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夢の続き
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あの日、急にショウの屋敷へ行った父さんは、
帰ってきても何も僕に話してくれなかった。
期待をしていた僕にとっては肩透かしだった。
あの日はただ、
「スーに貰ったパンとクッキーだ」
そう言って僕にバスケットを渡しただけで、
僕がどんなに
”あの子”
に会いたかったか知ってたくせに、
”あの子”
の情報は何もなかった。
「あの子には会えたの?
僕の額を撫でていたのは誰だったの?」
そう尋ねても、頭を振るだけだった。
父さんはあの日、
“あの子”
には会え無かったのだろうか?
でも、あんなにあの子に
“会いたい”
と思っていた筈なのに、
会えない月日が続くと、
だんだんとその思いも消えていった。
そして段々とあの子の顔も忘れ始めた。
今となっては、もう父さんに
“ショウの家へ連れて行って欲しい“
とは言わなくなった。
そして僕は8歳になった。
5歳になった頃から、
ずっとあのドアへ続く夢を見ていたのに、
8歳になった頃から何故かふっと見なくなってしまった。
あれだけ繰り返し見ていた夢なのに、
僕はただの一度もドアの向こうへ行く事が出来なかった。
何故かドアを開く度に目を覚ましていたからだ。
ドアの向こうには僕が見てはいけないものがあるのだろうか?
それとも僕の心が見る事を恐れているのだろうか?
初めてあの夢を見た時はとても恐怖を感じたのに、
後の方では少し慣れたのか、そこまで恐怖を感じない様になっていた。
それでも高揚とか、緊張感というものはあって、
あのドアノブに手をかけると、
一気に体が強張ってしまっていた。
僕があのドアの所で一番気掛かりになっていた事が、
必ずと言って良いほど聞こえてくる、
『叔父上!』
と嬉しそうに叫ぶあの少年の声だった。
あの声には聞き覚えがある事に気付いたのに、
誰の声なのかとうとう思い出せなかった。
”彼は一体誰なんだろう?
姿は見えないのに、
何故声だけ聞こえるのだろう?“
どんなに辺りを見回しても、
どんなにあの長い廊下を行き来しても、
彼の姿を見ることは出来なかった。
そして今現在にいたる。
前に何度かうなされたり、叫んだりして
父さんに起こされた事があるけど、
何故うなされたのか、叫んだりしたのかは
一度起きてしまえばもう覚えていなかった。
僕の夢に心配した父さんに、
初めて夢の内容を話した時は、
「怖い夢を見たんだな。
大丈夫だ私が付いている。
何も怖がらなくても良い。
此処には誰もお前を傷付ける者はいない」
そう言って抱きしめられた。
でも僕は釈然としなかった。
“同じ夢を何度も何度も繰り返し見るのは何故だ?
僕はあの場所に行った事があるのか?
いや、僕の記憶の中には無いはずだ“
そう言う思いがグルグルとしていた。
スーやショウのうちへ行った時の様な、
誰かの家を尋ねた記憶はこれまで一度もない。
もし本当に小さい時に行っていたとしても、
あんなにハッキリと夢に出る様には覚えていないはずだ。
“どう考えても辻褄が合わない”
そういう思いを繰り返しながらも、
あの日から僕は必死に一つのお願いを父さんに言い続けていた。
結局は叶わなかったけど……
「ねえ、父さん?」
ショウの屋敷を尋ねた時の事を
全て打ち明けてくれた父さんに僕が尋ねた。
「何だ? まだ尋ねたい事があるのか?」
彼は静かにそう尋ねると、僕の顔をしっかりと見た。
「あのさ、スーとショウの所だけでいいから、
本当にあの家だけでいいから、
もう一度行きたい!
絶対に街に出たりしないし、
家の外に出たりもしないから!
使用人にも会わない様にするし、
絶対父さんの言うことは守るから、
もう一度、スーとショウの子供達に会ってみたい!
友達になりたいんだ」
そう言うと、父さんは速攻で
「ダメだ」
と答えた。
「どうして?
家からは出ないのに、
どうしてダメなの?!
誰にも会わないんだよ?
誰にもみられない様に、
ずっと一つの部屋に居るから!」
どんなに説得しようとしても、
「ダメだ」
の一点張りだった。
「じゃあ、僕が行けないんだったら、
彼らを此処に招待するのは?!」
知恵を振り絞って別の方向から攻めても、
「ダメだ」
だった。
「どうして?! どうしてダメなの?!
