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第四章
03
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口内を舌が蠢くのを甘受しながら涙が止まらない。
嗚咽が漏れてしまい聡史が慌てて僕の顔を覗き込んだ。
「嫌だったのか?」
「…ち、ちが、う…、い、嫌じゃ…ない。う、嬉し、から」
「本当?」
少し落ち着いてきた僕はまだ涙が止まらないけど、溢れる涙は聡史が全て綺麗にしてくれる。
「うん…ずっと、諦めなきゃって…ずっと思ってたから。一年の時に好きになってから聡史が好きって言ってくれても、諦めなきゃってずっと、ずっと…」
「諦められなかったんだろ?ここに来てるってことはまだ…俺に片想いしてるんだろ?」
「うん…ずっと好き。今も大好き」
「あ~素直な篤紀は、ヤバイな」
そう呟いて再び僕を抱きしめた。
「俺の部屋来て」
耳元で囁かれて、その言葉の意味を察してじっと聡史の顔を見ると「嫌?」って聞かれた。だから、言葉にはせずに首を横に振って答えた。
聡史は実家を出ていた。
車二台でマンションに向かい、僕の車は近くの駐車場に停めた。
「上がって」
「お邪魔します…」
玄関から短い廊下を通るとそこは広いリビングダイニングだった。
でもその広い部屋には絨毯もラグも敷いてなくて、ソファーも置いてなかった。
小さな食事用と思われる座卓が一つ置いてあるだけで、カーテンさえない。
全て開け放たれていて奥に二つの部屋が見える。
2LDKのこのマンションは、一人暮らしにはちょっと広いように思った。
生活感のない部屋の隅にはダンボールが積んであって…これから引っ越しするのかな?
引っ越してきたとこ?
「あの………なの?」
少し浮き足立ってた気持ちが一気に萎んでいく。
「篤紀」
名前を呼ばれて背けていた身体を聡史に向けようとすると、その前に背中から抱きしめられた。
首筋に顔を擦り付けるようにすりすりされて「あっ…」思わず声が漏れる。
「相変わらず感じやすいな」
首筋に唇が触れるか触れないかでそんなことを言わないで欲しい。
「…あっ…っん…やぁっ、止めて」
本当は止めて欲しくないのに素直じゃない僕の口からは少しの嘘が出る。
「ダメ…止めない。今、変なこと考えただろ?俺がこの部屋で誰か他の奴と一緒に住むとか?」
「…っん…あっ」
聡史の手が服の裾から入って来て温かい手が僕の身体を撫でた。
「な、なんで?ここに連れてきたの?僕に意地悪するため?」
誰かと一緒に住むこの部屋は…嫌、早く出て行きたい。それなのに聡史の手は僕の肌を楽しむようにさわさわと動く。穏やかなその動きは僕をただ抱きたいと思っているのとは違って宥めるように動く。
優しい手は僕の身体が懐かしいとでも言うように、あの頃と同じで、会えなかった時間が嘘のようだ。
「篤紀、愛してる。ここに住むのは篤紀だよ?一緒に住んで…」
懇願するように囁かれて、何も考えられなくなった。
「……僕が?…良いの?」
「良いよ。ほら言って!」
「な、何を?」
嗚咽が漏れてしまい聡史が慌てて僕の顔を覗き込んだ。
「嫌だったのか?」
「…ち、ちが、う…、い、嫌じゃ…ない。う、嬉し、から」
「本当?」
少し落ち着いてきた僕はまだ涙が止まらないけど、溢れる涙は聡史が全て綺麗にしてくれる。
「うん…ずっと、諦めなきゃって…ずっと思ってたから。一年の時に好きになってから聡史が好きって言ってくれても、諦めなきゃってずっと、ずっと…」
「諦められなかったんだろ?ここに来てるってことはまだ…俺に片想いしてるんだろ?」
「うん…ずっと好き。今も大好き」
「あ~素直な篤紀は、ヤバイな」
そう呟いて再び僕を抱きしめた。
「俺の部屋来て」
耳元で囁かれて、その言葉の意味を察してじっと聡史の顔を見ると「嫌?」って聞かれた。だから、言葉にはせずに首を横に振って答えた。
聡史は実家を出ていた。
車二台でマンションに向かい、僕の車は近くの駐車場に停めた。
「上がって」
「お邪魔します…」
玄関から短い廊下を通るとそこは広いリビングダイニングだった。
でもその広い部屋には絨毯もラグも敷いてなくて、ソファーも置いてなかった。
小さな食事用と思われる座卓が一つ置いてあるだけで、カーテンさえない。
全て開け放たれていて奥に二つの部屋が見える。
2LDKのこのマンションは、一人暮らしにはちょっと広いように思った。
生活感のない部屋の隅にはダンボールが積んであって…これから引っ越しするのかな?
引っ越してきたとこ?
「あの………なの?」
少し浮き足立ってた気持ちが一気に萎んでいく。
「篤紀」
名前を呼ばれて背けていた身体を聡史に向けようとすると、その前に背中から抱きしめられた。
首筋に顔を擦り付けるようにすりすりされて「あっ…」思わず声が漏れる。
「相変わらず感じやすいな」
首筋に唇が触れるか触れないかでそんなことを言わないで欲しい。
「…あっ…っん…やぁっ、止めて」
本当は止めて欲しくないのに素直じゃない僕の口からは少しの嘘が出る。
「ダメ…止めない。今、変なこと考えただろ?俺がこの部屋で誰か他の奴と一緒に住むとか?」
「…っん…あっ」
聡史の手が服の裾から入って来て温かい手が僕の身体を撫でた。
「な、なんで?ここに連れてきたの?僕に意地悪するため?」
誰かと一緒に住むこの部屋は…嫌、早く出て行きたい。それなのに聡史の手は僕の肌を楽しむようにさわさわと動く。穏やかなその動きは僕をただ抱きたいと思っているのとは違って宥めるように動く。
優しい手は僕の身体が懐かしいとでも言うように、あの頃と同じで、会えなかった時間が嘘のようだ。
「篤紀、愛してる。ここに住むのは篤紀だよ?一緒に住んで…」
懇願するように囁かれて、何も考えられなくなった。
「……僕が?…良いの?」
「良いよ。ほら言って!」
「な、何を?」
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