94 / 201
第94話 予選第1日目終了
しおりを挟む
「俺は下に行って先輩達と合流しなきゃいけないけど、
矢野先輩たちはどうしますか?」
青木君がそう尋ねてきたので、
「青木君と奥野さんは先に下に行ってて。
直ぐに追いかけるから」
と言って、矢野先輩は
僕が落ち着くまで一緒にそこに居てくれた。
「じゃ、先に行ってるよ。
階段の下で待ってるから」
そう言って奥野さんは青木君と
下に降りて行った。
「大丈夫?
落ち着いた?」
矢野先輩が心配そうに僕を覗き込んだ。
「すみません。
僕って何時も先輩に甘えてばかりで……」
そう言うと、
「あれから裕也と話してないんでしょう?」
そう先輩が聞いてきたので、
ビックリした。
「何故分かるんですか?」
「まあ、分からないでもないけどね。
明らかに裕也もちょっと変だし。
要君も、裕也の影が最近無かったしね」
「あ、でも大丈夫ですよ。
昨日少しメッセージで話しました。
インハイ終ったら話そうって……
只……どんな話になるのか……」
僕がそう言うと、矢野先輩はため息を付いて
「やっぱり僕が言ったことが
引き金になったのかな?」
と小さく独り言のようにボソッと言った。
先輩の独り言のような
つぶやきを聞いた時、
“やっぱり何かあったんだ”
と確信した。
でも、矢野先輩から
それを聞き出そうとは思わなかった。
イヤでも、明日の夜は
佐々木先輩と話をすることが出来る。
僕はどんなにイヤな事を告げられることになっても、
佐々木先輩の口から聞きたいと思った。
「先輩、僕もう大丈夫です。
下へ行って奥野さんと合流しましょう」
下では新しいチームが
早速次の試合の準備に入っていた。
階段を下りて行くと、
奥野さんが階段から少し離れた所で
待っていてくれるのが目に入った。
僕と矢野先輩は急いで階段を降りて行き、
奥野さんと合流した。
「ねえ、明日はどうする?
私はお弁当作ってくる予定だけど、
また一緒に応援する?
多分明日は一日居る事になると思うけど……」
奥野さんの問いに僕は、
「勿論来ますよ。
明日の会場はここですか?」
と答えた。
「ちょっと待ってて、
もうすぐ猛も帰れると思うから、
聞いてみる。
先輩はどうしますか?」
「要君が来るんだったら、
僕も行こうかな~」
「じゃあ、私、お弁当一杯作ってきますね。
猛は一杯食べるし!」
「奥野さんのお弁当か~
体育祭の時も凄く美味しかったから
楽しみだね~」
そう言って先輩が舌を鳴らした。
そう言う事で、明日ももう一度、
3人で応援に来ることになった。
話しているうちに、青木君が
今日のミーティングを終えて、
僕達の所にやって来た。
「お疲れ~」
そう奥野さんが労いの言葉を掛けると、
「皆揃ってるから佐々木先輩も一緒に帰るって。
だから10分待っててって。
今監督と明日の調整をしてるところだから」
青木君がそう言った途端に僕の背なかに緊張が走った。
心なしか、汗も流れていってるような感覚だった。
矢野先輩が僕に耳打ちをして、
「大丈夫?
ちょっと緊張してる?」
と聞いてきた。
僕は先輩の方を見て、
「少し……
でも、それよりも嬉しい方が勝ってるかも」
と返した。
「最近正直だね」
「先輩が言ったんでしょう。
隠し事するなって」
僕がそう言うと、先輩が僕の頭を抱えて、
ワシャワシャと頭を撫でてくれた。
「先輩、それ前からやめて下さいって
言ってるじゃないですか~
痛いですってば~」
そう言ったのと同時位に、
「先輩!
こっちこっち」
と青木君が呼び掛けているのが
聞こえてきた。
途端にまた、僕の背なかに緊張が走り、
筋肉が硬直したようになった。
「お待たせ!」
そう言って、ハアハアと
息を切らしている先輩の声が聞こえた。
凄く久しぶりに先輩の声を聴いたような気がした。
途端に硬直していた体から力が抜けた。
あれ?
あれ?
これ何?
緊張のし過ぎ?
体がフワフワする。
それとも僕、運命の番の声で溶けちゃった?
そう言うのってあるの?
あっ……目が回る……
どうしよう、立ってられない……
貧血か?
「矢野先輩……」
僕は頭を抱えていた先輩の肩に寄り掛かった。
「……ん?
どうしたの?」
「僕……気分が……」
そう言って矢野先輩の腕の中に倒れ込んだ。
そして暫くして、
僕は木陰で大きな木にもたれて座る
佐々木先輩の膝の上で目覚めた。
矢野先輩たちはどうしますか?」
青木君がそう尋ねてきたので、
「青木君と奥野さんは先に下に行ってて。
直ぐに追いかけるから」
と言って、矢野先輩は
僕が落ち着くまで一緒にそこに居てくれた。
「じゃ、先に行ってるよ。
階段の下で待ってるから」
そう言って奥野さんは青木君と
下に降りて行った。
「大丈夫?
