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セシルとの出会い
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父さんが去った後、
静かになった森を見渡して胸がドキドキとし始めた。
“これが本当に1人になると言う事なんだ……
もう夜を待っても父さんは帰って来ないんだ”
そう思うと胸がつかえて、
少し泣きそうになった。
僕は背負ったリュックの肩紐をギュッと握りしめると、
真っ直ぐ前を向いて歩き出した。
森の入り口から出ると、
目的の街は直ぐそこにあった。
”何処から街へ入れるんだろう……“
街は直ぐにあったけど、
フェンスで囲まれたその街は入る所がわからなかった。
幸い道は出来ていたので、
歩いて入口を探すことにした。
少し歩くと、後ろから馬車がやって来た。
「兄ちゃん! 街まで行くなら乗ってくかい?
此処からだと10チョリでいいよ?」
馬車を止めて御者がそう声をかけて来た。
「10チョリ?」
僕は彼が何を言っているのか分からなかった。
僕が頭を傾げていると、
「馬車賃だよ。 こっからは近いから10チョリで良いよ」
そう言いながら親指と人差し指で円を作り、
これまで見た事もない様なマークを作った。
僕が眉間に皺を寄せさらに頭を傾げると、
「私が払うわ!」
そう言って後ろに乗っていた子がポケットから何やら出して御者に渡していた。
「お代は払ったから、
あなた、早く乗って!」
その子が手招きをしたので、
僕は急いで馬車に乗り込んだ。
馬車には彼女の他にも数名の若者が乗っていた。
「ほら、此処に座って!」
彼女は自分の隣の席を手でパンパンと叩いて僕を横に座る様誘った。
「あ……ありがとう」
そうお礼を言って座ると、
馬車はゆっくりと動き出した。
「貴方、何処から来たの?」
の彼女の問いに何と答えれば良いか分からなかった。
「あの……」
そう言い淀んでいると、
「う~ん、言葉が難しいのかな?
外国の人?」
そう来たので、
「いいえ、いいえ!」
そう言って両手をブンブンと振った。
彼女はクスッと笑うと、
「貴方変な人ね。
もしかして成人して家を追い出された口?」
彼女がそう尋ねた後で僕は俯いた。
彼女は僕の肩に手をポンと乗せると、
「人生、悪いことばかりじゃ無いわよ!
私だって
“冒険者になりたい!”
って言ったら少しのお金だけ持たせられて
家を追い出されたわ!
私なんて未だ成人もしてないのよ!
貴方はもう成人してるの?」
彼女が尋ねたので、コクンと頷いた後、
「ついこの間……」
そう言って又頷いた。
「じゃあ、独り立ちしたばかりなのね!
この街は初めて?」
彼女のその問いにコクリと頷いた。
「へ~ そうだったのか~
ねえ、貴方の両親って馬車の乗り方とか教えてくれなかったの?」
そう彼女に尋ねられ、首を横に振った。
「そっか、だから馬車賃とか分からなかったのね?
貴方、お金は持たされなかったの?」
彼女にそう尋ねられハッとして、
「もしかして御者の人が言ってたのってお金の事だったの?!」
僕は慌てた様にして彼女に尋ねた。
「そうよ~ 今の時代、何をするにもお金なのよ~」
そう言って彼女が御者と同じ様なマークを指で作った。
「ねえ、それって……」
そう言って彼女の手を指差すよ、
「これ? これはお金マークよ!
もしかして知らないの?」
彼女のその問いに僕は頭を振った。
彼女はびっくりした様な顔をすると、
「まー! 貴方ってもしかして良い所の御坊ちゃま?」
そう来たので、
「え? 御坊ちゃまって……?」
そう言って眉を顰めると、
「そっか、貴方って箱入り息子だったのね」
と、何か彼女の中で僕の事が確定した様だった。
「ねえ、もしかしてこの馬車代、君が僕の分を出してくれたの?」
そう尋ねると、
「セシル」
と急に言うので、
「え?」
っとまた眉間に皺を寄せると、
「私の名前はセシルって言うの!
これからは君では無くセシルって呼んでね」
そう言った後、
「そうよ、貴方の馬車賃は私が出したの!」
そう返したから僕は大慌てで
「ごめん! 僕何の事を言ってたのかよく分からなくて!