彼らが此処にくるんだったら、
僕が誰かに見られることも無いんだよ?!」
そう言っても、
「リスクはどこにでも付きものだ。
奴らから此処のことが漏れる可能性だってあるんだ。
此処のことはスーやショウだって知らない!
それに、アイツらにもリスクを負わせてしまう事になる……
元にアイツらの家へ出入りしていると言う時点で
ヤツらには大きなリスクを負わせている……
責めてもの救いが帝国の者はショウが龍使いという事を知っていると言うだ……」
父さんはそう言って少し怒った様な顔をした。
「だって……だって……」
僕が泣きそうな声になると、
父さんは容赦なしに、
「お前には説明したはずだぞ?!
私が説明した事で何が理解できなかったんだ?!」
そう言ってイライラとした様にした。
僕は
“グッ”
っと息を呑み込むと、
「もう良い! 父さんなんか知らない!」
と悪態を吐いた。
父さんが
“ハア~”
とため息を吐くと、僕は一目散に駆け出して行った。
そしていつものように断崖を降りていくと、
あの荒野に降り立った。
僕はベンチのように転がっている岩に腰掛けると、
あの日の事を思い描いた。
でも記憶とはドンドン薄れていくもので、
”会いたい”
と言う思いは最後まで胸の奥に会ったけど、
彼の顔は、もうほとんど覚えていなかった。
ただあの時の思いだけが何時までも心の奥を締め付けた。
そんな時僕はピタリとあの夢を見なくなった。
その代わり、僕は小さな灰色の龍に出会う夢を見た。
それはとても不思議な経験だった。
僕はあのドアに続く大きな家の外にいた。
“此処は……?!”
辺りを見渡すと、
あの大きな家が向こう側に建っていた。
“あれはあのドアのある家……?
あの花はなんと言う花なんだろう?!”
僕の目の前には茎に棘のある綺麗な花の咲く園があった。
花の匂いを嗅ぎながら園を横切ると、
小さな影がサッと動いた。
“ウサギ?!”
僕が追いかけていくと、
藪の中に入ってしまった。
“これはなんと言う植物だろう……?
お互いが絡まって壁を作っている……”
見回すと、緩んだ部分に小さな入り口があった。
“この部分が空洞になってるんだ”
中に入って周りを見回すと、
植物の間から差し込んだ光が良い具合に中を照らしていた。
そんな時、何かが隅でガサッと動いた。
“ん? もしかしてさっきの?”
目を凝らすと、
そこには父さんが縮小した時よりも
小さな灰色の子龍が蹲っていた。
その小さな灰色の龍は傷つき、
僕を怯える様に見ていた。
「どうしたの?」
僕がそう尋ねると、
その灰色の龍は更に小さくなって後ずさりした。
その時、
”あれ? この灰色の龍は……
もしかして父さん?”
何故かその時フッと思った。
「父さん? 父さんでしょ?!
小さいけど、父さんだよね?!
僕だよ! 翠だよ!」
そう言って近づいても、
その灰色の龍は僕の事を怖がって近づいてくれなかった。
「僕の事が分からないの?
それとも父さんじゃ……無い?」
そう言って手を伸ばすと、
その灰色の龍は
”ビクッ”
としたようにしてその身を丸めた。
僕が手を引くと後ろから、
「あれ? こんな所に居たんだ!」
そう言って懐かしい声がしてきた。
“あれ? この声は……”
僕が後ろを振り返ると、
同じ年位の男の子が後ろに立っていた。
”あれ? 顔が見えない……”
その子は僕の真後ろに立っていたのに、
顔が全く見えなかった。
彼は僕の方を覗き込むと、
「ヒッ!! これ龍の子供じゃない!」
そう言って彼は小さな悲鳴を上げた。
僕は慌てて、
”シーッ! 誰かに聞かれちゃうよ!
それよりも、君、何て名前?”
僕がそう尋ねたのに、
彼は僕の質問を無視して、
「xxxx、この子龍ケガしてるよ!
治してあげなくちゃ!」
そう言って僕に話しかけた。
その時彼は僕の名を呼んだのに、
その部分だけが聞き取れなかった。
僕は相変わらずに顔の分らない彼を見上げると、
「治すって……どうやって?!」
そう尋ねた。
「やだなぁ~ xxxxだって知ってるでしょ!」
そう言うと、子龍が、
「デュー!」
と鳴いた。
その声を聴いた僕は、
”デュー……デュー?!”