落ち着いた?」
矢野先輩が心配そうに僕を覗き込んだ。
「すみません。
僕って何時も先輩に甘えてばかりで……」
そう言うと、
「あれから裕也と話してないんでしょう?」
そう先輩が聞いてきたので、
ビックリした。
「何故分かるんですか?」
「まあ、分からないでもないけどね。
明らかに裕也もちょっと変だし。
要君も、裕也の影が最近無かったしね」
「あ、でも大丈夫ですよ。
昨日少しメッセージで話しました。
インハイ終ったら話そうって……
只……どんな話になるのか……」
僕がそう言うと、矢野先輩はため息を付いて
「やっぱり僕が言ったことが
引き金になったのかな?」
と小さく独り言のようにボソッと言った。
先輩の独り言のような
つぶやきを聞いた時、
“やっぱり何かあったんだ”
と確信した。
でも、矢野先輩から
それを聞き出そうとは思わなかった。
イヤでも、明日の夜は
佐々木先輩と話をすることが出来る。
僕はどんなにイヤな事を告げられることになっても、
佐々木先輩の口から聞きたいと思った。
「先輩、僕もう大丈夫です。
下へ行って奥野さんと合流しましょう」
下では新しいチームが
早速次の試合の準備に入っていた。
階段を下りて行くと、
奥野さんが階段から少し離れた所で
待っていてくれるのが目に入った。
僕と矢野先輩は急いで階段を降りて行き、
奥野さんと合流した。
「ねえ、明日はどうする?
私はお弁当作ってくる予定だけど、
また一緒に応援する?
多分明日は一日居る事になると思うけど……」
奥野さんの問いに僕は、
「勿論来ますよ。
明日の会場はここですか?」
と答えた。
「ちょっと待ってて、
もうすぐ猛も帰れると思うから、
聞いてみる。
先輩はどうしますか?」
「要君が来るんだったら、
僕も行こうかな~」
「じゃあ、私、お弁当一杯作ってきますね。
猛は一杯食べるし!」
「奥野さんのお弁当か~
体育祭の時も凄く美味しかったから
楽しみだね~」
そう言って先輩が舌を鳴らした。
そう言う事で、明日ももう一度、
3人で応援に来ることになった。
話しているうちに、青木君が
今日のミーティングを終えて、
僕達の所にやって来た。
「お疲れ~」
そう奥野さんが労いの言葉を掛けると、
「皆揃ってるから佐々木先輩も一緒に帰るって。
だから10分待っててって。
今監督と明日の調整をしてるところだから」
青木君がそう言った途端に僕の背なかに緊張が走った。
心なしか、汗も流れていってるような感覚だった。
矢野先輩が僕に耳打ちをして、
「大丈夫?
ちょっと緊張してる?」
と聞いてきた。
僕は先輩の方を見て、
「少し……
でも、それよりも嬉しい方が勝ってるかも」
と返した。
「最近正直だね」
「先輩が言ったんでしょう。
隠し事するなって」
僕がそう言うと、先輩が僕の頭を抱えて、
ワシャワシャと頭を撫でてくれた。
「先輩、それ前からやめて下さいって
言ってるじゃないですか~
痛いですってば~」
そう言ったのと同時位に、
「先輩!
こっちこっち」
と青木君が呼び掛けているのが
聞こえてきた。
途端にまた、僕の背なかに緊張が走り、
筋肉が硬直したようになった。
「お待たせ!」
そう言って、ハアハアと
息を切らしている先輩の声が聞こえた。
凄く久しぶりに先輩の声を聴いたような気がした。
途端に硬直していた体から力が抜けた。
あれ?
あれ?
これ何?
緊張のし過ぎ?
体がフワフワする。
それとも僕、運命の番の声で溶けちゃった?
そう言うのってあるの?
あっ……目が回る……
どうしよう、立ってられない……
貧血か?
「矢野先輩……」
僕は頭を抱えていた先輩の肩に寄り掛かった。
「……ん?
どうしたの?」
「僕……気分が……」
そう言って矢野先輩の腕の中に倒れ込んだ。
そして暫くして、
僕は木陰で大きな木にもたれて座る
佐々木先輩の膝の上で目覚めた。
10
あなたにおすすめの小説
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
ワケありくんの愛され転生
鬼塚ベジータ
BL
彼は”勇敢な魂"として、彼が望むままに男同士の恋愛が当たり前の世界に転生させてもらえることになった。しかし彼が宿った体は、婚活をバリバリにしていた平凡なベータの伯爵家の次男。さらにお見合いの直前に転生してしまい、やけに顔のいい執事に連れられて3人の男(イケメン)と顔合わせをさせられた。見合いは辞退してイケメン同士の恋愛を拝もうと思っていたのだが、なぜかそれが上手くいかず……。
アルファ4人とオメガ1人に愛される、かなり変わった世界から来た彼のお話。
※オメガバース設定です。
【完結】聖クロノア学院恋愛譚 ―君のすべてを知った日から―
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で交差する、記憶と感情。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオン。
封印された記憶、拭いきれない傷、すれ違う言葉。
謎に満ちた聖クロノア学院のなかで、ふたりの想いが静かに揺れ動く。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れる。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――そして、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、他者と繋がることでしか見えない未来がある。
許しと、選びなおしと、ささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか“願い”を知っていく。
これは、ふたりだけの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が誰かの救いに変わっていく
誰が「運命」に抗い、
誰が「未来」を選ぶのか。
優しさと痛みの交差点で紡がれる
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
白銀の城の俺と僕
片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる