龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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龍を愛する者達

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ずっと静観していたデューデューが、
急に質問したいなどど言い出した。

「何でございましょう? デューデュー様?」

デューデューはトコトコとショウの所へ近寄ると、

「お前は忍びについて何を知っている?」

そう尋ねた。

“忍び?”

マグノリアやアーウィンにとっては初めて聞く言葉だった。

「忍びで御座いますか?」

「ああ、隠密とも言ってたな?」

デューデューが付け足した様に言うと、

「隠密と言っていた? 一体どなたがそういう事を言ってらしたのか、
お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「誰が言っていたかなど問題では無い。

私が尋ねているのは、お前は忍びについて知っているのか?

と言う事だ」

デューデューが素っ気なくそう言うと、

「失礼致しました。

デューデュー様のお尋ねになられた忍びは、
確かに大陸が滅びるまでは存在していましたが、
その後の詳細は分かっておりませんので、
私には詳しい事は分かりかねます。

私の持つ書にも詳しいことは記されておりません。

実に申し訳ありません」

ショウはそう言って頭を下げた。

「そうか、分かった。

話の腰を折って悪かった」

「いえ、お助けにならず、
心苦しく思います」

そこで彼らの会話は終わった。

“デューデュー、忍びって何?”

マグノリアがデューデューに囁くと、

「後で説明する」

そう言って

「お前も話の続きがあったんだろ?

聞きたかった事はもう良いのか?」

デューデューにそう言われ、

「そうそう、私、ショウが何故そんなに龍に興味があるのか気になってたのよ!」

そう言ってマグノリアが手をパチンと叩いた。

ショウはマグノリアの方を見ると、

「貴方には好きな動物はいますか?」

ショウが突然そう尋ねた。

「え? 動物? それって勿論ペット的な意味でよね?」

「勿論そうですよ」

ショウが頷いた。

「そうねえ、私だったらやっぱり可愛い小動物かしら?

リスも可愛いし、ウサギなんかもモフモフして可愛いわよね」

マグノリアがそう言うと、

「私の場合、龍がそうだったのです」

とショウが言うと、マグノリアは目を丸々とさせて、

「えー龍?! リスやウサギなんかだったら普段そこら辺に居るから、
可愛い~ 飼ってみたい~ってなるのは分かるけど、
龍なんて、そこら辺に居ないでしょ?

居たとしても、あなたの場合は好きな動物の度を越してない?

中々龍って見ないのに、如何やって龍だ!って思ったの?」

マグノリアがそう尋ねると、ショウは頭を抱えた。

「え? そんなに難しい質問だったの?」

「いえ、ただ、如何説明したら私のこの胸の高鳴りを理解していただけるかと……」

ショウが胸に手を当てて空を仰ぐと、
マグノリアはデューデューの顔を見た。

そんなマグノリアをデューデューは

“私には何も尋ねるな”

とでも言う様に目をそらした。

ショウはハッとした様にすると、

「先ず私が心惹かれたのは彼らの色でした!」

そう言ってうっとりとしたような顔をした。

「色? それって龍の色って意味よね?」

マグノリアが呆れた様にして尋ねると、

「はい、龍の色を見た事が有りますか?!」

ショウが興奮した様にそう言うと、
マグノリアはデューデューをジト~っと見た。

ショウは慌てると、

「いえ、いえ、デューデュー様は本当に特別な色です。

龍はですね、普通、赤い色か緑の色しか居ないのですよ。

知ってましたか?

赤がメスで、緑がオスです。

子供の頃はメスは淡いピンク色をしてるんですよ。

それにオスは淡い黄色から黄緑色をしています。

成長するにつれ、どんどんその色が濃くなるのです」

「へー、そうなのね? 初めて聞いたわ。

興味深いわね?」

「でしょう? 私は彼らの色がとても好きなのです。

最初はそこからでした」

「え~ そこからって事は、偶然に龍に遭遇したとか?」

「いえ、自然に龍に遭遇する事は滅多に有りません。

彼らはとても注意深いのです。

それに敏感で周りの状況を鋭く感知する事ができます。

そうですよね? デューデュー様」

そう言ってデューデューに同意を求めると、

「確かに龍達は滅多に人間の前には出てこないな」

デューデューはそう言ってフワ~っと欠伸をした。

「偶然じゃなかったら自分から探しに行ったの?」

マグノリアがそう尋ねると、ショウは頷いた。

「何でまた龍に会いに行こうと思ったの?!

あなた怖いもの知らずね? それとも単なるバカ?!」

「いえ、いえ、それは私のチャレンジャーとしての精神がそうさせたのです。

覚えていらっしゃいますか?  私はハンターです。

そりゃあサーチに龍が出てくれば、テイムに挑戦してみたいと思うでは有りませんか!」

「いや、それでもかなりあれだから……

相手は龍だよ?  あなた、龍はテイム出来ないってそう言ってたでしょ?」

「はい、それはそうなのですが、
私には魅了も付属してますので何とかなると思ったのです」

「貴方、無謀ね。 何とかならなかったら如何してたの?」

「いや、話せば分かるかな~って?」

「何それ! 益々アホね」

マグノリアはそういうと、さらに呆れ返った。

「良いではないですか! 何とかなったのですから!

それに私も若かったのです!」

「若ければ良いってもんじゃないでしょ? ほんと、呆れた!

それで? 龍がサーチに当たって追ったんでしょう?

その後如何なったの?」

マグノリアがそう尋ねると、ショウは待っていました!とでもいうように興奮して、

「実を言うとですね……その龍は……迷子の女の子の子龍でした!」

そう言ってショウは手をパチパチと叩いた。

「呆れた! 貴方、迷子の龍の子供を攫ったの?!」

「違うよ! 一緒に親探ししたんだよ!

