龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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龍輝と僕

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ダリルの事を聞いて以来僕の頭の中はずっとフワフワとしていて、
セシルが話を進める中、
僕はずっと話に集中出来なかった。

“ダリル……

真っ黒な髪に真っ黒な瞳って確か凄く珍しいんだよな?

一体どんな見目の人だったんだろう?!

もしかして……父さんの様な感じだったのかな?”

そんな事を考えていたら視線を感じてその方を見た時、
龍輝と目が合いパッと顔を逸らした。

“え? もしかして龍輝ってずっと僕の事見てた?”

そう思うと何だか変な汗が背中を伝い出した様な気がした。

“え? なんで? 龍輝が帰って来てから
僕とよく目が合ってたのは気のせいでは無かった?!”

龍輝の方を見ると,やたらと目が合った。

最初は偶然だと思っていたけど、
今となっては確信がある。

“なんで僕の方ばかり見てるんだろう?!“

龍輝の視線をやたらと感じて僕は俯いたまま
ダラダラと冷や汗をかいている様な感覚に落ちいった。

”何で?!  僕、何かしでかしたんだろうか?

それとも変な事でも言ったのか?!“

いくら考えても分からない。

もう一度龍輝の方をチラッと見ると,
今度はちゃんとセシルの方を見て彼女話を聞いていた。

少しホッとした僕は、

”やっぱり気のせいか?“

そう思い、ある事に気付いた。

”あっ……そう言えばこの家の男性陣は皆黒髪に黒い瞳だ……“

父さんの人型が黒髪に黒目なので、
自然とその色に馴染み親しんでいた僕は、
彼らの黒髪黒目を気にも留めていなかった。

”もしかしてダリルもこんな感じだったんだろうか……?”

龍輝の方をチラチラチラと見ながらそう思っていると,
又龍輝と目が合った。

“ヤバイ!”

何故か焦って僕は又、
目をパッと逸らして俯いた。

今回は心臓がバクバクと脈打って、
何故か頭がクラクラとしてきた。

そんな時セシルが

「ローティ,ジュジュ、リア、お願い、
私達を助けて!

私達には仲間が必要なの!

私達が現世に戻って来てる事がバレれば、
きっと私達は又命を狙われる!」

と、そん事を言いながら大声を出したので、
僕はビクッとして、
やっとセシルが前世の話をしていると言う事を思い出した。

“そうだ、僕たちは今セシルの前世について話を聞いていたんだ。

僕にも起こるかもしれない事なのに、
何を呑気に龍輝のことを考えてるんだ!”

ハッとしてセシルやローティの方を見渡すと,
ローティは少し引いたようにして、

「おいおい、ちょっと待てよ。

バレたらって、前世とは容姿も環境も違うんだろ?!

バレるものなのか?!」

ローティのそのセリフに、
僕はセシルの話を全然聞いていなかった事に気づいた。

“え? 一体どんな話をしてたの?!

バレるって何?!

何がバレるの?!”

少し焦った所でセシルは僕の方を見て、

「翠、魔法を解いて……」

そう尋ねたので、

「へ?! ま、魔法を解く?!」

と少し意味が分からなく、
吃ってしまった。

ローティ達が一斉に僕の方を見ると,
セシルが

“髪よ、貴方の髪!

本当は金髪ではないでしょ?!

貴方を産んだ私には誤魔化せないわよ”

そう言ったので、

“あっ、あ~

髪、そうだった、僕の髪の色は……”

とやっとセシルの言っている意味が分かり、
僕は髪に掛けた魔法を解いた。

魔法の解けた僕の本当の髪の色を目の当たりにしたローティ達は、

「そ……その色は?!」

と驚いて僕の髪を指差した。

「これが僕の本当の髪の色だよ……

この色だと目立ちすぎるから変えてるんだ」

そう言って僕は父さんの方をチロっと見た。

この髪は元々は父さんに言われて色を変えていたものだ。

僕でも詳しくは何故なのかよく分からなかったけど、
父さんに身を隠すためだとは教えられていた。

父さんはただ黙って僕たちの行方を見ていたけど、
僕の本当の髪の色を見るとローティは

「そ……そんな……

それは不可能だ!

何故翠にサンクホルムの聖龍の印が現れているんだ!」

そう言って頭をワシワシと掻いた。

僕が肩を窄めながら

「僕に言われも……」

と言って父さんに助け舟を求めるとセシルが、

「みんな聞いて!