街へ行ったら引換所でお金を貰ってちゃんと返すから!」
そう言うと、彼女はフフッと笑って、
「大丈夫よ! その代わり夕食を奢って頂戴!」
そう来たので、
「勿論だよ!」
そう僕は返した。
僕は父さんから、お金を借りることだけはしない様に教えられていた。
他の人に貸すときはあげたと思えと言われていた。
だからお金の貸し借りは絶対しない様に決めていたのに、
最初から失敗してしまった。
「それで? 貴方の名前は何て言うの?」
セシルが尋ねたので、
「僕の名前は翠って言うんだ。
宜しく」
そう言うと、彼女は手を出して来た。
僕がキョトンとした様に彼女を見ると、
「ほら、握手」
そう言って僕の手を取り、
掌を握り締めた。
「翠は私の友達1号ね!」
彼女にそう言われ、
”友達……“
そう呟くと、
「そうよ! 私達はもう友達よ!」
そう言ってニコリと笑ったので、
嬉しくなった。
“友達……友達か!“
そう呟いて彼女を見つめた。
これまで他の人と接触をして来なかったので、
友達という概念が余りなかった。
“あれ? そう言えばまだ小さかった時、
友達になりたいと思った彼は誰だったっけ?”
そういう事をぼんやりと考えていると、
馬車が止まった。
「ほら、街に着いたみたいよ。
降りましょう」
彼女にそう言われ、
僕は彼女に続いて馬車を降りた。
キョロキョロとしていると、
「ほら、こっちよ!」
セシルに手を引かれ、
僕達は門の前に並んだ。
“此処では身分証がいるのよ。
あなた、身分証ちゃんと持ってる?”
セシルが耳打ちして来た。
僕はコクコクと頷くと、
首からかけておいた証明書を取り出した。
セシルは僕の証明書を確認すると、
「大丈夫そうね。
さあ、行くわよ!」
そう言って門の所までズンズンと歩いて行った。
セシルが先に門番と話をすると、
僕の方を振り返って、
「ほら、翠も証明書を此処にかざして」
そう言ってそこに置いてあった置物に証明書を翳した。
僕もセシルと同じ様に証明書を翳すと、
そこから出ていた光がピッと緑色に変わった。
“へ? これはどういう仕組み……?!”
そこで呆けていると、
「翠! 早くこっちへ来て!
後ろの人の邪魔になるわ!」
セシルに急かされ僕は急いで門を通った。
僕は振り返ると興奮した様にして、
「すごいね! あれは何?!
どうしてあれから光が出てるの?!」
興奮した様に尋ねると、
「翠、貴方魔道具見た事ないの?!」
そう言ってセシルが驚いた顔をした。
「あれって魔道具っていうの?!
世の中には凄いものがあるんだね!」
僕が興奮した様にそう言うと、
「貴方、魔道具も知らないなんて、
よっぽど田舎から出て来たのね?
私も田舎の出身だけど、
それでも魔道具はあったわよ!
一体何処から来たの?!」
セシルがまた僕の出身について興味を持ち始めた。
「ごめん、山奥に住んでいたのは分かるんだけど、
僕も何処にいたのかはよく分からないんだ。
ただ、ずっと父さんと2人だったから」
そう言うとセシルは、
「あら! じゃあ、街の事とかはよく知らないのね!
大丈夫よ! 私が手取り足取り教えてあげるから!」
そう言って目を光らせた。
「じゃあ先ずは……」
彼女がそう言いかけて、
「僕、換金所に行きたい!
お金は持っていたほうがいいから。
今は全然持ってないんだ!」
そう言うと、
「分かったわ。
じゃあ最初はそこへ行きましょう!」
と言う事で、僕達は先ず換金所を目指す事にした。
「そうね~ 換金所って何処にあるのかしら?」
セシルがそう言い出したので、
「もしかして君もこの街は初めて?」
そう尋ねると、
「やあねえ、さっき家を追い出されたって言ったじゃ無い!
私も1人でやる事は初めてなの!
でも大丈夫よ!
少なくとも私は町で育ったから!」
セシルはそう言ってドーンとしていたけど、
僕は少しずつ不安になって来た。
だってさっきから、
「あれ? 此処はさっきも通ったわよね?」
とか、
「うーん、さっきの人の道順だと此処のはずなのに……」
とか、
「ちょっと待って! こっちじゃ無くてこっちだわ!」
とか言って行き止まりだったり……
彼女はもしかして余り場所を見つけるのが上手く無いのかもしれない。
「セシル、僕が聞いてくるから、
君は此処でちょっと待ってて!」
そう言って目の前にあった店に入ると、
そこで換金所への道順を尋ねた。
店の人は親切で、
街の地図をタダでくれて宿屋や食事処などもマークしてくれた。
礼を言って外に出ると、
店の前で待っていたセシルと合流した。
「どう? 場所は分かったの?」
そう言って僕のところへ駆け寄ってくると、
広げていた地図を覗き込んだ。
「あら、地図をもらって来たのね。
最初からそうしてれば良かったわね」
そう言って舌をペロッと出したセシルは無邪気に笑った。
地図のお陰で無事換金所についた僕達は中へ入りキョロキョロとしていた。
“ねえ、此処からどうすれば良いの?!”
セシルに耳打ちすると、
彼女は悪びれもせず、
“私も換金所は初めてなのよ!”
そう言って僕に耳打ちした。
“君、よく
『私に任せろ』
なんて大口が叩けたね!”
揶揄った様にそう言っていると、
「いらっしゃませ~
お預けですか?
お引き出しですか?」
とカウンターの向こうに立っていた女の人が声をかけて来た。
僕はビクッとして、
「あ、あの、お金が必要なのですが!」
硬直気味にそう答えると、
「口座カードはお持ちですか?」
そう尋ねられたので、
父さんに貰ったカードを差し出した。
「あの……これでしょうか?」
そう尋ねると、
「はい、こちらの魔道具に翳して下さい。
お預け入れの残高が照会されます」
と言われ、カードを翳した。
カードを翳した瞬間、
魔道具がビー、ビーっとけたたましい音を出して鳴り始めた。
後ろからセシルが、
「どうしたの? 何か問題?!」
そう言って魔道具を覗き込んで、
「貴方、このお金どうしたの?!」
とびっくりした様にして大声を出した。
僕は訳が分からず、
「え? え? 何か問題?!」
そう言ってオロオロとし始めた。
すると奥から年配の偉そうな男性が出て来て、
「え~ こちらは翠…シュレード様で間違いございませんか?」
とペコペコとして僕に話しかけて来た。
僕は訳が分からず一歩引くと、
セシルが後ろから僕を押しながら、
「貴方、やっぱり御坊ちゃまだったのね。
もしかして本当は貴族の子?!
此処は平民の換金所なんだけど?!」
と言うもんだから、ますます訳が分からなくなった。
僕が証明書を提示すると、
年配の男性はペコペコしながら、
「え~それでは今日はお幾らお引き出しのご予定でしょうか?!」
と緊張した様にして尋ねて来た。
僕はセシルの方を振り返ると、
“ねえ、幾らくらい持ってた方がいいの?!”
とヒソヒソと尋ねた。
彼女は
“うーん”
と小さく唸ると、
“ねえ、貴方、此処は平民街なんだけど、
此処に留まるの?! それとも貴族街の方へ行くの?!」
と又訳の分からない事を尋ねて来た。
”えー貴族街や平民街って訳わかんないんだけど、
僕はここら辺でいいよ!
で? 幾ら持っていれば良いの?!“
そう尋ねると、彼女は
”オホン“
と咳き込んだ後、年配の男性に向かって
「翠は一先ず1万チョリで大丈夫だそうです~」
そう言って愛想笑いをした。
年配の男性は深く礼をすると、
「少々お待ちください」
そう言って裏にいそいそと回って行った。
僕はセシルの方を見ると、
”ねえ、なぜあの人は焦った様にペコペコしてるの?!“
そう尋ねると、
”あとで説明するから!
ほら、彼が戻って来たわよ!”
そう言って僕の背を押した。
僕がカウンターまで歩み寄ると、
「お待たせいたしました。
お間違いがないかご確認下さい」
そう畏まってお金を僕に差し出した。
僕はセシルの方を見ると、
彼女をこ招いて、
“ねえ、これって君が言った金額なの?”
そう尋ねると、彼女はお金を数え始めた。
そして僕を肘で突くと、
“大丈夫よ”
そう囁いた。
「大丈夫みたいです。
有り難うございました」
そう礼を言ってお金を懐に入れようとすると、
「あの、今こちらにお預けになっておられるお金はこのままで?」
年配の男性は腰を低くしてペコペコと尋ねて来た。
「あ……宜しければこのままで……」
そう言うと、年配の男性は更に腰を低くしてペコペコと
「は! 有り難うございます。
又のお越しをお待ちいたしております」
と礼を述べた。
僕は苦笑いをしながら外へ出ると、
ガッとセシルに腕を掴まれ、
「ちょっと! あのお金は何?!
