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夢? 現実?
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自分に母親がいない事を意識し出して、
数年の月日が経ち、
僕は5歳になった。
毎日の日々は相変わらずに過ぎて行ったけど、
毎日の訓練のせいか、
崖の登り降りはかなり上手くなった。
木登りや木から木へと飛び移ることも出来るようになった。
一度できてしまうと、
不思議と体が覚えている様にそれらのスキルを得る事が出来た。
それでも僕は、相変わらずこの渓谷を出る事はできなかった。
ある日父さんがスーの所から帰って来た時に、
ソワソワとした様にして、
僕に近づこうとしなかった。
それは1週間を過ぎた頃に理由が分かった。
「父さん……気分悪い……」
夜中に体の調子が悪くなって起き出した。
これまで病気などしたこともなく、
健康そのものだった僕は、
病気になるとこんなにも体が思う様に行かなくなるとは、
想像もして居なかった。
僕は
“気分が悪い”
と言った後、父さんの腕の中に倒れ込んだ。
薄れゆく意識の中、
父さんの
「翠! 翠!」
と仕切りに僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
ボーッとした意識の中に入り込んできた情報は、
夢だったのかそれとも
本当に起こったことだったのかは今となっては定かではない。
僕の意識が消えゆく頃父さんは人の姿に変わると、
僕の頬に両手を当てた。
「熱いな……やはり移っておったか……」
一言そう言うと、父さんは龍の姿に戻り、
僕を掌の中に握りしめた。
「翠、直ぐに楽になるからな、
しばらく我慢するんだぞ」
父さんはそう言うと、洞窟から飛び出し
どこかへ向けて飛んでいった。
父さんの手がの中が少しひんやりとして気持ち良かった。
父さんは暫く飛んだ後どこかに降り立つと、
人の姿に戻り僕を毛布で頭から包むと、
軽々と僕を肩に抱えて歩き始めた。
暫く歩いていくと父さんは大きな建物の前で立ち止まった。
そして
『ドンドンドン』
と目の前の大きな壁を叩くと、
その壁がキーっと音を立てて開いた。
開いた壁の中からは煌びやかな光が漏れ、
父さんが誰かと話している声がした。
“これは人の声……?”
そうかと思うと、
直ぐに誰かがバタバタと走ってくる足音がした。
その人は大きな声で
「デューデュー様!
一体如何されたのですか?!」
と父さんに叫んだ。
“デューデュー様?!
それが父さんの名前?!“
デューデュー様と言った声は、
大人の男の人のような声だった。
父さんは、
「お前達が危惧して居た様に、
翠にも移った様だ。
私は体の構造が違うから大丈夫とは思ったが、
矢張り菌を運んでいた様だ」
そう言うと、僕の毛布をチラッと捲って
その人に僕を確認させた。
「ああ、このお方がアーウィン様とマグノリア様の!」
その人はそう言うと、
僕の顔をのぞきこんだ。
”アーウィン様? マグノリア様?“
「熱が高そうですね。
矢張り何の免疫も付けないまま育って来たせいでしょう。
スー! スー!」
その人がスーと呼ぶと、
直ぐに優しそうな声の人がパタパタと走ってやって来た。
”スー? スーって父さんが時折訪ねて居た帝国の?“
「お部屋の用意は出来てます!
翠様を直ぐにこちらに!」
その人がそう言うと、
父さんは僕を抱えたままその人に付いて歩き出した。
”あれがスーの声?
なんて優しい声なんだろう?