そう呟いて子龍を見つめた。
「やっぱり君、父さんでしょ?!
だって今デューって!
ねえ、どうして話してくれないの?!
僕だよ! 翠だよ!」
そう言っても、子龍は
”デュー!”
と言うだけで、一向に話しかけてくれなかった。
そこに居た子も、
「xxxx、夢でも見てるの? 君の名前は翠では無いでしょう?
xxxx、でしょ?
それに龍が話せるわけないのに何言ってるの?!
ほら、回復魔法をかけるから!
子龍がビックリしたりしない様に背中を撫でてあげていて!」
そう言ってその子は子龍に手を翳した。
その子の手が金色に光り出すと、
僕は慌てて子龍の背を撫で始めた。
途端、子龍の傷口が同じように金色に光はじめ、
これまで見たこともないようなまばゆい光に包まれた。
「ねえ、これが回復魔法なの?!
眩しくて目が明けらんない!
それに僕の手が熱いよ!」
金色に染まった子龍の背を撫でていた僕の手が
熱を帯びたように熱くなった。
そして何か不思議な力が僕の中に流れ込んで、
子龍に出て行くのが分かった。
「ねえ、君、何してるの?!
本当にこれで大丈夫なの?!」
僕が言い終えるのと同時に光がスーッと消え、
子龍に手を翳していた子が僕の事を見て、
「完全回復魔法……」
そう言って子龍を見た。
「ほら、あんなにあった傷が完全に回復している……」
その子が呆けたようにそう言うと、
「え? 回復魔法ってそう言うものじゃないの?」
回復魔法ってまだよくわからないけど、
父さんからそんな感じで聞いていた。
彼は僕を不思議そうに見ると、
「そりゃそうだけど、完全回復は回復魔法の上級魔法だよ?!
僕が使えるわけないじゃ無い!
普通だったら回復魔法を何重にもかけて完全に治るんだ!
それを、こんな一発で!」
彼はそう言うと、又僕を見た。
でも相変わらず彼の顔は分からない。
首を捻りながら
「え~、君じゃなかったらこの子龍が?」
僕がそう言うと、
「違う! 今のはお前の力だ」
そう言って声がした方を見ると、
何と、あの子龍が僕達に話しかけていた。
彼はその事に驚いていたけど、
僕は子龍が話しているのを見ると、
「やっぱり父さんじゃない!
何故直ぐに話しかけてくれなかったの?!
もう、びっくりしたじゃない!」
そう言って子龍に抱き着くと、
「お前は何を言っておる!
何故私が人間の子を持つのだ!
私は龍だぞ! 人の子が持てるわけがないだろう!」
そう言って僕を押しのけた。
「え……? 人の子は持てないって……
でも現に僕の父さんは灰色の龍で……人にもなれて……
母さんが死んでからずっと一人で僕を育ててくれてて……」
僕がそう言うと、その灰色の子龍は、
変な顔をして僕を見た。
「嘘?! じゃあ、あの灰色の龍は誰なの?!
僕が父さんと呼んでいるあの人は?!」
僕が少しパニック気味になってくると、
「ジェイド、落ち着いて!
一体どうしたの?!」
とその子は僕の事を
“ジェイド”
と呼んだ。
「違う!僕はジェイドじゃない!
僕は翠だ!」
そう言って見上げた彼は真っ赤な髪をした少年だった。
“嘘だ! 僕は彼を知っている!”
僕は
「アー……ウィン……?」
そう言うと、僕がアーウィンと呼んだその人は、
「ジェイド、龍は人の子は産まないんだよ。
君が父親だと言ってるのは龍なの?
人の姿になれる龍なんて聞いたことないんだけど……
その人の姿になれる龍が君を育ててるの?
それ変だよね?
だって君の父親はxxxx」
“又聞き取れない!”
僕はその子龍の方を見た。
子龍が首を振ったようにして、
”私はお前の父親ではない”
そう言うと、僕は
「嘘だ! 皆んなして僕を騙してるんだ!」
そう叫んで目が覚めた。
僕は涙で濡れ顔を両手で覆った。
「翠! 翠!」
隣では父さんが心配するように僕を覗き込んでいた。
僕は肩で息をすると、両手を下ろして
父さんを凝視した。
「どうしたんだ?