貴方、お父さんと山奥に住んでたって言ってたわよね?!
あなたのお父さん、何をする人なの?!
もしかして鉱山か何か持ってる人?!
金塊でも掘り当てたの?!」
そう言って捲し立てた。
静かになった森を見渡して胸がドキドキとし始めた。
“これが本当に1人になると言う事なんだ……
もう夜を待っても父さんは帰って来ないんだ”
そう思うと胸がつかえて、
少し泣きそうになった。
僕は背負ったリュックの肩紐をギュッと握りしめると、
真っ直ぐ前を向いて歩き出した。
森の入り口から出ると、
目的の街は直ぐそこにあった。
”何処から街へ入れるんだろう……“
街は直ぐにあったけど、
フェンスで囲まれたその街は入る所がわからなかった。
幸い道は出来ていたので、
歩いて入口を探すことにした。
少し歩くと、後ろから馬車がやって来た。
「兄ちゃん! 街まで行くなら乗ってくかい?
此処からだと10チョリでいいよ?」
馬車を止めて御者がそう声をかけて来た。
「10チョリ?」
僕は彼が何を言っているのか分からなかった。
僕が頭を傾げていると、
「馬車賃だよ。 こっからは近いから10チョリで良いよ」
そう言いながら親指と人差し指で円を作り、
これまで見た事もない様なマークを作った。
僕が眉間に皺を寄せさらに頭を傾げると、
「私が払うわ!」
そう言って後ろに乗っていた子がポケットから何やら出して御者に渡していた。
「お代は払ったから、
あなた、早く乗って!」
その子が手招きをしたので、
僕は急いで馬車に乗り込んだ。
馬車には彼女の他にも数名の若者が乗っていた。
「ほら、此処に座って!」
彼女は自分の隣の席を手でパンパンと叩いて僕を横に座る様誘った。
「あ……ありがとう」
そうお礼を言って座ると、
馬車はゆっくりと動き出した。
「貴方、何処から来たの?」
の彼女の問いに何と答えれば良いか分からなかった。
「あの……」
そう言い淀んでいると、
「う~ん、言葉が難しいのかな?
外国の人?」
そう来たので、
「いいえ、いいえ!」
そう言って両手をブンブンと振った。
彼女はクスッと笑うと、
「貴方変な人ね。
もしかして成人して家を追い出された口?」
彼女がそう尋ねた後で僕は俯いた。
彼女は僕の肩に手をポンと乗せると、
「人生、悪いことばかりじゃ無いわよ!
私だって
“冒険者になりたい!”
って言ったら少しのお金だけ持たせられて
家を追い出されたわ!
私なんて未だ成人もしてないのよ!
貴方はもう成人してるの?」
彼女が尋ねたので、コクンと頷いた後、
「ついこの間……」
そう言って又頷いた。
「じゃあ、独り立ちしたばかりなのね!
この街は初めて?」
彼女のその問いにコクリと頷いた。
「へ~ そうだったのか~
ねえ、貴方の両親って馬車の乗り方とか教えてくれなかったの?」
そう彼女に尋ねられ、首を横に振った。
「そっか、だから馬車賃とか分からなかったのね?
貴方、お金は持たされなかったの?」
彼女にそう尋ねられハッとして、
「もしかして御者の人が言ってたのってお金の事だったの?!」
僕は慌てた様にして彼女に尋ねた。
「そうよ~ 今の時代、何をするにもお金なのよ~」
そう言って彼女が御者と同じ様なマークを指で作った。
「ねえ、それって……」
そう言って彼女の手を指差すよ、
「これ? これはお金マークよ!
もしかして知らないの?」
彼女のその問いに僕は頭を振った。
彼女はびっくりした様な顔をすると、
「まー! 貴方ってもしかして良い所の御坊ちゃま?」
そう来たので、
「え? 御坊ちゃまって……?」
そう言って眉を顰めると、
「そっか、貴方って箱入り息子だったのね」
と、何か彼女の中で僕の事が確定した様だった。
「ねえ、もしかしてこの馬車代、君が僕の分を出してくれたの?」
そう尋ねると、
「セシル」
と急に言うので、
「え?」
っとまた眉間に皺を寄せると、
「私の名前はセシルって言うの!
これからは君では無くセシルって呼んでね」
そう言った後、
「そうよ、貴方の馬車賃は私が出したの!」
そう返したから僕は大慌てで
「ごめん! 僕何の事を言ってたのかよく分からなくて!
街へ行ったら引換所でお金を貰ってちゃんと返すから!」
そう言うと、彼女はフフッと笑って、
「大丈夫よ! その代わり夕食を奢って頂戴!」
そう来たので、
「勿論だよ!」
そう僕は返した。
僕は父さんから、お金を借りることだけはしない様に教えられていた。
他の人に貸すときはあげたと思えと言われていた。
だからお金の貸し借りは絶対しない様に決めていたのに、
最初から失敗してしまった。
「それで? 貴方の名前は何て言うの?」
セシルが尋ねたので、
「僕の名前は翠って言うんだ。
宜しく」
そう言うと、彼女は手を出して来た。
僕がキョトンとした様に彼女を見ると、
「ほら、握手」
そう言って僕の手を取り、
掌を握り締めた。
「翠は私の友達1号ね!」
彼女にそう言われ、
”友達……“
そう呟くと、
「そうよ! 私達はもう友達よ!」
そう言ってニコリと笑ったので、
嬉しくなった。
“友達……友達か!“
そう呟いて彼女を見つめた。
これまで他の人と接触をして来なかったので、
友達という概念が余りなかった。
“あれ? そう言えばまだ小さかった時、
友達になりたいと思った彼は誰だったっけ?”
そういう事をぼんやりと考えていると、
馬車が止まった。
「ほら、街に着いたみたいよ。
降りましょう」
彼女にそう言われ、
僕は彼女に続いて馬車を降りた。
キョロキョロとしていると、
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セシルに手を引かれ、
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さあ、行くわよ!」
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僕の方を振り返って、
「ほら、翠も証明書を此処にかざして」
そう言ってそこに置いてあった置物に証明書を翳した。
僕もセシルと同じ様に証明書を翳すと、
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「翠! 早くこっちへ来て!
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「すごいね! あれは何?!
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興奮した様に尋ねると、
「翠、貴方魔道具見た事ないの?!」
そう言ってセシルが驚いた顔をした。
「あれって魔道具っていうの?!
世の中には凄いものがあるんだね!」
僕が興奮した様にそう言うと、
「貴方、魔道具も知らないなんて、
よっぽど田舎から出て来たのね?
私も田舎の出身だけど、
それでも魔道具はあったわよ!
一体何処から来たの?!」
セシルがまた僕の出身について興味を持ち始めた。
「ごめん、山奥に住んでいたのは分かるんだけど、
僕も何処にいたのかはよく分からないんだ。
ただ、ずっと父さんと2人だったから」
そう言うとセシルは、
「あら! じゃあ、街の事とかはよく知らないのね!
大丈夫よ! 私が手取り足取り教えてあげるから!」
そう言って目を光らせた。
「じゃあ先ずは……」
彼女がそう言いかけて、
「僕、換金所に行きたい!
お金は持っていたほうがいいから。
今は全然持ってないんだ!」
そう言うと、
「分かったわ。
じゃあ最初はそこへ行きましょう!」
と言う事で、僕達は先ず換金所を目指す事にした。
「そうね~ 換金所って何処にあるのかしら?」
セシルがそう言い出したので、
「もしかして君もこの街は初めて?」
そう尋ねると、
「やあねえ、さっき家を追い出されたって言ったじゃ無い!
私も1人でやる事は初めてなの!
でも大丈夫よ!
少なくとも私は町で育ったから!」
セシルはそう言ってドーンとしていたけど、
僕は少しずつ不安になって来た。
だってさっきから、
「あれ? 此処はさっきも通ったわよね?」
とか、
「うーん、さっきの人の道順だと此処のはずなのに……」
とか、
「ちょっと待って! こっちじゃ無くてこっちだわ!」
とか言って行き止まりだったり……
彼女はもしかして余り場所を見つけるのが上手く無いのかもしれない。
「セシル、僕が聞いてくるから、
君は此処でちょっと待ってて!」
そう言って目の前にあった店に入ると、
そこで換金所への道順を尋ねた。
店の人は親切で、
街の地図をタダでくれて宿屋や食事処などもマークしてくれた。
礼を言って外に出ると、
店の前で待っていたセシルと合流した。
「どう? 場所は分かったの?」
そう言って僕のところへ駆け寄ってくると、
広げていた地図を覗き込んだ。
「あら、地図をもらって来たのね。
最初からそうしてれば良かったわね」
そう言って舌をペロッと出したセシルは無邪気に笑った。
地図のお陰で無事換金所についた僕達は中へ入りキョロキョロとしていた。
“ねえ、此処からどうすれば良いの?!”