父さんの低い声とは全然違う、
凄く優しい柔らかい声だ……”
「此処に翠様を寝かしてください。
直ぐに薬湯をお持ちします」
その人はそう言うと、
パタパタと部屋を出て行った。
「この病気はどういう過程を踏むのだ?」
父さんが尋ねた。
「普通ですと、麻疹は数日熱が出た後、
身体中に発疹が出て参ります。
大体1週間から10日程で良くなるのですが、
翠様は病気に対しても免疫がありませんし、
既にかなり体力が消耗して居そうです……
このまま悪くなれば肺炎を起こす可能性も……」
その人がそういうと、
「どんな薬が必要なのだ?!」
父さんが尋ねた。
「薬というよりは医者に見せた方が良いのですが……
やっぱり……?」
その人が尋ねると、父さんはキッパリと、
「医者はダメだ。
誰の目にも付かせる事は出来ない。
お前だから此処に連れて来たんだ。
アソコでは私にはどうすることも出来ん」
そう断ると、
「分かりました……
では明日市場が開きましたら、
リリースノーの花があるか探してみます。
おそらく無理とは思いますが……」
と、その人はそう言った。
「リリースノーとは何だ?!」
父さんがそう尋ねると、
「リリースノーとは、高級回復ポーションを作る植物で、
薬草よりも貴重な植物です。
ただ……今の時期に咲いているか……」
その人がそういうと、
「どこで見つける事ができるのだ?!
絵はあるのか? どんな花なんだ?」
父さんが尋ねると、
「高度の高い岩場に咲くと言われているのですが、
なかなか見つからなくて、
出回る事も殆ど無いのです……
絵をお持ちしますので少々お待ちください」
その人はそういうと、
部屋を出て行った。
父さんは僕の手を取ると、
「本当に熱いな。
翠の体が燃えているようだ……
だが心配するな。
私がその植物を絶対取って来るからな」
そう言うと、僕の手をぎゅっと握りしめた。
「デューデュー様、薬湯をお持ちしました。
でも翠様は飲む事ができるでしょうか?」
スーと呼ばれて居た人が薬湯を持って部屋にやって来た。
「大丈夫だ。
私がやろう」
父さんはそう言うと、
スーから薬湯を受け取り自分の口に含むと、
僕に口移しで薬湯を飲ませた。
「翠、薬湯だ。
飲み込むのだ。
少し体が楽になるはずだ」
父さんはそう言うと、
僕の頭の角度を変えると、
喉に流し込んだ。
コクリと少しの薬湯を飲み込むと、
「翠、上手に出来てるぞ!
その調子だ!」
そう言って、全ての薬湯を口移しで飲ませてしまった。
すると、少し僕の呼吸が楽になった。
「デューデュー様、ありました!
これです!」
今度はさっきの人がリリースノーの絵を持って部屋に戻って来た。
父さんがその絵を覗き込むと、
ハッとした様にして
「この花は……」
そう呟いた。
「ご存知ですか?」
その男はそう尋ねると、
「私が狩に行く時に通る崖の上層部に咲いて居た花では無いか!」
そう言ってマジマジと絵を覗き込んだ。
「だが……最近は花も終わって見かけなくなって居たが……
いや、私が今からそこへ行って探してこよう。
もしかしたら遅咲きの花が一輪くらいはあるかもしれない。
夜明けまでには戻る。
翠を頼む」
父さんがそう言うと、
「翠様の事はお任せ下さい。
お気を付けて行ってらしてください」
スーと呼ばれてた人がそう言うと、
父さんは窓から勢いよく出て行った。
スーと呼ばれて居た人は、
「ショウ、スイ様には私がついているから
貴方は一眠りして頂戴。
何かあれば呼びに行くから」
そう言うと、僕の寝ている横に椅子を持って来て、
そこに座り込んだ。
“ショウ? あの人はショウというの?
で、優しい声の人がスー?!
此処はやっぱりスーとショウの家?!”