またいつもの嫌な夢か?」
父さんがそう尋ねるのと同時に、
僕は父さんに向けて思いっきり魔法をぶつけていた。
帰ってきても何も僕に話してくれなかった。
期待をしていた僕にとっては肩透かしだった。
あの日はただ、
「スーに貰ったパンとクッキーだ」
そう言って僕にバスケットを渡しただけで、
僕がどんなに
”あの子”
に会いたかったか知ってたくせに、
”あの子”
の情報は何もなかった。
「あの子には会えたの?
僕の額を撫でていたのは誰だったの?」
そう尋ねても、頭を振るだけだった。
父さんはあの日、
“あの子”
には会え無かったのだろうか?
でも、あんなにあの子に
“会いたい”
と思っていた筈なのに、
会えない月日が続くと、
だんだんとその思いも消えていった。
そして段々とあの子の顔も忘れ始めた。
今となっては、もう父さんに
“ショウの家へ連れて行って欲しい“
とは言わなくなった。
そして僕は8歳になった。
5歳になった頃から、
ずっとあのドアへ続く夢を見ていたのに、
8歳になった頃から何故かふっと見なくなってしまった。
あれだけ繰り返し見ていた夢なのに、
僕はただの一度もドアの向こうへ行く事が出来なかった。
何故かドアを開く度に目を覚ましていたからだ。
ドアの向こうには僕が見てはいけないものがあるのだろうか?
それとも僕の心が見る事を恐れているのだろうか?
初めてあの夢を見た時はとても恐怖を感じたのに、
後の方では少し慣れたのか、そこまで恐怖を感じない様になっていた。
それでも高揚とか、緊張感というものはあって、
あのドアノブに手をかけると、
一気に体が強張ってしまっていた。
僕があのドアの所で一番気掛かりになっていた事が、
必ずと言って良いほど聞こえてくる、
『叔父上!』
と嬉しそうに叫ぶあの少年の声だった。
あの声には聞き覚えがある事に気付いたのに、
誰の声なのかとうとう思い出せなかった。
”彼は一体誰なんだろう?
姿は見えないのに、
何故声だけ聞こえるのだろう?“
どんなに辺りを見回しても、
どんなにあの長い廊下を行き来しても、
彼の姿を見ることは出来なかった。
そして今現在にいたる。
前に何度かうなされたり、叫んだりして
父さんに起こされた事があるけど、
何故うなされたのか、叫んだりしたのかは
一度起きてしまえばもう覚えていなかった。
僕の夢に心配した父さんに、
初めて夢の内容を話した時は、
「怖い夢を見たんだな。
大丈夫だ私が付いている。
何も怖がらなくても良い。
此処には誰もお前を傷付ける者はいない」
そう言って抱きしめられた。
でも僕は釈然としなかった。
“同じ夢を何度も何度も繰り返し見るのは何故だ?
僕はあの場所に行った事があるのか?
いや、僕の記憶の中には無いはずだ“
そう言う思いがグルグルとしていた。
スーやショウのうちへ行った時の様な、
誰かの家を尋ねた記憶はこれまで一度もない。
もし本当に小さい時に行っていたとしても、
あんなにハッキリと夢に出る様には覚えていないはずだ。
“どう考えても辻褄が合わない”
そういう思いを繰り返しながらも、
あの日から僕は必死に一つのお願いを父さんに言い続けていた。
結局は叶わなかったけど……
「ねえ、父さん?」
ショウの屋敷を尋ねた時の事を
全て打ち明けてくれた父さんに僕が尋ねた。
「何だ? まだ尋ねたい事があるのか?」
彼は静かにそう尋ねると、僕の顔をしっかりと見た。
「あのさ、スーとショウの所だけでいいから、
本当にあの家だけでいいから、
もう一度行きたい!
絶対に街に出たりしないし、
家の外に出たりもしないから!
使用人にも会わない様にするし、
絶対父さんの言うことは守るから、
もう一度、スーとショウの子供達に会ってみたい!
友達になりたいんだ」
そう言うと、父さんは速攻で
「ダメだ」
と答えた。
「どうして?
家からは出ないのに、
どうしてダメなの?!
誰にも会わないんだよ?
誰にもみられない様に、
ずっと一つの部屋に居るから!」
どんなに説得しようとしても、
「ダメだ」
の一点張りだった。
「じゃあ、僕が行けないんだったら、
彼らを此処に招待するのは?!」
知恵を振り絞って別の方向から攻めても、
「ダメだ」
だった。
「どうして?! どうしてダメなの?!
