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「ちょっと! 翠って貴族なの?!」
セシルの問いに僕は眉を顰めた。
「さっきから貴族、貴族って…
貴族って一体何?!」
父さんは色んな人の常識を教えてくれたけど、
人間の世界に階級がある事は教えてくれなかった。
きっと僕が父さんから学ばなかった事は沢山あるんだろう。
父さんと別れて未だ半日も経ってないのに、
少しずつ何故父さんが僕を人間の社会へ放り込んだのか
分かった様な気がして来た。
“貴族、貴族”
と立て続けに尋ねるセシルに貴族とは何かを尋ねると、
彼女は口をぽかんと開けて僕を珍しい物でも見る様にして見た。
「貴方本当に貴族って知らないの?!」
しつこく尋ねるセシルに、
「だからさっきから貴族って何?って聞いてるでしょ?!」
とぶっきら棒に尋ねると、
“う~ん……貴族を知らないという事は貴族では無いのか?!”
そうボソボソと独り言を言うセシルをジーッと見ると、
「あなた、山奥で育ったって言ってたわよね?
私、貴族よりもそっちの話に興味があるわ!
ねえ、さっきの約束覚えてる?!」
僕に指差しながら尋ねるセシルの目は
何だかキラキラ、生き生きとしていた。
僕はセシルに気圧されて一歩下がると、
「あ~ 夕食だよね~
勿論覚えてるよ?」
そう言ったかと思うと、
「じゃあ、話は早いわね!
ほら、丁度、1…2…3…4…5…!
5件先にお食事処って看板が出てるわ!
ほら、早速行きましょう!」
そう言って彼女は僕の手を取ると、
ズンズンとお食事処へと歩いて行った。
ドアを開けると中からは、むわっとした様な空気が僕の顔を直撃した。
一瞬
“ウッ”
ときたけど、それは直ぐにいい匂いへと変わった。
天井を仰いでクンクンと匂いを嗅ぐと、
「お腹減ったわね!」
そう言ってセシルが、
「おばさーん! 2名お願いしまーす!」
と大きなカップを持って忙しく動き回っていた人に
元気良く大声で声をかけた。
少しふっくらとしたその女性は、
「空いてる好きな場所に座りな!」
そう言ってセシルに声をかけた。
セシルは
「は~い! 有り難う!」
そう言うと、中を見回して、
空いてる席へ僕の手を引いてスタスタと歩いて行った。
「此処に座りましょう!」
セシルが決めた席へ行くと、
僕は当たりを見回した。
こんなに沢山の人を見るのは生まれて初めてだ。
「座ったら?」
セシルにそう言われ、僕は慌ててリュックを背から下ろした。
セシルは人差し指を僕にあてると、
「リュックはちゃんと足の間に挟んでおかないと、
盗まれちゃうわよ」
そう言うので、僕は慌ててリュックを足の間に挟んで
ギュッと足を絞った。
「何食べる?」
セシルの問いに、
「豆のスープと焼いたお肉しか知らないんだけど、
他に何かあるの?」
そう尋ね返すと、彼女は又ポカンとした顔をした。
そして両手で頭を抱え込むと、
“う~ん”
と唸り出した。
かと思うと次は僕の方をバッと見て、
「良し! 私、貴方がこれから何を言っても驚かない事にするわ!」
そう言うと、
「おばさーん! メニューはあるかしら?!」
そう叫んで忙しそうに動き回るふくよかな人に話しかけた。
彼女は
「あいよ! ちょいとお待ち!」
そう叫んで答えると、集めたお皿をさらに大きなお皿に乗せて向こうへと消えて行った。
そして水の入ったカップと何かを脇腹に抱えてこっちへやってくると、
水の入ったカップを僕たちの前にドーンと置いた。
そして脇腹に抱えていた物を僕たちに差し出すと、
「今日のお勧めは魚の蒸し焼きだよ!
決まったら呼んでな!」
そう言うと、向こうで呼びかけている人の方へ向かって行った。
セシルは彼女が小脇に抱えていた物を僕に差し出すと、
「はい、メニューよ!
此れにはこの食堂で何が食べれるか書いてあるのよ。
そして横にある数字がその料理のお値段よ」
そう言ってメニューの見方を教えてくれた。
「へー此処には便利なものがあるんだね~」
僕がそう言いながらメニューを見ると、
セシルはそんな僕をまた物珍しそうな目で見ていた。
「セシルは見ないの?」
そう尋ねると、
「私は食べるものはもう決まってるの。
ウェイトレスが言ったお勧めを食べるわ」
そう言ってテーブルに肘を付いて僕を見た。
「字は読めるんでしょ?」
彼女が尋ねたので、
「うん……一応は……
でも魚って何? どんな獣?」
そう尋ねると、彼女はプッと笑った。
僕は今まで魚と言うものを食べた事がなかった。
「魚はね、海の中にいるのよ。
あなた、海は知ってる?」
彼女の問いに僕は頷いた。
「そう、海は知ってたのね。
魚はね、海の中にいる生き物よ。
美味しいから貴方も同じものに挑戦してみる?」
彼女にニヤニヤと笑われながらそう尋ねられたので、
此処で断っては僕の沽券にかかると思い、
本当は魚がどんな味をしてるかちょっと怖かったけど、
「じゃあ、僕もそれでいいよ」
そう言ってメニューを閉じた。
セシルは僕の意地に気付いたのか、又ニヤニヤとすると、
「おばさーん」
と大声で呼んで、食事の注文をした。
食事が来る間、セシルは色々と僕に質問して来た。
「ねえ、さっきの換金所での事だけど、
貴方が貴族で無いならあの金額の貯金はどうしたの?
何処から見ても平民が一生を懸けても得られる額じゃ無いんだけど?」
セシルが不思議そうに尋ねたので、
僕は正直に答えた。
「僕は良く知らないけど、
亡くなった僕の両親が僕の為に貯めていたものだったらしいって言うのを
僕を育ててくれた父さんから聞いた」
そう言うと、セシルは
「御免なさい。
あなた、両親とも亡くなってたのね。
興味本位で聞いてしまって悪かったわ」
としおらしく謝って来た。
僕は慌てて、
「いや、全然大丈夫だよ。
僕は未だ赤ちゃんだったから全然両親の事覚えていないし、
僕にとっては育ててくれた人が僕の父親だから」
そう言うと、
「そうか~ でも貴方の育ての父親って一体山奥で何してたの?
貴方、余り此処での生活様式を知らないみたいだけど、
ずっと山奥で暮らしてたの?」
そう尋ねるので僕は頷いた。
「他の人には会った事は?」
その問いに、
「ずっと小さい時に一度だけ……
でも全然覚えていないんだ」
そこまで言うと、セシルはもう僕の事を理解した様で、
「ねえ、貴方これからどうするの?
あれだけ蓄えがあれば一生仕事をしなくてもいいと思うけど、
これからのことは何か決めてるの?」
そう尋ねて来たので、僕は少し考えて、
「実は……帝都を目指そうと思ってるんだ」
そう答えて自分でもびっくりした。
これからの事なんて漠然としたもので、何の予定もなかったので
急に帝都という言葉が出たのには僕自身びっくりだった。
実際に帝都に行く予定なんてサラサラ無かった。
でもセシルは興奮した様にして、
「じゃあ私とパーティーを組まない?!」
と、きたので、その事にもビックリさせられてしまった。
「パーティー?……って冒険者がなる?」
そう尋ねると、
「そうよ! 帝都へ行くんだったら、私も一緒に行くわ!
だから途中で魔獣を狩ったり、
ダンジョンに立ち寄ったりして、
一緒にレベル上げをしながら帝都へ向かいましょう!
帝都へ行く途中には魔獣のいる森なんかも通らなくちゃいけないし、
護衛を頼むには高すぎるし、冒険者になれば自分達で防衛が出来るでしょ?!
それに冒険者になればお金を稼ぎながらいけるわ!
一石二鳥でしょう!
まあ、貴方はお金なんていらないでしょうけどでも私は……」
彼女はそういうと俯いた。
彼女の気持ちはわかるけど、
僕は冒険者になる気なんて全然無かった。
「あ……いや、僕冒険者には……
君だったら直ぐに誰か一緒にパーティー組む人が見つかると思うよ?」
そう言うと、彼女は悲しそうな顔をして、
「私、此処へ来るまでに色んなパーティーへ申し込んだり、
自分でパーティーを作ろうと誘ったりしたんだけど全然で……
1人で魔獣を狩ってみたけど思う様に狩れなくて……
両親から持たされたお金はもう底を着きそうだし、
このままだと私……」
そう言って泣き出したので、
「わ……分かったよ!
僕が君のパーティーメンバーになってあげる!