「じゃあ、僕は部屋に戻ってるから、
何かあったら呼びに来て」
ショウはそういうと、部屋を出て行った。
スーは僕の額を撫でると、
「本当に立派な銀色の髪をして……
キリッとしてても可愛らしい所はお姉様にそっくりね。
チョンとした可愛いお鼻はお兄様にそっくりね」
スーはそう言うと、椅子から立って部屋を出ていくと、
1分くらいして戻って来た。
スーの手には桶が握られて居た。
スーは桶を枕元に置くと、
タオルを中に入れ、
パチャパチャとタオルを濡らして居た。
そしてしっかりと絞ると、
それを綺麗に畳んで僕の額にのせた。
タオルはひんやりとして気持ち良かったが、
朝方くらいに僕の息が苦しくなり始めた。
ゼーゼーする中、スーが
「ショウ! ショウ!」
そう叫んでショウを呼んだ。
「急に熱が上がり始めたの!
薬湯を口に含ませたんだけど、
デューデュー様の様に上手く飲んでくれないの!
息使いも早く浅くなって来てるし、
私どうしたらいいか!」
そう言ってスーが泣きそうな声でショウにしがみついた。
ショウが僕の額や頬に手を当てると、
「熱いね。
ゼイゼイと肺炎を起こしかけてるんじゃ無いかな?
取り敢えずは熱を下げなくては!
君は家にある氷をあるだけ持って来てくれ!
それとビニールの袋とタオルも!」
ショウがそう言うと、スーはパタパタと部屋を出て行った。
暫くしてスーが戻って来ると、
ショウはビニールに氷を入れタオルで包むと、
脇の下や首の周りに氷の袋を当てがった。
そして、氷水を作ると、
タオルをそれに浸して絞ると、
額に当てがった。
「後はデューデュー様がリリースノーを見つけて戻って来ることを祈ろう」
ショウがそう言うと、
「父さん? 母さん?」
そう言って又誰かが部屋へ入って来た。
「この子がデューデューがいつも話して居た翠って子?」
話ぶりから、スーとショウの息子だろうと言う事がわかった。
「ああ、龍星……そうだよ。
この子が翠だよ。
今は翠が大変な時だから向こうへ行っておいで」
ショウがそう言うと、
「はーい」
そう言って、龍星と呼ばれた子は部屋を出て行った。
“龍星?”
僕は無意識に目を開けてその子が走り去っていく後ろ姿を見た。
その子の黒髪が風になびいて
”あっ……“
っと思った瞬間部屋を出て見えなくなってしまった。
「翠? 大丈夫? 私が分かる?」
少し目を開けた僕に、スーが話しかけた。
でもまた直ぐに僕の意識は無くなった。
「翠! 翠!
目を開けて!」
スーが呼び続ける中、窓がバーンと開く音がした。
「デューデュー様!」
スーがそう叫んだ声がした。
“父さん帰ってきたんだ”
「デューデュー様、
リリースノーはみつかったのですか?!」
ショウが尋ねると、
父さんは掌をそっと開けた。
「これがリリースノーか?!」
父さんがそう尋ねると、
「そうです! それです!
私は大急ぎでこの浜を煎じて来ます!」
スーはそう言うと、リリースノーを父さんから受け取り、
バタバタと大急ぎで部屋から出て行った。
「翠の様子は?!」
父さんはそう尋ねると、
僕の隣にやって来た。
「ハッキリ言って危ない状態です。
高熱が出て下がらないのです」
ショウがそう言いながら父さんの横に並んだ。
「これは体を冷やしているのか?」
父さんがそう尋ねると、
「はい。 そうです」
ショウがそう言って僕の頬を触った。
「氷が溶けてしまって水もぬるくなって居ますね。
リリースノーの煎じ薬が来れば取り合えずは熱も引いて落ち着くでしょう」
そう言っていると、スーが煎じ薬を持ってやって来た。
「少ないですがこの一杯しかありませんので、
翠様が必ず飲み込まれます様に。
但し、飲まれた場合はこの一杯で十分です」
スーはそう言うと、煎じ薬を父さんに渡した。
父さんは同じ様に口に含むと、
口移しで僕に煎じ薬を飲ませた。
すると、みるみる呼吸が楽になった。
「呼吸がだいぶ楽になった様ですね。
暫くすると熱も引くでしょう……
明日は元通りの体調に戻るはずです」
スーがそう言うと、
「そうか……良かった。
2人ともありがとう」
父さんがそう言って2人に礼を言った。
「デューデュー様も一晩リリースノーを探しておいでだったから、
お疲れでしょう?