これから、事の詳細を詳しく話すわ。

貴方達はわたしが見込んで信頼した人達なの。

私がこれから話す事は口外しないと約束できる?」

そう言って皆を見渡した。

皆はお互いを見渡すと、
ゴクリト唾を飲み込んだ様にして力強く頷いた。

セシルは一つ瞬きをすると,

「ねえ、貴方達、四大守護精霊について聞いた事がある?」

と最初にそう尋ねた。

“四大守護精霊?!”

僕は聞いた事が無かった。

でも、

「もしかして、だいぶ前にサンクホルムに現れ
森を薙ぎ倒していったと言うアレのことか?」

ローティがそう尋ねた。

セシルは目を見開き、

「そう! ずっと昔……

貴方が未だ生まれる前の事なのによく知ってたわね!

サンクホルムに現れたのは地の精霊、
この世界の自然を守り、地を司る精霊よ。

そして彼女の名はメルデーナ」

そう言うとローティがすかさず、

「え?! それは地の精霊の仕業だったのか?!」

と驚いた様に尋ねた。

「彼女が現れた事は知ってたのに、
彼女が何者かは良い伝わってなかったの?」

セシルが尋ねると,

「いや、俺が聞いたのは人に仇をなす魔人とだけ……

暫くは彼女の討伐隊が結成されたらしいが、
結局はどこへ行ったのか分からなかったらしい」

とローティが答えた。

セシルは拳を握りしめ

「そんな……彼女は魔人なんかじゃないのに!

彼女はどれだけ私達人間のためにこの地を守ってきたのか!」

そう悔しそうに呟くと,

「その…… 地の精霊はメルデーナといったか?

俺は南の森を薙ぎ倒して多くの騎士達を葬っていったと聞いたが……
何故護神的な精霊がサンクホルムの兵達に仇成したんだ?!

普通だったら、俺達の事を守るはずだろ?!

お前は理由を知っているのか?」

ローティが少し怒りを含んだ様な声でそう尋ねた。

”守護精霊が人を襲う?!

そんなバカな!”

僕も二人の話を聞いて何かがおかしいと感じ始めていた。

誰にも会わず、あんな山奥に住んでいた僕だけど、
守護精霊の役割ぐらいはちゃんと知っている。

それが人を襲うなんて……

セシルがローティの質問にコクリと頷くと,

「皆、よく聞いて!

信じられないかもしれないけど,
実を言うと、その守護精霊達に仇成した者がいるの!

その為に彼女は操られていたの!

それをやったのは人間よ!」

そう言って拳を震わせた。

ローティは信じられない様な顔をして、

「人?! 人に守護精霊をどうこうする力があるのか?!」

そう尋ねると,セシルは唇を震わせながら、

「ええ、メルデーナを呪って操った奴がいるのよ!

それが私たちの敵よ!」

そう言いのけた。

その瞬間僕頭の中に声が響き始めた。

“ダリル、僕と一緒に来て!”

“殿下,森の中はどの様になっているのか分かりません。

気を引き締めて参りましょう”

“ダリル、止まって!”

“殿下,何か見えるのですか?”

“動かないでそこでちょっと待って!“

”殿下?“

”怪我をしている人たちが居る!“

”先を急ごう!“

そこまで聞こえてプッと声が途切れた。

”え?! 今のは何?!“

僕の全身に鳥肌がたって僕は周りをキョロキョロと見渡した。

その声が聞こえていたのは僕だけの様だった。

皆はセシルの方を見て彼女の話を真面目に聞いていた。

“皆には聞こえてない……

やっぱり僕だけに聞こえていた様だ……

一体何だったんだ?!

もしかして断片的な僕の前世の記憶?!

もしかして僕の魂がセシルの話に共鳴した?!

僕はその時ダリルと一緒に森に居たのか?!”

そう思うと、聞かずには居られなかった。

「ねえセシル……

君の記憶の中にメルデーナが現れた時に
ジェイドとダリルが森にいたって記憶は……ある?」

そう尋ねた。

セシルは僕を見ると、
一瞬妙な表情をして、

「ええ、ジェイドとダリルは異変を感じ取って直ぐに森へ向かったわ」

そう言った後一息置いて、

「翠、何か思い出したの?」

そう尋ねた。

僕は床をボーッと見つめると,

「声が……」

そう言った。

「声?」

セシルがそう聞き返す中、

「翠には何か声が聞こえたのですか?」

そう龍輝が尋ねた。

僕が龍輝の方を見ると,
龍輝は真剣な顔をして僕の顔を覗き込んでいた。

覗き込んで見た彼の瞳がすこまれそうな程黒く、
何かデジャブを感じ変な胸の鼓動を感じると、
僕は又目を逸らし俯いたまま

「あ…… もしかしたら……
気のせいかもしれない……」

そう言って黙り込んだ。

龍輝は一言

“そうですか……”

そう言って口を噤んだ。

”あの声は一体何だったんだ?!