でも王都に着くまでだよ?!」
そう言うと、彼女はパーッと顔を光らせ、
「今の言葉聞いたわよ!
男に二言は無いわね!」
そう言って両手を天井に仰いでパーンとその上で掌を叩き合わせた。
「も……もしかして嘘泣き?!」
僕がワナワナとそう言うと、
「やあねえ~ あれは本当に経験した事なのよ!
それに資金が底を着きそうなのも事実だし!
私、翠に出会えてよかったわ!
やっぱり私のお友達第一号ね!」
そう言ってテーブルの向こうから僕の頭をギュッと抱きしめた。
”ヒイッ!
と……父さん以外に抱きつかれたのは初めてだ!!
だけど何だろう……何だかすごく懐かしい感覚が……“
そう思っていると、
「ハイヨ!! お待ち!」
そう言って、デーンと大きな魚が袋に包まれて出て来た。
僕がどうしたらいいのかわからずお皿の上を眺めていると、
「ほら、こうやって食べるのよ!」
セシルがそう言って魚を包んでいた袋を破り始めた。
僕も同じ様にして袋を破ると、
中からはフワフワと熱い蒸気が出て来た。
「フ~ アッチチ……」
そう言って袋を広げると、
中には色とりどりの野菜も入っていた。
「はい、これ塩と胡椒よ!」
セシルがそう言って二つの小物を渡してくれた。
それを又じっと見ていると、
「ほら、それはこうやって使うの!」
そう言って手をシャカシャカと振ってみせた。
言われた通りにすると、中から塩と胡椒がパラパラと落ちて来た。
「凄い! 世の中にはこんな便利なものがあったんだ!
父さん、いつも手で摘んでバッてかけてたからもうまずいの何の!」
そう言うとセシルは又クスッと笑った。
「貴方のお父さん面白そうね。
私も一度会って見たいわ」
セシルにそう言われ、
「うん、いつか会う機会があったら是非紹介するよ!」
そう言うと、
「楽しみだわ」
と言った後、僕の方にフォークで指差して、
「で? 貴方は何ができるの?」
と急に尋ねて来た。
僕は魚や野菜を口に頬張りながら、
「これ美味しいね!
これが普通の味だとすると、
僕の父さんの料理は一体……」
ホフホフと質問とは違った事を答えると、
「料理の感想は今はいいの!
ねえ翠、貴方、見た感じでは何もできそうにないんだけど……
どうかしら?」
そうセシルが突っ込んできた。
そして更に、
「いやさ、貴方の生活や父親の事を聞いてると、
山奥でのんび~りと生活して来たのかな?って」
とそう言うもんだから僕も少し意地になって、
「じゃあ、そう言う君は何が出来るの?」
と尋ね返した。
すると彼女は大真面目な顔をして、
「私? 私はラッキーガールなの!」
と訳のわからない事を言い出した。
僕は片眉を上げると、
「はあ~?
それって自分は役立たずって言ってる様なもんじゃない?
何? ラッキーガールって?」
そう言うと、彼女も負けじと、
「失礼ね! 私、本当にラッキーガールなのよ!」
と返して来た。
「君ねえ、少しの間一緒にいたけど、
一体君の何処がラッキーなの?!
一緒にいてラッキーて思ったことは一度も無かったと思うんだけど!」
そう言うと、彼女はピースをして、
「だって私、こんな可愛いじゃない!」
と来たもんだ。
「あのさ、仮に君が可愛いとするでしょ?
まあ、ラッキーかはわからないけど、
でもそれって戦いに関係ないと思うけど……
それにさ、パーティーを組むのは良いけど、
僕、戦った事ないんだけど……」
そう言うと、彼女も真剣な顔をして、
「私だってないわよ!」
そう来たもんだから、
僕達はもう笑うしかなく、
この後は2人見合って大笑いした。
2人して大笑いした後お互いに自己嫌悪に陥り、
暫く黙り込んだ。
でもセシルが、。
「じゃあこの街の周りで弱い魔獣狩りからはじましょう。
直ぐにレベルも上がるわよ!
そしたらどんどん強い魔獣の挑戦していくの!
そうと決まれば食事の後、冒険者登録をするわよ!
クエストをこなしながらお金も貯めるわよ!