彼らが此処にくるんだったら、
僕が誰かに見られることも無いんだよ?!」
そう言っても、
「リスクはどこにでも付きものだ。
奴らから此処のことが漏れる可能性だってあるんだ。
此処のことはスーやショウだって知らない!
それに、アイツらにもリスクを負わせてしまう事になる……
元にアイツらの家へ出入りしていると言う時点で
ヤツらには大きなリスクを負わせている……
責めてもの救いが帝国の者はショウが龍使いという事を知っていると言うだ……」
父さんはそう言って少し怒った様な顔をした。
「だって……だって……」
僕が泣きそうな声になると、
父さんは容赦なしに、
「お前には説明したはずだぞ?!
私が説明した事で何が理解できなかったんだ?!」
そう言ってイライラとした様にした。
僕は
“グッ”
っと息を呑み込むと、
「もう良い! 父さんなんか知らない!」
と悪態を吐いた。
父さんが
“ハア~”
とため息を吐くと、僕は一目散に駆け出して行った。
そしていつものように断崖を降りていくと、
あの荒野に降り立った。
僕はベンチのように転がっている岩に腰掛けると、
あの日の事を思い描いた。
でも記憶とはドンドン薄れていくもので、
”会いたい”
と言う思いは最後まで胸の奥に会ったけど、
彼の顔は、もうほとんど覚えていなかった。
ただあの時の思いだけが何時までも心の奥を締め付けた。
そんな時僕はピタリとあの夢を見なくなった。
その代わり、僕は小さな灰色の龍に出会う夢を見た。
それはとても不思議な経験だった。
僕はあのドアに続く大きな家の外にいた。
“此処は……?!”
辺りを見渡すと、
あの大きな家が向こう側に建っていた。
“あれはあのドアのある家……?
あの花はなんと言う花なんだろう?!”
僕の目の前には茎に棘のある綺麗な花の咲く園があった。
花の匂いを嗅ぎながら園を横切ると、
小さな影がサッと動いた。
“ウサギ?!”
僕が追いかけていくと、
藪の中に入ってしまった。
“これはなんと言う植物だろう……?
お互いが絡まって壁を作っている……”
見回すと、緩んだ部分に小さな入り口があった。
“この部分が空洞になってるんだ”
中に入って周りを見回すと、
植物の間から差し込んだ光が良い具合に中を照らしていた。
そんな時、何かが隅でガサッと動いた。
“ん? もしかしてさっきの?”
目を凝らすと、
そこには父さんが縮小した時よりも
小さな灰色の子龍が蹲っていた。
その小さな灰色の龍は傷つき、
僕を怯える様に見ていた。
「どうしたの?」
僕がそう尋ねると、
その灰色の龍は更に小さくなって後ずさりした。
その時、
”あれ? この灰色の龍は……
もしかして父さん?”
何故かその時フッと思った。
「父さん? 父さんでしょ?!
小さいけど、父さんだよね?!
僕だよ! 翠だよ!」
そう言って近づいても、
その灰色の龍は僕の事を怖がって近づいてくれなかった。
「僕の事が分からないの?
それとも父さんじゃ……無い?」
そう言って手を伸ばすと、
その灰色の龍は
”ビクッ”
としたようにしてその身を丸めた。
僕が手を引くと後ろから、
「あれ? こんな所に居たんだ!」
そう言って懐かしい声がしてきた。
“あれ? この声は……”
僕が後ろを振り返ると、
同じ年位の男の子が後ろに立っていた。
”あれ? 顔が見えない……”
その子は僕の真後ろに立っていたのに、
顔が全く見えなかった。
彼は僕の方を覗き込むと、
「ヒッ!! これ龍の子供じゃない!」
そう言って彼は小さな悲鳴を上げた。
僕は慌てて、
”シーッ! 誰かに聞かれちゃうよ!
それよりも、君、何て名前?”
僕がそう尋ねたのに、
彼は僕の質問を無視して、
「xxxx、この子龍ケガしてるよ!
治してあげなくちゃ!」
そう言って僕に話しかけた。
その時彼は僕の名を呼んだのに、
その部分だけが聞き取れなかった。
僕は相変わらずに顔の分らない彼を見上げると、
「治すって……どうやって?!」
そう尋ねた。
「やだなぁ~ xxxxだって知ってるでしょ!」
そう言うと、子龍が、
「デュー!」
と鳴いた。
その声を聴いた僕は、
”デュー……デュー?!”