お部屋をご用意しますので、
寝まれてはいかがですか?
翠様はもう大丈夫ですよ」
スーがそう言うと、
「いや、私は翠を連れてもう戻ろうと思う」
と父さんが返した。
「え? もうですか?!
翠様も煎じ薬をお飲みになられたばかりですし、
デューデュー様もお休みなられて出られた方が……」
スーがそう言うと、
「いや、気持ちは有難いが、
なるべくリスクは避けたいのだ」
父さんがそう言うと、
「お気持ちはわかりますが、
半日だけでもお休みになられて
暗くなって戻られた方が一目につきにくと思いますよ」
スーの勧めに、父さんは暗くなるのを待つことにした。
「それでは私は昼食の用意と、
お持ち帰りいただく物を詰めてまいりますので、
デューデュー様も翠様のお側ででもいいのでお休みになってください」
スーはそう言うと、ショウと部屋を出て行った。
少しすると、父さんの寝息が隣から聞こえ出した。
“父さん、疲れて寝ちゃった?”
夢見ごごちでそう思っていると、
誰かの気配がした。
“誰か部屋に入って来た?”
ぼんやりと思った。
少し額がくすぐったくてうっすらと目を開けた。
すると、僕の横で僕の額を撫でて居た人がいた。
僕がパチっと目を開けると、
その子と目が合った。
“誰?“
その子は少し金縛りにあった様な感じで
僕を見た。
”黒い髪に黒い瞳の子……
さっきやって来た龍星って呼ばれてた子?!”
そうぼんやりと思ったけど、
僕は未だ意識を保つ事ができなかった。
又眠りにつくと、
起きた時はいつもの様に洞穴にいた。
僕はガバッと起きると、
「あれ?! スーは? ショウは?」
僕がそう尋ねると、
「何のことを言っているのだ?」
父さんは笑ってそう答えた。
「え? いや、だって僕、
病気になってスーとショウの所にいたんじゃ……」
僕がそう言うと、
「? 夢でも見てたのか?」
父さんはそう言って笑った。
数年の月日が経ち、
僕は5歳になった。
毎日の日々は相変わらずに過ぎて行ったけど、
毎日の訓練のせいか、
崖の登り降りはかなり上手くなった。
木登りや木から木へと飛び移ることも出来るようになった。
一度できてしまうと、
不思議と体が覚えている様にそれらのスキルを得る事が出来た。
それでも僕は、相変わらずこの渓谷を出る事はできなかった。
ある日父さんがスーの所から帰って来た時に、
ソワソワとした様にして、
僕に近づこうとしなかった。
それは1週間を過ぎた頃に理由が分かった。
「父さん……気分悪い……」
夜中に体の調子が悪くなって起き出した。
これまで病気などしたこともなく、
健康そのものだった僕は、
病気になるとこんなにも体が思う様に行かなくなるとは、
想像もして居なかった。
僕は
“気分が悪い”
と言った後、父さんの腕の中に倒れ込んだ。
薄れゆく意識の中、
父さんの
「翠! 翠!」
と仕切りに僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
ボーッとした意識の中に入り込んできた情報は、
夢だったのかそれとも
本当に起こったことだったのかは今となっては定かではない。
僕の意識が消えゆく頃父さんは人の姿に変わると、
僕の頬に両手を当てた。
「熱いな……やはり移っておったか……」
一言そう言うと、父さんは龍の姿に戻り、
僕を掌の中に握りしめた。
「翠、直ぐに楽になるからな、
しばらく我慢するんだぞ」
父さんはそう言うと、洞窟から飛び出し
どこかへ向けて飛んでいった。
父さんの手がの中が少しひんやりとして気持ち良かった。
父さんは暫く飛んだ後どこかに降り立つと、
人の姿に戻り僕を毛布で頭から包むと、
軽々と僕を肩に抱えて歩き始めた。
暫く歩いていくと父さんは大きな建物の前で立ち止まった。
そして
『ドンドンドン』
と目の前の大きな壁を叩くと、
その壁がキーっと音を立てて開いた。
開いた壁の中からは煌びやかな光が漏れ、
父さんが誰かと話している声がした。
“これは人の声……?”