これから装備をするのに入り用になるからね!」
そう言った後、
「そういえば貴方のその格好……
これから冒険者としてやっていくんだったら、
簡単な装備くらいは揃えようね。
今の格好は……」
そう言って僕の事を頭の先から足の先まで眺め回した。
セシルの問いに僕は眉を顰めた。
「さっきから貴族、貴族って…
貴族って一体何?!」
父さんは色んな人の常識を教えてくれたけど、
人間の世界に階級がある事は教えてくれなかった。
きっと僕が父さんから学ばなかった事は沢山あるんだろう。
父さんと別れて未だ半日も経ってないのに、
少しずつ何故父さんが僕を人間の社会へ放り込んだのか
分かった様な気がして来た。
“貴族、貴族”
と立て続けに尋ねるセシルに貴族とは何かを尋ねると、
彼女は口をぽかんと開けて僕を珍しい物でも見る様にして見た。
「貴方本当に貴族って知らないの?!」
しつこく尋ねるセシルに、
「だからさっきから貴族って何?って聞いてるでしょ?!」
とぶっきら棒に尋ねると、
“う~ん……貴族を知らないという事は貴族では無いのか?!”
そうボソボソと独り言を言うセシルをジーッと見ると、
「あなた、山奥で育ったって言ってたわよね?
私、貴族よりもそっちの話に興味があるわ!
ねえ、さっきの約束覚えてる?!」
僕に指差しながら尋ねるセシルの目は
何だかキラキラ、生き生きとしていた。
僕はセシルに気圧されて一歩下がると、
「あ~ 夕食だよね~
勿論覚えてるよ?」
そう言ったかと思うと、
「じゃあ、話は早いわね!
ほら、丁度、1…2…3…4…5…!
5件先にお食事処って看板が出てるわ!
ほら、早速行きましょう!」
そう言って彼女は僕の手を取ると、
ズンズンとお食事処へと歩いて行った。
ドアを開けると中からは、むわっとした様な空気が僕の顔を直撃した。
一瞬
“ウッ”
ときたけど、それは直ぐにいい匂いへと変わった。
天井を仰いでクンクンと匂いを嗅ぐと、
「お腹減ったわね!」
そう言ってセシルが、
「おばさーん! 2名お願いしまーす!」
と大きなカップを持って忙しく動き回っていた人に
元気良く大声で声をかけた。
少しふっくらとしたその女性は、
「空いてる好きな場所に座りな!」
そう言ってセシルに声をかけた。
セシルは
「は~い! 有り難う!」
そう言うと、中を見回して、
空いてる席へ僕の手を引いてスタスタと歩いて行った。
「此処に座りましょう!」
セシルが決めた席へ行くと、
僕は当たりを見回した。
こんなに沢山の人を見るのは生まれて初めてだ。
「座ったら?」
セシルにそう言われ、僕は慌ててリュックを背から下ろした。
セシルは人差し指を僕にあてると、
「リュックはちゃんと足の間に挟んでおかないと、
盗まれちゃうわよ」
そう言うので、僕は慌ててリュックを足の間に挟んで
ギュッと足を絞った。
「何食べる?」
セシルの問いに、
「豆のスープと焼いたお肉しか知らないんだけど、
他に何かあるの?」
そう尋ね返すと、彼女は又ポカンとした顔をした。
そして両手で頭を抱え込むと、
“う~ん”
と唸り出した。
かと思うと次は僕の方をバッと見て、
「良し! 私、貴方がこれから何を言っても驚かない事にするわ!」
そう言うと、
「おばさーん! メニューはあるかしら?!」
そう叫んで忙しそうに動き回るふくよかな人に話しかけた。
彼女は
「あいよ! ちょいとお待ち!」
そう叫んで答えると、集めたお皿をさらに大きなお皿に乗せて向こうへと消えて行った。
そして水の入ったカップと何かを脇腹に抱えてこっちへやってくると、
水の入ったカップを僕たちの前にドーンと置いた。
そして脇腹に抱えていた物を僕たちに差し出すと、
「今日のお勧めは魚の蒸し焼きだよ!
決まったら呼んでな!」
そう言うと、向こうで呼びかけている人の方へ向かって行った。
セシルは彼女が小脇に抱えていた物を僕に差し出すと、
「はい、メニューよ!
