視線の先

茉莉花 香乃

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番外編ー1 聡史の気持ち

02

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一年生の時から隣の席で俺の事目で追ってた篤紀は、可愛いって表現がぴったりくる容姿で本人気付いてないけど、何気に目立ってた。

告られることはなかったみたいだけど、人気はあった。

あまり社交的でないからなかなか話しかけ辛い雰囲気で、中学から同じ奴らは目を輝かせて話しかけてる。

社交的でなくても話しかけられれば丁寧に返事してるし、そいつにも笑顔で話すから勘違い男が現れないかヒヤヒヤだ。





いつも一緒に行ってた神社に初詣に行った。

冬休み中も行ったけど、新年の準備があるのかいつも静まり返ってる境内はざわざわしてて落ち着かないから一度行っただけだった。
ベンチに座ってると寒いし、階段では冬場の筋トレに近隣の学校から練習に来てて、対抗リレーなんて盛り上がってるからガヤガヤしててそれも嫌だった。

年が明けるちょうどは混んでるだろうから、俺の家で少し時間を潰してから行くことになった。

居間で姉貴と母さん、父さんと一緒にコタツに入り、二人きりになれないのを恨めしく思いながら姉貴が持って来たカードゲームを楽しそうにしている篤紀を眺めてた。

みんなで初詣に行くそうだ。毎年行ってたか?こんな時間には行ってなかったよな?邪魔しないで欲しいよ。二人で行けないならもう出かけてもいいんだけどな。

でも篤紀、父さんと母さんと姉貴とこんなに打ち解けてるのか…と不思議な気がしてた。

同じ大学受けるつもりだった。

受験する学部は違ったけど地元なら一緒にいられるって思ったのに…。
センター試験失敗したから…もう無理だと思うって俺の目も見られないって泣きそうな顔で俯いて、同じとこ行けないって悲しんでる篤紀が呟いた。

失敗したのなら篤紀が一番辛いだろうって思って慰めただけだった。
篤紀も悲しんでるって思ったんだ。学力なら俺と同じか篤紀の方が上くらいだから、よっぽど…って思った。

けど、もしかしたら…。

嫌な予感を振り払う。
そんなことない。

篤紀から別れ話は出なかった。
相変わらず自分から言葉で甘えたりしないけど、その視線も寂しげで…それは俺と離れてしまう寂しさだと思ってた。

俺から別れ話はしたくない。どんなに嫌われても追いかけていきたい…。できれば嫌われたくはないけど…。

引っ越す前日に、いつもの神社に行った。

ここにはもう来ないかもしれないな…なんて思いながら篤紀を抱きしめ、キスをする。

「ダメだよ…」
「誰も来ないよ。それに来たらわかるだろ?」

いつもはここでキスなんかしないけど、今にも泣きそうな篤紀を慰めるためにどうしたらいいかわからないから、いっぱいキスをした。

キスの間も悲しそうな瞳が俺を見る。

…篤紀の母ちゃんよく篤紀が家出るの許したな。篤紀の事とても大切にしてたのに。
…反対してくれよ。
…俺のが泣きそうだよ。



◇◇◇◇◇



俺は密かに篤紀と同じ大学行く奴を探した。

高校にも居たけど、あまり知らない奴だったからダメだ。中学の時、同じクラスだった黒川が行くってわかった時は正直『やだな』って思ったけど、他に見つからなくて仕方なく黒川に連絡した。

「なんだよ聡史、久しぶり」

エスポワールに呼び出して、奥の席に向かい合って座る。

篤紀とこんな風に座ったら見つめてくる可愛い顔が全部見えるから結構好き。
一度お願いして、両肘をテーブルに付いて頬を掌で覆ってもらった。上目遣いで見つめられたら…あの時はヤバかった。

でも、この席が空いてる時は向かい合って座ったりしない。
隣に座って腰抱いて篤紀の髪にキスするんだ。

あ~会いたいな。 

なんで黒川なんかと向かい合ってるの?

「お前、呼び出しといて睨むなよ」
「ああ、悪い」
「で?なんだよ」

俺、ココアとデカイ図体に似合わない物をさっさと注文してどかっと座った黒川は中学の時から女にモテた。

兎に角マメなのだ。
容姿もそこそこで何より話が面白い。男の趣味はないと思うし、勿論だが男にはモテてはいなかった。どっちかって言うと、やっかみも手伝ってウザがられてた。

「頼みがあるんだ」
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