そう呟いて子龍を見つめた。
「やっぱり君、父さんでしょ?!
だって今デューって!
ねえ、どうして話してくれないの?!
僕だよ! 翠だよ!」
そう言っても、子龍は
”デュー!”
と言うだけで、一向に話しかけてくれなかった。
そこに居た子も、
「xxxx、夢でも見てるの? 君の名前は翠では無いでしょう?
xxxx、でしょ?
それに龍が話せるわけないのに何言ってるの?!
ほら、回復魔法をかけるから!
子龍がビックリしたりしない様に背中を撫でてあげていて!」
そう言ってその子は子龍に手を翳した。
その子の手が金色に光り出すと、
僕は慌てて子龍の背を撫で始めた。
途端、子龍の傷口が同じように金色に光はじめ、
これまで見たこともないようなまばゆい光に包まれた。
「ねえ、これが回復魔法なの?!
眩しくて目が明けらんない!
それに僕の手が熱いよ!」
金色に染まった子龍の背を撫でていた僕の手が
熱を帯びたように熱くなった。
そして何か不思議な力が僕の中に流れ込んで、
子龍に出て行くのが分かった。
「ねえ、君、何してるの?!
本当にこれで大丈夫なの?!」
僕が言い終えるのと同時に光がスーッと消え、
子龍に手を翳していた子が僕の事を見て、
「完全回復魔法……」
そう言って子龍を見た。
「ほら、あんなにあった傷が完全に回復している……」
その子が呆けたようにそう言うと、
「え? 回復魔法ってそう言うものじゃないの?」
回復魔法ってまだよくわからないけど、
父さんからそんな感じで聞いていた。
彼は僕を不思議そうに見ると、
「そりゃそうだけど、完全回復は回復魔法の上級魔法だよ?!
僕が使えるわけないじゃ無い!
普通だったら回復魔法を何重にもかけて完全に治るんだ!
それを、こんな一発で!」
彼はそう言うと、又僕を見た。
でも相変わらず彼の顔は分からない。
首を捻りながら
「え~、君じゃなかったらこの子龍が?」
僕がそう言うと、
「違う! 今のはお前の力だ」
そう言って声がした方を見ると、
何と、あの子龍が僕達に話しかけていた。
彼はその事に驚いていたけど、
僕は子龍が話しているのを見ると、
「やっぱり父さんじゃない!
何故直ぐに話しかけてくれなかったの?!
もう、びっくりしたじゃない!」
そう言って子龍に抱き着くと、
「お前は何を言っておる!
何故私が人間の子を持つのだ!
私は龍だぞ! 人の子が持てるわけがないだろう!」
そう言って僕を押しのけた。
「え……? 人の子は持てないって……
でも現に僕の父さんは灰色の龍で……人にもなれて……
母さんが死んでからずっと一人で僕を育ててくれてて……」
僕がそう言うと、その灰色の子龍は、
変な顔をして僕を見た。
「嘘?! じゃあ、あの灰色の龍は誰なの?!
僕が父さんと呼んでいるあの人は?!」
僕が少しパニック気味になってくると、
「ジェイド、落ち着いて!
一体どうしたの?!」
とその子は僕の事を
“ジェイド”
と呼んだ。
「違う!僕はジェイドじゃない!
僕は翠だ!」
そう言って見上げた彼は真っ赤な髪をした少年だった。
“嘘だ! 僕は彼を知っている!”
僕は
「アー……ウィン……?」
そう言うと、僕がアーウィンと呼んだその人は、
「ジェイド、龍は人の子は産まないんだよ。
君が父親だと言ってるのは龍なの?
人の姿になれる龍なんて聞いたことないんだけど……
その人の姿になれる龍が君を育ててるの?
それ変だよね?
だって君の父親はxxxx」
“又聞き取れない!”
僕はその子龍の方を見た。
子龍が首を振ったようにして、
”私はお前の父親ではない”
そう言うと、僕は
「嘘だ! 皆んなして僕を騙してるんだ!」
そう叫んで目が覚めた。
僕は涙で濡れ顔を両手で覆った。
「翠! 翠!」
隣では父さんが心配するように僕を覗き込んでいた。
僕は肩で息をすると、両手を下ろして
父さんを凝視した。
「どうしたんだ?
またいつもの嫌な夢か?」
父さんがそう尋ねるのと同時に、
僕は父さんに向けて思いっきり魔法をぶつけていた。
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「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
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明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
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