セシルに耳打ちすると、
彼女は悪びれもせず、
“私も換金所は初めてなのよ!”
そう言って僕に耳打ちした。
“君、よく
『私に任せろ』
なんて大口が叩けたね!”
揶揄った様にそう言っていると、
「いらっしゃませ~
お預けですか?
お引き出しですか?」
とカウンターの向こうに立っていた女の人が声をかけて来た。
僕はビクッとして、
「あ、あの、お金が必要なのですが!」
硬直気味にそう答えると、
「口座カードはお持ちですか?」
そう尋ねられたので、
父さんに貰ったカードを差し出した。
「あの……これでしょうか?」
そう尋ねると、
「はい、こちらの魔道具に翳して下さい。
お預け入れの残高が照会されます」
と言われ、カードを翳した。
カードを翳した瞬間、
魔道具がビー、ビーっとけたたましい音を出して鳴り始めた。
後ろからセシルが、
「どうしたの? 何か問題?!」
そう言って魔道具を覗き込んで、
「貴方、このお金どうしたの?!」
とびっくりした様にして大声を出した。
僕は訳が分からず、
「え? え? 何か問題?!」
そう言ってオロオロとし始めた。
すると奥から年配の偉そうな男性が出て来て、
「え~ こちらは翠…シュレード様で間違いございませんか?」
とペコペコとして僕に話しかけて来た。
僕は訳が分からず一歩引くと、
セシルが後ろから僕を押しながら、
「貴方、やっぱり御坊ちゃまだったのね。
もしかして本当は貴族の子?!
此処は平民の換金所なんだけど?!」
と言うもんだから、ますます訳が分からなくなった。
僕が証明書を提示すると、
年配の男性はペコペコしながら、
「え~それでは今日はお幾らお引き出しのご予定でしょうか?!」
と緊張した様にして尋ねて来た。
僕はセシルの方を振り返ると、
“ねえ、幾らくらい持ってた方がいいの?!”
とヒソヒソと尋ねた。
彼女は
“うーん”
と小さく唸ると、
“ねえ、貴方、此処は平民街なんだけど、
此処に留まるの?! それとも貴族街の方へ行くの?!」
と又訳の分からない事を尋ねて来た。
”えー貴族街や平民街って訳わかんないんだけど、
僕はここら辺でいいよ!
で? 幾ら持っていれば良いの?!“
そう尋ねると、彼女は
”オホン“
と咳き込んだ後、年配の男性に向かって
「翠は一先ず1万チョリで大丈夫だそうです~」
そう言って愛想笑いをした。
年配の男性は深く礼をすると、
「少々お待ちください」
そう言って裏にいそいそと回って行った。
僕はセシルの方を見ると、
”ねえ、なぜあの人は焦った様にペコペコしてるの?!“
そう尋ねると、
”あとで説明するから!
ほら、彼が戻って来たわよ!”
そう言って僕の背を押した。
僕がカウンターまで歩み寄ると、
「お待たせいたしました。
お間違いがないかご確認下さい」
そう畏まってお金を僕に差し出した。
僕はセシルの方を見ると、
彼女をこ招いて、
“ねえ、これって君が言った金額なの?”
そう尋ねると、彼女はお金を数え始めた。
そして僕を肘で突くと、
“大丈夫よ”
そう囁いた。
「大丈夫みたいです。
有り難うございました」
そう礼を言ってお金を懐に入れようとすると、
「あの、今こちらにお預けになっておられるお金はこのままで?」
年配の男性は腰を低くしてペコペコと尋ねて来た。
「あ……宜しければこのままで……」
そう言うと、年配の男性は更に腰を低くしてペコペコと
「は! 有り難うございます。
又のお越しをお待ちいたしております」
と礼を述べた。
僕は苦笑いをしながら外へ出ると、
ガッとセシルに腕を掴まれ、
「ちょっと! あのお金は何?!
貴方、お父さんと山奥に住んでたって言ってたわよね?!
あなたのお父さん、何をする人なの?!
もしかして鉱山か何か持ってる人?!
金塊でも掘り当てたの?!」
そう言って捲し立てた。
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姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
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