そうかと思うと、
直ぐに誰かがバタバタと走ってくる足音がした。
その人は大きな声で
「デューデュー様!
一体如何されたのですか?!」
と父さんに叫んだ。
“デューデュー様?!
それが父さんの名前?!“
デューデュー様と言った声は、
大人の男の人のような声だった。
父さんは、
「お前達が危惧して居た様に、
翠にも移った様だ。
私は体の構造が違うから大丈夫とは思ったが、
矢張り菌を運んでいた様だ」
そう言うと、僕の毛布をチラッと捲って
その人に僕を確認させた。
「ああ、このお方がアーウィン様とマグノリア様の!」
その人はそう言うと、
僕の顔をのぞきこんだ。
”アーウィン様? マグノリア様?“
「熱が高そうですね。
矢張り何の免疫も付けないまま育って来たせいでしょう。
スー! スー!」
その人がスーと呼ぶと、
直ぐに優しそうな声の人がパタパタと走ってやって来た。
”スー? スーって父さんが時折訪ねて居た帝国の?“
「お部屋の用意は出来てます!
翠様を直ぐにこちらに!」
その人がそう言うと、
父さんは僕を抱えたままその人に付いて歩き出した。
”あれがスーの声?
なんて優しい声なんだろう?
父さんの低い声とは全然違う、
凄く優しい柔らかい声だ……”
「此処に翠様を寝かしてください。
直ぐに薬湯をお持ちします」
その人はそう言うと、
パタパタと部屋を出て行った。
「この病気はどういう過程を踏むのだ?」
父さんが尋ねた。
「普通ですと、麻疹は数日熱が出た後、
身体中に発疹が出て参ります。
大体1週間から10日程で良くなるのですが、
翠様は病気に対しても免疫がありませんし、
既にかなり体力が消耗して居そうです……
このまま悪くなれば肺炎を起こす可能性も……」
その人がそういうと、
「どんな薬が必要なのだ?!」
父さんが尋ねた。
「薬というよりは医者に見せた方が良いのですが……
やっぱり……?」
その人が尋ねると、父さんはキッパリと、
「医者はダメだ。
誰の目にも付かせる事は出来ない。
お前だから此処に連れて来たんだ。
アソコでは私にはどうすることも出来ん」
そう断ると、
「分かりました……
では明日市場が開きましたら、
リリースノーの花があるか探してみます。
おそらく無理とは思いますが……」
と、その人はそう言った。
「リリースノーとは何だ?!」
父さんがそう尋ねると、
「リリースノーとは、高級回復ポーションを作る植物で、
薬草よりも貴重な植物です。
ただ……今の時期に咲いているか……」
その人がそういうと、
「どこで見つける事ができるのだ?!
絵はあるのか? どんな花なんだ?」
父さんが尋ねると、
「高度の高い岩場に咲くと言われているのですが、
なかなか見つからなくて、
出回る事も殆ど無いのです……
絵をお持ちしますので少々お待ちください」
その人はそういうと、
部屋を出て行った。
父さんは僕の手を取ると、
「本当に熱いな。
翠の体が燃えているようだ……
だが心配するな。
私がその植物を絶対取って来るからな」
そう言うと、僕の手をぎゅっと握りしめた。
「デューデュー様、薬湯をお持ちしました。
でも翠様は飲む事ができるでしょうか?」
スーと呼ばれて居た人が薬湯を持って部屋にやって来た。
「大丈夫だ。
私がやろう」
父さんはそう言うと、
スーから薬湯を受け取り自分の口に含むと、
僕に口移しで薬湯を飲ませた。
「翠、薬湯だ。
飲み込むのだ。
少し体が楽になるはずだ」
父さんはそう言うと、
僕の頭の角度を変えると、
喉に流し込んだ。
コクリと少しの薬湯を飲み込むと、
「翠、上手に出来てるぞ!
その調子だ!」
そう言って、全ての薬湯を口移しで飲ませてしまった。
すると、少し僕の呼吸が楽になった。
「デューデュー様、ありました!
これです!」
今度はさっきの人がリリースノーの絵を持って部屋に戻って来た。
父さんがその絵を覗き込むと、
ハッとした様にして
「この花は……」
そう呟いた。
「ご存知ですか?」
その男はそう尋ねると、
「私が狩に行く時に通る崖の上層部に咲いて居た花では無いか!」
そう言ってマジマジと絵を覗き込んだ。
「だが……最近は花も終わって見かけなくなって居たが……
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父さんがそう言うと、
「翠様の事はお任せ下さい。
お気を付けて行ってらしてください」
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「ショウ、スイ様には私がついているから
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そこに座り込んだ。
“ショウ? あの人はショウというの?
で、優しい声の人がスー?!
此処はやっぱりスーとショウの家?!”
「じゃあ、僕は部屋に戻ってるから、
何かあったら呼びに来て」
ショウはそういうと、部屋を出て行った。
スーは僕の額を撫でると、
「本当に立派な銀色の髪をして……
キリッとしてても可愛らしい所はお姉様にそっくりね。
チョンとした可愛いお鼻はお兄様にそっくりね」
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1分くらいして戻って来た。
スーの手には桶が握られて居た。
スーは桶を枕元に置くと、
タオルを中に入れ、
パチャパチャとタオルを濡らして居た。
そしてしっかりと絞ると、
それを綺麗に畳んで僕の額にのせた。
タオルはひんやりとして気持ち良かったが、
朝方くらいに僕の息が苦しくなり始めた。
ゼーゼーする中、スーが
「ショウ! ショウ!」
そう叫んでショウを呼んだ。
「急に熱が上がり始めたの!
薬湯を口に含ませたんだけど、
デューデュー様の様に上手く飲んでくれないの!
息使いも早く浅くなって来てるし、
私どうしたらいいか!」
そう言ってスーが泣きそうな声でショウにしがみついた。
ショウが僕の額や頬に手を当てると、
「熱いね。
ゼイゼイと肺炎を起こしかけてるんじゃ無いかな?
取り敢えずは熱を下げなくては!
君は家にある氷をあるだけ持って来てくれ!
それとビニールの袋とタオルも!」
ショウがそう言うと、スーはパタパタと部屋を出て行った。
暫くしてスーが戻って来ると、
ショウはビニールに氷を入れタオルで包むと、
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額に当てがった。
「後はデューデュー様がリリースノーを見つけて戻って来ることを祈ろう」
ショウがそう言うと、
「父さん? 母さん?」
そう言って又誰かが部屋へ入って来た。
「この子がデューデューがいつも話して居た翠って子?」
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「ああ、龍星……そうだよ。
この子が翠だよ。
今は翠が大変な時だから向こうへ行っておいで」
ショウがそう言うと、
「はーい」
そう言って、龍星と呼ばれた子は部屋を出て行った。
“龍星?”
僕は無意識に目を開けてその子が走り去っていく後ろ姿を見た。
その子の黒髪が風になびいて
”あっ……“
っと思った瞬間部屋を出て見えなくなってしまった。
「翠? 大丈夫? 私が分かる?」
少し目を開けた僕に、スーが話しかけた。
でもまた直ぐに僕の意識は無くなった。
「翠! 翠!
