付いた椅子を引いた。

「私は此処で良い」

デューデューはそう言ってテーブルの上に飛び乗ると、
真ん中にデーンと居座った。

「それでは私はお茶をご用意してきますので、
少々お待ちください。

国から取り寄せたクッキーもございます」

そう言うと、デューデューの耳がピクッと動いた。

ショウはキッチンへいそいそと行くと、
向こうでガッチャ~ン、パリン、ドゴンと、
普段は家事をしないのだろうという様なまるわかりな音を出していた。

マグノリアは大きなため息を吐くと、

「デューデュだけもてなして、私達は無視?

まだテーブルへ着くよう誘われてないんですけど……」

そう言うと、デューデューをジトーッとみた。

「お前たちも立ち話ではなんだから、
椅子に座ったらどうだ」

デューデューは何故か自分の家のように寛ぎ、
我が物顔でマグノリアとアーウィンを椅子に座るよう勧めていた。

アーウィンも大きなため息を吐くと、

「こんなはずじゃなかったのに……」

そう言って椅子に腰かけた。

「マグノリアも座ったら?

疲れたでしょう?」

そう言うと、マグノリアはキッチンの方を見て、

「ウ~ン、私、ちょっとキッチンの様子を見てくるわ。

さっきからガチャガチャと一向にお茶は準備できてるような音がしないから……」

そう言うと、キッチンの方へ向けて歩いて行った。

「ねえ、デューデュー、一体これはどういうこと?」

マグノリアの姿がキッチンへ消えていくと、
アーウィンがデューデューに尋ねた。

デューデューは足でコチョコチョと頭を掻くと、

「あいつはハンターだ」

そうアーウィンに言った。

「ハンター? ハンターって狩りをするハンター?」

アーウィンがそれがどうした?と言うような顔をすると、

「まあ、狩りも普通に出来るが、ハンターは魔獣や魔物専用の狩人だ」

そうデューデューが説明し始めた。

「じゃあそれって冒険者って事?」

「まあ、冒険者になる者も居るな」

デューデューの返答がアーウィンには納得できなかった。

「デューデューの説明だと、納得できないんだけど……

狩人とは違う、魔獣狩りなのに冒険者ではない……

じゃあ一体彼は何者?」

アーウィンがもう一度訪ねると、

「私はテイマーです」

そう言ってようやくマグノリアの手を借りてお茶を入れたショウがやって来た。

「は? テイマー?」

アーウィンが尋ねると、

「テイマーです」

そう言ってショウがお辞儀をした。

「お茶を飲みながら説明いたしますのでどうぞクッキーも召し上がってください。

国自慢では無いのですが、中々おいしいクッキーでございます」

そう言ってお茶とクッキーをテーブルの上に置いた。

一足遅れてキッチンから出てきたマグノリアが、

「この人凄いのよ!」

興奮したようにしてテーブルの所へやって来た。

「え? 何が凄いの? もしかして僕だけ理解してないって事?」

アーウィンが顔を顰めると、

「私もまだ良く分かってないわよ。

でも、なぜ私達に弓を向けてたのか尋ねたら、
私達の後ろから結構な数のオオカミの群れが後を着いてきていたみたいなの。

デューデューが一緒に居るから大丈夫とは思ったけど、
念のために弓を引いて構えていたんだって!」

そう言ったマグノリアに、

「へ? オオカミの群れ?」

アーウィンが椅子から滑り落ちかけながら驚くと、

「だから言っただろ、森の獣は私がいるから近付けないって。

少し離れた所からオオカミの軍団が私達の様子を見ながら付けてきていたのだ」

デューデューがそう言った。

アーウィンは椅子に腰かけなおすと、
お茶をグイッと一気に飲み干した。

ショウはアーウィンのそんな姿を見ると、
微笑んでマグノリアにも椅子をすすめた。

「マグノリア様もどうぞ。

キッチンではお手伝いありがとうございました」

そう言って椅子を引くと、

「あら、ありがとう」

そう言ってマグノリアが椅子に腰かけた。

マグノリアの気品の良さを見たショウが、

「マグノリア様はどこかの国の貴族でしょうか?

姿勢や話しぶりがとても上品ですね」

と、やはりマグノリアの気品は他の貴族から見れば分かるようだ。

でもマグノリアは、

「フフ、ありがとう、でも私はただの庶民よ」

そう言ってアーウィンの手を取った。

「お二人はご夫婦なのでしょうか?」

ショウがそう尋ねると、

「マグノリアはダメだよ。

もう既に僕のだからね」

と、アーウィンが初めての嫉妬を見せた。

マグノリアはアーウィンの嫉妬を嬉しそうに横で頬を赤らめると、

「私はマグノリア・シュレードです。

彼は夫のアーウィン・シュレードよ。

改めて宜しくね」

「はい、私はショウ・フジワラと申します。

よろしくお願いします」

あたらためて自己紹介をお互いにしたところで、

「それで、あなたの正体を明かしてもらえますか?」

そうマグノリアが切り出した。

ショウはコクリと頷くと、

「基本的には私は先ほどデューデュー様がおっしゃったようにハンターです。

ハンターは主に魔獣や魔物を狩るので冒険者になる人は多いのですが、
私はビーストマスターなのです」

とまた別の名前が出てきた。

マグノリアとアーウィンが二人そろって眉を顰めた。

「ハンターには稀として特別なスキル付与がある者がいるのです。

私には魔獣をテイムするスキル付与が付いています。

私は大抵の魔獣をテイムし、私に従わせ、私の代わりに戦わせることが出来るのです」

「え? それじゃあデューデューをテイム出来るって事?」

「いえ、龍のような高貴な魔獣はテイム出来ません。

でも敵意を持たなければ、好意を持ってもらう事は出来ます」

「じゃあ、デューデューが此処へ来て驚いて姿を現したのは何故?」

「私は特別な付与もあるのです。

それがサーチスキルです」

「サーチ?」

「はい、私には私の半径1km以内に居る魔獣や魔物の位置が分かるのです。

それに私にはインビジブルは効きません」

「え? それじゃ姿を消していたデューデューが見えていたってこと?」

「はい、そうです」

「それってどれくらいのハンターたちが出来るの?」

「私は今までインビジブルが見えるハンターにお会いしたことはありません。

それにサーチが出来てもほんの自分の周り数十メートルです。

テイムも殆どがレベルの低い神経質で無い魔獣でないと出来ません。

でも私は私と同レベルだと全てをテイムすることが出来ます」

「じゃあ、ハンターとしての腕はどうなの?」

「私は鷹の目も持っています。

大体私のサーチ範囲以内だと矢で打ち抜くことが出来ます」

「ヒー あなた呆れるくらい凄いのね……」

マグノリアが口をぽかりと開けてそう言うと、

「だから言っただろう。こいつは強いって。

これで私が姿を現した理由が分かっただろ?」

とデューデューがケッとしたようにして言った。

「なぜ会ったことの無いこの人の凄さがデューデューには分かるのよ?」

マグノリアが訝し気に尋ねると、

「私には大体相手の強さが分かる」

デューデューが得意顔で言った。

「流石デューデュー様。

やはり龍は高貴な生き物なのですね!」

そう言ってショウがうっとりとデューデューを見た。

「へ~ 腕は凄いのに性格は残念なのね。

龍バカだなんて、なぜそんなに龍が好きなの?」

マグノリアがそう尋ねると、

「あなたは黒龍の伝説を聞いた事がありますか?」

そう言ってショウは急に黒龍について尋ねたので、
マグノリアとアーウィンはその場で固まってしまった。

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