でも見つからなかったんだ!」

「だから攫ったの?」

「違うって言ってます!

毎日拾った場所へ行ったんですよ!

それも1年間毎日!」

「え~ 一年もすればその子龍、かなり大きくなったんじゃないの?」

「そうでもないんですよ、龍は成長が遅いんです。

そうですよね? デューデュー様」

ショウがそう言うと、

「そう言われれば、デューデューもそうだったね? 僕達もデューデューに初めて会った時、
幼体だったよね?

でもその時で100歳近く行ってたよね?」

アーウィンがそう言うと、

「え? 家の子は成長は遅くてもそこまで遅くは有りませんでしたよ?

それは本当なのですか?デューデュー様?」

ショウが興味深そうに尋ねた。

「ああ、私は100歳近くまで幼体のままだった」

そう言うと、ショウの顔がパーっと明るくなって、

「それは不思議ですね。ぜひ研究してみたい課題ですね」

そう言ってデューデューに手を差し伸ばした。

「話は戻るけどさ、その龍の子供、結局はあなたが育てたのよね?」

「そうなんですよ!

ナナって名前をつけました!

もう可愛くて、僕を父親の様に慕ってくれて、
何処へ行くにも着いてくるんです!

目に入れても痛くないってあの事を言うんですね!

僕は初めて経験しました!」

「は~ 龍にそれを経験ね~ あなた子龍でキャッキャ言うよりも、
人間の嫁を貰って自分の子を作りなさいよ」

マグノリアはそう言ってショウを可哀想な人を見る様な目をして見た。

「バカにしないでくださいよ? ナナは龍だと言うのに私を本当の親のように、
こよなく愛してくれます!

あなた、理解出来ますか?!

あの獰猛で人には絶対懐かないと言われた龍が私にだけ心を開き、愛情をくれるのですよ!

もう、可愛いったら!

だから今の私の目標は、龍のブリードなのです!

あのつぶらな瞳でパパって呼ばれたら!

ハ~」

そう言うと、ショウの顔がパーッと輝いた。

「パパって……貴方がパパなわけでは無いでしょう?!

それに龍は話せないでしょう?」

呆れた様にマグノリアが言うと、

「だからですよ!

見て下さい! 私がデューデュー様と出会ったのは運命なのです!

デューデュー様の子であれば、1匹くらいは話せる龍が!」

そう言ってデューデューに手を差し伸べた。

デューデューはショウの指をカプッと噛むと、

「私は断ったでは無いか!」

またそうきっぱりと言い切った。

「そこを何とか~

あ、デューデュー様の精子だけでも!

私は龍の人口受精も出来るのですよ!

まだ成功したことはないのですが……」

そう言ってデューデューに擦り寄った。

アーウィンはそんなショウをバリっとデューデューから引き離すと、

「そのお話はここまでです。

残りの代金を頂けますか?

もう遅くなってきたので、私達はこれでお暇しようと思います」

そう言うと手をショウに向けて差し出した。

「ハ~ やっぱりダメか……」

ショウはそう言ってガッカリと項垂れると、直ぐにパッとデューデューをみて、

「今日の所はこれで引き下がりますが、
でも諦めませんよ!」

そう言って懐から既に用意してあった小切手を取り出すと、
アーウィンに手渡した。

”へ? これは何?“

小切手を見たことの無かったアーウィンは少し戸惑った。

「これは私が預かっておくわね」

マグノリアはそう言って小切手をバッグにしまうと、
スッと立ち上がった。

「有難う、それでは私達はこれで失礼するわ。

貴方の話、中々面白かったわよ」

そう言うと、

「ちょっと待ってください!

只今馬車をお出ししますので、
是非乗っていってください。

この時間になると森には夜行性の動物達が彷徨っています。

デューデュー様が一緒にいらしても歩くよりは良いでしょう。

領地にある馬車よりは劣りますが、
流しの馬車よりは快適でしょう」

そう言うと、裏手の方に周り馬車を回してきた。

「貴方が手綱を取るの?

夜行性の動物が出るのでしょう? 危なく無いのですか?」

マグノリアが心配そうに尋ねると、

「お忘れですか?  私はハンターで、テイマーです。

動物達はいわば私の家来なのです。

さ、さ、それがお分かりになれば、馬車にお乗りください。

デューデュー様は私の隣でお座りになっても一向にかまいませんよ」

そう言ってニコニコとすると、

「いや、私はマグノリアの膝でいい」

そう言ってフワッと飛び上がると、
マグノリアの腕の中に降り立った。

「フフ、デューデュー、大好きよ」

そう言ってマグノリアがデューデューの頭にキスをすると、
デューデューがマグノリアに頬擦りをした。

ショウはそれを見て、

「何故デューデュー様の様な高貴なお方がテイマーでも無い貴方にそんなに慣れているのですか?!

それも、私の龍達が私に愛を示すのより、愛情たっぷりでは無いですか?!

一体!」

そう言ってぶつぶつ言うと、

「私達は苦楽を共にしてきたのよね!

本当に何でも一緒に……長い間……何年も……

生も……死も……」

そう言うとマグノリアは黙り込んだ。

「ですよね、そう言った山あり谷ありの人生、
龍とだったら分かち合えますよね?!

知性の高い龍ほど私達の感情を察してくれます。

如何ですか? 龍は最高でしょう!

あなた方も龍をブリードしてみたいと思いませんか?

デューデュー様の御子様だったら、きっと高潔でしょう!」

ショウがそう言うとマグノリアはデューデューをグッと抱きしめて、

「ううん、私は龍はデューデューだけで良い。

デューデューさえ居てくれたら私は心強いの」

そう言ってもう一度デューデューをギュッと抱きしめた。
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