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番外編ー1 聡史の気持ち
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大学を卒業して、篤紀が地元に帰って来た。
「しばらくは会わない方がいいだろ」
と村越に言われて我慢してたけどそろそろ会わせろとせっつくと仕方ないなと飲み会をセットしてくれた。
先ずは大勢の方がいいだろと高校の同級生数人に声をかけたら思わず人数が増えてしまった。女まで居るし…。
篤紀がこっち見てくれない。きっと女と居るからだ。そんなにお酒ばっか飲むなよ!松本からかなり強いのは聞いてたけど心配だ。
一人になったのを見逃さず、篤紀の隣に座った。
「大丈夫か?」
「何が?」
素っ気なく返されると辛いな。
「だいぶ飲んでるだろ?顔色も変わらないから酔ってるってわからないけど…気を付けた方が良い」
「平気。酔わないんだ」
「でも…もう酒は止めた方が良い」
「大丈夫だろ?」
強いのは知ってるよ。でも心配させてくれよ。
本当に酔わないのか?ずっと気を張ってるからじゃないのか?
「篤紀は恋人とかできた?」
そんなのいないのは知ってる。
でも、篤紀の口から聞きたかった。『安達君』そんなふうに呼ばれると切なくなる。
好きな奴が居る?
片想いって何だよ。
恋人は居ないのは知ってたけど、心の中までわからない。
片想いの奴の事を話す篤紀の笑顔が大学の時の笑顔じゃなかった。俺にしか見せなかった笑顔だ。
その誰かを思っての笑顔なのか?俺じゃない誰かが篤紀の心からの笑顔を引き出せるのか?
篤紀に何か聞かれたけどそれどころじゃない。
「…ああ、うん…えっ?今何て…」
何だよ。
何を聞かれたか全然わからなかった。
俺の返事とも取れない返事を聞いて途端に寂しそうな顔をした。
送られてきた写真の中の篤紀だった。
離れたくなかった。
このまま俺の部屋に一緒に連れて帰りたかった。無理やりだろうと構わない…。
でも、村越に睨まれて、さっきの篤紀の片想いの話を思い出して諦めた。
松本から「また一からだな。もう一度告るつもりで頑張れば?」と言われた。
頑張ってもいいのか?
不安になるよ。
それでも気付いたことがある。
目の前に座る篤紀と目があう度、ふわっと笑う顔が俺のよく知る可愛い笑顔だ。
これは…。
この頃から、親の説得を始めた。
先ずは一人暮らしを始めると言った。大学の時に貯めてたお金があるから、初期費用は問題なかった。
一人暮らしには広い部屋を借りようとしていることを聞かれると、一緒に住みたい人が居ると打ち明けた。篤紀の事はよく知ってるけど、まさか付き合ってるとは思ってなかっただろう。
最初は反対されたよ。でも、何回も大切なんだと言い続けた。姉貴も応援してくれて、最後には頷いてくれた。
「明日、どっか行かないか?」
やっとの思いでデートに誘ったけど素っ気なく断られた。
「行きたいとこあるから」
「片想いの奴に会うのか?」
「まあ、そんな感じかな」
そしてまた、あの笑顔。
この頃会う度に俺に向かってた笑顔を片想いの奴にも向ける。
俺以外の奴を思ってそんな顔するなよ…。
でも…、
これはもしかして…。
「辛くないのか?」
もしかして俺に片想いしてるってことなのか?
松本が篤紀はもう別れたと思ってると言ってた。俺の気持ちが離れてると思ってるなら…。
「片想いなんだろ?どこで会ってるの?そいつは篤紀の気持ちは知ってるのか?」
「うん…会えるだけで良いんだ。気持ちは伝えてないから」
「良いのか?」
…会えてるのか?
それは写真の中?
高校の時の俺?
伝えてない…そうだ、聞いてない。
「大丈夫だよ」
答える笑顔は俺だけの篤紀だった。
肩に触れる。
肘に触れる。
手に触れる。
隣に座りわざと身体に触る。
ビクッとなるけど少し頬を染めて、恥ずかしそうに俯く。嫌がってる感じは全然なかった。
堪らないよ。
なんて可愛いんだ。
高校の時を思い出す。どこまでも慣れなくて、いつまでも恥ずかしがってた。
キスもその先もいつも初めての篤紀を抱くような感覚。
でも身体だけは段々エロくなる。
俺の指を咥え、硬くなった俺自身を身体の奥で感じ喘ぐ篤紀。
それでも俺の事必死で見つめてた。
潤んだ瞳で必死に俺に縋る。
よく誘われるようにキスをしたな。
相変わらず、俺からは飲みにも誘えない。デートに誘ってもずっと断られ続けた。
それでも諦めないよ。
マンションの賃貸契約を済ませた。
予定のない土曜日に姉貴に付き合ってもらって日用品の買い物に出かけた。
翌日の日曜日からマンションに住む。先ずは俺の拠点をここに移していつでも篤紀を迎えられるようにした。
そして、神社に行く。
階段の下で待っている。
高校生の俺に会うってことはここにも来るだろうと、デートに誘って断られた時や、暇な時にはここに来た。
まだ、一度も会ってないから違うところに行ってるのか?