目を開けて!」
スーが呼び続ける中、窓がバーンと開く音がした。
「デューデュー様!」
スーがそう叫んだ声がした。
“父さん帰ってきたんだ”
「デューデュー様、
リリースノーはみつかったのですか?!」
ショウが尋ねると、
父さんは掌をそっと開けた。
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父さんがそう尋ねると、
「そうです! それです!
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スーはそう言うと、リリースノーを父さんから受け取り、
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「翠の様子は?!」
父さんはそう尋ねると、
僕の隣にやって来た。
「ハッキリ言って危ない状態です。
高熱が出て下がらないのです」
ショウがそう言いながら父さんの横に並んだ。
「これは体を冷やしているのか?」
父さんがそう尋ねると、
「はい。 そうです」
ショウがそう言って僕の頬を触った。
「氷が溶けてしまって水もぬるくなって居ますね。
リリースノーの煎じ薬が来れば取り合えずは熱も引いて落ち着くでしょう」
そう言っていると、スーが煎じ薬を持ってやって来た。
「少ないですがこの一杯しかありませんので、
翠様が必ず飲み込まれます様に。
但し、飲まれた場合はこの一杯で十分です」
スーはそう言うと、煎じ薬を父さんに渡した。
父さんは同じ様に口に含むと、
口移しで僕に煎じ薬を飲ませた。
すると、みるみる呼吸が楽になった。
「呼吸がだいぶ楽になった様ですね。
暫くすると熱も引くでしょう……
明日は元通りの体調に戻るはずです」
スーがそう言うと、
「そうか……良かった。
2人ともありがとう」
父さんがそう言って2人に礼を言った。
「デューデュー様も一晩リリースノーを探しておいでだったから、
お疲れでしょう?
お部屋をご用意しますので、
寝まれてはいかがですか?
翠様はもう大丈夫ですよ」
スーがそう言うと、
「いや、私は翠を連れてもう戻ろうと思う」
と父さんが返した。
「え? もうですか?!
翠様も煎じ薬をお飲みになられたばかりですし、
デューデュー様もお休みなられて出られた方が……」
スーがそう言うと、
「いや、気持ちは有難いが、
なるべくリスクは避けたいのだ」
父さんがそう言うと、
「お気持ちはわかりますが、
半日だけでもお休みになられて
暗くなって戻られた方が一目につきにくと思いますよ」
スーの勧めに、父さんは暗くなるのを待つことにした。
「それでは私は昼食の用意と、
お持ち帰りいただく物を詰めてまいりますので、
デューデュー様も翠様のお側ででもいいのでお休みになってください」
スーはそう言うと、ショウと部屋を出て行った。
少しすると、父さんの寝息が隣から聞こえ出した。
“父さん、疲れて寝ちゃった?”
夢見ごごちでそう思っていると、
誰かの気配がした。
“誰か部屋に入って来た?”
ぼんやりと思った。
少し額がくすぐったくてうっすらと目を開けた。
すると、僕の横で僕の額を撫でて居た人がいた。
僕がパチっと目を開けると、
その子と目が合った。
“誰?“
その子は少し金縛りにあった様な感じで
僕を見た。
”黒い髪に黒い瞳の子……
さっきやって来た龍星って呼ばれてた子?!”
そうぼんやりと思ったけど、
僕は未だ意識を保つ事ができなかった。
又眠りにつくと、
起きた時はいつもの様に洞穴にいた。
僕はガバッと起きると、
「あれ?! スーは? ショウは?」
僕がそう尋ねると、
「何のことを言っているのだ?」
父さんは笑ってそう答えた。
「え? いや、だって僕、
病気になってスーとショウの所にいたんじゃ……」
僕がそう言うと、
「? 夢でも見てたのか?」
父さんはそう言って笑った。
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待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
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