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第一章
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「ギャアギャア煩いですね。俺の話聞いてました?『わかった』って言って下さいよ」
「佐々城!」
その時安達君の声が聞こえた。
髪を引っ張っていた手をパッと離して、「あっ…なんで」と岸井君の呟く声がした。
「佐々城、大丈夫か?岸井!何してんだよ!?」
目隠しと手を縛っている紐を取って、腕を持って立たせてくれた。
手を縛っていた紐はしっかり縛れてなかったようで、手に絡まっているだけになっていて、落ち着いて対応できていれば自分でも解けていたようだ。
お尻の土を払い身体、特に頭を確認するように見ていた安達君の目が腕で止まった。
「血が出てる」
呟く声に見てみると、肘の辺りに擦り傷があり血が滲んでいた。
「へ、平気」
今にも岸井君に殴り掛かりそうな安達君の腕を掴む。
一緒に来ていた松本君が岸井君を押さえていた。僕をここに連れてきた一年生は居なかった。
「殴ったりされてないから…殴らないで」
苦しげな顔で、「わかった」と言って、また他に怪我がないか見ている安達君に岸井君が叫んだ。
「どうして、変な噂流した奴に先輩はそんな優しくするんですか!?」
はぁ~と溜め息を吐き、怪我が他にないとわかった安達君は僕の頭をポンポンと撫でるように叩き岸井君の前に立った。
「まだ言ってるの?佐々城はあれがお前じゃないのは知ってるからそんなことしない。そもそも、もしあれがお前だとしても佐々城が人の事そんなふうに噂したりしない」
「どうして?……」
「どうしてお前じゃないのを知ってるかってことか?」
「…はい」
「もう、言ってしまえよ。良いよな佐々城?」
松本君が僕に確認するように聞いてくる。あの時の写真のことなんだろう。やっぱり噂になってた写真の相手は僕だったのだろうか?
安達君を見るとじっと見つめられて、こんな時なのに心臓が跳ねた。
「良いか?」
『本当は言いたくないんだ』と小声で呟いて『ごめんな』とまるで、二人だけ(松本君も知ってるけど…)の秘密を隠しておきたかったのに、とでも言うような安達君にドキリとした。
「良いよ」
あの写真が元で虐められるようなことになったら嫌だけど、今は岸井君の誤解を解きたい。
「あれ佐々城なんだ。だからお前じゃないのは最初から知ってる」
「嘘!」
「俺が証人だな。あの写真撮ったの俺だし」
松本君が未だに岸井君の腕を後ろで束ねて持ったまま最後通告を突きつけた。
「こいつ俺が引き受けるから、佐々城保健室連れてってやれよ」
「どうするの?」
暴力とかは止めて欲しい。
「ああ、まだ聞きたいことあるから。佐々城をここまで連れて来た奴のこととか?」
「佐々城、行こ。歩ける?」
「うん」
震えそうになる脚に力を入れてゆっくり歩く。安達君は僕の速さに合わせて急かすことなく一緒に歩いてくれた。
「怖かっただろ?」
「…うん」
強がったってこんなに動揺してるところを見られたら嘘なんか言ってもバレバレなので素直に頷いた。
「ありがとう、助けてくれて。第二体育館の周りに誰も居なかったから、大きな声出しても誰も来てくれないと思ったから…諦めてた」
「クラスの女子が佐々城が背の高い一年生と歩いてるの見たって聞いてさ。なんか校舎から離れて歩いて行くってさ。購買行くって言ってたのに…。探しに来て良かった」
隣に並んで歩いてる手が強く握られて何かに耐えているようで、僕以上に傷付いたように見える顔は苦痛に歪んでいた。
「ごめんな。僕が弱いから…安達君に嫌な思いさせて」
「何言ってんだよ!佐々城が悪い訳ないだろ?」
「うん」
それはそうなんだけど…。なんだか安達君が辛そうで…思わず謝ってしまったんだ。
「佐々城!」
その時安達君の声が聞こえた。
髪を引っ張っていた手をパッと離して、「あっ…なんで」と岸井君の呟く声がした。
「佐々城、大丈夫か?岸井!何してんだよ!?」
目隠しと手を縛っている紐を取って、腕を持って立たせてくれた。
手を縛っていた紐はしっかり縛れてなかったようで、手に絡まっているだけになっていて、落ち着いて対応できていれば自分でも解けていたようだ。
お尻の土を払い身体、特に頭を確認するように見ていた安達君の目が腕で止まった。
「血が出てる」
呟く声に見てみると、肘の辺りに擦り傷があり血が滲んでいた。
「へ、平気」
今にも岸井君に殴り掛かりそうな安達君の腕を掴む。
一緒に来ていた松本君が岸井君を押さえていた。僕をここに連れてきた一年生は居なかった。
「殴ったりされてないから…殴らないで」
苦しげな顔で、「わかった」と言って、また他に怪我がないか見ている安達君に岸井君が叫んだ。
「どうして、変な噂流した奴に先輩はそんな優しくするんですか!?」
はぁ~と溜め息を吐き、怪我が他にないとわかった安達君は僕の頭をポンポンと撫でるように叩き岸井君の前に立った。
「まだ言ってるの?佐々城はあれがお前じゃないのは知ってるからそんなことしない。そもそも、もしあれがお前だとしても佐々城が人の事そんなふうに噂したりしない」
「どうして?……」
「どうしてお前じゃないのを知ってるかってことか?」
「…はい」
「もう、言ってしまえよ。良いよな佐々城?」
松本君が僕に確認するように聞いてくる。あの時の写真のことなんだろう。やっぱり噂になってた写真の相手は僕だったのだろうか?
安達君を見るとじっと見つめられて、こんな時なのに心臓が跳ねた。
「良いか?」
『本当は言いたくないんだ』と小声で呟いて『ごめんな』とまるで、二人だけ(松本君も知ってるけど…)の秘密を隠しておきたかったのに、とでも言うような安達君にドキリとした。
「良いよ」
あの写真が元で虐められるようなことになったら嫌だけど、今は岸井君の誤解を解きたい。
「あれ佐々城なんだ。だからお前じゃないのは最初から知ってる」
「嘘!」
「俺が証人だな。あの写真撮ったの俺だし」
松本君が未だに岸井君の腕を後ろで束ねて持ったまま最後通告を突きつけた。
「こいつ俺が引き受けるから、佐々城保健室連れてってやれよ」
「どうするの?」
暴力とかは止めて欲しい。
「ああ、まだ聞きたいことあるから。佐々城をここまで連れて来た奴のこととか?」
「佐々城、行こ。歩ける?」
「うん」
震えそうになる脚に力を入れてゆっくり歩く。安達君は僕の速さに合わせて急かすことなく一緒に歩いてくれた。
「怖かっただろ?」
「…うん」
強がったってこんなに動揺してるところを見られたら嘘なんか言ってもバレバレなので素直に頷いた。
「ありがとう、助けてくれて。第二体育館の周りに誰も居なかったから、大きな声出しても誰も来てくれないと思ったから…諦めてた」
「クラスの女子が佐々城が背の高い一年生と歩いてるの見たって聞いてさ。なんか校舎から離れて歩いて行くってさ。購買行くって言ってたのに…。探しに来て良かった」
隣に並んで歩いてる手が強く握られて何かに耐えているようで、僕以上に傷付いたように見える顔は苦痛に歪んでいた。
「ごめんな。僕が弱いから…安達君に嫌な思いさせて」
「何言ってんだよ!佐々城が悪い訳ないだろ?」
「うん」
それはそうなんだけど…。なんだか安達君が辛そうで…思わず謝ってしまったんだ。
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