気のせいかと思ったけど、
やけにリアルな声だった。

まるでそこで聞いている様な……

森の香りでさえ漂ってくる様な感覚だった。

それに声が途切れる前に嗅いだあの匂いは……“

「血だ!」

そう大声で言ってハッとして周りを見回した。

皆がビックリした様に僕を一斉に見た。

”やだ、どうしたの? 翠?

大丈夫?“

セシルが僕の背を摩りながら心配そうに声を掛けてきた。

「僕が駆けつけた時は遅かったんだ!

メルデーナはもう既に立ち去った後で騎士達は地に倒れ
そこは血の海だった……

誰もメルデーナがどこからきたのか知らないし,
どこへ行ったのかも知らなかった。

僕は助けたかったんだ!

本当にみんなを助けたかったんだ!

でも少し遅かった。

もう少し早く着いていれば!

僕はすごく後悔したんだ!」

僕は独り言の様にブツブツとそんな事を言い始めた。

「ちょっと! 翠!

何を言ってるの?!

もしかしてジェイドの記憶?!

ねえ、断片的に思い出してるの?!

翠!」

そう言ってセシルが僕の肩を揺り始めた。

「僕は……

僕は……!

そうだ! デューデュー!

メルデーナが消えた方はデューデューと会う約束をしていた湖!

デューデュー!

デューデュー!」

僕はそう叫びながらスッと立ち上がった。

「翠! 落ち着け!

いや、ジェイドと呼ぶべきか?!

お前の意識は今どっちなんだ?!」

父さんの声でハッとした僕は

「父……さん……?

あ…… 違う……ごめん……

少し……頭が混乱して……」

そう言って僕の腕を掴む父さんの顔を見た。

「翠?」

セシルも心配そうに声を掛けてきた。

僕はセシルの方を見ると,

「あ……セシル……」

そう言って辺りを見渡した。

皆僕を見ていたけど、
隣に座っていた龍輝が一番心配そうな顔をしていた。

「翠? 大丈夫ですか?」

そう尋ねる龍輝に、

「あ……ああ、うん、もう大丈夫……僕は翠だ。

ごめん、何だかちょっと頭の中がフワフワしてるみたいで……」

そう言って頭を抱え込んだ。

「う~む、頭が少し混乱してる様だな?

前世の記憶を取り戻し始めたか?」

父さんはそう言うと僕の肩を抱き寄せた。

「私に寄り掛かるが良い」

そう言うと,

「さあ、座りなさい。

セシルの話もまだまだ続きそうだ。

この調子だと、セシルの話が終わる頃には
翠も記憶を取り戻すかもしれないな?」

そう言った後自分の膝をパンパンと叩いて、

「小さい時の様に私の膝に座るか?!」

そう言って僕を揶揄った様にした。

きっと混乱した僕を元気づける為だろうけど、
父さんに触れ安心したのか大分自分を取り戻した僕は
また床にズンと座り込むと,

「もう子供じゃないし、
大丈夫です!」

そう言って胡座をかいた。

セシルは僕の頬をそっと撫でると,

「翠、無理はしないでね」

そう言うと皆の方を向き直し,

「と言う事で、私達には仲間が必要なの!」

そう力んで言い放った。

ローティはフーッとため息を吐くと、

「お前達のやりとりを見て、
大体大まかな事はわかった……

じゃあ、お前達が転生するに至った経緯を
話せる範囲で詳しく教えてくれるか?

転生なんて今まで聞いた事もないから、
お前達はきっとこれまで聞いた事もない様な事を経験してきたんだろうな」

そう言って背筋を伸ばした。

そして少し身構えた僕の隣では龍輝が少し距離を縮めて
ピッタリと僕の横に張り付いてきていた。

凄くドキドキとして
少し龍輝に触れた肩が熱くて、
僕は今まで感じた事もない心臓の早さに少し戸惑いを感じ始めていた。










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