消えない思い

樹木緑

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第27話 クラスの噂話

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インハイ予選はうちの学校の
バレー部の勝利で幕を閉じた。

次はインハイへ向けて、6週間ほどの
時間がある。

殆どの運動部の先輩たちは、
これを機に引退し、
3年生は受験モードに切り替わった。

「おはよ~ 昨日はお疲れ様!」

奥野さんが元気に教室に入って来た。

「おはようございます、奥野さん。
そちらこそ、お疲れさまでした。
それにお弁当、ありがとうございました」

「いえ、いえ、皆に喜んでもらうと、
私も作り甲斐があるってものよ!
来週からバイト楽しみだね」

そう話していると、青木君が

「よ~ 皆の衆!」

と言いながら教室に入って来た。

「昨日は凄かったですね。
僕、バレーボールが大好きになりました。
スポーツ選手って本当にかっこいいですね!」

そう言うと、青木君が無い前髪をさっと上げたような
ジェスチャーをして、

「そうだろう? そうだろう?
もっと女子が見に来てくれれば……」

と言ったところで、奥野さんに頭をスパーンと
叩かれていた。

この二人は相変わらず仲が良くて、
見ている僕までホンワカと幸せな気持ちになって来る。

「そう言えばお前、
瞳んちでバイトするんだろ?」

「はい、僕、凄く楽しみで!」

「佐々木先輩が凄く心配してたぞ。
何でも、ナンパされたんだって?」

青木君がそう尋ねると
奥野さんが、

「そうなのよ~
もう、アプローチ受けまくり!
それも男性にばかり!
でもさ、なんかや~になっちゃうよね。
こんなピチピチな女子高生も居たのにさ!
でも、矢野先輩が自分もバイトするって
慌てて駆け込んできたときは
度肝を抜かれたわ!
一体どうしたの?!って」

「あ~ ありましたよね。
あの時は僕もびっくりしました。
まあ、僕がびっくりしたのは
出待ちまでして告白して来た人にですけど……」

「そうよね、あの後も結構電話あったのよ。
赤城君もそうだけど、
矢野先輩を尋ねる電話もね」

「そうそう、矢野先輩も一杯メモ貰ってましたもんね。
僕のメモは直ぐにゴミ箱だったのに、
自分はちゃっかりとポケットに入れてたんですよ!
まったくもう!」

「矢野先輩は赤城君が絡むと過保護だもんね~
赤城君のお父さんみたい!」

そう奥野さんが言うと、

「そう言えばな、佐々木先輩が言ってたけど、
矢野先輩、何人かのアプローチして来た人と
デートしたみたいだぞ?」

と青木君が言ったので、
僕と奥野さんは、

「え~~~~!!!!!」

と教室中に響き渡る大声を出してしまった。

「僕聞いてませんよ!
そんな話!」

「まあ、お前に言う義理もないだろ?」

の青木君の言葉に、
何だか胸がモヤモヤとしてきた。

僕のメモは捨てたくせに
自分はちゃっかりとデート?
そんなのは理不尽すぎる!

そう思ってワナワナしていると、

「何がそんなに気にいらないんだ?」

の青木君の言葉に、どうしてだろう?
と自分でも考えてしまった。

よ~し! 放課後とっ捕まえて吐かせてやる~!
そう思って、待てよ?
これってプライバシーの侵害?

そうだよな、先輩にもプライバシーはあるよな。
もしかしたら僕には知られたくない事もあるだろうし……

そう思って、いや、待てよ?
先輩だって隠し事はするなって言ってるのに、
僕には隠し事?
いや、これって、先輩にとっては
隠し事では無いのかもしれない。

そう思っているうちに、
頭がグチャグチャとなって来て、
もう先輩が誰とデートに行っても構わないや
と思うようになってきた。

「ちょっと、赤城君!」

そう呼ばれて横を見ると、
僕の横の席の柴田さんが、

「先生来てるよ!」

とそ~っと教えてくれた。

5月から、毎月クラスでは席替えがあっている。
今の僕のお隣は、柴田香さんと言って、
何時もニコニコとした可愛らしい女子だ。

僕は起立の声がかかったのも聞こえずに、
矢野先輩の隠し事を考えていた。

席に着いた後、柴田さんから
折りたたんだメモが回って来た。

『ねえ、さっき、矢野先輩が
どうのとか聞こえたんだけど、
矢野先輩の事知ってるの?』

そっか~ 柴田さんは僕と先輩が
仲いいこと知らないんだ。
そう思って、

『クラブの先輩です』

と返すと、

『先輩って彼女いるの?』

と返って来たので、そう来たか!
と矢野先輩のモテぶりを考えると、
納得もした。
そしてそれが佐々木先輩じゃ無くて
良かったとも思った。

『それでどうなの?』

『え~ 僕、先輩のプライバシーは
答えられません。
直接先輩に聞いてください!』

『じゃあ、助けて!』

『え?』

『恥ずかしいじゃない?
告白なんて
振られちゃうと怖いしさ』

あ~なんか分かる、その気持ち!
助けてあげたいけど……
僕自身がちょっと恋愛では
先輩とすったもんだあったし、
どうしよう~?と思たっら、

「こら~! そこの二人!
なにをコソコソ、イチャイチャしてる!」

と先生に怒られたので、
皆が一斉に僕達を見た。

そして皆がヒソヒソと、

え~ あの二人ってそうなの?
もしかしてこの席替えが二人を結ばせた~?

と言ったかと思えば、
噂の内容が180度回転して、

え? 赤城君って生徒会長と
何かありそうな感じじゃなかった?
ほら、体育祭の時の借りもの競争……

だよね、そう言えば、手をつないで走ってたよね。
お弁当も一緒に食べてたよ……

そう言えば、体育祭の練習で
体操服借りて無かった?

二人付き合ってるの?
え~って事は赤城君ってα?
それとも……

と皆の噂がどんどん
僕と佐々木先輩の方へ向けられてきて、
僕は焦り出してしまった。
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