此れにはこの食堂で何が食べれるか書いてあるのよ。
そして横にある数字がその料理のお値段よ」
そう言ってメニューの見方を教えてくれた。
「へー此処には便利なものがあるんだね~」
僕がそう言いながらメニューを見ると、
セシルはそんな僕をまた物珍しそうな目で見ていた。
「セシルは見ないの?」
そう尋ねると、
「私は食べるものはもう決まってるの。
ウェイトレスが言ったお勧めを食べるわ」
そう言ってテーブルに肘を付いて僕を見た。
「字は読めるんでしょ?」
彼女が尋ねたので、
「うん……一応は……
でも魚って何? どんな獣?」
そう尋ねると、彼女はプッと笑った。
僕は今まで魚と言うものを食べた事がなかった。
「魚はね、海の中にいるのよ。
あなた、海は知ってる?」
彼女の問いに僕は頷いた。
「そう、海は知ってたのね。
魚はね、海の中にいる生き物よ。
美味しいから貴方も同じものに挑戦してみる?」
彼女にニヤニヤと笑われながらそう尋ねられたので、
此処で断っては僕の沽券にかかると思い、
本当は魚がどんな味をしてるかちょっと怖かったけど、
「じゃあ、僕もそれでいいよ」
そう言ってメニューを閉じた。
セシルは僕の意地に気付いたのか、又ニヤニヤとすると、
「おばさーん」
と大声で呼んで、食事の注文をした。
食事が来る間、セシルは色々と僕に質問して来た。
「ねえ、さっきの換金所での事だけど、
貴方が貴族で無いならあの金額の貯金はどうしたの?
何処から見ても平民が一生を懸けても得られる額じゃ無いんだけど?」
セシルが不思議そうに尋ねたので、
僕は正直に答えた。
「僕は良く知らないけど、
亡くなった僕の両親が僕の為に貯めていたものだったらしいって言うのを
僕を育ててくれた父さんから聞いた」
そう言うと、セシルは
「御免なさい。
あなた、両親とも亡くなってたのね。
興味本位で聞いてしまって悪かったわ」
としおらしく謝って来た。
僕は慌てて、
「いや、全然大丈夫だよ。
僕は未だ赤ちゃんだったから全然両親の事覚えていないし、
僕にとっては育ててくれた人が僕の父親だから」
そう言うと、
「そうか~ でも貴方の育ての父親って一体山奥で何してたの?
貴方、余り此処での生活様式を知らないみたいだけど、
ずっと山奥で暮らしてたの?」
そう尋ねるので僕は頷いた。
「他の人には会った事は?」
その問いに、
「ずっと小さい時に一度だけ……
でも全然覚えていないんだ」
そこまで言うと、セシルはもう僕の事を理解した様で、
「ねえ、貴方これからどうするの?
あれだけ蓄えがあれば一生仕事をしなくてもいいと思うけど、
これからのことは何か決めてるの?」
そう尋ねて来たので、僕は少し考えて、
「実は……帝都を目指そうと思ってるんだ」
そう答えて自分でもびっくりした。
これからの事なんて漠然としたもので、何の予定もなかったので
急に帝都という言葉が出たのには僕自身びっくりだった。
実際に帝都に行く予定なんてサラサラ無かった。
でもセシルは興奮した様にして、
「じゃあ私とパーティーを組まない?!」
と、きたので、その事にもビックリさせられてしまった。
「パーティー?……って冒険者がなる?」
そう尋ねると、
「そうよ! 帝都へ行くんだったら、私も一緒に行くわ!
だから途中で魔獣を狩ったり、
ダンジョンに立ち寄ったりして、
一緒にレベル上げをしながら帝都へ向かいましょう!
帝都へ行く途中には魔獣のいる森なんかも通らなくちゃいけないし、
護衛を頼むには高すぎるし、冒険者になれば自分達で防衛が出来るでしょ?!
それに冒険者になればお金を稼ぎながらいけるわ!
一石二鳥でしょう!
まあ、貴方はお金なんていらないでしょうけどでも私は……」
彼女はそういうと俯いた。
彼女の気持ちはわかるけど、
僕は冒険者になる気なんて全然無かった。
「あ……いや、僕冒険者には……
君だったら直ぐに誰か一緒にパーティー組む人が見つかると思うよ?」
そう言うと、彼女は悲しそうな顔をして、
「私、此処へ来るまでに色んなパーティーへ申し込んだり、
自分でパーティーを作ろうと誘ったりしたんだけど全然で……
1人で魔獣を狩ってみたけど思う様に狩れなくて……
両親から持たされたお金はもう底を着きそうだし、
このままだと私……」
そう言って泣き出したので、
「わ……分かったよ!
僕が君のパーティーメンバーになってあげる!
でも王都に着くまでだよ?!」
そう言うと、彼女はパーッと顔を光らせ、
「今の言葉聞いたわよ!
男に二言は無いわね!」
そう言って両手を天井に仰いでパーンとその上で掌を叩き合わせた。
「も……もしかして嘘泣き?!」
僕がワナワナとそう言うと、
「やあねえ~ あれは本当に経験した事なのよ!
それに資金が底を着きそうなのも事実だし!
私、翠に出会えてよかったわ!
やっぱり私のお友達第一号ね!」
そう言ってテーブルの向こうから僕の頭をギュッと抱きしめた。
”ヒイッ!
と……父さん以外に抱きつかれたのは初めてだ!!
だけど何だろう……何だかすごく懐かしい感覚が……“
そう思っていると、
「ハイヨ!! お待ち!」
そう言って、デーンと大きな魚が袋に包まれて出て来た。
僕がどうしたらいいのかわからずお皿の上を眺めていると、
「ほら、こうやって食べるのよ!」
セシルがそう言って魚を包んでいた袋を破り始めた。
僕も同じ様にして袋を破ると、
中からはフワフワと熱い蒸気が出て来た。
「フ~ アッチチ……」
そう言って袋を広げると、
中には色とりどりの野菜も入っていた。
「はい、これ塩と胡椒よ!」
セシルがそう言って二つの小物を渡してくれた。
それを又じっと見ていると、
「ほら、それはこうやって使うの!」
そう言って手をシャカシャカと振ってみせた。
言われた通りにすると、中から塩と胡椒がパラパラと落ちて来た。
「凄い! 世の中にはこんな便利なものがあったんだ!
父さん、いつも手で摘んでバッてかけてたからもうまずいの何の!」
そう言うとセシルは又クスッと笑った。
「貴方のお父さん面白そうね。
私も一度会って見たいわ」
セシルにそう言われ、
「うん、いつか会う機会があったら是非紹介するよ!」
そう言うと、
「楽しみだわ」
と言った後、僕の方にフォークで指差して、
「で? 貴方は何ができるの?」
と急に尋ねて来た。
僕は魚や野菜を口に頬張りながら、
「これ美味しいね!
これが普通の味だとすると、
僕の父さんの料理は一体……」
ホフホフと質問とは違った事を答えると、
「料理の感想は今はいいの!
ねえ翠、貴方、見た感じでは何もできそうにないんだけど……
どうかしら?」
そうセシルが突っ込んできた。
そして更に、
「いやさ、貴方の生活や父親の事を聞いてると、
山奥でのんび~りと生活して来たのかな?って」
とそう言うもんだから僕も少し意地になって、
「じゃあ、そう言う君は何が出来るの?」
と尋ね返した。
すると彼女は大真面目な顔をして、
「私? 私はラッキーガールなの!」
と訳のわからない事を言い出した。
僕は片眉を上げると、
「はあ~?
それって自分は役立たずって言ってる様なもんじゃない?
何? ラッキーガールって?」
そう言うと、彼女も負けじと、
「失礼ね! 私、本当にラッキーガールなのよ!」
と返して来た。
「君ねえ、少しの間一緒にいたけど、
一体君の何処がラッキーなの?!
一緒にいてラッキーて思ったことは一度も無かったと思うんだけど!」
そう言うと、彼女はピースをして、
「だって私、こんな可愛いじゃない!」
と来たもんだ。
「あのさ、仮に君が可愛いとするでしょ?
まあ、ラッキーかはわからないけど、
でもそれって戦いに関係ないと思うけど……
それにさ、パーティーを組むのは良いけど、
僕、戦った事ないんだけど……」
そう言うと、彼女も真剣な顔をして、
「私だってないわよ!」
そう来たもんだから、
僕達はもう笑うしかなく、
この後は2人見合って大笑いした。
2人して大笑いした後お互いに自己嫌悪に陥り、
暫く黙り込んだ。
でもセシルが、。
「じゃあこの街の周りで弱い魔獣狩りからはじましょう。
直ぐにレベルも上がるわよ!
そしたらどんどん強い魔獣の挑戦していくの!
そうと決まれば食事の後、冒険者登録をするわよ!
クエストをこなしながらお金も貯めるわよ!
これから装備をするのに入り用になるからね!」
そう言った後、
「そういえば貴方のその格好……
これから冒険者としてやっていくんだったら、
簡単な装備くらいは揃えようね。
今の格好は……」
そう言って僕の事を頭の先から足の先まで眺め回した。
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