階段から最近よく見る爺さんが降りてくる。
ベンチに座ってる男が居たよと教えてくれた。
『篤紀だ!』
急いで階段を駆け上がった。
END
「しばらくは会わない方がいいだろ」
と村越に言われて我慢してたけどそろそろ会わせろとせっつくと仕方ないなと飲み会をセットしてくれた。
先ずは大勢の方がいいだろと高校の同級生数人に声をかけたら思わず人数が増えてしまった。女まで居るし…。
篤紀がこっち見てくれない。きっと女と居るからだ。そんなにお酒ばっか飲むなよ!松本からかなり強いのは聞いてたけど心配だ。
一人になったのを見逃さず、篤紀の隣に座った。
「大丈夫か?」
「何が?」
素っ気なく返されると辛いな。
「だいぶ飲んでるだろ?顔色も変わらないから酔ってるってわからないけど…気を付けた方が良い」
「平気。酔わないんだ」
「でも…もう酒は止めた方が良い」
「大丈夫だろ?」
強いのは知ってるよ。でも心配させてくれよ。
本当に酔わないのか?ずっと気を張ってるからじゃないのか?
「篤紀は恋人とかできた?」
そんなのいないのは知ってる。
でも、篤紀の口から聞きたかった。『安達君』そんなふうに呼ばれると切なくなる。
好きな奴が居る?
片想いって何だよ。
恋人は居ないのは知ってたけど、心の中までわからない。
片想いの奴の事を話す篤紀の笑顔が大学の時の笑顔じゃなかった。俺にしか見せなかった笑顔だ。
その誰かを思っての笑顔なのか?俺じゃない誰かが篤紀の心からの笑顔を引き出せるのか?
篤紀に何か聞かれたけどそれどころじゃない。
「…ああ、うん…えっ?今何て…」
何だよ。
何を聞かれたか全然わからなかった。
俺の返事とも取れない返事を聞いて途端に寂しそうな顔をした。
送られてきた写真の中の篤紀だった。
離れたくなかった。
このまま俺の部屋に一緒に連れて帰りたかった。無理やりだろうと構わない…。
でも、村越に睨まれて、さっきの篤紀の片想いの話を思い出して諦めた。
松本から「また一からだな。もう一度告るつもりで頑張れば?」と言われた。
頑張ってもいいのか?
不安になるよ。
それでも気付いたことがある。
目の前に座る篤紀と目があう度、ふわっと笑う顔が俺のよく知る可愛い笑顔だ。
これは…。
この頃から、親の説得を始めた。
先ずは一人暮らしを始めると言った。大学の時に貯めてたお金があるから、初期費用は問題なかった。
一人暮らしには広い部屋を借りようとしていることを聞かれると、一緒に住みたい人が居ると打ち明けた。篤紀の事はよく知ってるけど、まさか付き合ってるとは思ってなかっただろう。
最初は反対されたよ。でも、何回も大切なんだと言い続けた。姉貴も応援してくれて、最後には頷いてくれた。
「明日、どっか行かないか?」
やっとの思いでデートに誘ったけど素っ気なく断られた。
「行きたいとこあるから」
「片想いの奴に会うのか?」
「まあ、そんな感じかな」
そしてまた、あの笑顔。
この頃会う度に俺に向かってた笑顔を片想いの奴にも向ける。
俺以外の奴を思ってそんな顔するなよ…。
でも…、
これはもしかして…。
「辛くないのか?」
もしかして俺に片想いしてるってことなのか?
松本が篤紀はもう別れたと思ってると言ってた。俺の気持ちが離れてると思ってるなら…。
「片想いなんだろ?どこで会ってるの?そいつは篤紀の気持ちは知ってるのか?」
「うん…会えるだけで良いんだ。気持ちは伝えてないから」
「良いのか?」
…会えてるのか?
それは写真の中?
高校の時の俺?
伝えてない…そうだ、聞いてない。
「大丈夫だよ」
答える笑顔は俺だけの篤紀だった。
肩に触れる。
肘に触れる。
手に触れる。
隣に座りわざと身体に触る。
ビクッとなるけど少し頬を染めて、恥ずかしそうに俯く。嫌がってる感じは全然なかった。
堪らないよ。
なんて可愛いんだ。
高校の時を思い出す。どこまでも慣れなくて、いつまでも恥ずかしがってた。
キスもその先もいつも初めての篤紀を抱くような感覚。
でも身体だけは段々エロくなる。
俺の指を咥え、硬くなった俺自身を身体の奥で感じ喘ぐ篤紀。
それでも俺の事必死で見つめてた。
潤んだ瞳で必死に俺に縋る。
よく誘われるようにキスをしたな。
相変わらず、俺からは飲みにも誘えない。デートに誘ってもずっと断られ続けた。
それでも諦めないよ。
マンションの賃貸契約を済ませた。
予定のない土曜日に姉貴に付き合ってもらって日用品の買い物に出かけた。
翌日の日曜日からマンションに住む。先ずは俺の拠点をここに移していつでも篤紀を迎えられるようにした。
そして、神社に行く。
階段の下で待っている。
高校生の俺に会うってことはここにも来るだろうと、デートに誘って断られた時や、暇な時にはここに来た。
まだ、一度も会ってないから違うところに行ってるのか?
階段から最近よく見る爺さんが降りてくる。
ベンチに座ってる男が居たよと教えてくれた。
『篤紀だ!』
急いで階段を駆け上がった。
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